<資料>国連人種差別撤廃委員会の日本政府への勧告全文

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 この国連勧告は、前のエントリーの資料として掲載しています。
 なお、この訳文は、前エントリーで紹介した講座の当日に「仮訳」として配布していただいたものです。
 お尋ねしたところ、使用する場合は、出所を明確にすることと、これがまだ仮訳であることを明示した上で使ってもいいということでした。
 もし、転載したり学習会などで使用される場合は、前後のクレジット部分を消さずにお使いください。なお、文中の太字は原文のままです。

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日本語仮訳 Ver.1(最終版ではない)
作成:人種差別撤廃NGOネットワーク

CERD/C/JPN/CO/3-6
配布:一般
2010年3月16日
原文:英語
先行未編集版


人種差別撤廃委員会

第76会期
2010年2月15日-2010年3月12日

条約第9条にもとづき締約国が提出した報告書の審査
人種差別撤廃委員会総括所見

日本

1.委員会は日本の第3回から第6回の合同報告書(CERD/C/JPN/3-6)を、2010年2月24日および25日に開催された第1987回・第1988回会合(CERD/C/SR.1987とCERD/C/SR.1988)において審査した。2010年3月9日に開催された第2004回・第2005回会合(CERD/C/SR.2004とCERD/C/SR.2005)において以下の総括所見を採択した。

A.はじめに

2.委員会は締約国(=注:日本のこと、以下同じ)による第3回から第6回の定期報告書の提出を歓迎する。委員会は、条約に定める権利の実施についてさらに理解をえる手がかかりとなった大代表団との間の建設的な会話、質問リストヘの書面による回答、そして委員会委員による質問に対する口頭での回答に感謝の意を表する。締約国の報告が相当に期限が過ぎていたことに留意し、委員会は締約国に、条約におけるその義務を果たすために、将来の報告書の提出期限に留意するよう要請する。

B.肯定的な側面

3.委員会は、ミャンマー難民に対する締約国の試験的再定住プログラムに関心をもって留意する。(2010年)
4.委員会は、締約国が先住民族の権利に関する国連宣言を支持したことを歓迎する。(2007年9月)
5.委員会は、締約国がアイヌの人びとを先住民族として認識したこと(2008年)に祝意を表し、アイヌ政策推進会議(2009年)の設置を関心をもって留意する。
6.委員会は、名誉棄損・プライバシー関係ガイドライン(2004年)、プロバイダ責任制限法(2002年)、違法・有害情報への対応等に関する契約約款モデル条項(2006年)など、インターネット上での違法で有害な情報に対する規制が採択されたことに高い評価をもって留意する。

C.懸念と勧告

7.委員会は前回の総括所見(2001年)の実施の具体的な測定に関して締約国が提供した情報が不充分であることに留意し、それらの全体的に限定された実施と条約全体の限定された実施を遺憾に思う。

締約国に、委員会が締約国に出したすべての勧告と決定に従い、国内の法規定が条約の効果的実施を促進することを保障するために必要なすべての手段をとるよう奨励する。

8.憲法第14条を含み、法のもとの平等を保障する国および地方の条項が存在することに留意するものの、委員会は条約第1条の差別の根拠は充分に対象とされていないことを強調する。さらに委員会は、世系に基づく人種差別についての締約国の解釈を遺憾に思う一方で、部落民に対する差別の防止と撤廃のために条約の精神にのっとって締約国がとった諸措置に関する情報に励まされる(第1条)。

委員会は、一般的勧告29(2002年)において「“世系”に基づく差別はその他の禁止されている差別の根拠を補完する意味および適用を有しており、社会階層の諸形態およびそれに類似する地位の世襲制度に基づく集団の構成員に対する人権の平等な享有を妨げまたは害する差別を含む」と表明したその立場を維持する。その上で、委員会は、条約第1条1項の“世系”という言葉は単に“人種”を指すものではないということ、そして世系を根拠にした差別は条約第1条によって完全に対象とされているということを再確認する。したがって委員会は、締約国に条約に基づいた人種差別の包括的な定義を取り入れるよう促す。

9.委員会は国内の反差別法は必要ではないとする締約国の意見に留意し、その結果、個人あるいは団体が差別に対する法的救済を求めることができなくなっていることに懸念する(第2条)。

