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三里塚闘争

彼らは「英雄」なんかじゃない!-カンパ額は8131万円超え

 ついにカンパの合計額が8千100万円を突破してしまいました!
 連帯基金サイトで日々の振込額が公表されていますが、今月の20日に一度集約するとの方針が提起されて以降、ますます加速度がついているように思います。運動開始当初は数万円単位の伸びだったものが、ここのところ100万円以上の単位で伸びている!呼びかけていた私が言ってはいかんのだけれど、も~信じらんなーい!超アンビリーバボー!な状態です。

 ま、一番に「オー!ノー!アンビリーバボー!」って両手で顔を押さえて引きつっているのは、旧運輸省(現国土交通省)や法務省らの小泉政権の官僚どもでしょう。さらに「利息を含めた全額請求」を強硬に主張した旧空港公団(現空港会社)のやつらは、今頃は机を叩きながら歯噛みして悔しがっているでしょう。そして何より最も苦虫かみつぶして頭をかきむしっているのは、警備‐公安などの政治警察の輩であることは間違いありません。

 もちろん彼らはお金が欲しかったわけじゃない。管制塔戦士らを長期間監獄に放り込んだだけでは飽き足らず、出所後は組織からも離れて単なる市民として生活している彼らに対し、現時点でも1億300万円、さらに利息がついて無限に膨らみ続けるという、一生かかっても払いきれない請求をしてきた。30年近くたった今になっても、彼らの一生をとことんめちゃくちゃにしてやらないと気がすまないという、激しい憎悪を感じます。

 そしてそこには、彼らのトラウマともいうべき過去の悔しさと挫折感を垣間見ることができます。3・26闘争がどれだけのインパクトと打撃を国家権力に与えたのかは、柘植洋三さんの「3.26直後の財界の休戦申し入れ顛末」(「旗旗」しか見ておられない方もおられるようですのでこのエントリーの後半に転載・保存しておきます)を見れば一目瞭然です。

 日経連や経団連のトップが雁首をそろえて休戦協定の申し入れに来たのですから、これは文字通り局地的な「戦争」だったのです。しかもその戦争で政府側が押されていたのであり、ただの一般労働者や学生の反乱部隊に、暴力のプロであるはずの彼らが負けたのです

 三里塚の「反乱軍」と政府が休戦協定を結ぶことは、それまでのゴリ押しの責任をとる形での政権崩壊=内閣総辞職につながります。結局は政権に恋々とした福田首相によって幸か不幸か休戦協定は日の目を見ずに封印されましたが、政府側にとって、事態は今の私達が想像もできないくらいに深刻なものだったと理解することができます。

 今も血眼になって元被告達を一生にわたって苦しめようとしているのは、柘植さんの文章で言えば「過激派をライフルで射殺する許可を機動隊に与えよ」という”解決策”を主張していた強硬派に連なる部分です。実際にそんなことをしたら、政府側から見て、事態は計り知れないほどの泥沼に叩き込まれていたでしょうから、先の読めない愚か者というほかない人々ですが、現在の小泉政権の「治安政策」は、むしろどちらかと言えばこの「強硬派」の系譜に近いものを感じます。

 さて、こういった部分の一番の狙い、それは陰険な「過去の復讐」だけではもちろんありません。三里塚のみならず、現在と未来のすべての反体制運動に対する見せしめ効果を狙った意図が大きいでしょう。

 三里塚闘争が「下火」になり、左翼組織の多くが解体・縮小し、今や個人となった元被告たち。かつて自分達に逆らって人々から「英雄」あつかいさえされた彼らを血祭りにあげること。「おらおら管制塔戦士さんよ、もう誰もお前らなんて助けてなんてくれねえじゃねえかよ。他のやつらも実力闘争なんぞいきがった奴らの末路を良くみておくんだな!」って感じの無法者の勝利宣言です。

