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反貧困

支えなく、ホームレス凍死

 朝日新聞福井版のローカル記事で知りました。ここでも紹介したい。

 すでに毎年何百人もの野宿者が死んでいます。その意味では「いまさら何を!」とも思いますが、今まで野宿者のほとんどが東京と大阪に集中していた中、年と共に全国の地方都市にもどんどん拡大の一途をたどっており、ついに地方でも凍死が現実になってきたというところでしょう。

 ちなみに、名前から言っても、この記事に掲載されているような人のためにこそ「シェルター」があるべきですが、大阪市はこういう「非定住」の野宿労働者には、「シェルター」や「自立支援センター」への入所を拒否し続けています。つまり入所できるのは、公園にテントを張って住んでいる人だけ。こういう定住野宿者が、テントを放棄することを条件に収容されるのが、これらの施設なんです。しかもテントを無くしても、半年以内には放り出されて二度と再入所できないという条件。

 もうこれらの施設は、凍死の危険を防ぐためではなく、テントを破壊するための「強制収容所」であり、非人道的という批判を一時的にかわす煙幕にすぎないんだというのが、あまりにも露骨すぎて、批判するのもアホらしいです。

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支えなく ホームレス凍死
(2006年02月18日福井版朝日新聞)
http://mytown.asahi.com/fukui/news.php?k_id=19000000602180003

厳しい冷え込みが続く福井市で今月上旬、1人のホームレスが死んでいるのが見つかった。死因は凍死。所持金はわずか45円だった。記録的な大雪をもたらした寒波は、県内で増えつつある経済的困窮者のホームレスの命も奪った。

「屋外トイレの中で誰かが寝ている」

雪交じりの雨が降っていた今月8日夕。福井運動公園(福井市福町)で、利用者から園内の男性職員に連絡があった。職員が駆けつけると、屋外トイレの身体障害者用のスペース(約7平方メートル)の床で、中年の男性が仰向けで横たわっていた。黒いジャンパーにジーンズ姿。持ち物のわずかな衣類を枕にした状態で、毛布などの寝具や荷物はなかった。

福井南署の調べでは死因は凍死で、死後2日経過していた。死亡したとみられる6日の福井市内の最低気温は零下3.4度。時折、みぞれや雪が舞う厳しい寒さに見舞われていた。

男性の身元は2日後の10日に判明した。福井市生まれの52歳。20代前半から土木作業員のアルバイトで生計を立てていた。しかし、家賃を滞納し、4年ほど前に市内のアパートを退去させられていた。その後、路上生活を始めたらしい。発見時はひどくやせこけた状態だったという。

市福祉課によると、ここ数年、ホームレスの凍死は聞いたことがなかったという。
同公園内では、別の男性(70)が1人寝泊まりしていた。公園内のホームレスは、夏には2、3人増えるが、冬になると暖かい場所を求めて移動するという。今は、この高齢男性だけだ。セーターなど上下合わせて7枚を着込み、この夜はビニールシート3枚を敷き連ねた「寝床」で薄い毛布1枚にくるまった。

「寒さなんてとっくに気にならなくなった」と苦笑し横になった。

福井市中心部の地下道。ここでは、階段脇に敷いた段ボールの上で、1人の男性(79)がひざを抱えていた。

2カ月分7万円余りの家賃が払えず、約4カ月前、越前市内のアパートを追い出された。トラック運転手などをしていたが、掛け金をほとんど支払わなかったため、受け取る年金はごくわずかしかなかった。左足が悪く、拾った黒いビニール傘をつえ代わりに使う。そばに菓子パンの切れ端が二つあった。「一つは明日食べるんや」と話した。

通行の邪魔になると、地下道から出ていくよう求められる。日中は近くの公園で、雪を払った地面に敷いた段ボールの上で過ごす。この冬は肩に積もった雪を払いながら、ビニール傘の下で、丸めた体を両手で必死にこすってしのいだ。

「毎日つらい。やっと息をしている感じや」

県地域福祉課によると、県内のホームレスは38人(05年11月時点)。大半の35人が福井市内の公園や河川敷などで生活している。県内経済は回復基調だが、02年8月の調査時(18人)と比べて増加傾向にある。年齢は30~80代と幅広く、女性も少なくない。

02年7月にホームレス自立支援法が成立した。雇用や住まいの確保など国や地方自治体の責任を明確化し、都道府県や市町村に自立支援計画の作成を求めたものだ。だが、厚生労働省によると05年末現在、計画があるのは東京都や大阪府など25自治体にとどまる。ほとんどが100人以上のホームレスを抱える自治体だ。

