成田縛りで逃げる海外航空】
航空業界の「成田縛り」って何?どんな影響が出ているの?
(The Page 2015.02.05 より一部抜粋)
http://thepage.jp/detail/20150204-00000011-wordleaf
英ヴァージン・アトランティック航空最後の便が1日、成田空港を出発しました。1989年の就航以来、25年にわたって東京とロンドンを結んできた同社が、とうとう日本から撤退してしまったのですが、奇しくも翌日、カタール航空がやはり日本路線からの撤退を検討しているとの報道がありました。
日本から外国の航空会社が撤退していくのは、基本的には需要がなくなっているからなのですが、理由はそれだけではありません。背景には「成田縛り」という行政指導の影響が大きいとの声があります。
成田縛りとは、国土交通省が成田空港に発着枠を持つ航空会社に対して、羽田空港に国際線を新しく就航させる場合には、成田発着便を残すよう求めている行政指導のことを指します。これは法的根拠のないものですからあくまで水面下で行われるのですが、航空会社にとっては、実質的に政府からの命令と解釈されています。
なぜそのようなことをするのかというと、航空会社に対して自由に路線の申請を許してしまうと、便利な羽田空港に路線が集中してしまい、成田空港を存続させることができなくなってしまうからです。成田空港を運営する成田国際空港株式会社は政府が株式を所有する国有企業で、多くの公務員が天下っています。(中略…)
しかし航空会社にしてみると、採算性の悪い成田便を残したまま羽田便を新設しても、日本路線全体としての利益は薄くなります。その結果、一部の航空会社は、日本路線そのものから撤退した方が得策と判断したものと考えられます。ヴァージン航空は、デルタ航空との共同路線拡大を理由としており、「成田縛り」が原因だとは説明していませんが、これが大きな要因になっていることはほぼ間違いありません。カタール航空も撤退理由は不明ですが、日本の航空行政が影響を与えている可能性は高いでしょう。(中略…)
日本にいるとあまり実感しませんが、ここ20年の間に世界の航空輸送の市場は驚異的なペースで拡大しています。飛行機の旅客数は、北米が約2倍、欧州が約3倍、アジアは約4倍に増加しました。これに対して日本の旅客数は、同じ期間で横ばいという状況であり、相対的に見れば、日本の航空輸送の規模は3分の1の水準に低下してしまったことになります。日本の空のガラパゴス化はさらに顕著になっているようです。
(The Capital Tribune Japan)
※写真・図表などは本文と関係ありません。太字化なども引用者によるものです。
■関連記事「羽田空港が急速に国際化なぜ?/不便な成田に誘致進まず」(2013.10.08)
-成田空港が出来た頃は、日本がまだ高度成長の最中であり、羽田の発着枠が足りない状況でした。…国際情勢は変わり、日本は空港が足りないどころか、積極的に乗り入れを誘致しなければならない状況になってしまいました。利便性の悪い空港には航空路線は集まりません
■書籍「成田空港の「公共性」を問う―取られてたまるか!農地と命」(社会評論社 2014/04)
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■書籍「国がいう「公共性」をひっくりかえそう!」(七つ森書館 2003/04)
[amazon_link asins=’4822803635′ template=’hatahata’ store=’hatahata-22′ marketplace=’JP’ link_id=’e0fa5755-b314-11e7-8a2e-8751c23c5d63′]二〇〇二年四月、「暫定」と呼ばれる成田空港の二本目の滑走路が供用開始された。東峰部落で三〇年にわたって無農薬・有機農法を営んできた農家の軒先をかすめて、轟音と排気ガスを伴ったジェット機が離着陸する。オーバーランや墜落の危険性もある。もっとも被害の大きい東峰部落の住民の意思を無視した“公共性”とはいったい何か。その眼で見ると、全国各地に似た問題をかかえ、たたかっている住民がいる。阪神淡路大震災の被害者であり、市民議員立法で粉骨砕身された小田実さんに問題提起していただき、国がいう“公共性”の欺瞞を明らかにしたい。住民、市民にとっての公共性とは何だろうか。