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カテゴリ: 反貧困呼びかけ

「同一労働同一賃金」の現代的意味

 「ペイ・エクティの実践」という講座の案内をもらいました。「ペイ・エクティって何やねん?」ということですが、要するに「同一労働同一賃金」ってことらしいです。これを客観的な評価基準で算出してみようという講座です。

 それにしても懐かしいフレーズです、「同一労働同一賃金」。かつては女性差別に対抗する標語として盛んに使われました。これに対しては政府や企業も有効な反論が見つからず、カタツムリの歩みながらも前進しつつはある…と思ってましたがねえ。今は女性のみならず、派遣労働者などでこの標語が再びクローズアップされているとか。全く資本主義というのは21世紀の今も19世紀の昔も、手を変え品を変えで少しも本質は変わらない。油断も隙もありません。

 この標語は現代的には「労働ではなく人間の属性によって賃金が決定される」問題として再構築して考えられるべき問題です。同じ労働をしていても、女性だから、派遣だから、アルバイトだから、外国人だから、賃金が安くてもかまわない、それが「当然である」という差別イデオロギーとの闘いということです。

 また、この講座の案内では、「同一労働」といった場合、全く同一ならもちろん、たとえば正社員の労働強度を100として、派遣が50の仕事をしている場合、はたして派遣に正社員の50%の賃金が支払われているのかという問題としても考えるべきであると言います。よく「派遣やアルバイトには責任がないんだから」という言い訳を聞きますが、そこまで言うのなら、もちろんその「責任」分を差し引いた上で、派遣労働者に正当な賃金を支払っているんだろうなお前、ってことです。

 この講座のスタッフの皆さんは、ある会社の管理職正社員と、それに使われている派遣社員(事務職)の職務評価をしてみたそうです。後で突っ込まれないように主観を排してできうる限り客観的に、時間をかけて詳細に判断した結果、社員の労働強度を、その「責任」や「精神的な負担」なども評価した上で100とした場合、同じ部署で働いている派遣社員の労働強度はもちろんそれよりも低く、正社員の74%という結果が出ました。ところがそれに対して、派遣に支払われていた賃金は正社員の17%(!)だったそうです。

 小さな会社の事務職派遣では、残業代はいっさい出ない上に、終電がなくなる深夜まで働いて、帰りのタクシー代は自腹で出すなんてことも当たり前のように行われています。実際、そういう会社の社長さんというのは「それで当然」みたいな前近代的な感覚の人が多く、実際(特に関西では)ちっとも珍しい事例ではありません。これで「彼女には責任がないから」なんて言い訳はいくらなんでも無茶です。ホワイトカラーエグゼンプションとか、年棒制とか実力主義とかいう美名で財界が語っているものの内実は、派遣だけでは飽き足らず、正社員までも「派遣労働者化」していくものであり、「新しい」どころか時代を19世紀に引き戻すものです。

 また、ホワイトカラーのみならず、工場などの現場作業でも、プレスに指をはさまれた女性が「労災を使うなら首にする」と通告され、一言文句を言ったら本当にクビにされたという人に実際に会いました。「腹がたったけど、もうあんな人達に会いたくないから」と言っておられましたが、やはり御用組合でもなんでも、とにかく組合と名のつくものはすべての職場で必要なのだとしみじみ思いました。だってこれではもう奴隷労働じゃありませんか。

 あと、個人的にはこういった派遣や臨時雇い、アルバイト、外国人労働者などの権利をこそ、正社員労働組合は守って立ち上がるべきだと思います。そして私たちは、さらに自分たちよりも「下層」の外国人、野宿者、日雇いなどの権利のために立ち上がる。私たちの利害を守るためにだけ殺されている、海の向こうの人々と連帯して闘う。そういう社会的な利益と団結を守ることが、遠回りに見えても、結局は各国の政府側の分断支配策(不安定雇用と正社員や公務員、野宿者と周辺住民、本国人と外国人)と有効に対決し、明日の私たちみんなの幸福と未来につながっていくと思います。これからの時代はそういう態度がすべての人に求められていると思います。これに対してますます自分たちだけのちっぽけな利害を守ろうとタコ壷化し、自分より「下層」の人々を差別する立場に立つならば、私たちはみんな個別に孤立して敵の思う壺、いいように使われて捨てられていくだけです。

