元ネタが武田邦彦さんというのが気になる人もいるでしょうが、本来、こういうわかりやすい話を左派がしないといけないんじゃなイカと思います。なんかもう、左派の話って、ひたすら怖がらせるか、同情をひくか、小難しいか・・以下略
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時事寸評 電力はなぜ足りたのか?シリーズ1 (C)武田邦彦(中部大学)
http://takedanet.com/2012/09/post_e78a.html
夏に向かって大飯原発の再開問題が議論されているときに、野田首相は支離滅裂なことを言っていたが、仙谷元官房長官は「原発を止めるなど集団自殺だ」といい、米倉経団連会長は「電力需要が逼迫する夏に原発を止めると日本経済は破綻する」と言った。
日本国内が海外の論調と全く違う方向に進み、日本の海外駐在員が日本に正確な情報を伝えないというのも問題であり、かつ電力需給の見通しを出した専門家が御用学者だったこともあるが、すでに2011年3月の事故直後に「日本の電力は原発を止めても不足しない」との計算がIEA(国際エネルギー機関)から出ているのだ。そこには具体的な数値も入っているが、日本の場合は数値はなく「大丈夫」か「足りない」だけであとで責任を追及できないようになっている。
猛暑となった今年の夏。しかも電力生産の40%を原発に頼っていた関西電力。それがなんなくこの夏を乗り切った理由は簡単だ。電力の消費率としてテレビに出ていた数値は、間違っていたのである。電力は、
1)設備容量(おおざっぱな比率を示すのに、これを100とする)
2)稼働可能設備(約80)
3)本日の稼働予定設備(60)
4)本日の消費電力(50)
の4つが問題だが、「消費率」としてテレビに出ていたのは、4)÷1)ではなく、4)÷3)だから、電力会社がその気(設備を最大限に動かす)という気になれば、設備容量はざっと言って2倍ある。
このことは専門家なら誰でも知っているが、テレビでは説明していなかった。電力の消費量がいつも80%から90%になっているのは、その日に電力会社が作ろうと決めた数字に対して消費する電力を指しているからである。
本当に国民が知りたかったのは、電力が全力を挙げて生産したときと、国民が全力を挙げて節電したときにどのようになるかであり、それを間違った(ふりをして原発再稼働を行った)政府と専門家の責任は重い。
原発の再開に賛成する人もいても良いが、「ウソをついて原発を再開する」のは民主主義でもなく、人格がある人とも思えない。まさに「売国無罪」(宮脇先生による)の一つである。「国民はバカだ。だから本当のことは言わなくて良い」という「偉い人」の戦略が見える。
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ただ、電力は国民の活動の源泉であるから、節約するのは日本の将来を暗くする。節約するのだったら、贅沢品など将来の日本に影響の少ない方からやらなければならず、節電のようにもっとも節約していけない電気を節約するというのは実にばかげたことなのである。
子供のことを考えれば、贅沢品を節約しようという気になるはずであり、決して活動のもとになる電気を節約するのではなく、むしろアメリカ人一人あたりの消費電力の2分の1という状態をアメリカを抜くぐらいにしないと子供は悲惨な生活を強いられるだろう。
そろそろ大人は目の前のお金ではなく、50年後の日本を考えて行動するときのように思う。
(平成24年9月6日)
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電力はなぜ足りたのか?シリーズ2 関電の能力
http://takedanet.com/2012/09/post_b6f3.html
この夏の電力危機を乗り切った理由として、関電は次のように説明しています。(単位はすべて万キロワット)
・大飯原発再開前の発電計画 2542
・大飯原発再開後の発電実績 2988
・予想された8月の最大消費 2982
・関西地区の最大消費(8月) 2682
【関電の説明】大飯原発を再開しなければ関電が供給できる電力は2542万キロワットでしたが、大飯原発を再開できたので2988万キロワットを生産できました。一方、これまでの実績から猛暑の8月に予想された消費量は2982万キロワットだったのに対して、皆さんが協力してくれて2682万キロワットに留まったので、2988の生産能力に対して、2682を消費したので安定した電力供給ができました。
この説明を聞いて、多くの人が納得するでしょう。それは、「ああ、そうか。原発を稼働させて、自分たちも節電したから、何とか乗り切ったのだな」と思うからです。原発の再稼働も正しく、努力も報われたと感じるのですから、自己満足も得られ、とてもいい気分になるからです。政府や大阪市への信頼感も出るでしょう。
でもこれは「優れた頭脳の働きをズルに使う」という模範的(詐欺的)な回答です。これは学校教育の失敗が原因です。つまり、もっとも大切なことを回答せず、形式的な回答をすることによって、本当に必要なことを隠すという高級な手口で、これで学校では100点がもらえるところに問題があります。
この回答のどこが「詐欺的」であるかというと、「なぜ、大飯原発を再開しなければならなかったのか?」という疑問に何も答えていないからです。真に原発の危険性を心配している人が知りたいのは、このような数値ではなく、次の数字なのです。
関西電力が製造・調達ができる最大電力量は以下の8つを合計したものです。
1)8月に稼働した火力発電所の最大発電能力
2)稼働しなかったが設備としては存在する火力の最大発電量
3)火力・原子力以外の発電量の内、8月に稼働したもの(水力など)
4)他電力から融通を受けることができる最大電力量
5)企業の自家発電の稼働を要請することによって補填する最大電力量
6)個人の太陽光発電など分散電源
7)原発の電力量
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もし関電が「良心的な企業」であったとします。多くの人は電力会社は隠すのが当然だと思っていますが、独占的販売権を持っているのですから、そのかわり「正直である」というのは必要なことです。
関電「皆さんができれば原発を再稼働させたくないとお考えのことは良く知っています。そこで原発が再稼働しない状態で、関電社員一丸となり、また関係会社にもご協力を得て、「原発を再稼働しない場合の最大調達量」を計算しました。」