委員会は前回の総括所見(2001年)の勧告を繰り返す、そして締約国に、条約第1条にしたがって直接的および間接的人種差別を禁止し、条約が保護するすべての権利を対象にする特定的な法律の採択を検討するよう奨励する。また、締約国に、人種差別の申し立てを受ける法執行職員は差別の加害者に対処し被害者を保護する適切な専門知識と権限を有していることを保障するよう奨励する。

10.締約国が報告書作成において非政府系組織(NGO)およびその他の団体と協議や非公式な聴聞を開いたことを関心をもって留意しつつ、委員会はそうした組織や団体からの情報収集や情報交換の機会が限られていたことを遺憾に思う。

委員会は日本の非政府系組織(NGO)の人権分野における建設的な貢献と役割に留意し、締約国が次回定期報告書の作成における協議過程にNGOの効果的な参加を保障するよう奨励する。

11.委員会は、締約国が提供した人口の構成に関する情報に留意しつつも、それらデータは締約国において社会的に弱い立場にある集団の状況の適切な把握と評価を可能にしていないことを遺憾に思う。

委員会は、改定された報告作成のためのガイドラインのパラグラフ10と12(CERD/C/2007/1)、条約第1条の解釈に関する一般的勧告8(1990年)、そして外国籍者に対する差別に関する一般的勧告30(2004年)に基づき、締約国に、条約第1条の定義にある集団の構成と状況を評価するために、関係する個人のプライバシーと匿名性を充分に尊重しながら、任意の自己同定に基づき、社会調査の情報とともに、一般に話されている言語、母語、そしてその他人口の多様性を示す指標の調査を実施することを奨励する。さらに委員会は、締約国に、次回の定期報告書に外国籍者の人口の最新で非集計のデータを提供することを奨励する。

12.パリ原則にしたがった国内人権機関の設置の検討を締約国が行っていることを考慮に入れつつも、委員会は、人権委員会の設置の規定を含んだ人権擁護法案が撤回されたこと、そして、独立した国内人権機関の設置の遅れとそのための具体的行動および時間枠が全体的に不在していることを遺憾に思う。委員会はまた、包括的で効果的な苦情申し立てメカニズムの欠如に懸念をもって留意する。

委員会は締約国に、人権擁護に関する法案を起草して採択し、法的な苦情申し立てメカニズムを迅速に設置することを奨励する。また、委員会は、広範な人権の責務および現代的形態の差別に取り組む具体的な責務をもち、財政的に裏付けされ適切に人員を備えた独立した人権機関をパリ原則にしたがって設置するよう促す。

13.締約国が提供した説明に留意しつつも、委員会は条約第4条(a)(b)の留保を懸念する。委員会はまた、韓国・朝鮮学校に通う子どもたちなどの集団に向けられる露骨で粗野な発言と行動の相次ぐ事件と、特に部落民に向けられたインターネット上の有害で人種差別的な表現と攻撃に懸念をもって留意する。

委員会は、人種的優越あるいは憎悪に基づく意見の流布の禁止は意見および表現の自由と両立するという見解を繰り返す、そしてこの点において、締約国に、条約第4条(a)(b)の留保の範囲の縮小と望ましくは撤回を前提に、留保の維持の必要性を検討することを奨励する。委員会は、表現の自由の権利の行使は、特別な義務と責任、特に人種差別的な意見を流布しないという拘束を伴うことを想起し、締約国に、条項の非自動執行性をかんがみて、第4条は義務的性質を有しているとした委員会の一般的勧告7(1985年)と15(1993年)を考慮するよう再び要請する。委員会は締約国に以下を勧告する:

(a)第4条のもとでの差別禁止の規定を完全実施するために法律の欠如を矯正すること、

(b)関連する憲法、民法および刑法の規定が、憎悪に満ちた人種主義的発現を対処するさらなる手段を介して、とりわけ関係者を調査して処罰する取り組みを強化することにより、効果的に実施されるように保障すること、そして

(c)人種主義的意見の流布に対する敏感さと意識を高めるキャンペーンを強化し、インターネット上での憎悪発言と人種主義的宣伝など人種差別が動機とされる違法行為を防ぐこと。

