人民新聞は、遡れば敗戦直後から革命運動を担ってきた人々による「日本共産党(解放戦線)」という団体の機関紙『平和と独立』を源流としているそうですが、より実質的には1968年、70年安保へ向けて高揚しつつあった新左翼運動全体の情報誌を目指して創刊された、『新左翼』という新聞がその起源です。77年には新左翼のみならず、より幅広い人々にとっての「大衆政治新聞」としての役割を目指して『人民新聞』と改称し、現在にいたっているそうです。特定の団体や組織の機関紙ではありません。
まあ書いた内容も上記エントリーの内容とそんなにかわりばえしないものでしたので、わざわざ報告することもないかと思っておりました。ところが人民新聞さんが私の自宅に掲載紙を送ってくれたのはまあいいとして、その次の号まで(お金も払っていないのに)送っていただきました。ひょっとしてこれからもしばらく送っていただけるのでしょうか?そう思いますと、「プロ」から「ただ」で何かしてもらうことに非常に恐縮してしまう私としては、このまま無視して好意に甘え続けるのも申し訳ないという気分になってまいりました。
そこで今回は人民新聞さんの宣伝をかねて、私の書いた掲載記事を転載しておきます。すでにバックナンバーになっていますので、全文を掲載しても差し支えないと思います。なお、人民新聞のサイトでは、記事の一部(冒頭部分のみ)が読めます。私の記事の一部もこちらに掲載されております。
以下、掲載記事の全文と、掲載紙の該当部分のスキャン画像です。
関西の特色ある出版社である鹿砦社の社長、松岡利康さんが「名誉毀損」で逮捕されたことはすでに多くの方がご存知だと思う。もちろん安易な身柄拘束は許されないが、私は事件についての態度を決めかねていた。そこで双方の言い分を白紙の状態で聞いてみるのがよかろうと思い、去る7月19日に神戸地裁で開かれた拘留理由開示裁判を傍聴することにした。
裁判は松岡さんの人定質問の後、裁判官による拘留理由の朗読へと進んだ。今回、裁判所が示した直接の拘留容疑はプロ野球阪神球団の告発記事と、パチスロ機器の大手メーカー、アルゼ株式会社の告発記事である。これらが名誉毀損にあたるかどうかは今後の裁判で争われるのであろうが、ただ松岡さんは先行する民事訴訟で連戦連勝していること、刑事捜査でも任意出頭にすべて応じるなど全面協力していたことは考慮しておかなくては不公平であろう。さて、肝心の勾留理由であるが、要するに「証拠隠滅のおそれ」一本で拘留しているという説明だった。
◇根拠ない「証拠隠滅の恐れ」
続いて弁護側からの質問にうつる。弁護側の質問の要旨は、「証拠隠滅とは具体的にどのような行為を指しているのか」「そもそも隠滅すべき証拠があるのか」ということだった。容疑の基礎となるべき出版物はすでに市中に大量に出回っている。そうであるからこその名誉毀損なわけで、ゆえに「名誉毀損で逮捕」という自体が異例である。さらに今回は先行する民事訴訟での記録や証拠、任意捜査段階での供述書なども大量に存在する。これらを隠滅することなど不可能である。
この弁護側の質問に対して、裁判官は全く反論することができなかった。「それは・・・」と言ったきり30秒 近くも沈黙が続き、「先ほども申し上げました通り・・・」とつなげては15秒沈黙し、最後にやっと「記録を見て・・・総合的に判断しました」と答えるのが精一杯であった。
読者の中には私が裁判官に悪意を持ってこう書いていると思う人がいるかもしれない。しかしそうではない。実際の話がすべてこの調子で、しどろもどろの役人答弁だった。客観的に当日の状況を描写するとしたなら、「裁判官が弁護士にこてんぱんにやりこめられているの図」と言ったところだ。ついに業を煮やした弁護士が、「何も答えになっていない!傍聴人にもなるほどと思わせるような、ちゃんとした拘留の理由を説明したらどうなんですか!」とつめよると、裁判官は「ここは拘留の理由を開示するだけであってその当否を議論するつもりはなく、傍聴人のために裁判をしていません」と述べ、弁護士からは「では何のために裁判官としてそこに座っているのか!」とまで言われていた。傍聴席からも失笑がもれた。これに対する裁判官の返答は「理由を開示すること自体に意味があると考えます」「議論を打ち切ります」の二つであった。
◇警察の暴走、歯止めきかず
今回の傍聴を通じて感じたことは、裁判所の徹底した「推定有罪」の立場だった。今回の事件で証拠隠滅など誰しも考えにくい。松岡さんの場合も、無罪の推定を受けた上で釈放の要件を勘案するんではなく、裁判所は有罪の推定を下した上で、「反省しとらんからろくなことしないに違いない」という理由で拘留しているようにしか思えなかった。昨今のビラまき弾圧に見られるように、警察はまるで駐禁の切符を切るがごとき気軽さで逮捕してくる。本来はそんな警察の暴走に歯止めをかけるのが裁判所の役割のはずではないのか。
アルゼ告発記事などの名誉毀損の有無や公共性について、私はまだ論評するべき立場にない。しかし少なくとも今回の逮捕や拘留は理由のないものであることだけは確信した。これは決して他人ごとではない。
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記事のタイトル、および文中の中見出しはすべて人民新聞の編集部がつけたものです。
いつもヘラヘラとお気軽に書いている私ですが、やはり少し緊張して疲れてしまいました。モニター上ではこれでいいと思ったんですが、活字になったものを見ると直したいところがいっぱいありますね。
ともかく、歴史あるメディアの片隅にでも参加できたことを光栄に思います。