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反貧困

長居公園からの強制排除抗議行動ご報告

写真は「釜パトブログ」より

※追記:動画コーナーに当日の映像をアップしました。是非ごらんください

 前日の夜より、長居公園の強制排除抗議行動に行ってきました。 呼びかけさせていただいた皆様へ、もっと詳細な報告を書かねばと思いましたが、とりあえずのご報告を「速報版」のつもりでアップいたします。転載は自由です。

 私は、せっかく完成させた新品の「旗旗2号(手押し宣伝カー)」をボコられたことと、大声を出しすぎて声が出なくなったことを除けば、無事に帰還することができました。うにさんら、いっしょに参加した方々も無事でしたが、ジャンケ君は足を捻挫して、歩くのがかなり辛そうでした。

 さて、抗議行動ですが、朝になって市の職員が集まりだしたところを見計らって、一番手前にあったテントの屋根(ブルーシート)がはがされはじめました。「野宿者が自分でテントを撤去しはじめたのか?」と言えば、さにあらず、なんと、シートの下からは、今まで隠されていた芝居用の舞台(櫓)が姿を現したのです!こんなものを極秘に作っていたとは!

 そして居並ぶ市の職員、ガードマン、報道陣、野次馬、支援の人々を前にして、舞台の上では今回排除される人々による寸劇がはじまりました。さすがに「女優」は支援の人のようですが、順番に排除当事者の人達が主役になって、大阪市を風刺し、ホームレス問題を訴える劇が次々と上演されていきます。基本的にはドタバタ喜劇風ですが、脚本から衣装、メーキャップ、小道具にいたるまで、すべて排除される当事者の皆さんの手作りです。

 支援団体の人々は、舞台の下を3重のスクラムで座り込んで守っています。その数約50人。さらにその外側に私達のようは個人参加の人々がいるという感じ。支援側は総勢約200人。市側の排除部隊は約500人くらいです。

 実は当事者の方々は、自分たちがすべてを奪われて追い出されることを覚悟していました。そして長年住み慣れた長居を後にする最後の最後に、自分たちの思いを精一杯表現する行為として選んだのが、単なる「阻止行動」によるぶつかりあいではなく、この「芝居」だったのです。

 これこそが、非暴力不服従と、当事者の思いを優先する「長居スタイル」そのものでした。事前に私たち支援が決めたことは、「無用な衝突で逮捕者や怪我人を出さない」ということと、そして「何が何でもこの芝居が終わるまでは舞台を守って持ちこたえよう」ということの二つでした。

大阪市の全体指揮者

 市の対応は、私が野宿労働者支援の立場にいたから言うのではなく、本当に血も涙もないものでした。舞台を取り囲んでスピーカー3台で、何の意味もなく芝居の邪魔までした。
 私が「もう排除されることを覚悟しての芝居なんだ!君たちには血も涙もないのか!せめて芝居が終わるまで邪魔しないでくれ」と訴えますと、指揮者ではない二人はためらいを見せて妨害をやめましたが、市の部隊指揮者だけは、よけいにこれみよがしな大声で妨害をはじめ、あまつさえ、舞台を防衛している人達に罵詈雑言を浴びせかける(姑息にもカメラを向けるとやめる)始末でした。

 やがてこの全体指揮者の雰囲気がだんだんと一般職員に伝播していき、同じ排除するにあたっても、徐々に一人を数人で逆さに吊り上げて地面をひきずり回すというような非道な方法にエスカレートしていきました。

 もともと本来の「非暴力不服従運動」とは、暴力はもちろん、罵倒なども行わないことが基本です。あらかじめそのことは支援にも伝えられていましたが、あまりといえばあまりの酷さに、こらえきれない罵倒が飛ぶ場面もありました。私も思い切り罵倒してしまいました(ごめんなさい)。でも、この全体指揮者に対するあまりの怒りのため、怒髪天をついて手や足もブルブル震えてカメラも持てないくらいの状態になり、とうてい我慢できるようなものではなかったのです。

 そうやって次々と無抵抗の仲間たちが無意味な暴行を受けて排除され、住人たちのテントが目の前で粉々に破壊されていくという修羅場の中で寸劇は進み、出演者たちはそれでも笑顔を絶やさずに立派に劇をやりぬきました。そして結果的に私たちは、すべての長居の仲間たちが主役をつとめて劇が全部終わるまで、満身創痍になりながらも、舞台を守りきることができたのです。私たちは今日の闘いに勝利したのだと信じます。

