投稿:司宮二
1970年前後のアメリカで、ベトナムに送られる戦争当事者だったアメリカの若者層とその複雑な心情を描いた映画が多く作られ、それまでの西部劇や単純で愛国的な戦争映画とは違う、アメリカンニューシネマと呼ばれた。本作はその代表的な傑作で、世界中の若者たちが夢中になって大ヒットした。実話を基にした青春恋愛映画だ(政治映画ではない)。だが今見返すとかなり違った印象というか感慨をもたらす。
権利関係が複雑なようで、日本語字幕版は過去に一度VHSビデオが発売されたことがあるだけ(現在は入手困難)だが、冒頭の予告編映像にあるように、2011年に未公開映像7分を含む再編集されたデジタルリマスター版が劇場公開されて話題となった。この時に同時にリマスター公開されたのが、現在のウクライナを舞台に戦争の悲劇を描いた「ひまわり」との2本立てだったことが、なんだか現在を予言しているように感じてしまう。
上記のように日本語版のDVD化はなされておらず(輸入英語版はこちら)、有名どころの動画サイトでも配信されていないが、かろうじてこちらのサイトで見ることができた。今のうちに視聴しておいたほうがいいかもしれない。
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公開当時は自明な事柄だが、本作の重要な背景にはアメリカのベトナム侵略戦争がある。当初は「ソ連圏の拡大から祖国と自由を防衛しベトナムの人たちを助ける」という政府の一方的な主張を多数派のアメリカ国民は信じていたが、小国ベトナムの頑強な抵抗で長期戦となって予想外の損失を被った。焦る大国アメリカの残虐行為は世界の民衆から草の根的に非難され、なのに若者は次々と徴兵される。厭戦気分は広がり、誰も政府の主張を信じなくなっていった頃だ。それを知らないと映画がよくわからないと思う。
まさにこの時代のアメリカとベトナムは、今のロシアとウクライナを彷彿とさせる。短期でアメリカが勝つと予想されたこの不正義の戦争から、大国アメリカに手を引かせたのは、ベトナム民衆の英雄的とさえ言える頑強な抵抗もさることながら、世界の民衆が、アメリカ政府やそれに遠慮し協力さえする自国政府に対する激しい反戦闘争を全世界で展開したことが大きい。ここに「ひまわり」と「いちご白書」はつながる。現在の私たちが歴史に学ぶ点がある(と思う)。
原作はアメリカの作家ジェームズクネンが、自分のコロンビア大学時代の体験を19歳の時に書いたノンフィクション。特に1968年に大学が戦争に協力して軍将校養成課程を新設するための校舎建設に着手しようとしたことに抗議、学部長事務所(映画では講堂)の占拠にまでいたる闘争の年代記になっている。『いちご白書』の題名は学部長が「学生の意見なんて苺の味が好きだと言うのと同じくらいのものだ」と放言したことを逆手にとったものだ。
映画で主人公のサイモンは、ボート競技に青春をかける普通の男子学生。学内の反戦闘争にも興味がない。ところがひょんなことから運動の女性リーダーのリンダと知り合い、お互いにひかれあっていく(というかすぐにくっつく)。彼女との交流の中で、闘争にも参加するようになったサイモンだが、最初は完全なナンパ目的だw。
とにかくこんな感じで、特に前半はノンポリの主人公の視点で進み、彼から見て闘争は完全に別世界だ。彼女ばかりが超真剣な活動家であり、運動に不真面目な主人公は彼女を怒らせる。なのに男女交際に関してはファッショナブル。二人の交際も最初は軽い。重くない。でも見ていて楽しい。でもHはしちゃうw。
とりわけて映画の観客に運動を「わかってもらう」趣向はない。だから政治映画ではないと思う。全共闘のアジ演説を聞かされた時と同じく、同時代の運動経験者以外はピンとこないだろう。そこを変に「お涙ちょうだい」的改変を加えずリアルに描いていく。原作からもわかるように、これは主人公の追体験なのだ。
やがて講堂に立てこもる学生たちに対し、大学側はその意見に耳を貸さずに実力行使を決定。ついにその時がやってきた。なんやかんやあってヾ(・・ )ォィ、この時にはサイモンも覚悟を決めている。観客もちゃんとそこに感情移入できる(普通の人なら)。反戦歌を歌いながら無抵抗で座り続けるサイモンやリンダたちに対し、ついに機動隊が突入するのだが…。
って、こうして書くと、時代は違えど「結衣ちゃんは革命家」のストーリーと、なんとなく流れは似ている。草加さんパクった?いやいや、まあ、結衣革も草加さんの体験だものねえ。だいたい青春時代に燃え尽きて挫折した人(失礼!)の書くストーリーって、みんなこういう感じになりますよねえ。結衣革のほうが日本でのしかも運動の高揚が過ぎ去ってからの体験なだけに、僕には馴染みやすかったですよ(ヨイショ!)