関電「その結果、上記の1」から6)を合計すると、3500万キロワットになります。猛暑の時の最大消費量は3000万キロワットになりますから、この夏は原発無しに乗り切ることができますし、皆様も特別な節電は必要ありません。でも調達できると考えられる3500万キロワットの内、他の電力会社からの融通、自家発のご協力などは不確定です。また発電所のトラブルも考えられます。その場合はギリギリになりますから、その時は節電をお願いします。」
つまり、関電の説明は「原発を動かすために、他の電気を得る方法をサボれば」という仮定が入っていたのです。それに計画より増加した400万キロワットのなかで実は200万キロワットは原発以外ですから、ここもトリックが入っています。
大飯原発の再開問題というのは、「原発の再稼働に反対する人がいなければ、再開すればいつもの年のように過ぎる」のは当たり前です。でも「原発の再稼働を心配している人がいるから、検討する」というものだったのですが、実は「原発を動かさないでも大丈夫か?」ということを「誰も考えなかった」のです。
トリックというのは恐ろしいものです.特に頭の良い人が集団でズルをしようとするとこのようになるという典型的なことですが、関電の幹部の方にも良心的で国民のことを考えている方が一人ぐらいはおられるでしょうから、ぜひ、1)から6)を示してください。
また、これで終わりではなく、来年がありますから、次の2つを追加しなければなりません。
1)大急ぎで火力発電所を建設する敷地も持っている場合の発電量と建設期間(突貫でやれば、3年.発電量は1000万キロワット程度と推定される)
2)自家発電、他電力の融通枠を緊急に増やすことによって調整できる電力枠(おそらく400万キロワットぐらい)
これで原発無しで4000万キロワットレベルに達しますから、関電管内の電力不足は3年後には解消すると考えられます。またこの時の電気代は現在より少し安くなると考えられます。このことについてはすでに整理しましたが、また機会を見て整理します。
(平成24年9月8日)
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電力はなぜ足りたのか?シリーズ3 関電が向いている方向
http://takedanet.com/2012/09/post_a17c.html
関西が今年の猛暑を乗り切ったのは、関電が原発再稼働無しに供給できると言っていた約2500万キロワット(後同じ)に対して、原発再開によって3000になった。これに対して、最大消費量は約2700だったからだと関電は説明した。
でも、大飯原発は2基で230だから、3000-(2500+230)=270万キロワットは原発ではない。つまり、「原発は必要か」を論じていた5月頃、関電が示した2500は「原発を動かさなければ」という意味ではウソだったのだ。
さらに、このブログにも書いたように、関電が動かそうと計画している量が2500とか3000であり、決して最大能力ではない。このことについて読者の方からのご協力で、次のことが新たにわかった。
まず、関電が原発依存を高める中で計画を中断していた和歌山火力(370万キロ)の再開の準備をしていなかったこと、2006年に廃止していた高砂火力(90万キロ)は動かすことができた。このほかに多奈川第二発電所(2005年休止)、宮津エネルギー研究所(2004年休止)、姫路第二(330万キロで半分だけ運転)などが休止している発電所だ。
昨年、関電が原発の再開を心配している関西の人に配慮して、これらの発電所を整備して稼働すれば、和歌山火力を除いて 70+165+90+347=672万キロワットからの電気が生産できた.そうすると、原発再開をしないで調達できる電気量は、2500+672=3172万キロワットだから、実際の消費量2700を遙かに超えるし、予想された最大消費量の3000もクリアーしていたのだった。
原発を動かすために関電が使った表は、発電所一覧に「停止中の発電機なし」と書いてあることだ。現実には停止中が多いのだが、これに対して関電は「計画的に停止しているものは、停止中の発電機に入りません」という説明をしている。
こんな日本語はない。このブログでも解説したように、電力会社の「供給電力」というのは電力会社が「供給しよう」と思ったもので、「発電機の量」ではないからだ。こんなに甘えたことが許されるのは電力が独占だからに他ならない。
これに福島事故のあとすぐ計画すれば来年にでも稼働できる和歌山火力の370を足せば、関電は原発無しに3540万キロワットがあり、当面、まったく電力には心配が無いという恐ろしいことが分かる。またこの計算には自家発電、他電力からの融通の努力不足などが含まれていないから、それを足すとおおよそ4000万キロワットの出力を持っていると推定される。
つまり、自分のお金(火力など)を出したくないので、4000円持っているのに、3000円もないといい、他人のお金(原発)で済まそうということなのだ。
関電は関西の人からお金をいただいている.その人達は「原発を動かさずにすめば動かしたくない」と希望していた。関電がお客さんの方を向いていれば、3540万キロとか4000万キロという数字を示していただろうし、その方が関電は信用が高まる。
最近、ある講演会に行ったら、電力会社の方がおられたが、その方に対して司会者が「良く出てこられた」と言っていた。電力会社は堂々たる会社なのに、社会に出てこれないような惨めな団体になった。まるでアウトローの取り扱いだが、それでは先輩が泣くだろう。
この際、関電は「全力を挙げたら、原発をやらずにこのぐらいは出せます」という「身を切るような」数字を出してみたらどうだろうか。日本のほとんどの会社はそうしているのだから。
(平成24年9月10日)
(C)武田邦彦(中部大学) 引用はご自由にどうぞ
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<参考>
火電停止は電力余剰だった! 関電京都支店広報が明かす
http://www.kyoto-minpo.net/archives/2012/07/13/post_8889.php
「再稼働しなくても電気は足りる」と関電自身が認めていた
http://asumaken.blog41.fc2.com/blog-entry-5940.html