◆いきなり「二人デモ」に
まあ、もとから一人でもやる!という気持ちでしたし、別に二人になってもかまわない……はずなんですが、不意打ちをくらったのと、やっぱり二人と三人では全然違うわけで、ただでさえ初めての「独自デモ」に緊張しまくっていた私たちは、出だしから意気消沈してテンション下がってしまいました。呼びかけに賛同してもらったマイミクのSさんと顔を見合わせて「どーする?」って感じでしたけど、いまさら後には引けないわけで、「えい、もう覚悟決めて元気にやろうぜ!」と、予定よりも一本遅い電車で現地に向かったのでした。
◆デモ申請顛末記「申請は不要です」
実はここに来る2週間ほど前に、所轄である千葉県警山武署にデモ申請の件で電話しました。しかしだいたいですねー、百人にも満たない人数で旗持って歩くだけで、いちいち申請がいるのって、仮にも「民主国家」と呼ばれている国では日本くらいなわけで、そのこと自体が非常識なわけですよ。しかも今回は多くても数人なわけでしょ、まー三里塚の集会に参加する時も、会場まで旗持って歩いているだけで、機動隊から「無届デモ」扱いの嫌がらせを受けるし、不当弾圧を心配する人たちからもアドバイスもらったんで、一応は交渉するけどさー、ものすごくナンセンスだよなとか思いながら電話したわけです。
自分でデモ申請なんてもんをすること自体が初めての経験で、未経験なのに誰にも頼ったり相談できない中、自分一人で交渉するというのはちょっとしたプレッシャーで、少なからず緊張しながら電話しました。
電話がつながり交換の人に「デモ申請の担当をお願いします」と言ったら交通課に回されました。最初からデモ申請するとは言わず、電話口の担当者に「3人で旗をもって声出して歩きたいのだが、デモ申請って必要ですかぁ?」とすっとぼけて聞いてみました。てっきり「当然だろ!」とか言われると思ったら、「そんなことに許可なんていらないでしょ」と言われた。「たとえば学生さんが10人で道を歩くのに、いちいち許可をとりますか?」などと、ものすごく真っ当なことを言われた。普通そういうのは警察じゃなくてこっちが言うもんじゃないか(笑)。「まあ、許可とりたいんならとってもいいけど」とまで言われ、これじゃこっちのほうがよほど変な人あつかいです。
今から思えばここで担当者の名前を聞いて、さっさと電話を切ればよかったのですが、つい面食らってしまって、「本当に許可はいらないでいいんですね?」と念を押してしまいました。すると途端に相手が慎重になって、「まあ、交通課としてはそうですが……他の部署がどう言うかわからないんで、一応、公安条例の担当に電話回します」ということになってしまった。つか、最初からそっちに電話をつなげよという。
芝山町ではそんなにデモ申請が珍しいのでしょうか、誰も彼も対応に慣れていない様子です。新しく電話に出た人に、もう一度最初から事情を説明。こんな問い合わせを受けた前例はないということで、ちょっと困った様子でした。結局デモ申請は必要なのかと聞くと、「警察は申請を受け付ける窓口にすぎないので、判断は公安委員会がする。警察で勝手にそれがいいとか悪いとか決められない」と、またしてもすごく真っ当なことを言う。これでは警察に判断を求めたこっちのほうが、すごくおかしなことを言っていることになっちゃう。なんか都内のデモ申請でよく聞く話と互いに逆のことを言っているのがすごくおかしい。ともあれ、法律的には警視庁のやっているような対応がまったくの違法行為なのであって、山武署の見解が正しい。
ただ、これではらちがあかないので、山武署のほうから公安委員会に問い合わせるという話になりました。東京だったら所轄から問い合わせるのは本庁(警視庁)の警備公安警察なことが常であり、公安委員会なんぞ単なるお飾りの警察の言いなり、法律なんぞあって無きがごとしの状態なので、まさか山武署がそこまで法に則った正規の対応でくるとは思わず、一瞬、びっくりしました。そもそも警察のお飾りで、報告書にハンコを押すだけの存在にすぎない公安委員に、そんな実質的な判断なんてできるのかと思いましたが、一応返事を待つことにしました。
