釜ヶ崎は東京の山谷と並ぶ古くからの大阪の下町。日雇い労働者や下層労働者が多く住んでおられ、とりわけ年末年始など仕事のなくなる時期には大量の労働者が野宿を強いられ、餓死者や凍死者が出ることもあります。
毎年この時期には、釜ヶ崎の当事者団体に労組・宗教者・左翼・市民団体・ボランティアなどが協力して共同で越冬活動に取り組んでおられます。12月25日~1月10日までの越冬期間のうち、私も本当に微力ながら1月3日~5日までボランティアとしてお手伝いに行ってきました。
第37回 釜ヶ崎越冬闘争
期間:2006年12月25日~2007年01月10日(スケジュール詳細)
『越冬まつり』(大晦日~正月3日)会場:釜ヶ崎三角公園
※以下、画像クリックで拡大表示(スマホの方は横にしてご覧下さい)
私が参加させていただいた正月3日は越冬まつりの最終日。炊き出しに並びはじめた労働者。最終的にこの数倍の人数になりました。三角公園(萩之茶屋南公園)に常設されている炊き出し小屋は、地域当事者の努力と全国からのカンパ・寄付で維持されています。
この日は西日本を中心に活動するプロ・アマのミュージシャン、ダンサーたちによるボランティア公演です。日雇い労働者の方もひときわ大勢こられます。ここに出演することで尊敬もされるけど悪く言う人もいる。それでも参加されるアーティストには尊敬を!
一方でボランティアの人々を監視する公安刑事たちの姿も(上右)。資本の都合で痛めつけられる貧者が助け合って生きることをなぜ弾圧対象にするのはやめてください。欧米ではこういう「救貧活動」はごく普通にボランティアのメニューに入っています。生きることは犯罪じゃない!控えめに言って「とっとと帰れ!」と思ってしまいました。
コンサートはじまりました。労働者たちがどんどん集まってきます。
やがて、しばしの間、苦労も悲しみも忘れて陽気に踊りだす労働者たちの姿に、私も楽しくて笑顔になると共に涙がこぼれそうになりました。
このグループの最後の曲です。
労働者たちの反応に、演奏にもどんどん熱がこもっていきました。最後に、舞台に駆け寄ったお年寄りと女性の労働者に、メンバーの女性が手を差し伸べると、女性労働者は何度も「来てくれてありがとう!ありがとう!」と握手。お年寄りは拝むように額をさげておられました。
つづいてはメジャーデビューもはたしたヒップホップのSHINGO★西成さんが登場。友人のプロダンサーと共に盛り上がりました。
その後も多彩なミュージシャン、アーティストたちが駆けつけてくれました。
野宿者労働者たちの命を守る焚き火は文字通りの意味で、厳冬期に生死を分ける生命線となります(下左)。
公園に常設されている炊き出し小屋もボランティアの皆さんでフル稼働。昼間は炊き出しに高校生のボランティアグループも参加しておられるそうです。炊き出しは地域の野宿当事者の努力と全国からのカンパ・寄付で維持されています。
太鼓の演奏には労働者とボランティアの皆さんが手をとって共に踊りました。
なおも演奏はつづいて夜はふけていきました。
医療センター前の軒下を借りて野宿者のための布団敷き活動。
このあと、釜ヶ崎の地区外まで野宿者への声かけ・医療パトロールに出発。一人の凍死者も出さないを合言葉に、深夜まで野宿者への声かけ、健康状態の確認などをおこない、医療センター前の布団を利用するよう呼びかけました。
同じ時期、東京の石原知事は都庁舎前に避難してきた野宿者を布団どころか雨の深夜にまで叩き出すという殺人行為をおこなっていたのです。
あけて1月4日。釜ヶ崎地区から離れた天満駅近くの扇町公園テント村にて朝を迎えました。
ここは比較的に行政からの撤去圧力が弱いため、近隣住民とも普通にご近所つきあいをしていて、住民が旅行のさいに野宿者がテントで飼い犬を預かるなど、関係がとてもいいそうです。実際、私がいる間も、近隣のご婦人が犬の散歩中に野宿者と世間話などしていました。野宿者は公園や公衆トイレの清掃を頻繁におこない、夜中に騒ぐ迷惑な人たちに注意を行うなどしておられ、「ここにいる以上は近所の役にたたないといけない」と語っておられました。
私はどこでもかしこでも、どうせ貧者に対する世間の目は冷たいのだろうと思い込んでいましたが、それは思い込みで、普通に同情くらいはあると、近隣の人の理解が得られるかどうかは、結局は行政がどういう扱い(宣伝)をしているかにかかっているのだと左翼系のボランティアの方から教えられました。
行政が野宿者に強行で、ロープで封鎖したり立札を立てているような公園では、近隣とのご近所つきあいもなく、逆に貧困に無理解な子供たちが、通りがかりに面白半分で石をぶつけて野宿者にケガをさせるようになるんだそうです。悲しいことです。
1月5日、大阪市役所前の中ノ島公園で、野宿者たち自身による「給食活動」のお手伝いをしました。
給食活動は、野宿労働者の皆さんが自発的にはじめたもので、自分たちで空き缶を集めて資金を作り、材料を買って自分たちで調理し、自分たちで食べる、支援ボランティアはあくまで脇役であり、対等の仲間としてそれに加えてもらうという試みです。
高齢者や体をこわしている人もいる中、みんながみんな同じだけの仕事をしているわけではない。けど、とくに大上段にかまえたり確認しあったりすることもなく、みんな『能力によって働き、必要によって受け取る』、『ひとりがみんなのために、みんながひとりのために働く』ことを、最初から当たり前のことだと思って誰も疑問に感じない。そんな野宿者たちと共にいると、とてものびのびとして自由でいられます。
私は都合でこの日が最終日でした。
ボランティアとして参加させていただき、かつてに比べて野宿者の数もはるかに増え、地域も市内全域に広がっているように思いました。越冬活動も、もはや以前のように釜ヶ崎地区だけにとどまっていることができなくなってきています。当事者団体と支援の人々の力にも限界があり、社会的な支援(というか社会そのものの変革)が求められていると感じました。
★第37回 釜ヶ崎越冬闘争越冬闘争スケジュール★
2006~2007年
第37回越冬闘争を闘おう!
安心して働き、生活できる釜ヶ崎を!
実状にあった対策で! 野宿しなくてもよい施策を!
格差社会を作るな!
平和憲法を守れ! 憲法改悪反対!
スケジュール
*医療センター前布団敷き
12月25日~1月10日 午後7時~翌朝5時
場所 医療センター前
*医療パトロール
12月25日~1月10日 午後9時45分~12時頃
医療センター前集合
*人民パトロール
12月30日~1月3日 午後8時~10時
*シェルターは12月30日~1月4日休止
*炊き出し
場所 三角公園
12月25~30日 昼
12月31日 昼、夜(年越しそば)
1月1~3日 朝、昼、夜(3日夜は沖縄そば)
1月4~10日 昼
*越冬まつり
12月31日~1月3日
31日 さっちゃん&バナナーズ、のど自慢大会、曽根恵子さん他
1日 三角公園バンド、労働者名人会、水木美穂さん他
2日 安倍弘江さん、労働者名人会、船曳奈保子さん他
3日 ヘンリー松山&東雲マリ、シンゴ西成&Friends、のえ&Friends他
出演者募集
主催:第37回釜ヶ崎越冬闘争実行委員会
大阪市西成区萩之茶屋1-9-7釜ヶ崎日雇労働組合気付
06-6632-4273