福井県は「数も多くなく、今のところ作成の必要はない」との立場だ。福井市も「県から指示がない」と対策に乗り出す気配はない。生活保護を受給すれば、ホームレスからの脱却も可能だ。だが受給には定住が前提となる。県や福井市は公営住宅への入居に連帯保証人を求めており、身寄りのないホームレスにとって保証人探しは難しい。

ホームレス支援に取り組む静岡大の笹沼弘志助教授(憲法)は「自立に向けた支援に取り組まないならば、行政として恥ずかしいことだ。地方は都市部と違い、数は少ないのだから、生活保護制度を柔軟に運用するなど対応策も取りやすいはずだ」と指摘している。(小池 暢)

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  • 「Arisanのノート」さんでこのエントリを知り、自分の記事に追加でリンクさせていただきました。(TBを入れようとしたのですが、システムが合わないみたいでできませんでしたので、コメントで失礼します)

    本当に欺瞞のための「施設」ですね。福井県の記事は読むのが辛いものですが、教えてくださってありがとうございます。

  • その中でも雪の降る北国の野宿は危険と隣りあわせだ。
    私の住む地方都市には「自立支援センター」というものがある。
    入所すると今までの持ち物(テントや生活用具)は破棄さされ、雑業やアルバイトを止めさされ、毎日職安での就職先を見つけるように「指導」される。それも、入所は近く排除が予定されている公園の住民に対してのみ無条件なのだ。
    少なくとも彼らには「屋根」があり「職」もあった(強制排除への重圧に耐えかねて、全員が公園を退去する予定だが)、しかし本当にシェルターを欲しているのは駅前や地下道、アーケードでうずくまる野宿者たちなのである。彼らの元には「自立支援センター」入所へのケースワーカーの援助がかからない。なぜなのだろうか?
    そういえば、当地のパンクが「強制排除まであと1日! ~人の命はゴミじゃねー!!~ギグ」を開こうとしている。寒く凍えるような北国にも若い人たちの希望の光が見える。

  • >ビーさん、北さん、コメントありがとうございます。「人の命はゴミじゃない」本当にそう思います。同時に、こんなことを言わなくてはいけないような行政って何なんだ!と、怒りがこみ上げてなりません。大阪や東京などの大都市では、まだ野宿者を支援するボランティアの方々もおられますが、地方の野宿者にはまったく支えがありません。

    「小泉改革」が進む中で野宿者は全国に増え続け、今や5世帯に1世帯が年収200万以下です。「セーフティネット」とやらになるはずの行政が「排除と隔離」しか考えていない有様では、年とともに凍死者が増え続けるのは必至の情勢です。本当に心配ですが、私も人の心配ばかりしている場合ではないかもしれません。支援ボランティアだけが頼みの綱で、彼らの献身的な無償の努力には本当に頭が下がります。

    それにしても、自立支援センターの欺瞞はどうにかならないのでしょうか。あそこは、マスコミ等に野宿労働者の悪い印象を与える宣伝をするのが目的のところなのでしょうか?それに乗せられるほうも乗せられるほうですが。
    公的な救貧施設には、他に乳児院や母子寮などもありますが、これらはまがりなりにも目的にそった運営がされているし、一時的な避難場所や、経済的な自立支援のために、それなりの方策もとられているというのに。

  • 一人の人として、あまりにも悲しいことです。
    そして、日本だけでなく世界全体を見回せば、何億人もが…
    情けないです。

    ただ、左翼的に行政が悪い、人心が冷たくなった、という
    言葉に簡単に飛びつくのにはまず疑問を持ちたいです。
    ではどうすればよかったのか…どうすればその人たちを
    救うことができるのでしょうか。
    その人たちは、何を求めていたのでしょうか。

    日本の、最弱者に対する福祉が不十分だというのは理解しています。
    それをどう変えていけばいいか…
    そして、行政だけが主体でしょうか。一人一人がなぜ、弱者に対する
    同情を失ったのでしょう…これほどまで誰もが弱者なのに。
    ヒルズの頂上にいても、一夜にして弱者に転げ落ちるのを目の当たりに
    しているというのに。

    また、宗教になすべきことはなかったのでしょうか。
    そして無宗教の人間にも、何か参加できるシステムは…でも
    そのシステムを政府主導で作ったら、隣組になりかねない…

