機動隊のガス銃に関する国会議事録 ー国際法で禁止される毒ガス兵器だった

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機動隊のガス銃水平撃ち 1977年三里塚闘争

解 説

 由紀子さんの会員日記に触発される形で、当時の資料を掲載保存しておきます。同日記に触れられている「担架で運ばれた学生」は、その後、右目の摘出・失明となります。そのことを思い出しましたので。

 よく、機動隊が使用しているガス銃について、マスコミでは「催涙弾」などと呼称されており、そのため一般にも誤解があるようです。ガス銃は至近距離で使えば殺傷能力もあるれっきとした「火器」であり、70年安保闘争では重傷者が続出したほか、三里塚では赤十字旗を立てて怪我人の手当てをしていただけのボランティアの男性が、医療現場に乱入してきた機動隊に、わずか5メートルの至近距離から頭部を狙い撃ちされ、頭蓋骨陥没で死亡するという事件がありました(東山薫さん虐殺事件)。

 また、そこで使用されている「催涙ガス」についても、実際はベトナム戦争などでも使用されたクロルアセトフェノン(CN)というれっきとした毒ガス兵器であり、それを死なない程度に薄めたものです。薄めたといってもそこは毒ガスですから、まともに浴びると皮膚がびらんして垂れ下がり、治癒後もケロイドなどの後遺障害が残ります。ベトナムで使用された際は、国際法違反にあたるため、米軍は大きな批判を浴びました。このような国際法違反の毒ガスを自国民の反政府運動に対して使ったのは、イラクのフセイン政権と日本の自民党政権くらいのものでしょう。

 かつてベストセラーとなった福島菊次郎さんの写真集「戦後の若者たち」では、マウスを使った「催涙ガス」の動物実験の様子が収められていました。いくらマウスとはいえ、アウシュビッツのガス室もきっとこんな様子だったのだろうと思わせる影像は、見るものに衝撃を与えました。
 当然、ガス銃の殺傷兵器としての使用と、自国民への毒ガス使用は国会でも取り上げられて問題となりました。以下、これはその時の衆議院予算委員会での議事録(抜粋)です。

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1.毒ガス兵器としてのガス銃
―1968年03月11日 衆議院予算委員会議事録

○楢崎委員 私はなぜこれを問題にするかというと、このクロルアセトフェノン(CN)はベトナム戦争で使われておるのです。いいですか。そしてこれはいまから三年前にAPの通信から暴露されて、そして全世界に反響を巻き起こしました。さっそくマクナマラ長官、ラスク長官が弁明をいたしました。そしてこのCNでオーストラリアの兵隊が死んでおるのです。このCNというのは毒ガスなんです。そうでしょう。
 (中略)かつて旧陸軍が、有名な広島の大久野島というのですか、毒ガス島、ここでつくっておったんです。当時の旧陸軍の呼称は、緑一号と言っておったんです。毒ガスなんですよ、これは。毒ガスということを御承知ですか。

○増田国務大臣 政府委員が御答弁申し上げます。

○蒲谷政府委員 現在使っております、持っておりますCNは、毒劇物取締法の対象外になっております。

○楢崎委員 私は、毒劇物取締法の対象になっておるかどうかを聞いておるんじゃないですよ。毒ガスかどうかということを聞いておるのです。どうしてあなた、そんなに時間を食うのですか。

○増田国務大臣 お答え申し上げます。
 クロルアセトフェノンというのだそうでございまして、これは催涙ガスでございまして、国内法の毒劇物の中に入っておりません。すなわち毒薬ではないのでございます。

○楢崎委員 あなただけです、世界じゅうでそんなに言うのは。アメリカの毒ガス一覧表には書いてあります。かつての日本陸軍の一覧表にも書いてあるのです。
 いいですか。クロルアセトフェノンは、その前はクロルピクリンだったんですよ。クロルピクリンは、これは毒劇物指定になっております。それも使っておったが、さらにそれよりも性能がいいということでクロルアセトフェノンになったのです。毒ガスなんです。あなたは毒ガスでないというような認識ですか。

○増田国務大臣 お答え申し上げます。
 クロルアセトフェノンは、日本の法律の毒劇物取締法に入っておりません。したがって、毒ガスではないし、催涙ガスである、こう考えております。

○楢崎委員 それじゃ外務大臣にお尋ねします。国際法との関係についてちょっとお伺いしておきます。非常にこれは重大です。このCNをベトナムでアメリカが使っただけで、全世界の反響を、起こしたのですよ。それを日本の自衛隊なり警察が持っておるし、警察はすでに使っておるんですよ。戦争で人殺しに使っておるやつを、警察はデモに使っておるんですよ。だから、私はこれは重大だから、いま問題にしておるのです。

2.銃火器としてのガス銃
―1969年2月26日 衆議院予算委員会第一分科会議事録

ガス銃水平撃ち(1985年成田闘争)○楢崎分科員 去る一月十八、十九両日の東大構内における紛争において、非常にたくさんの被害者が出ておるわけです。それで、その両日におけるガス銃の使用方法について、水平撃ち、特に至近距離から顔面をねらって撃たれた形跡がありますが、そういう点について関知しておられるかどうか。

○川島(広)政府委員 十八、十九の東大構内におきます排除行為につきましては、ガス銃を使用いたしました。使いましたのは安田講堂が主でございますけれども、それ以外に工学部の列品館あるいは法学部の研究室等において使いました。いまお尋ねのように、至近距離で、あるいはまた水平撃ちというようなことはやっておりません。と申しますのは、いまお手元でごらん願っておりますように、このガス筒の発射銃と申しますのは、元込め式で中折れでございますから、水平になりますればガス筒が前へ下がってまいりまして、装薬との接触がなくなってまいりますので、実際上そういう使い方はできないわけでございますので、そのとおりに御理解願いたいと思います。

○楢崎分科員 われわれが直接いろいろ調べておるところ、そうしてまた私どもの関係者が実際に被害を受けた人に接見をして、その報告が出ておるわけです。
 たくさん報告例がありますが、時間がありませんからそのうちの代表的なものだけ申し上げたいと思いますが、これは本名かどうか知りませんが、坂本武と名のっております。東大病院で眼球の摘出手術をやっておりますが、その患者を担当した先生は、戸張、清水両先生であります。状況を簡単に申し上げます。これはレポートの形になっておりますが、坂本武といっておる人ですね。D君となっております。

⇒次ページ:顔面狙い撃ちで眼球をえぐられたD君の事例 写真(非グロ)あり

5件のコメント

三一書房の新書「催涙ガス」ではこの国会質疑も踏まえて危険性を告発した本では「催涙性毒ガス」と呼ぶべきだと書いてありました。東大闘争の時にヘリコプターからドラム缶に入れた原液をぶちまけた事も。 https://t.co/htFzWGUmvD

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