使用曲:小原努「雪合戦」
いわゆる「ホームレス問題」が世間の耳目を集めていた2007年2月5日。大阪市は前年のうつぼ公園・大阪城公園に続いて、貧困のゆえに長居公園に避難生活をしていた野宿労働者を襲撃し、もっとも寒さの厳しい真冬にその荷物のいっさいを奪い、破壊した上で暴力的に叩きだすという、非人道的な行為をおこないました。
政党や政治家が無視する(票にならないから)中、法律要件も満たさない強引な排除には、法律家・研究者・実務家などから抗議や疑問の声明がだされ、国際的にもフランスや香港や日系人の多いブラジルなんかの人権団体が事態に注目し、大阪市に連続的な叩き出しの再考を求める声明を届けるにいたっています。
「公園から排除したって何の解決にもならない」…無責任な大阪市政に強制排除の中止を求める署名には近隣のみならず、5000筆を超える市民・住民が署名しました。話を聞いた地元の学校の子供たちから野宿者に「がんばってね」と書かれた、ハートの貼り絵つきの色紙が届けられました。
ですが、これらの疑問を無視して開き直った大阪市は、当事者すべての声に一度も回答することなく、無言のまま既定方針を変えなかった。
当日は、大阪市の暴行に対する「阻止行動」は行われず、野宿当事者、支援の人々、近隣住民らが共同して作り上げた演劇を、破壊活動を行う市の職員の前で演じ続けるという、徹底した非暴力の抵抗運動が行われたのです。集まった人々は当事者の意向を尊重し、市の破壊活動にはいっさい抵抗せず、ひたすら舞台のみを非暴力の座り込みだけで防衛し続けました。
こういうすべての人々の思いは市の職員たちの心に届いたのでしょうか?それはこのビデオをみてあなたが判断してください。
故エドワード・サイードは「相手(敵)よりも倫理的に高いレベルの闘いが必要だ」ということを説いていたが、長居公園でこのとき起こったのは、そういうものだったのだと思う。実際にほとんどの職員たちは命令に従って動いた。長居のテント村は取り壊されてしまった。住みかを失った人が何人も出た。 しかし、ここで最後まで行われようとしていた対話の可能性は消えることはない。語りかけられた言葉は消えはしない。私にもその言葉は響いてくるものだ。
(ブログp-navi-info 「ひとつのテント村が消え、残ったもの」より)