「戦争をする国」に暮らすということが、どういうことなのか…
あなたは本当にわかっていますか?
どの戦争でも、兵士になるのはその国の普通の若者たちだ。
映画「ONE SHOT ONE KILL」が、その入り口を描いたものだとすれば、「アメリカ-戦争する国の人びと」は、若者たちのその後を描いたものといえるだろう。二十歳そこそこの若さで、戦争を経験した人々は、その後、どのような人生を生きてきたのか。ベトナムからイラクまで—アメリカの戦争体験がここにある。
2006年から始まった1年半に渡る撮影の集大成。
⇒上映案内ブログ ⇒この映画の解説
映画は8つの物語から構成されている。
(1)高校、(2)イラク戦争、(3)戦死、(4)先住民、(5)見えない人々、(6)ベトナムの記憶、(7)抵抗、(8)それぞれの春
それぞれ独立しつつ、響きあう8つの物語を通してみるとき、今まで知らされなかったアメリカの本当の姿が見えてくる。
高校生が軍隊について持っているイメージを問えば、「強さ」、「大学の学費」、「社会保障」、「職業訓練」と答えが返る。カリフォルニア州バークレー高校。日々、軍隊の勧誘と宣伝のターゲットとなる高校生たちに、元教師のスーザン・キンランと元海軍兵士のパブロ・パレデスが、入隊を決める前に考えてほしいと、軍隊の実情や経験を語る。(30分)
イラク帰還兵たちが、戦場での経験を語る。間近に目撃した死、人を殺す経験、PTSD、劣化ウランによる被曝、そして彼らを支える家族たち。イラクやアフガンでの戦争にすでに150万人以上のアメリカの若者が送られた。(79分)
イラクでの米軍の戦死者も4,000人を越えた。2004年4月にバグダッドで戦死したケーシー・シーハンの母シンディ、2004年8月にナジャフで戦死したアレックス・アレドンドの父、カルロスにとっても、他の4千余名の家族にとっても、子供を失う悲しみはは永遠だ。(31分)
メキシコ系住民が多数を占めるサンアントニオ市にあるケリー空軍基地。周辺住民や基地労働者は、多発するがんや白血病に苦しめられ、健康被害は子や孫にも及んでいる。アメリカは戦争を繰り返しながら、領土を拡大してきたが、テキサス州もかつてはメキシコだ。住民たちこそ、元々、この地に暮らし続けてきた人びとの末裔なのだが…。(42分)
アメリカでは、350万人がホームレスと言われている。ワシントン州サーストン郡(人口24万人)でも、その数は700人を超える。とてもシェルターには入りきれない。人目を避け、森の中に暮らす人びと…。ホームレスの3人に一人は、イラク、アフガン、ベトナム、コソボ、パナマ・・・様々な戦争を経験した元兵士たちだ。(68分)
のべ260万人の米軍兵士が送られたベトナム戦争。終わって30年以上経つが、多くのアメリカ人にとって、それは未だ脳裏を去らない出来事だ。かつての若者たちは、ベトナムで何を見、その後どうやって生きてきたのか・・・3人の帰還兵が語る。(66分)
アメリカの歴史は戦争の歴史。しかしそれは同時に、戦争を拒否した兵士たちの歴史でもある。それぞれの時代に、抵抗し、戦争を拒否した兵士たちがいた。ベトナム戦争、湾岸戦争、そして、今日も続くイラク戦争でも。(109分)
共に歩く伴侶を得たり、家族が増えたり、元兵士やホームレスの人たちの暮らしにも、少しずつ変化が訪れる。前に向かって歩き始めた人びとがいる一方、ホームレスの暮らす森では殺人事件も起きる。ブートキャンプ(新兵訓練所)を卒業して、若者たちはまた、戦場へ送られてゆく。いまだ終わらぬ戦争に、今日も声を上げ続けるおばあちゃんたち。旅の終わりに訪れた2008年、それぞれの春の景色。(69分)