  • こんにちは、おひさしぶりです。ホームレスの凍死は心が痛む出来事ですね。しかしTVのニュースはトリノオリンピックやくだらん堀江メール騒動で持ちきりで、底辺の人のことはほとんど伝えませんよね、なぜなんでしょうか、という気持ちです。そういえば先日、また新しい空港が開港しましたね。投資額の回収の見込みはたってないとか。そんな金あるんならホームレス支援にでもまわしてみたらいかがか、と思う今日この頃であります。公共事業するな、とは言いませんが、そんなに全便がパンクするほどの搭乗率で飛行機の便が深刻な不足だ、ってわけでもないんだしさ・・(地元の空港でも直行便減らしまくりです)

  • Chic Stoneさん、RRさん、おひさしぶりです。右派のお二人から「ホームレスの凍死には心が痛む」と、まともな人間の意見を聞くと、少しほっとした気持ちになる自分がいます。そういう当たり前の心情を共有できない方とは、語るべき言葉がありませんから。

    Chic Stoneさん>
    私はやっぱり左翼ですから(苦笑)。でも、そういう立場を離れて言うなら、現実にはNGO、NPOなどの支援ボランティアだけでも、行政だけでも、カバーしきれない所があります。理想を言うならば、野宿者の現状に寄り添って活動している支援ボランティアを軸に、これに行政(自治体)が全面協力していく形が望ましいでしょうね。左翼的には、そのためにこそ、政府を打倒して労働者のための云々ということになりますが。少なくとも現状の「シェルター」や「自立支援センター」などは、野宿者の希望や実態からは乖離しています。「野宿者にはこれで充分、嫌だと言うのはわがままだ」みたいな差別意識も、行政の側に抜きがたくあるように思います。つまりは、生活困窮者への福祉活動ではなくて、「困ったアル中患者の更生」みたいな感覚でいるんだと思います。そんな「当事者に喜ばれない施設」なんて、いくら作っても税金の無駄だと思うのですが。

    具体的にどのような形に変えていくべきかという点については、前にも少し書きましたが、支援者の間でも、いくつかの意見の違いがあるようです。「野宿しなくてもいいようする」という大目的は同じですが、そこにいたる道として、大きくは「シェルター」や「自立支援センター」を、より野宿者の現状にあったものに改良し、そこに野宿者が入れるようにしていくという考えと、そのようなものは不要であり、働ける人には仕事を、働けない(仕事が見つからない)人には生活保護を、しからずんば公園に権利として住み続けるという考えです。どちらにも一理ありますが、野宿者支援はあらゆるボランティアの中でも本当に厳しい部類に入るものですから、何のかかわりもなく、貢献もせず、実態をよく知らない私が軽はずみにどちらがいいとは言わないようにしたいと思っています。

    宗教については、現状でもキリスト者の方々が、かなり積極的に支援に入っておられます。その関係で、キリスト教に帰依する野宿者の方もおられるようです。考えてみれば仏教者の方もこの問題に関心をもってもよさそうなものですが、そんな話はとんと聞かないのは不思議ですね。

    そういえば、欧米では「ホームレス支援」などの救貧活動は「身近なボランティア」の筆頭にあげられますが、日本では「浮浪者」呼ばわり。これもなぜなのかよくわかりません。「貧しくて公園に住んでいる」のが、同情の対象ではなくて「迷惑だ」という人の心理が私にはわからないのです。日本では公共の公園に住む程度ですが、欧米では個人所有の空き家や無人のビルに住んだりしています。それでも人々はホームレスを支援しているというのに。

    RRさん>
    神戸空港は、すぐ横の関空でさえ、事業的に成功していない現状で、いまさらもう一つ空港を作ってどうすんねんというのは、素人考えでもわかることですよね。これで伊丹空港と並べて3つ。そんなに関西人って飛行機に乗ることが多かったっけ?

    税金の使い道ということで言えば、上のコメント欄に「今や5世帯に1世帯が年収200万以下」と書きましたが、残る4世帯が、この1世帯のために金を使うなと言うなら、それは「我慢できる資本主義」の範囲を超えていると思うのですよね。誰が何と言おうと、ホームレスは日本全国にどんどん増え続けています。そして誰もこの問題に手をつけたがらない(票にならないから)。有権者は自分の目の前からホームレスが消えてくれればそれでいいとさえ思っている人も多い。しかしそれでは、今にこの問題は爆発します。フランスみたいに暴動になってからでは遅いですよ。私は自分の税金が、この問題に使われるのなら、非常に納得しますね。

  • >草加さん

     ホントにそのとおりですね。特別会計とやらで、退職した役人を特殊法人とかいう養老施設で高給払って遊ばせているぐらいなら、もっと使うべきところはあるだろう!!って、声を荒げて言いたいほどです。役人の傲慢と政治家の無能には腹が立って仕方ありません。