当時の映画宣伝に「コロンビア大学における血の弾圧を背景に」とか書いてあったらしい。またブログ「あの時の映画日記」様は「何度見ても壮絶なラストシーン」と書いておられる。
ですが、日大全共闘の学生だった方は、当時にこの突入シーンを見て「アメリカの機動隊って、日本と比べてずいぶんと優しいんだなあ」と思ったとか(笑)。日本の機動隊の弾圧に比べれば、かなり緩く見えたらしい。日本の学生運動に対する機動隊の弾圧については草加さんが以下の記事で、国会議事録や新聞記事などの資料を紹介しておられるので比較されたし。
まあ映画では催涙ガスを噴霧器でまいてるもんね。日本みたいにガス銃で至近距離から顔面ねらって目玉えぐれたり、頭蓋骨陥没とか、そこまでは欧米ではあまり聞かない。あと警棒での乱打の仕方とか。日本は重たい盾で乱打ですし、両手に鉄製のメリケンサック状の装備つけて殴るから顔面がすっぱり切れる。日本では欧米のような非暴力直接行動どころではなかった。もちろん学生側も抵抗したが、暴力ではどうしても勝てないのは同じ。
この主題歌も映画と共に世界的にヒットした。映像を見ると、この時代のファッション(特に女性)や普通の若者たちの行動(文化)に団塊世代以降のヒッピーカルチャーを感じられる楽しい雰囲気があって、それが恋愛映画としても色を添えている。
この時代まで「まともな家の淑女」なら、ひざ下丈のスカートをはいて「嫁に行くまで処女でいろ」と言われた男性優位の時代。今の人が想像するより女性はずっと抑圧されていた。これに反発してミニスカートのような「はしたない」恰好とかパンタロン(パンツルック)とか、H込みの「奔放な」自由恋愛の風潮が団塊世代に定着し、それが現在にも引き継がれていった。それもやがて男性優位の資本主義(商品経済)に組み込まれ、商品化されてしまったのは事実だが、思うに結衣ちゃんがミニスカートなどを着用しているシーンがあるのも起源的には(滝汗につき以下略)。
1970年代は、ファッションの多様化を迎えた時代ともいわれている。1960 - 70年代前半にヒッピーというムーブメントが起きた。ヒッピーとは伝統・制度などの既成の価値観に縛られた人間生活を否定することを信条とし、文明以前の自然で野生生活への回帰を提唱する ヒッピー時代を象徴する、1970年代前半の西洋女性のストリートファッション写真 : ... - カラパイア |
あと、これはどうでもいい豆知識だが、アグネス・チャンの香港でのデビュー曲もこの「サークル・ゲーム」のカバーだった。アマチュア時代にフォークソング集みたいな企画アルバムのなかの一曲として歌ったのが評判となり、シングルカットされて人気者に。やがて平尾昌晃の目に留まって日本デビューとなったとか。
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ウクライナ侵略以降、ロシアの侵略に抗議する世界中の人が、いろいろな背景をつけ、YouTubeなどの動画サイトに、続々とこの曲をアップしています。
オフィシャル版 合いの手など準拠
2, 1,2,3,4
みんなが喋っているのは
バギズム、シャギズム、ドラッギズム、
マディズム、ラギズム、タギズム
何とか主義、かんとか主義
主義、主義、主義!