14.委員会は、締約国が人権教育を公務員に提供するためにとっている諸措置に留意しつつ、公務員による差別的発言が続いていることへの前回の総括所見(2001年)の懸念を繰り返し、これに関する当局の行政的あるいは法的措置が条約第4条(c)に違反して不在であることを遺憾に思う。さらに、発言を処罰できる名誉毀損、侮辱および脅迫に関する現行の法律は人種差別を特定しておらず、個人に対する損害の場合にのみ適用されることを懸念する(第4条c、6条)。

委員会は、締約国に国家または地方公務員による人種差別を認容または扇動するあらゆる発言を強く非難して反対するよう求める勧告と、政治家や公務員の人権意識を促進する努力を強化するよう求める勧告を繰り返す。また、締約国が人種主義的および排外主義的な発言を直接禁止する法律を制定し、資格のある国内裁判所を通して人種差別に対する効果的保護と救済のアクセスを保障するよう緊急性をもって勧告する。委員会はまた、締約国が将来に向けてそのような事件を防止し、すべての公務員、法執行職員、行政官ならびに一般住民に対して、特に人種差別に関することを含み関連する人権教育を提供するために必要な措置をとるよう勧告する。

15.家庭裁判所の調停委員には公的な決定を行う権限がないことに留意し、委員会は、資格を有する非日本国籍者が紛争処理において調停委員として参加できないという事実に懸念を表明する。また、公的生活での非日本国籍者の参加に関してデータが提供されていないことに留意する(第5条)。

委員会は、締約国が、調停委員の候補に推薦された資格のある非日本国籍者が家庭裁判所で仕事ができるよう見解を見直すことを勧告する。また、公的生活における非日本国籍者の参加の権利に関する情報を次回報告書にて提供するよう勧告する。

16.帰化申請者も含め、締約国における外国人居住者の数の増加を関心をもって留意しつつ、委員会は、前回勧告で表明した、個人の名前は文化的および民族的アイデンティテイの基本的側面であり尊重されなければならないという意見を繰り返す。この点において、委員会は、帰化のために、申請者が自由な選択の行為というよりも差別のおそれから名前を変えることが続いていることに懸念を表明する。

委員会は、締約国が、帰化をしようとする非日本国籍者のアイデンテイティが尊重される方法を作り、公務員、申請書式および帰化手続きに関する説明書に、申請者が不利益や差別を危惧して日本名と日本の漢宇を用いるように駆り立てる言葉を使うことをやめるよう勧告する。

17.改正「配偶者からの暴力の防止および被害者の保護に関する法律」(2007年)が国籍にかかわらず被害者に保護を提供し、地方自治体の役割を強化していることに留意しながら、委員会は家庭内および性暴力の女性被害者が直面する苦情申し立てのメカニズムや保護サービスヘのアクセスに対する障害を懸念をもって留意する。出入国管理法(2009年)の変更が、家庭内暴力を受けている外国人女性にとって困難をもたらすことを特に懸念をもって留意する。また、女性に対する暴力の事件に関する情報およびデータが欠如していることは遺憾である(第5条)。

委員会は、人種差別のジェンダーに関連する側面に関する一般的勧告25に照らして、締約国が特に社会的に弱い立場にいる集団の女性や子どもに関して二重差別の現象に対応するために必要なあらゆる措置をとることを勧告する。また、締約国が暴力被害を含むジェンダーに関連する人種差別を防止する措置に関するデータを収集し、研究を行うことという前回の勧告(2001年)を繰り返す。

18.締約国の戸籍制度に関する立場を認め、個人情報保護のために行われた法律の改正(2008年)に留意しつつも、委員会は同制度の諸問題と、主に部落民のプライバシーの侵害が続いていることへの懸念を再び表明する。

委員会は、特に雇用、結婚および居住の分野における差別的目的のための戸籍制度の利用を、罰則措置をもって禁止する厳しい法律を制定し、個人のプライバシーを効果的に保護するよう勧告する。

