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第68回 豪邸の中で(2)

 第六十八話 豪邸の中で(2)


出稼ぎ労働者の生活 二人の話題は天神峯から、三里塚第二公園際の代替地に越してきて、この間死んだ橋木伸夫のことに移った。わずか四反歩の代替地と家屋で、相続税が四八〇万円もきたこと、そしてそれを払うのに半分は工面して現金、あとの半分は一〇年年賦できまったこと、それにゆき子の住む三里塚周辺の代替地が、今度新しく成田市の市街化区域に線引され、宅地なみ課税の対象になったことなどが、主な話題の中心となった。

 しかし、どうみても木の根の説子の生活水準と比べると、内容はともかくとして、代替地のゆき子の生活の方が、はるかに優っているように思われてならなかった。ゆき子のいうように土地を売らなかった武治の方が、土地を売った石川よりも、人間的にははるかに勝れた生き方死に方だということは、どうも説子にはピンとこなかった。

 その時、玄関のドアの開く音がして、ゆき子は夫の辰夫の帰りを知った。ゆき子に続いて説子も玄関に出ていくと、辰夫はこちらを背にし、玄関の上がり框に腰かけ、地下足袋を脱いでいるところだった。その後姿を見て、これがこの家の主人かと思うほど、説子にはうらぶられた不釣合いなものを見せつけられて、思わず眼をそらした。それを直視するのが、何かゆき子に悪いような気がしたからである。
 説子が挨拶すると辰夫は、「ああ、しばらく……」と照れくさそうにいった。そして俯いたまま、顔を上げようともせず、そそくさと部屋の障子を開けて隠れてしまった。
 それを見たゆき子は説子に悪いと思ってか、「うちの旦那も無口だから……」といった。どう見ても辰夫の素振りは、出稼ぎ労働者に身を落とした今の自分を、説子に見られたくないという恥じらいからきているもののようだった。説子も辰夫のことについては、一言も触れようとはしなかった。

 うらぷられた辰夫の姿を見ながら、説子は暇乞いをしなければならなかった。
 帰る道すがら、説子は考えた。結局は武治の言動は正しかったのか。今後も亡き夫に従って反対同盟と死活をともにすべきか。それにしても木の根の生活は苦しく辛い。これ以上、空港反対で木の根の生活を強いられるのはもう懲りごりだ。いっそのこと土地を全部売っぱらって、どこかへ行きたい。父ちゃんはいい時に死んだのだ。
 しかし、ゆき子は生き証人だ。その話を聞けば土地を売った条件派の末路というものは、そうなのかと身につまされて思わされる節もあった。代替地に行った条件派の人々の生活に心密かに魅了されていた説子も、ゆき子の話を聞いては心ならずの動揺を覚えないではおれなかった。

 その夜、直次は母の説子に訊いた。
「母ちゃん今日どこへ行った?」
 一瞬、説子はためらった。
「うむ、三里塚の石川さんの母ちゃんにお茶に呼ばれて、行ってきたのだよ」
「父ちゃんの生きてるうちは、一度だって条件派のところへ行ったこともねえのに……」
 説子は何か痛いところを突かれたような気持で、直次の顔を見た。しばらく親子の間に沈黙が統いた。
「母ちゃんもよ、話し相手もなくなくなっちゃたし、今までの木根の仲間だし、呼ばれたから行ったまでさ……」
「今さら父ちゃんを棄ててった条件派の家へ行くなんて、格好よくねえよ」
「行ったって、母ちゃんは別に……」
「別にって、母ちゃん、同盟に対しても――」
「知れたって別に条件派に鞍替えした訳じゃあるまいしよ……」
「だから母ちゃんはしょうがねえだよ。けじめがねえんだから……」

「でも母ちゃんはよ、石川さんの家さ行った効はあるよ、ゆき子さんから、木の根では聞くことのできない話をいっぱい聞かされたもの……」
「どんな話聞かされたんだ、母ちゃん」
「うん。どんな話ってやっぱりよ、学生がいつもいってる条件派の人らの話は本当だったよ。直次!」
「そんなこと、行かなくてもわかるじゃねえかよ」
 今まで二人の話を黙って聴きながら編物をしていた静子が、その手を止めて口を挾んだ。
「でも直次さん、お母さんはね、行って初めて、自信がついたんだわよ」
「正夫さんのとこのご殿みたいな家を見た時は、たまげて門から入れなかったよ、母ちゃんは……」
「見かけだおしだよ。中身は穴っけつだ」と、直次は吐き棄てるようにして、いった。
「母ちゃんがいる時、ちょうど帰ってきたけどよ。あのご殿から辰夫さんは地下足袋履いて出稼きだよ」
「ざまあ見ろっていってやればいい」
「まさか直次、ざまあ見ろとはいえなかったけどよ。そんなもんかとつくづく考えさせられたよ」

「やはり、殻に閉じこもらないことだわね、直次さん」と、静子は直次の顔を見た。
「殻に閉じこもらない……」
「そうよ」
「往々にして実カ派は自分の殻に閉じこもる癖があるのよ。だから孤立化していく……」
「敷地内の農民が孤立していくことは、おっかねえよな。そのために俺らは鉄塔を建てたんだ」
「木の根にいるとそれがよくわかるわよ」
「古込のたまさんの脱落だって、とどのつまりは一人取り残されたという感じだよな、静子!」
「これは今後、反対同盟の大きな課題だわ」
「それにしても農民はばらばらだな。団結、団結っていったって……」
「それは無理よ。現在の支配構造の中では――農民も労働者もばらばらに解体されているからよ」
「これで第二期工区内の農民が敷地外の農民と、本当に団結できるかが、問題だど――」

 その時、説子は何を思ったか、ポツリといった。
「父ちゃんが生きてた頃からみると、木の根も随分変わっちゃったもんな」
「本当に――。お父さんが生き返ってきたとしたら、びっくりするでしょうね、お母さん」
 と、静子がいうと説子の眼には何か白く光るものが見えた。説子は懐から、そっとハンカチを出して拭いた。それを見て直次も額に掌を当て、頭を垂れ瞑いに沈んだ。

次回、「豪邸の中で(3)」へ続く


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