だけど僕らが言ってるのは
平和にチャンスをくれってことだけさ
だけど僕らが言ってるのは
平和にチャンスをくれってことだけさ
(ほら!)
聞いてみなよ
彼らが言ってるのは
ミニスター、シニスター、バニスター、キャニスター、
ビショップ、フィショップ、ラビス
そしてポップ・アイズ、
バイバイ!、バイバイ!
だけど僕らが言ってるのは
平和にチャンスをくれってことだけさ
だけど僕らが言ってるのは
平和にチャンスをくれってことだけさ
(さぁ僕に言わせてよ)
彼らが話すことは
レボリューション、エボリューション、マスターベーション、
フラジェレーション、レギュレーション、
インテグレーション、メディテーション、
ユナイテッド・ネーションズ(国連)、おめでとう!
だけど僕らが言ってるのは
平和にチャンスをくれってことだけさ
だけど僕らが言ってるのは
平和にチャンスをくれってことだけさ
みんなが話してるよ
ジョンとヨーコ、ティミー・レアリー、ローズマリー
トミー・スマザーズ、ボブ・ディラン、トミー・クーパー
デレク・テイラー、ノーマン・メイラー
アラン・ギンズバーグ、ハレ・クリシュナ
ハレハレ・クリシュナ教徒
だけど僕らが言ってるのは
平和にチャンスをくれってことだけさ
だけど僕らが言ってるのは
平和にチャンスをくれってことだけさ
(さあ、やりなよ、行動するのさ!)
だけど僕らが言ってるのは
平和にチャンスをくれってことだけさ
だけど僕らが言ってるのは
平和にチャンスをくれってことだけさ
僕らが言ってるのは
平和にチャンスをくれってことだけさ
(人々のために今こそ聞いてみようぜ!)
僕らが言ってるのは
平和にチャンスをくれってことだけさ
僕らが言ってるのは
平和にチャンスをくれってことだけさ
(今こそ、皆んなで!やろうぜ!)
僕らが言ってるのは
平和にチャンスをくれってことだけさ
(君がそれを望んでいて、君たちもそれを望んでるなら)
平和にチャンスをくれ
僕らが言っているのは
(一緒にやろう!)
平和にチャンスを与えることだけさ
(一緒にやろうぜ!皆んなで一緒に)
僕らが言ってるのは
平和にチャンスをくれってことだけさ
(皆んな聞こえるかい?そうだよ!)
僕らが言ってるのは
(明日または今日それを得ることができる)
平和にチャンスをくれってことだけさ
平和にチャンスを与えることだけさ
(君が今望まないなら、僕が今取っちまおう)
僕らが言ってるのは
平和にチャンスを与えてくれってことだけさ
(そうだよ、そうさ)
僕らが言ってるのは
平和にチャンスをくれってことだけさ
(分かってるよ、愛する君、俺たち成功させたぜ!)
参考サイト:MIND YOUさま、山本 剛さま、Yahoo!知恵袋
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■Terubozu さんによる日本語版「平和を我らに」
うん、日本語にしようとすると、どうしてもラップ調になります(*’▽’)
日本ではこの曲を通して「いちご白書」の名前を知ったという人が多いかもしれない(僕もそうだった)。1975年のフォークバンド「バンバン」のデビュー曲(ボーカル:ばんばひろふみ)でこちらも大ヒットした名曲。
やはり基本は過ぎ去った青春と挫折の歌だが、これを作ったのが(作詞・作曲とも)ユーミンだというのがミソだと思える。珍しい本人が歌っているバージョンがあったので、バンバンのものと一緒にご紹介。
Peace United Give Peace a Chance (#StandWithUkraine Remix) Give Peace a Chance (Video Playlist Remix) Give Peace a Chance (Extended Dance Mashup) Give Peace a Chance (#StandWithUkraine Instrumenta… Give Peace a Chance (ウクライナRemix EP) - |
(投稿:司宮二)
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草加様、いつもいつも投稿をきれいに見やすく編集してくださいまして、ありがとうございます。
お忙しいところ、お手数をおかけして申し訳ありません。