19.締約国が部落民に対する差別を社会的問題として認めていること、そして同和対策事業特別措置法のもとでの成果に関心をもって留意しつつも、委員会は、2002年の終了時に締約国と部落組織の間で、人種差別撤廃条約の完全実施と人権擁護に関する法律および人権教育の促進に関する法律の制定に関して合意された条件が、現在のところ実現されていないことに懸念する。委員会は、部落差別事件を取り扱うよう特定的に命じられた公的機関がないことを遺憾に思い、部落民やその政策を扱ったり言及するときに、締約国が使う統一した概念が不在していることに留意する。さらに、委員会は、部落民とその他の人びとの間の社会経済的格差が、たとえば住宅環境や教育において、一部部落民にとっては狭まったにもかかわらず、雇用や結婚差別、住宅や土地価格など一般的な生活の分野に依然としてそれらが続いていることに懸念をもって留意する。さらに、部落民の状況における進歩を測る指標の不在を遺憾に思う(第2条、5条)。

委員会は締約国に以下を勧告する:
(a)部落問題を扱う任務をもつ特定の政府機関あるいは委員会を任命すること、

(b)特別措置法終了時に行った確約を実現すること、

(c)明確で統一した部落民の定義を採用するために、適切な人びとと協議をすること、

(d)一般社会、とりわけ部落地域を取り囲む地域の一般住民を巻きこんだ人権教育と意識高揚の取り組みを行いながら、部落の生活状況改善のためのプログラムを補完すること、

(e)上記楷置の状況および進行を表わす統計的指標を提供すること、そして

(f)特別措置は受益集団とその他との間の平等が持続可能な形で達成されたときに終了するものであるとした勧告を含む特別措置に関する一般的勧告32(2009年)を考慮に入れること。

20.委員会は、アイヌ民族が先住民族として認識されたことを歓迎し、象徴的な公共施設の設置に関する作業部会や北海道外のアイヌのおかれた状況についての調査を行うための作業部会など、締約国のなした確約を反映する諸施策を関心とともに留意するが、その一方で、次の点に懸念を表明する。

(a)有識者懇談会や各種の協議体におけるアイヌの人びとの参画が不充分なこと、

(b)アイヌの人びとの権利の伸長ならびに北海道におけるその社会的地位の改善についての、いかなる全国調査もなされていないこと、

(c)先住民族の権利に関する国連宣言の実施に向けて、これまで限られた進展しか見られないこと(第2条、5条)。

委員会は、アイヌ民族の代表との協議の結果を、アイヌの権利に明確に焦点を当てた行動計画を含む政策やプログラムに結実させるべく、アイヌ民族の代表とともにさらに歩みを進めるよう、また、そうした協議へのアイヌ民族の代表者の参加を増大させるよう勧告する。委員会はまた、締約国が、アイヌ民族の代表との協議のもと、先住民族の権利に関する国連宣言など国際的な公約を吟味し実施することを目的とする3つ目の作業部会の設置を検討するよう勧告する。委員会は締約国に対し、北海道のアイヌ民族の生活水準に関する全国調査を実施するよう要請するとともに、締約国が委員会の一般的勧告23(1997年)を考慮するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、独立国の先住民・種族民に関するILO第169号条約の批准を検討するよう勧告する。

21.ユネスコが数多くの琉球の言語(2009年)、そして沖縄の人びとの独自の民族性、歴史、文化、伝統を認知したことを強調しつつ、委員会は、沖縄の独自性について当然払うべき認識に関する締約国の態度を遺憾に思うとともに、沖縄の人びとが被っている根強い差別に懸念を表明する。委員会はさらに、沖縄への軍事基地の不釣り合いな集中が、住民の経済的・社会的・文化的な権利の享受に否定的な影響を与えているという、現代的形態の人種主義に関する特別報告者の分析をここで繰り返す(第2条、5条)。

委員会は締約国に対し、沖縄の人びとの被っている差別を監視し、彼らの権利を推進し適切な保護措置・保護攻策を確立することを日的に、沖縄の人びとの代表と幅広い協議を行うよう奨励する。

22.委員会は、2言語を話す相談員や7言語で書かれた入学手引など、マイノリティ集団の教育を促進すべく締約国によって払われてきた努力を、感謝とともに留意する。しかし、委員会は、教育制度の中で人種主義を克服するための具体的なプログラムの実施についての情報が欠けていることを遺憾に思う。のみならず、委員会は、子どもの教育に差別的な効果をもたらす以下のような行為に懸念を表明する。

