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反戦反安保

発言者レジュメ集~2021年東アジアはどう変わるか?12・6討論集会

12・6討論集会
レジュメ集

2021年 東アジアはどう変わるか?


 今月6日に反戦実行委員会の主催でおこなわれた「2021年東アジアはどう変わるか?12・6討論集会」に参加してきました。政治学者の纐纈厚(こうけつ・あつし)さんの提起をはじめ、過去と現在の状況を確認し、来年からの情勢を語りあう、大変に内容の濃いものでした。

 特に印象に残った部分を、感想の形でまとめようと思いましたが、その前に、当日いただいた発言者のレジュメをご紹介しておきます。特に纐纈さんのレジュメはかなり詳しい長文です。
 年の瀬です。それぞれ自分なりに内容を咀嚼して、来年からの人生も悔いのないよう生きていきましょう。

発言者レジュメ
基調講演:敵基地攻撃論は何を意味するのか
 /纐纈 厚(こうけつ・あつし)さん(政治学者)
■ 沖縄から菅政権にどう立ち向かうか
 /大仲 尊(おおなか・たかし)さん(沖縄一坪反戦地主会関東ブロック)
■ 労働者の目で見る2021年東アジア情勢と闘争
 /金 恩享(キム・ウニョン)さん(韓国サンケン労働組合副支会長)

敵基地攻撃論は何を意味するのか/纐纈厚

(政治学者、山口大学名誉教授・明治大学特任教授)

敵基地攻撃論をめぐって:専守防衛論から先制攻撃論へ

1.イージス・アショア配備の意図は何だったのか

● 秋田市(新屋):訪問と講演(2019.11.16-17.)、防衛省との交渉(2019.11.19.)と集会開催→配備予定地(陸自演習場内)と市街地とは至近距離/萩市(むつみ地区):陸自演習地内予定地には山口在住時代に何度も訪問。湧き水が豊富で農業・酪農業が盛ん

● 突然の中止から停止への動き(2020.6.15.)、配備阻止の運動の成果の側面も。

● 安倍前首相が、イージス撤回にかわる「敵基地攻撃能力を含む安全保障戦略の見直し」方針への言及(2020.6.18.記者会見)

● イージス・アショアも、迎撃基地として宣伝していたが、実は攻撃ミサイル基地を想定(Mk41弾道ミサイル発射機)
=イージス・アショア断念の背景=それは「ブースタアの落下問題」ではなく、米のINF(中距離核戦力・Intermediate-range Nuclear Forces)条約離脱に起因する。防御的で不確かなイージスよりも、攻撃的な兵器の導入を図る

● だが「核持ち込み」はしないとの国是に反する。世論の説得は不可能?アメリカも簡単には日本への核兵器持ち込みは是認しない。となれば自衛隊が独自に巡航ミサイル開発実践配備に乗り出すことで代替(すでに研究開発中)

● 自衛隊の「南西諸島」重視戦略=「南西諸島防衛線」の形成(奄美大島と宮古島に自衛隊の新部隊が発足 2019年3月)

● 宮古島警備隊は現在約800名の隊員で構成⇔奄美大島から沖縄本島、石垣島、宮古島、与那国島を結ぶ長大な自衛隊基地ネットワークが形成されている⇔「三海域封鎖」(東シナ海・黄海・南シナ海)☞米軍グアム基地の前衛基地が主要任務に

● 実働部隊としての「水陸機動団」(日本版海兵隊)が創設(2018年):米軍海兵隊と同一装備=水陸両用戦闘車やエアクッション型揚陸艇及びオスプレイの配置(現時点で木更津、次に佐賀空港)

2.「敵基地攻撃能力」論浮上の背景と三つの問題点:平和主義と「専守防衛論」の放棄

⑴軍事技術と軍事戦略上の問題:

● 固定式発射ミサイルシステムの有効性への懐疑

● 中国のA2/AD(接近阻止・領域拒否: Anti-Access/Area Denial)戦略への対応変化=軍事的衝突の潜在的可能性から現実的可能性へ(アメリカの読み解き)

● 日本にも攻撃型弾道ミサイルの導入を要求

● 最終的に政府・自衛隊は、洋上発射の巡航ミサイル(最終的には8隻のイージス艦配備による洋上移動攻撃基地として位置付けようとしている)=海自主導の動き顕在化

⑵憲法上の問題:

● 憲法9条の全面的否定☞集団的自衛権+安保法制により実態としては超憲法的レベルでの自衛隊軍事戦略が練られている。国連中心の集団安全保障体制をも事実上無視する格好で日米共同作戦が念頭に。

