「問題自体が法を犯したものであるならば、カメラマンは法を犯してもかまわない。表に出ないものを引っぱり出して、叩きつつけてやりたいのです」
日本のジャーナリスト界で今も「伝説」と語り継がれる報道写真家・福島菊次郎。敗戦直後の広島で被爆者家族の苦悩を10年にわたって克明に撮り続け、隠ぺいされた広島の実態を暴き出した。以来、三里塚闘争、70年安保、あさま山荘事件、水俣、祝島など戦後日本の時代を象徴する数々の事件を25万枚以上の写真に収めてきた。
しかし保守化が進む日本社会やメディアと決別した後、無人島での自給自足生活を経て愛犬と暮らす穏やかな日々を送っていた。やがて胃がんの切除手術を受け自身の最期を自覚し始めた2011年、東日本大震災が発生。再びカメラを手にした福島は、カメラマン人生最後の取材場所として原発事故の起きた福島へと向かう。
戦後のメディアが報じない真実や国家のうそを暴いてきた反骨の報道写真家・福島菊次郎に密着したドキュメンタリー。確固たる信念で真実を伝えようとしてきた彼の生きざまや、人生最後の取材場所として福島へと向かう姿を映し出す。監督は、数々のテレビドキュメンタリーを手掛けてきた長谷川三郎。朗読をベテラン俳優の大杉漣が務める。