(a)アイヌの子ども、もしくは他の民族集団の子どもが、自らの言語を用いた、または自らの言語についての、指導を受ける機会が十分にないこと、

(b)締約国においては、外国人の子どもには義務教育の原則が、本条約第5条、子どもの権利条約第28条、社会権規約第13条(2)-一目本はこれらすべての締約国であるー-に適合する形で全面的に適用されていないという事実、

(c)学校の認可、同等の教育課程、上級学校への入学にまつわる障害、

(d)外国人のための学校や、締約国に居住する韓国・朝鮮や中国出身者の子孫のための学校が、公的扶助、助成金、税の免除にかかわって、差別的な取り扱いを受けていること、そして、

(e)締約国において現在、公立・私立の高校、高等専門学校、高校に匹敵する教育課程を持つさまざまな教育機関を対象にした、高校教育無償化の法改正の提案がなされているところ、そこから朝鮮学校を排除すべきとの提案をしている何人かの政治家の態度(第2条、5条)。

委員会は、市民でない人びとへの差別に関する一般的勧告30(2004年)に照らし、締約国に対し、教育機会の提供に差別がないようにすること、そして締約国の領土内に居住する子どもが就学および義務教育達成にさいして障害に直面することのないようにするよう勧告する。この点にかかわって、委員会はさらに、締約国が、外国人のための多様な学校制度や、国の公立学校制度の外に設置された代替的な体制の選択に関する調査研究を行うよう勧告する。委員会は締約国に対し、マイノリティ集団が自らの言語を用いた、もしくは自らの言語に関する、指導を受ける充分な機会の提供を検討するよう奨励する。そして、教育における差別を禁止するユネスコ条約への加入を検討するよう促す。

23.委員会は、難民の地位決定の過程における進展を評価をもって留意しつつも、一部の報告によると、特定の国からの難民申請者に対して異なる、優先的な基準が適用され、国際的保護を必要とする異なる出身の難民申請者が強制的に危険な状況に送還されたという懸念を繰り返す。また、委員会は、難民申請に関する情報への適切なアクセスや手続の理解の欠如、言語やコミュニケーション問題および一般の人による難民問題への理解の欠如を含む文化的かい離など、難民自身が認識している問題に関して懸念を表明する(第2条、5条)。

委員会は、締約国が、すべての難民に標準化された難民申請手続と、公的サービスにおける平等な資格を保障するために必要な措置をとることを求める勧告を繰り返す。この関係において、すべての難民申請者がとりわけ充分な生活水準や医療への権利を享有できるよう保障することを勧告する。委員会はまた、締約国が第5条(b)にしたがい、誰であれ、その生命や健康が危険にさらされると思える相当な根拠がある国に強制的に送還されないよう保障することを促す。委員会は、この点において締約国が国連難民高等弁務官に協力を求めるよう勧告する。

24.委員会は、日本国籍者と非日本国籍者との関係における問題の事例、特に条約第5条(f)に反する、レストラン、公衆浴場、店やホテルなど一般の使用に向けた場所やサービスにアクセスする権利が人種や国籍に基づいて拒否される事例に懸念を表明する(第2条、5条)。

委員会は、締約国が住民全体に向けた教育的活動によってこの一般化された態度に対応し、一般に開放されている場所への入場拒否を違法とする国内法を採択するよう勧告する。

25.委員会は、条約のもとで保護されている諸集団の日本社会に対する寄与について正確なメッセージを伝えるために教科書を改訂するという点について、締約国が不充分な措置しかとってきていないことを懸念する(第5条)。

委員会は、締約国が、マイノリティの文化や歴史をもっと反映するように既存の教科書の改訂を図るよう、また、締約国がマイノリティの歴史や文化についての書籍その他の出版物、その言語によるものも含む、を奨励するよう勧告する。とりわけ、委員会は締約国に対し、義務教育のなかでアイヌ語および琉球語を用いた教育、そして両言語についての教育を支援するよう奨励する。