 実際にさんざん英雄扱いして持ち上げていた彼らの人生が破滅していく様を、私達がわが身可愛さのあまり目を伏せて耳をふさいで見殺しにしていたら、後に続く人々に与えた萎縮効果は大きかったと思います。実際、元被告の一人は「もう墓場まで払い続けていくしかないのかと思った」と語っておられます。

 しかし警備‐公安警察をはじめとする「強硬派」達は、またしても間違っていたのだ!そして彼らは理解できないのです!組織がなくなって市井に埋もれ、散り散りになってしまったかつての同志達が、まったくの個人として自分の意思で、ただでさえ貧乏な自らの生活を顧みずに有り金を基金にぶちこんでいく姿や、あまつさえ、生活を危険にさらしてまで再びカンパ闘争と三里塚の闘いに関わろうとする姿が。

 ライフルや差し押さえで脅かせば、人が言うことを聞くと思っている彼らは、そして損得勘定を人生の最大の尺度に生きてきた人々は、「過激派」なんて「狂信」集団だと言うでしょう。そして彼らは「お前らもう関係ないんだから黙ってりゃいいじゃねえか。そしたら自分の懐も痛まないのによ。なんであいつらそこまで・・・馬鹿じゃねえのか」と絶句しているのです。

 そう、前にも言いましたが、私達は大馬鹿者です。最期の会戦から20年以上の歳月で、奴らはそのことも忘れていたのでしょう。多くの3・26戦闘参加者は、ピストルを構えて実際に実弾射撃してくる警官隊の群れの前に、鉄パイプ一本で飛び出していきました。みんな家でおとなしくしておれば、普通の人生を歩めた単なる労働者・学生達でした。馬鹿です。まさしく本物の馬鹿者達なのですよ、私らは。

 巨大なライオンが、かつての「英雄」を今まさに食い殺そうとするその瞬間、どこからともなく現れた無数の蟻やネズミの群れがわが身をかえりみずにライオンに飛び掛っていく。そんな図がこんな世の中で、私達の目の前でくりひろげられていることのすべてです。良かった!まだ「金や損得のみで生きるのではない人々」がこんなにいてくれて!まだまだ今の世の中も捨てたもんじゃない!

 そして一番素晴らしく思うのは、元被告らを、組織に属していたあの頃みたいに「英雄」として持ち上げ、一面では彼らにそこから逃げ出すことを許さないような空気の中ではない、等身大の人間として、そしてそんな当たり前の人間が行った素晴らしい行動を見殺しにできないという対等の関係と動機の中で、彼らに連帯していこうという雰囲気がこのカンパ運動に満ち満ちていることです。

 彼らは「英雄」じゃない!もう人を英雄に祭り上げ、英雄でい続けることを強要するような運動や政治はまっぴらだ!

 人間には正の側面もあれば負の側面もある。三里塚の農民も、元被告達だって、そんな人間の一人にすぎない。普通の人だ。そしてそんな普通の人が人間の正の側面を極限まで見せてくれたことが素晴らしいのだ。そういう意味で「彼らは英雄じゃない」と私は言う。

 所属していた党派だの、そこでの過去の対立がどうしたと言うのか!そんなみみっちい議論を突き抜けて、彼らは「損得だけで生きるのではない」すべての人々の「代表」なのだ。そして私達の「仲間」だ。余計な理屈はいらない。だから助ける。それだけのことだ。

 散り散りになったかつての仲間達の心が、いまだ干からびて死んでいなかったことを腹の底から嬉しく思います。そしてこれを機会に新しい若い人々が三里塚に関心を持ってくれはじめていることも。

 ライオンは予期すらしていなかったネズミの群れに驚き、とまどい、血を流しています。しかしネズミたちがライオンを撃退できるかどうかはまだ全く予断を許さない。今後、ライオンが牙を剥いて襲ってくる可能性は高い。

