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投票指針の提起-’09総選挙にあたって(下)

(昨日のエントリ 「政権交代」じゃなくて「政権打倒」だ!-’09総選挙にあたって(上) からの続きです)

◆麻生政権崩壊は国家主義路線への民衆の「NO!」と受け止めるべきだ

 つまり村山政権以来の大きな流れとしては、社民党という「ストッパー」がはずれ、最終的には自公連立政権に落ち着いていく過程の中で、自民党がかつてはその内部に包摂していた社民的・国民保護的な路線や機能を失い、どんどん右傾化・国家主義化・ネオリベ化の方向に純化していった。そして郵政選挙以降は議会運営すら強硬採決の連続で、ろくな議論も保障せずに改憲手続法や教育基本法の改悪などを成立させていった。

 総じてそういう資本主義の危機を民衆にしわ寄せし、犠牲ばかりを強いる国家主義的な発想の右傾化路線の末に、自民党は支持を失って崩壊していったわけです。

 だから、自民党の崩壊はイコール「右翼路線の破綻」でもあるんですよ。別に「中道社民の政権」が国家主義者によって追い詰められたわけではないのですから、むしろこの政権崩壊過程は流れとしては悪くないどころか、先にも書いたように、民衆の抵抗や拒否がようやく実を結んだ一つの結果、もしくは少なくともその途中過程として「政権交代」を見るべきなのです。

 今後、民主党も含めた支配層全体としては、この「成果」を保守2大政党制の枠組みに押し込め、保守政党同士の定期的な政権たらい回しで不満をそらす形での終結をはかるでしょう。左派としてはこの「政権交代で終結」のもくろみを許さず、さらに闘いを進めていくということになると思います。

 そこで左派の間で共通して言われている「第三の勢力を意地でもつくりましょう」という主張が重要になるわけですが、それは決して議会での議席獲得運動ではなく、大衆運動をこそ重視する方向、つまり議席に汲々とせず、街頭での大衆運動にこそ基盤を置いた運動でなければならないと思います。そして今の現実から出発するならば、支配勢力をして、そういう第三の勢力を目指す大衆運動の自由の確保を要求し、可能な限り影響力を行使しうる形にもっていくことが当面の課題ではないでしょうか。

 そういう意味では今のところ向かっている方向性は、左派がそんなに悲観するほど悪くもない流れだと思います。左派にとって理想的で元気が出るような議会状況を想定して、現実の議会や選挙の構造がそうなっていないと嘆いても何もはじまりません。ここからはじめるしかない。どんどんいきましょう!

 結論としては、とにかく自民党はあまりと言えばあまりにも長すぎたのです。それにここ数年は国家優先で突っ走った。だから民衆の怒りをかった。これが倒れるのは必然であり良いことだ。そして後は左派の主体的な問題だということです。小泉時代には国家優先主義が見えなかった人にまで、予期せざる金融不況や派遣労働者の問題なども重なって、今や誰の目にも見えるようなところまで来ているということです。それらが民衆に拒否されて政権崩壊するという過程だけでも今は万々歳としましょうや。繰り返しますが、左派が伸びないことをもってこの一連の過程に「意味がない」とは私には思えません。

◆総選挙での投票指針

 さて、そういう意味で、総選挙の結果は、1)民主党だけでは単独過半数をとれない。2)社民党の議席を足せば民主党が過半数を得る。3)国民新党の議席を足しても過半数にはならない。というのが一番理想かな。社民党を切ることはできないが、国民新党は切っても大丈夫という。まあそんなにうまくはいくまいが(笑)。これに加えて、4)自公あわせて100議席以下にボロ負けする。だったら最高だね。しかしそれだと、社民と共産が50議席とか100議席とか取らないと計算があわないか?ゼッテーに無理やな。つか社民は候補者数すらそんなにいないだろうと言う(笑)。でも、民主党以外の政党が全部議席を減らす「一人勝ち」とか、民主党だけで安定過半数を得るとか、そういうことは阻止したいなあ。それはつまり社民・共産の議席が増えるという意味になるけど、うーん。都議会選挙の結果から見る限りは、現状維持も難しいだろうからなあ。

