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第5話 むしろ旗がゆく(2)

 第5回 むしろ旗がゆく(2)


御料牧場のサラブレッド 馬上の男は御料牧場の場長の山田三郎だった。それに続いて松林の中からは成田署の三人の私服警官が現われた。
 場長の山田が馬上から食事中の者を見下しながら叫んだ。
「みなさん、この土地は御料牧場のものです。ここは牧草地であり、放牧地です。直ちに止めて……」とまでいった時だった。

 一人の男がサーツと円座の中から躍り出した。かと見ると風を切って馬上の山田場長の下に走り寄って、上を見上げて大声で怒鳴った。
「何をぬかすんだっ。御料牧場もへったくれもねえ、遊んでいる土地あみんなひっくり返せっ。食い物を作るのが当たりめえじゃねえかよ。おれら兵隊からけえったって食う物がねえんだから……。てめえらのように馬に乗ってるのと違うんだ。さっさとけえれーっ」
 一息に吠えつくようにして叫ぶ彼の言葉に、山田場長は一言半句の返答もできなかった。
「けえれよーっ、さっさとけえれってばけえれよーっ」
 彼はなおも噛みつくように叫んで止まなかった。彼は辺田部落の隣り部落で横堀に住む岩沢輝二という三〇歳になる農家の次男坊だった。彼も戦争で召集され、最近、外地から帰ったばかりだった。

 馬上の山田場長の傍で、私服がじろじろと岩沢を見つめた、そして、ポケットから手帳を出して何か書きつけていた。
 すると、木川武治が山田場長の前に進み山た。彼は丁重に帽子を脱いで一礼すると、切口上でいった。
「場長さん。われわれは暴徒ではありませんぞっ。すでに県庁から宮内庁へと行って話をつけてあります。そのうちに御料地解放の指令もくると思います。これはま近く出るマッカーサーの農地改革によって行われるものであります」
 昼食中の一団は一斉に立ち上がり、馬上の山田場長につめ寄り、彼を包囲した。
 そして「けえれーっ、けえれーっ」と、一斉に叫び続けた。白馬が驚いて後足で立ち上がり、前足で宙をあがいたので山田場長は手綱を握って体を支え水平状態を保った。被っていた中折帽子が、草の上に落ちて転った。
 追い立てられるようにして、松林の中に消えていく場長と、後に従う私服の後姿を眺めて彼等は、ゲラゲラと笑った。

 午後からも平然と、開墾作業は開始された。振り上げる鳶鍬の刃先が、陽の光をうけてキラリと反射した。土中に拓り込む鍬の音が鈍く土に響いて、どこか遠くで打つ大太鼓のように聞こえてくる。土中から土竜(もぐら)や野鼠が飛び出してくると、反転される黒土の上を礫のように走ってまた土の中に潜り込んで行く。
 野鼠を三匹も捕えた男がいた。彼は夜のおかずにするのだといって、丁寧に藤蔓で縛って、松の枝に吊るした。足をくくられた野鼠は宙にぶら下ったまま、飛び回った。
 まだ冬眠から覚めきらぬか、「地もぐり」という赤い斑点のある蛇が、土の中にとぐろを巻いてうずくまっているのを掘り返すこともあった。この蛇は蝮のように毒を持つ蛇だった。その首の根っこを巧みに掴むと、白い蛇腹を見せて手首にくるくると幾重にも捲きついた。そうすれば噛みつかれる恐れはなかった。鍬の刃先を逆立てて首根っこの皮を切り、そこに人さし指を入れた。かと見るとぴいーっという絹を割くような音がして、蛇は一気に皮を剥がされてしまつた。中身と皮が別々になって、赤むくれになった蛇は、男の指先でめらめらと宙に揺れて血を滴らした。

「おーい。その生肝を俺にくれよ」
 男は指を蛇の腹に突っ込むと、赤黒い小さな肉塊を探り出して、乞う者の掌に置いた。
 蛇の生肝は掌の上で、異様にぴくぴくと鼓動を打って、あたかも一個の生きもののように見えた。それが蛇の心臓である。
 掌から一気に口の中にほうり込むと、ごくりと呑みこんでしまつた。彼の喉仏が大きく上下して、肝は胃に落ちていった。彼は胸を撫で下していった。
「俺ぁ若いときから心臓が弱いんでね、これを呑むとてきめんによく効くんだよ」
 見ると彼はいくらか顔色か悪く、皮膚の色が褪せて見えた。鍬を持つ手を休めて、傍でじーっと彼の行動を見ていた中年の女が、「本当に効くのかね」といった。
「効くも効かねもねえ、てきめんだよ、まずあすの朝がくりゃ、これがぴーんとくっだからよ。アッハッハ……」
 といって彼は股間に手を当てた。そして拳骨を作った右腕を、二、三回肘から折り曲げて上下して見せた。あまりに大声で笑うので向こう端の人までが、鍬を振り下す手を止めて一斉に視線をこちらに向けた。
 女は、はにかみながら眼を伏せると、もじもじして、鍬を握り直してからいった。
「ほんとうかい、そんなこと――。冗談はとにかくよ、家にも心臓の悪いのが一人いて、何せ食料不足で栄養も充分とらせることができねえし、――それに医者にかけたってなかなか快くなんねえしよ。何か特効薬でもあればいいと思うつるんだよ」
「そんならこれが効くんだ、蝮の肝が、俺ぁ若い時からいろんな薬を呑んだが駄目で、すっぽんの生血を飲んだりいろんなことをしたもんだよ。しかしよ蝮の生肝がてきめんだよ」
 再び鍬が一斉に宙に舞い土がると、土を打つ鈍い音がぼくぽくと響き出した。

次回、「入植生活(1)」へ続く

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