26.人権相談窓ロの設置や人権教育や促進など締約国によってとられた人種的偏見をなくすための措置に留意しながら、委員会はメディアに関して、そしてテレビやラジオ番組への人権の取リ込みに関して具体的な情報が欠如していることに懸念をもち続ける(第7条)。

委員会は締約国が、人種差別撤廃を目的として、寛容および尊重の教育目的を取り入れながら、日本国籍者および非日本国籍者双方の社会的に弱い立場にある集団に関する問題が、適切にメディアで表現されることを保障する公教育および啓発キャンペーンを強化するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、人権教育の向上におけるメディアの役割に特に注意を払い、メディアや報道における人種差別につながる人種的偏見に対する措置を強化することを勧告する。加えて、ジヤーナリストやメディア部門で働く人びとに人種差別に関する意識を向上させるための教育および研修を勧告する。

27.人権の不可分性を念頭におきつつ、委員会は、締約国がすべての移住労働者及びその家族の権利保護に関する条約(1990年)、雇用と職業における差別に関するILO第111号条約(1958年)、無国籍者の地位に関する1954年条約、無国籍の削減に関する1961年条約、集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約(1948年)など、特に人種差別の問題に直接関連する規定をもつ条約をはじめとして、締約国がまだ批准をしていない国際人権諸条約の批准を検討するよう奨励する。

28.ダーバンレビュー会議へのフォローアップに関する委員会の一般的勧告33(2009年)を踏まえて、委員会は締約国に、国内法秩序において条約を履行する際に、2009年4月にジュネーブで開催されたダーバンレビュー会議の成果文書を考慮に入れ、2001年9月に人種主義、人種差別、外国人嫌悪およびその他の関連する不寛容に反対する世界会議で採択されたダーバン宣言と行動計画を実施するよう勧告する。委員会は締約国に、ダーバン宣言と行動計画を国内レベルで実施するためにとった行動計画およびその他の措置に関する具体的情報を、次の定期報告書に含めるよう要請する。

29.委員会は締約国に、個人通報を受理して検討する権限を委員会に認めている条約第14条に規定された任意の宣言を行うことを検討するよう奨励する。

30.締約国の立場を留意しつつ、委員会は、締約国が、1992年1月15日に第14回締約国会議において採択され、1992年12月16日付け総会決議47/111によって承認された、条約第8条6項の修正を批准することを勧告する。これに関連して、委員会は、総会が条約締約国に対して修正に関する国内での批准手続きを早めることと修正への合意を書面にて速やかに事務局長に通知することを強く求めた、2006年12月19目付け総会決議61/148および2008年12月24日付け総会決議62/243を想起する。

31.委員会は、締約国の報告書が提出と同時期に一般の人びとに対して直ちに利用可能で入手可能なものにし、これら報告書に関する委員会の見解が、同じように公用語および必要に応じてその他の共通使用言語にて公表されるよう勧告する。

32.締約国がそのコア文書を2000年に提出したことを留意しつつ、委員会は、締約国が人権諸条約に基づく報告書作成に関する標準ガイドライン、特に2006年6月に開催された人権条約諸機関の第5回委員会間会議にて採択された共通コア文書に関するガイドライン(HRI/MC/2006/3)にしたがって最新版を提出するよう奨励する。

33.条約第9条1項とその改正手続き規則の規則65にしたがって、委員会は、締約国に、本総括所見の採択から1年以内に、上記12、20、21に含まれている勧告のフォローアップに関する情報を提供するよう要請する。

34.委員会はまた、勧告19、22、24の重要性について締約国が注意を払うよう望み、締約国がこれら勧告を実施するためにとった具体的措置に関して、次回報告書に詳細な情報を提供するよう要請する。

35.委員会は、締約国が、その第7、8、9回定期報告書を第71会期において委員会が採択した人種差別撤廃委員会向け文書のためのガイドライン(CERD/C/2007/1)を考慮に入れ、2013年1月14日までに提出し、本総括所見で提起されたすべての点に対応することを勧告する。

(以上) 


翻訳協力:
アジア・太平洋人権情報センター
移住労働者と連帯する全国ネットワーク
北海道アイヌ協会
反差別国際運動日本委員会(IMADR-JC)

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