ともかく、そういうことを考えた投票指針としては

1)選挙区は反自公で当選できそうな候補に投票する
2)比例区は共産か社民のどちらかに投票する
3)たとえ「反自公」でも極右派候補には絶対に投票しない

というのが大方針になると思います。

 私個人としては、共産党は何とか5議席以上はいくと思うが、社民党はあと2、3回の選挙でマジに消えてなくなる可能性もあるんで、今回の比例区は社民党に入れるつもりでいます。が・・・うちのブロックで当選者出るかなあという感じです。辻本さんと保坂さんには残ってほしいが厳しいかも。微妙な線ですね。

(参考)民主党の比例区勝ち過ぎを修正することで、政権交代が確実になる
(参考)3つの選択- 有権者が日本の行く末を決める
(参考)問われているのは 「日本の方向」争点は 「政権の選択」 ではない
(参考)ポスト政権交代リンク集

◆極右派候補には絶対投票するな

 そして注意すべきが、「自公」をむしろ右から批判しているような極右派候補の存在です。一口に「反自公」と言っても中身は玉石混交であり、政権交代後の禍根をできるだけ少なくするためにも、民主党ブームのどさくさまぎれに「石」を当選させることは可能な限り避け、それができなくても票数をできるだけ減らしてやるべきです。(→民主党「超」改憲派リスト

 たとえば静岡7区では、小泉チルドレンでマスコミにも頻繁に登場し、前回選挙では郵政刺客候補だった片山さつきさんへの対抗から、「反郵政民営化」の無所属・城内実さんを推す「反自民の右派ブロガー」さんが多いです。しかし私は城内さんのこちらで取り上げられている文章を読んで吐きそうになりました。ネトウヨ丸出しのこういう差別的な文章を書いて、それで一般から支持されると考えている感性がすでに痛すぎます。私が片山陣営なら城内さんのこの文章を印刷して全有権者に配布することを真剣に考えますね。相手陣営の発表した文書なら選挙違反にならないんじゃないですか。

 もし私が静岡7区の有権者で、かつ候補者が片山さんと城内さんの二人しかいないと仮定し、さらになおかつ絶対にどちらかに投票しなければならないとすれば、私は「鼻をつまんで片山さつきに投票する」と言い切ります。つまりいったい何のための政権打倒かってことですよ。これはもののたとえで城内さんや片山さんがということではないんですが、たとえば「保守反動政権を倒すためにファシストと手を組む」なんてことが許されるでしょうか?そんなの本末転倒です。無節操です。間違っています。「政治」を云々する以上、たとえ自分を殺そうとした相手であろうとも守らねばならないこともあります。「政敵を倒すためなら悪魔とでも手を組む」ようなこと発想をしてはいけません。

(参考)自民は敗れて極右が台頭する(非国民通信)

◆こういう時こそ共産党・・・なのに

 では、自民と民主の両方が極右候補だったらどうするんだと、選挙区は棄権(白票)で比例区だけに入れるしかないのか?「そういう選挙区にこそ共産党に立ってほしいなあ」というようなことを「四トロ掲示板」に投稿しましたら、バッジ@ネオ・トロツキストさんより以下のようなレスがありました。本当にそうだなあ、共産党よもっとしっかりせい!という(多少の苛立ちと)激励の意味をこめて、少々厳しい意見ですが一部を引用しておきます。

本当にそうですね。
共産党には大局観や狡知に満ちた選挙戦術というものがありませんからね。
結果的には自公応援団にしかならなかった全選挙区立候補方針をここにきてようやく撤回したと思ったら、今度は民主党候補者の政治的傾向さえ一切無視してこれまた自党の都合(=地方組織の力量)だけで選挙区選挙への参加不参加を簡単に決めている。選挙区によっては対立候補を立てて民主党の右派候補ツブシを図り、結果、民主党の候補者選定への無言の圧力や事実上の介入が十分可能なんですけどね。共産党はそういう「工作」も一切放棄してしまっているんですよ。本当に頭が悪いわ。やる気がない。政治集団失格ですね。
けっきょく、日本の共産党というのは、どっちにしても自党のこと以外は眼中に無い「わが道を行く」主義政党なんですよ。「下駄の雪」路線の社民党の対極ですねwww(後略)

◆最後に・・・投票後にすること

 さて、以上を最低限確認したら、あとは選挙当日に飲める人はビールを用意しましょう。飲めない人も何か精一杯のものを用意し、あとは開票速報の中継でやつらの憔悴しきった泣きっ面を眺めながら、せめて一日くらいは細かいこと言わず素直に「ざまあみろ!」と溜飲を下げて美味い酒を飲みましょうよ。

 こういうことを書き方をすると、いろいろ突っ込みたいことがあるでしょうし、私だってそれくらいはわかりますよ。でもね、ずっとやられっぱなしで酷い目にあわされてきたんだもん、ちょっとくらい羽目はずしてこういう下品なこと書いてもバチは当たらないと思います。だいたいが10年に一度くらいはそんな日がなきゃ本当に左翼なんてやってられんよ。右派の皆さんにはどうか見逃してくだされよ(笑

 もちろん翌日から「鳩山政権」との対決が待っているわけですし、それは重々承知の上です。
 とにかく「革命的楽観主義」でいきましょう!