 さて、実は本格的な職務評価をするためには、専門的な知識や各種の客観的なデータが必要で、時間もかかるもののようです。ですが、この講座では「1時間でできるカンタン職務評価」と題し、ワークシートに沿って、担当する職務に必要な、1)技術、2)精神的・肉体的負担、3)責任、4)労働環境の4つの大きな要因について分析し、総合的に評価する簡易式の職務評価方法を教えてもらえるそうです。多少の主観は混じるかもしれませんが、自分がおかれた地位を認識してもらう一つの目安として、この簡易評価方法が広まればいいなと思います。

興味のある方は以下をごらんください。

講座 ペイ・エクイティの実践

同一価値労働同一賃金原則を実際に使ってみよう!
1時間でできるカンタン職務評価!

い つ:07年6月21日(木)18:45~21:00
どこで:ウィングス京都 (地下鉄烏丸御池・四条・阪急烏丸から徒歩5分)
資料代:300円

1.私たちの試み

 京ガス男女賃金差別事件では、同一価値労働同一賃金原則を実質的に認める判決がでましたが、私たちはこの判決を活用して他の職場で実践するために、実際にある職場の事例を検討しました。正規職員(部長補佐クラス)とアルバイト職員の職務評価です。

 どちらも事務職員ですが、雇用形態は違います。「雇用形態が異なれば、職務遂行能力が当然違う。だから非正規雇用の労働力は安くて構わない」という使用者側の意見や政府の労働政策に対して、「本当にそうなのか?違うでしょ」という疑問から、職務評価に取り組みました。

 詳細な職務の分析には時間がかかりましたが、みんなで議論をしながら、できうる限り客観的な評価をして点数化しました。
 結果は、正規職員の職務の価値を100としてアルバイト職員の職務の価値は74%、一方賃金は正規職員の15%でした。仕事の価値を基準に比較すると、賃金の余りの低さに驚愕します。

 このような事例をたくさん作って、実際の職場で賃金格差是正を勝ち取ることができれば、画期的なことです。職務分析と評価は、男女賃金差別や、パートや派遣や契約社員など非正規と呼ばれる人たちの、均等待遇を獲得するためにとても重要な切り口であり手段だと位置付けられます。

2.職務評価をやってみよう!

 本格的にやるには時間のかかる職務評価ですが、均等京都では「1時間でできるカンタン職務評価」を開発しました。ワークシートに沿って、担当する職務に必要な、①技術、②精神的・肉体的負担、③責任、④労働環境の4つの大きな要因について、分析し、総合的に評価します。あくまで性に中立に、また誰が従事するかではなく、仕事そのものの分析・評価です。

 職務の価値を、客観的に点数化することで、労働組合や企業などに積極的に提示し、交渉の手段にできるようになり、また、自分の仕事の重要さを客観的に見直すことができます。

 なぜ職務賃金か?のレクチャーもあり、皆で議論し合いながら、均等待遇への道筋を探りましょう。きっと自分の中の何かが変わりますよ!

 すべての職種と雇用形態を対象とします。ぜひ多数のご参加をお待ちしています。

主催:
 均等待遇アクション21京都
 ACW2京都・滋賀交流会

 http://kinto.blog52.fc2.com/
 宇治市広野町西裏99‐14 パール第1ビル3F
 TEL:0774-43-8734 FAX:0774-44-3102
 Email: k21kyotoアットyahoo.co.jp

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  • 紹介ありがとうございます.
    いま,たまたま,サイトを見ていたら,同一労働同一賃金?へーもしかして今流行ってるの?と思って開いたら,うちのワークショップのことが書いてあってビックリしました!