30分ほどしてからの連絡で、「公安委員会に問い合わせたが、今日中には返事ができないということだったので、もう少し待って欲しい」とのこと。やっぱりねというところ。他に主催団体などを聞かれるが、ただの個人有志であるから、申請が必要ならその時にでも団体名は考えると返事しました(「勝手連」と言ってもそのまた有志だから)。コースを詳しく聞かれ、芝山千代田駅から鈴木加代子さん宅までだと言うと、「ああ、大通りや空港沿いじゃないんですね」と、ちょっと拍子抜けした様子。ひょっとして舐められた?(ちっ)。
この時点では、警察がちゃんと法律の趣旨を守っている姿をあまり見たことがないので新鮮でしたが、どうせ次回までに県警の公安が口をだしてきて「申請をだせ」ということになるんだろうなと思ってました。ところが翌日の電話では、千葉県公安委員会より、「その程度のことであればデモ申請はいらない」との回答があったとのこと。おお、やったね。自宅から山武署まで片道で2時間半ほどかかるわけで、申請となると仕事を休んで平日に、しかも最低2回は行かなくてはいけません。権利であるデモをするのに、そんな苦労を強いられることがすんごく不当なわけですが、正直ほっとしたのも事実です。全国各地で草の根のちっこいデモをやろうかと思っている皆さん。最初っから申請なんて出す必要はありませんよ。まずは「いらないよね?」と問い合せてみましょう。
◆いよいよ芝山千代田からデモ出発
こうして来なかった人の分まで買ったおにぎりをやけ食いしつつ、電車はついに芝山千代田駅に到着しました。ここは全国でも唯一だと思うのですが、列車の中から機動隊が徘徊しており、駅前にもでっかい体格の機動隊が二人もうろうろしています。旗竿を持っている私たちを見つけては、目の前でこれみよがしに仁王立ちになったりします。駅周辺には空港くらいしかないので、日中はほとんど誰もいない。私たちと機動隊だけなので、ちょっと緊張します。どんな嫌がらせをされても目撃者がいないわけですから。
それでも自分の中で「今日が第一歩だ!」とテンションをあげつつ、デモの準備をしようとすると、突然に「草加さんですか?」とすんごくにこやかに声をかけるおじさんが一人。「私、山武署のもんです。いやいや、空警(空港警備隊=機動隊)が勘違いしてトラブルがあるといけませんからねぇ。ちゃんと所轄が許可しているということで、説明のために私が同行しますから」などと言う。とにかく終始ニコニコ顔です。
「あれ、3人じゃないんですか?あらま、一人減った」なぞ言うもんだから、ちょっとグサッときてせっかく上がったテンションが下がっちまった(笑)。私服が見ている中、それこそ「よけいなトラブル」が無いように、駅の敷地から出てから旗竿などの準備をしました。表の通りまで出ますと、いつも三里塚を徘徊している私服の車が停車しているのが見えました。「所轄の人間だ」という最初の私服の言葉を信じれば、いつもの公安私服車とはおそらく別系列ですから、空警の機動隊とあわせて3系列の警察がそろったことになります。おお、私らのために(?)なかなか豪勢だね!
そうこうしているうちにいよいよデモ出発!ということになりました。まあ、客観的には二人のおっさんが、旗をもって歩いているだけなんですが、気持ちだけはれっきとしたデモです。まあ、前のエントリに書いた通り、今日はお試しの人柱ですから。ただ、二人共歩くスピードが早い方なんで、気を付けないと「デモ」だというのにいつの間にかすたこらさっさと歩いている。その後ろを10メートルくらい離れて所轄の私服が一人でついてくるの図です。
歩きながらお互いに、「なんかさ」「うん?」「あの所轄の人って、ひょっとして公安じゃなくて内勤?そんで休日出勤?」「さあ」「さっきから、俺、なんだか申し訳ないような気分がわいてきて困ってるんだけど」「あ、実は俺も(笑)」「それが社会人の性だから仕方ないけどねぇ」「でも馴れ合うわけにはいかない!(キリッ)」「それはもちろんですよ!(キリッ)」などと情けない会話をしてしまいました。すみませんorz。
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<参考リンク>
◇デモ申請始末記(水田ふう)
◇東京都内でデモをやろうという方へ‐マニュアル(フリーター労組)
◇誰でもできる、簡単・デモ申請マニュアル(権力とマスコミの横暴を正し人権を守る国民の会in入間)
◇警視庁24時!とんでもないデモ申請レポート!(松本哉ののびのび大作戦)
◇「活動家一丁あがり!」或いはいかにデモ申請を行うか (再出発日記)