コメントを見る

  • 上下ともおもろいね。

    ニートをやっていた若い頃は、選挙なんて行かないし、行ってもどこへ入れていいか、さっぱり分からない。
    生活に追われて選挙どころか!

    こてんぱんの目にあわされて、節約の高圧に押しつぶされ、午後九時半の半額の食い物を漁ってもとても追っつかない。NHKには裁判するぞと脅かされる。裁判所に行く電車賃もない。

    むかむかむかむかして待っていたら、やっとこさ、選挙。
    二年間待ちに待っていたね。

    今年ほど、選挙権があるという僥倖を、ありがたいと思ったことはないぜ。

  • 1)選挙区は反自公で当選できそうな候補に投票する
    2)比例区は共産か社民のどちらかに投票する
    3)たとえ「反自公」でも極右派候補には絶対に投票しない

     これまでも、だいたい上のような観点で投票してきましたが、
     あらためて文字にするとわかりやすいです。

     これにならって投票しようと思います。(共産は選挙区、出さないし)

     これに関連して、
     実は、私の選挙区の個別事情で、ちょっと逡巡した点があったのです。
     というのも今回、
     「反自公」だが社共ではなく、かつ、"極右リスト"にも入ってない。
     でも私的判断では かなり右派・・という選挙区の候補がおりました。
     この人をどう見るか(極右か否か)という点、少し考えました。

     (もちろん現時点では、その判断は"解決"したのですが。)

  • この板の多くの皆さんとは違って、私は、戦後、自民党はそれなりの役割を果たしてきたと思います。社会党や共産党が政権を取るよりは自民党のほうがどちらかといえばよかろうと思って、私なりに支持してきたことも事実です。ただ、自民党はほぼ歴史的役割を終えましたね。小泉内閣以後、何度か再生のチャンスはあったのですが、それを逃してきたのも自民党自身ですから、誰を恨むこともできないと思います。私たち支持者も、自民党を真に改革する力が無かったということでしょう。

    今後、自民党が再生するとしたら、一時は少数派になることも恐れず(私の考える)真の保守・右派政党になることしかないと思います。その道筋はあるのですが、自民党にはそれを選択する勇気も思想も無かった。拉致被害者の一部を取り戻したのが、自民党の最後の輝きだったのだなと今になれば思います。

    民主党の役割も今のままではそれほど長くは続かないと思いますし、これからの時代に何が必要なのか、右派も左派も本当に考えないといけない。今回の選挙では外交問題は全く争点になっていませんが、対アジア外交、強いていえば対中国外交が今後の日本の運命に大きく作用することは確実だと思いますから。右派全体についてはいいませんが、私個人について言えば、要するに自分の力で勝ったわけでもなんでもなく、左派の過ちの一部が明らかになっただけで勝ったつもりになったのが全ての間違いでしたね。

    敵失で勝ったことに浮かれて足腰の弱さを直せなかったのが全ての問題点。国民の多数派に受け入れられる思想も政策も打ち出せなかった事をまず反省しないと。脱北者問題も北朝鮮や中国の人権問題も、事実上日本政府を効果的に動かすことに今の所成功していないのは、結局国民の支持を私の運動が得られていない結果だから。

    今、日本が右傾化しているというのは私はあんまり本気にしてないんです。60年代や70年代、左翼運動が学生運動も含めて最も激しかった時代だって、政権は自民党で、日本国民は別に左傾化してたわけじゃない。今も同じじゃないかな?ただ、左派にせよ右派にせよ、思想を語る人びとのインチキさには敏感になったと思う。それは決してマイナスではなく、これまでの運動の偽善性や誤りの当然の結果であり、それを払拭した思想や運動のみが今後受け入れられていくのだと思います。