 それは大声で吼えてネズミを威嚇するかもしれないし、見せしめとして先頭にいる何匹かに噛み付くことさえあるかもしれないのです。私達がまったく予想もしていなかった方向からの攻撃があるかもしれない。しかし何があろうと絶対にひるんではいけない。

 「敵の意図と目的」を完全に打ち砕く闘いが、今、達成できるかもしれないところまできているのです。こんなことは本当に3・26以来ではありませんか!まさにこのカンパ闘争こそが「第二の3・26」なのです。

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  • 20日の集約日まで、あと数日。
    現在8371万円余(10/11現在)、一応の目標の1億300万円まで、残すところ2000万円を切りました。

    このカンパの集中を、一体誰が予想したでしょうか!
    当初は誰もが達成不可能と考えていたでしょう。
    「できるだけカンパするが、一億以上となるとなー…」というのが、本音だったと思います。
    しかし、私達の予想はうれしいことに、完全に覆りました。

    連帯基金へのカンパの勢いは、20日の集約日にむけて、一層の拍車がかかっているとのことです!
    まだ、カウントされていない多くのカンパもあるとのこと!!!

    一億300万円は、達成可能です!!!
    それ以上のカンパも実現できることさえ、あり得るでしょう。

    政府ー国土交通省がもくろんだ、「戦った者は、傷つき監獄に行くだけではすまない。最初は英雄だの、戦士だのと持ち上げられているが、結局は見放され、見捨てられて、死ぬまで借金地獄だ」という狙いは、もろくも打ち砕かれつつあります。
    私達は、この政府ー国土交通省のみせしめ、報復を、完全に打ち破りつつあるのです。

    しかも、かかる戦いには78年3・26を戦った三党派、連帯する会、廃港要求宣言の会、反対同盟等などだけではなく、当時第一公園にいた元白ヘル、青ヘルの仲間達も加わっています。
    いやそれだけではありません。
    私の経験だけでしかありませんが、全共闘運動を戦った仲間や、60年代後半の安保ー沖縄、ベトナム反戦闘争から、市民運動をになった人々までが、このカンパ運動にはせ参じています。

    文字通り全ての民衆の戦いと、カンパ運動となっているのです。

    そして、今や達成不可能と思われていた1億300万円が、目前に迫っています。
    78年3・26当日にタイムスリップしていえば、われわれは管制塔ロビーにまでたどり着き、しかも目の前には扉が開いたエレベーターがあるということです。
    このエレベーターに乗り込み、最上階にまで登るのか、それとも逡巡して断念するのか、そのことが今問われている。

    カンパ運動に前代未聞の奉加帳を開陳するだけでなく、「とりあえず」とかの注釈をつけ、実質的にカンパを停止することを表明するならば、今もってそれぞれの分担に応じた責任がどこにあるのかを論じたり、枠をもうけたりしている者は、この歴史的戦いからその時点で去ればいい。

    われわれは逡巡や金銭勘定に堕することを拒否する。
    われわれはルビコン河を渡る。
    全ての心ある民衆と共に、頂上に向けて突き進む。

  • 今回のカンパ闘争、私も知り合い(戦旗以外の元党派、ノンセクト、市民活動家等)にカンパ要請しましたが、ほとんどの人たちに「知ってるよ。もう振り込んだ。君に言われなくても必要ならまだまだカンパするよ」と返されてしまいました。
    ここまで波及力のある運動だったとは・・・。三里塚闘争の巨大さを実感しました。
    私自身、カンパ闘争で(身銭をきることで)こんなに嬉しい思いをしたのは初めてです。微々たる額ではあれ、管制塔戦士を始めとする全国の仲間たちと連帯できるのですから! その上、暫定滑走路北側延伸を目論む敵に痛撃を与えることができるのですから!
    今回は何だか権力にお礼を言いたいような気さえしてきます。
    あと、もう一歩。
    月曜日、郵便局へ行きます。また楽しい思いをするために。