 何人もの方々から、携帯電話への転送メールをいただきました。それらはいよいよ舞台が破壊されそうになって必死にこらえている仲間たちに向かい、お名前はふせた上で「旗旗2号」を使って読み上げ、確かにお伝えしました。「この瞬間にもあなた方を全国の人達が応援しているのだ」と、そして「市の蛮行をこの瞬間も監視・抗議しているのだ」と。

 途中ははしょりますが、全員が排除されてしまった後、広大な公園の片隅に避難した私たち支援全員に向かって、今まで笑顔を絶やさずに演技してこられた長居公園の当事者の方が最後の挨拶に立たれました。すべてを奪われ、まだ劇の扮装をしたままの彼は、私たちにむかって体が折れてしまうのではないかと思うくらい深々と礼をされながら、この時にはじめて涙で声を震わせて「今日はほんとうにありがとうございましたぁ!」と叫ばれました。その姿はまるで名優がカーテンコールに立っているようでした。そしてそれにふさわしく、「観客」からも万雷の拍手と共に、「よくやった!」「最高だった!」という掛け声が飛びました。

 私はこの時の光景を思い出して、今も涙が止まりません。
 確かに市側の指揮者によって、人間の嫌な面もたっぷり見せ付けられました。しかしそれと同時に、もう二度と見ることのできない最高の舞台を見れたこと、どんなに虐げられても人間の明るさを失わない尊敬すべき人々とたとえ一日でも連帯できたこと、そして、この素晴らしい一瞬に同席できたことを、私は心から誇りに思います。もう少し「人間」を信じて生きてみようと思います。

訂正と補足(02/24)

当日、現場におられた方より、このエントリに関して、以下のようなメールを頂戴いたしました。

 私の気づいたことで、唯一事実に反するのは、代執行当日の文章でお芝居の説明の箇所。 「排除当事者の人達が主役になって」というのは、かなり正しいですが、実際に役者で公園住人だったのは4人でした。 内容的にも「大阪市を風刺し、ホームレス問題を訴える劇」ではなかったはずです。
 たしか「夢からさめた夢」というのが劇の題名(だったとおもう)で、それぞれが自分の夢を見ながらほかのひとの夢にも混ざりながら場面が展開していくという感じのものでした。すごいせりふが詩的で、ドタバタ喜劇風というのでもない。脚本から衣装、メーキャップ、小道具にいたるまで、すべて排除される当事者たちが作成というのはそのとおりです。
  私は、お芝居が大阪市を批判したり風刺したものでもないこと、役者も当事者だけで構成されているわけでなく、「支援者」やほんとのご近所さんとか演出が上手なひとがいっしょになって作り上げたっていうことが素敵だと思ったので、ちょっと訂正補足しときます。

 市の妨害のせいでセリフがちゃんと聞こえなかったこともあり、芝居の内容をしっかりと把握せずに、ぱっと見の印象だけで適当なことを書いてしまい、すみませんでした。そうですか、それは本当に素敵なことでしたね。当日の攻防にだけちょこんと参加していた底の浅い取り組みしかできていなかったこと、今は恥じるばかりです。訂正をいただき、心より感謝申し上げます。

その他の体験記

長居公園の芝居のこと(キョートット出版)
長居公園テント村「劇団パニック」と、(ブルーテント村とチョコレート)
強制排除される人々(未定稿@京都)
長居公園、行政代執行(モジモジ君の日記。みたいな)
長居から戻って(Arisanのノート)

長居公園行政代執行の当日(シャノワールカフェ別館あるいは黒猫房主の寄り道)
「怒号が飛び交った」について(モジモジ君の日記。みたいな)
帰るとこねぇや(勝つ時だって、あるだろう
大阪市の長居公園での行政代執行(A&U大阪)

◇(参考)写真で見る長居公園行政代執行抗議行動(アッテンボローの雑記帳)
◇(参考)長居公園行政代執行抗議行動の写真(アッテンボローの雑記帳)
◇(参考)写真報告・野宿者強制排除反対!関生支部が支援闘争 (KU会通信)

