「さらば わが同胞よ この私の死と最後の言葉が むだでない事を祈り 別れを告げる」
アジェンデ政権の誕生から反動派との闘い、そして1973年9月11日の軍事クーデターによる崩壊までを、事実に基づいて描いたドキュメンタリー・タッチのドラマ。
クーデターの発生から首都サンティアゴを中心にした各地の市街戦、軍事評議会による権力掌握を経て、詩人パブロ・ネルーダの葬儀にいたる10数日間の出来事を軸に、並行して、登場人物の一人である外国人記者の回想という形で、サルバドール・アジェンデの大統領当選からクーデターに至る流れが描かれる。俳優を見せるのではなく、事件そのものを語る手堅い演出が、重厚な印象を与える。
製作はジャック・シャリエ、監督はチリからフランスに亡命したエルヴィオ・ソトー。A・ピアソラの美しいメロディが惨劇を際立たせる。(1975/フランス・ブルガリア合作/114分)
※サンチャゴ(サンティアゴ)はチリの首都。年間を通じて降水量が少なく、特に夏季はほとんど降らない。「サンチャゴに雨が降っています」はラジオが伝えたクーデター発生の暗号。