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反差別

2010.02.13 ドイツ極右デモ 市民らが人間の鎖で阻止

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市長も参加してドレスデン市民が”人間の鎖”で市の中心部を封鎖

 2010年2月13日 ドイツ東部のドレスデンでは、第2次大戦中に受けた連合軍による空爆から65年になるのに合わせて、ネオナチなど極右のグループが、6000人規模の大規模なデモ行進を計画しましたが、これを食い止めようと大勢の市民が、市の中心部を囲むようにして手をつなぎ “人間の鎖” を作りました。
 また、これに呼応してAntifaら左派勢力も数千人が極右集会の会場とデモコースを包囲しました。このため、極右によるデモ行進は行く手を阻まれる形となってごく小規模なものにとどまり、市の中心部には近づけませんでした。

”人間の鎖”をつくった市民の想い

人間の鎖に参加する市民たち(by tonal decay)

 ドレスデンでは、2000年から空爆の追悼日に極右勢力が大規模なデモを行うことが恒例化し、「極右デモのメッカ」として空爆の日のイメージが定着しつつありました。この日も全国から押しかけた6000人の極右がデモを計画しており、ドレスデン市民は自分たちにとって祈りと誇りの中心である、歴史的な市の中心部への極右の立入りを阻止しようとした形です。

 この人間の鎖に参加した市民は1万人を超え、保守派であるドレスデンのオロシュ市長や政治家なども加わって、長さは1キロにも及んだということです。オロシュ市長は「ドレスデンは彼らを望んでいませんし、ここに属していません」と語りました。

 日本人にわかりやすく事態をイメージしますと、戦前の天皇制政府を礼賛する右翼が、毎年の原爆記念日に広島に集結して、「外国人労働者排斥!朝鮮人撲滅!アメリカの原爆投下糾弾!」とか叫びながら、原爆ドームの周りをデモし、原爆記念日が「右翼デモの日」みたいになっちゃった感じです。それで地元民や被曝者、その遺族らがとうとう怒って原爆ドーム周辺を手をつないで封鎖したという感じです。当然ですね。まあ日本の右翼はだいたい属米なんですけど。

左派勢力のカウンターも市民と連携(動画)

左派は極右集会を包囲、デモを阻止された極右は周辺で暴徒化して警察と衝突

 一方その頃、Antifaら左派勢力も数千人が集まり、極右集会の会場周辺のデモコースを封鎖することに成功します。彼らはこれまでとは違う、市民の阻止行動に呼応した行動をとります。極右の集会場とデモコースの路上を封鎖しつつ、自分たちは過激な行動はとらないが、もし極右が地元市民たちの人間の鎖がある市の中心部に向かうなら、その時は阻止行動をとるという態度を示したのです。

 この極右デモに裁判所は許可を与えましたが、同時に極右が市民に危険をおよばす場合には、デモの中止を判断する権限を警察に与えていました。左派は警察にこのデモ中止の判断を促しました。警察は当初、ネオナチらをバリケード内に囲って、左派勢力に放水を浴びせるなどしましたが、最終的に「左翼の抗議行動を止められない」ことを理由にして、極右デモの中止と解散を命じました。

 これによってドレスデンでの恒例の大規模デモを阻止された極右は、一部はそれでもデモを行おうとしたり、周辺の町で散発的にデモを行うなどして警察らと衝突しました。その際に彼らは車や公共施設を破壊したり、道路上に火を放つなどして、29人が逮捕されました。

絶賛された「ドレスデンの勇気」

 ドイツでは翌日の新聞各社が「ドレスデンの勇気」(中道右派系のフランクフルト新聞)などと事件を大きく報じました。また保守派のキリスト教民主同盟(CDU)であるドレスデンのオロシュ市長は「空爆された日を悪用しようとする極右の動きには、断固として反対する」と述べ、大規模な極右デモを防いだことの意義を強調しました。

 同じくCDUのザクセン州のティリッヒ知事も「ドレスデンはネオナチに立ち向かった」と称賛し、ドレスデンの地元紙であるサクソン新聞は「これまで極右によって定義つけられてきた街のイメージは、人間の鎖に参加した10000人の市民によって再定義された」と社説で述べました。

極右デモコースのマリエン橋で、Antifaが警官隊とポーゲンダンスで平和的に「交流」

 市民団体のスポークスマンは「ヨーロッパで最大規模のネオナチのデモ行進を防ぐことに初めて成功した」と述べました。また、ドイツ左翼党の副党首でドレスデン在住のキッピング氏は「2月13日は、ナチスの犯罪から気をそらすために使われるべきではありません」と述べ、中道左派の社会民主党のナーレス書記長は、「私たちの民主主義の完全性は、右翼過激主義と戦う能力にかかっている」と強調しました。

 なお、警察は事前に極右のデモコースを確保することをしなかったので、人間の鎖に参加する地元市民や、デモコース封鎖に向かうAntifaら左派勢力も自分たちの目的地に平穏に到達し、大きな衝突や混乱がおこることはありませんでした。前述の左翼党キッピング副党首も「左翼のアプローチは、治安上の理由から警察にネオナチパレードを中止させること」だと述べています。

 結果として警察のこの比較的穏やかな部隊配置は、ドイツの世論やマスコミから好意的に受け取られ、高く評価されました(弾圧がなかったわけではないので左翼的には不満もあるようだが)。日本の公安の皆さんも教訓になるよね?ね?

注記と参考

参考⇒壊れる前に…「市民の勇気」当日の写真など多数あり
Dresden 13.Februar 2010(by tonal decay
13. Februar Naziaufmarsch in Dresden verhindert (by dielinke_sachsen
A City Mobilizes Against Neo-Nazis(Spiegel international)
ドレスデン爆撃(wikipedia 日本版)
ドイツ本土空爆/ドレスデン空襲(世界史の窓)

注1)ドレスデン空爆
1945年年2月13~14日、アメリカ・イギリス空軍が無差別の絨毯爆撃を行い、都市部を完全に破壊した。犠牲者は3万人とも10万人とも言われ、ドレスデンは「ドイツのヒロシマ」とも言われる。元々ドイツ・バロック建築を代表する有名なツヴィンガー宮殿や聖母教会などがある古都だが、爆撃でこれら文化遺産も破壊された。市の中心部にある聖母教会の廃墟は原爆ドームのように、戦争の愚かさと平和の尊さを伝える遺産として保存されていたが、東西ドイツ統一後に全世界の寄付を募って再建され、現在は「平和のための学びの場」と位置づけられている。

注2)ドレスデン極右デモ
毎年、戦争と空爆の犠牲者を追悼する2月13日に目を付けた、戦前のヒトラーとナチス体制を肯定・礼賛する極右が2000年頃から集まって「空爆抗議デモ」をはじめ、いつしかドレスデン空爆祈念日は追悼よりも極右デモのイメージがついてしまった。参加者の過半数は国民民主党(NPD)系である。NPDは外国人排外のレイシスト、反ユダヤ主義、歴史修正主義の極右政党で、空爆の犠牲者は「数十万人」であると主張している。

   

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