リアルタイム報告

◇壊れる前に…
長居公園六時半 ・七時半 ・八時 ・八時十分 ・八時二十分
八時半 ・八時四十五分 ・九時 ・九時半 ・九時四十五分
九時五十分 ・十時十五分 ・十時五十分 ・十一時 ・十一時二十分 
十一時四十分 ・十一時四十五分 ・十二時
長居公園、2007年2月5日

◇釜パト活動日誌
様子職員 ・開演 ・代執行開始 ・テント
舞台 ・撤去 ・現在 ・抗議
作業 ・排除 ・排除2 ・代執行 ・明日

感想・論評など

長居公園の事など(ですぺら)
長居のこと(あおざかの買い物日記)
公園にも寝られない人はどこで寝る?川か?山か?(つぶやき手帳)
ひとつのテント村が消え、残ったもの 長居公園のこと(P-navi info)
長居公園代執行約1周年(反戦生活)

やっていることがめちゃくちゃだ!!(あるいわき人の叫び)
長居公園を見てるぞ(ニャンケのブログ)
屋外生活者排除の大阪・長居公園強制代執行を糾弾する!(アフガン・イラク・北朝鮮と日本)
【大阪】長居公園での行政代執行が示すもの(今日の出来事)
「長居公園ホームレス強制排除」…非人間的非業に断固抗議する!! (dr.stoneflyの戯れ言)

野宿者の居住権─不法なのはどちらか(モジモジ君の日記。みたいな)
投稿できず?(農家便り)
ボクらはなんらかの方法でつながることができる(なのなの勢力)
長居公園野宿労働者テント村の排除に抗議する(SiteBites Blog)
長居公園での「行政代執行」(兎美味し蚊の山)

貧困と闘わずにホームレスと戦う日本と、ホームレスを援助して貧困と闘うフランス(村野瀬玲奈の秘書課広報室)
安倍恥を知れ,ホームレスの強制排除をする国と生存権を保証するフランスの違い(青山はここにありました::社会批判がてんこ盛り!!)
大阪市強制代執行とフランスのホームレス事情(言ノ葉工房)
ホームレスと闘わず、貧困と闘いましょう!by玲奈さん(言ノ葉工房)
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なんで「行政代執行」せなアカンねん?!いつでも立ち退くで!(路傍たたずみ見つめている)

コメントを見る

  •  お疲れさまでした。旗旗2号は蹴倒されたようですが、ご無事でなによりです。
     運動圏外の知人10名ほどに事件を連絡しました。反感をもたれそうな人は外していましたが、そのなかの一人の詩人が大阪市に抗議メールを送っていれたそうです。その女性は左翼ではありません。だから、僕はとても嬉しかった。

  • トラックバックが文字化けしてしまいましたのでコメントします。

    支援ご苦労様でした。
    私は大阪市へ抗議署名を送ることと、弱いものイジメとしか言いようのない無法な大阪市の行為に厳しい監視の目を向けることしかできませんでした。
    でもこんなことを許していたら本当にこの国が「美しい」国になってしまいそうで恐ろしい限りです。

  • はじめまして。私はAASJA京都という学生団体に所属しているものです。
    私たちのメンバーも長居強制排除の場にいました。私は行けなかったのですが、行ったメンバーから報告を受けました。
    彼らが「まだ上手く説明できない。心の整理ができない」と言った気持ちが、こちらのブログを読ませていただいて少し分かった気がしました。

    今回は仲間だ!!と思って、コメントさせていただきました。
    また記事を読みに来ます。
    では

  • はじめましてスゥさん。このサイトの世話人で草加耕助と申します。
    もちろん仲間ですとも。まあスゥさんも私も「仲間」のストライクゾーンが広そうですけれども(笑

    とりあえず今は、つなっがっていける可能性のある人、あるいは全面的には無理でも、つながっていくことが可能な分野ではどんどんつながっていくべき時です。またいらしてください。これからもよろしくお願いします。

  • 上杉氏のトップページに行く前にここへ→【旗旗/ 長居公園からの強制排除抗議行動ご報告(速報版)http://t.co/8AfBq3oF8V
    そしたら行こう→釜パト活動日誌1・30靭・大阪城代執行弾劾! われわれは、この日を決して忘れないhttp://t.co/vfh8e4EUHE