  • 田中洌さん>
    そうですね。今度ばかりは投票が楽しみですよね。
    左翼的には『ブルジョア議会』の選挙権なんて、「誰が自分を支配し収奪するのかを選ぶ」ものにすぎないわけです。奴隷が、ほんの数人の奴隷主たちの中から、自分のご主人様を数年に一度だけ選ぶことができる制度だと。しかしどこまで行っても奴隷は奴隷にすぎない。選挙が終わればまた奴隷と主人の関係に戻るだけだと。それであたかも自分が主人(主権者)だとだますための制度であると。

    もちろんそれはその通りだと私も思いますけれども、じゃあ左翼がすぐにも奴隷主たちを一掃して奴隷を解放してくれんのかと。それどころか「私たちのご主人様に何てことをするんだ」と左翼に対して怒りだす奴隷根性の持ち主のほうが、奴隷の中の多数派だったりする現状。そんな中で「選挙なんてナンセンス」とお題目みたいに唱えて無視しているだけでは私たちが死ぬまで待っても何も変わらない。

    少なくと今の奴隷主に「NO!」を突きつけることができる。

    こんな選挙でも、それこそ多くの人々が実力で闘い、たくさんの血が流されたあげくにやっとのことで奴隷主たちを譲歩させて勝ち取ってきたもの。その時代における「過激派」の先達たちの血の努力の末の「改良の果実」です。先人の犠牲に敬意をはらいつつ、しっかりと行使させていただきましょう。

  • A.伊助さん>
    本当に現状では投票行動に迷いますよね。
    それもこれも「保守二大政党制」を無理やりに強制する小選挙区制度のせいなんですが。世界的には世論を反映しないどころか歪めてしまう小選挙区制は、それを早くから導入してきた地域などで徐々にですが不満や見直しの気運が出てきているそうです。その小選挙区制の不備を補完するための比例区もブロックわけされてしまって、あながち「少数派」と言いきれないくらいの数の民意が切り捨てられていく。
    民主党は、そうして切り捨てられることを避けようとする民意の暫定的な受け皿として成長してきたことを忘れないでほしいものです。そういう「少数派」の人々の血を吐くような叫びと涙を忘れるなら、民主党はたちまちクズ箱に一直線でしょう。

  • 雇用問題を重視する人は、情勢によっては社民 (または共産) に投票すべき

    衆院選での投票先調査で、特に社民党が伸び悩んでいるようです。
    自民・公明に愛想をつかした人が民主に流れるのは、結構なことです。
    しかし、元々社民 (または共産) 支持の人が民主に流れるのは、場合によっては良いことではありません。

    雇用問題を重視する人は、投票時に最新の情勢を判断し、比例区では
    (1) 自民・公明に対し民主が確実に優勢でない場合は民主に投票し
    (2) 自民・公明に対し民主が確実に優勢である場合は社民 (または共産) に投票した方がよいでしょう。

    現実問題として、民主党の中には保守的な議員も多くいます。
    連立を組む社民党議員が減少し、民主党が単独過半数を超えると、
    民主党が保守化する懸念があります。

    この点は要注意です。たとえば、
    民主・社民・共産各党の本部・各都道府県支部・各衆議員候補・各参議員に対し、
    技術者等の非正規雇用禁止を希望するメールを送ったところ、
    社民党の都道府県支部の一つからは、次のような回答がありました。

    > メール有り難うございました。
    > 民主党のマニフェスト内容で「原則として製造現場・・・・派遣を禁止」についても、押し上げるのに大変でした。
    > 民間大企業の労働組合は、多くは旧同盟系が主流なので、「製造現場への派遣の禁止」には、かなりの抵抗がありました。
    > 社民党の踏ん張り抜きには出来なかった事項ですが、指摘された「技術者等の非正規雇用禁止」はかなりの協議が必要かと思います。
    > 派遣労働そのものを禁止する状況に引き戻すには、専門業務以外はしっかりと派遣を禁止することをガードすることが、まず重要と思います。
    > 政権交代は確実です。社民党は、雇用、平和で民主党のブレを引き戻し、闘いながら政権内でガンバルことが役割です。
    > 今後とも、意見をメールして下さい。

    これによれば、社民党の発言力が弱くなると、非正規雇用対策が後退する恐れがあると考えられます。
    したがって、雇用問題を重視する人は、情勢によっては社民 (または共産) に投票すべきでしょう。
    賢い有権者なら、戦略的に投票しましょう。

    この件は特に強調していただきたいと思います。

    以上、自民・公明に対し民主が圧倒的に優勢である場合に考慮すべき話です。