● 自衛隊の「専守防衛」戦略の事実上の放棄、9条による自衛隊統制の決定的空洞化。

● 「敵基地攻撃」が自衛隊の新規範となれば、そのことを持って現在進行している攻撃型装備体系がソフトの面において許容・担保されることに。

⑶日本自衛隊戦力が槍に:「専守防衛」戦略から〝攻勢戦略〟への大転換

● アメリカの対中国・対ロシア封じ込め戦略のなかで第一攻撃軍としての自衛隊の役割が全面化する事態に
⇒自衛隊は「専守防衛戦力」を一層空洞化させ、「動的防衛力」「攻勢的防衛力」など、新たな用語によって「抑止力強化」を打ち出す
⇒「抑止力論」自体の問題性(懲罰的抑止力と防御的抑止力の二分法の限界性)
*以上、纐纈「イージス・アショアの後に来るもの」(本稿に添付)を参照されたい

● 1970年度の『防衛白書』(中曽根康弘防衛庁長官時代)から

《専守防衛とは》「専守防衛の防衛力は、我が国対する侵略があった場合に、国の固有の権利である自衛権の発動により、戦略守勢に徹し、わが国の独立と平和をまもるためのである。したがって、防衛力のおおきさ、およびいかなる兵器で装備するかという防衛力の質、侵略に対処する場合いかなる行動をするかという行動の対応等、すべての自衛の範囲にかぎられている。すなわち、専守防衛は、憲法を守り、国土防衛に徹するという考え方である。」➔「先制攻撃」の排除が謳われる

《保有可能な兵器とは》「他国に脅威を与えるようなもの、たとえば、B52のような長距離爆撃機、攻撃型航空母艦、ICBM等は保有することができない。」➔アメリカが敵基地攻撃及び核攻撃用として開発したF4EJ導入にあたり、空中給油装置や爆撃照準装置を外す措置を採用⇔敵基地能力への転化に歯止めをかける〔田中三原則〕

■1980年代=1970年代の歯止めが1980年代に入ると箍が外れ始める➔F15 爆撃照準装置及び空中給油能力を保持されたまま配備➔「敵基地攻撃能力」の保有開始は、実は1980年代から開始されている

■1990年代から2000年代にかけての、所謂〝北朝鮮ミサイル〟の脅威への対応論から「国民保護法」「集団的自衛権」「安保法制」と一連の法整備と並行して、「敵基地攻撃論」が具体的に浮上

➔作為された「脅威」の前に専守防衛論も憲法が約束した平和主義も骨抜きに➔額賀福志郎防衛長官が、ワシントンで「先制攻撃容認論」(2003年4月30日付 東京新聞)をぶち上げる

➔「座して死を待つ」論の賛否と先制攻撃は自衛範囲という議論

● 以上の議論を経て、2017年3月、小野寺五典元防衛大臣を座長とする「弾道ミサイル防衛に関する検討チーム」が設置(秋田&山口へのイージス・アショア配備を盛り込む)

3.自民党・菅政権の危険な安全保障政策:本格化する軍事大国への道

⑴自民党国防族・自衛隊は何を構想企画しているのか:

● 自由民主党政務調査会「国民を守るための抑止力向上に関する提言」(2020年8月4日)から

(わが国を取り巻く安全保障環境)
「非対称的な軍事能力の獲得のため、技術の優位を追及している。このように、現在のわが国を取り巻く安全保障環境は、厳しさと不確実性が増大している。」

(ミサイル脅威の増大)
「弾道ミサイルのみならず、極超音速の巡航ミサイルや大量の小型無人機によるスフォーム飛行といった新たな航空脅威への対応も喫緊の問題となっている。」

(ミサイル防衛の課題)(日米同盟の抑止力・対処力)

【提言】
1.(総合ミサイル防空能力の強化)
 ⑴イージス・アショア代替機能の確保
 ⑵航空脅威の増段・多様化への対応
2.(抑止力向上のための新たな取組)
 ⑴日本の基本的役割分担の維持と同盟全体の抑止力・対処向上
 ⑵抑止力を向上させるための新たな取組
 ⑶ISR(情報収集・警戒監視・偵察)等の関連能力の強化
3.(関連施策の推進)

自衛隊のミサイル部隊
⑵「敵基地攻撃」論は古くて新しい問題:

⑴船田答弁(1956.2.29.)=「敵地攻撃は法理的に自衛の範囲に含まれる。」

⑵伊能答弁(1959.3.19.)=「敵地攻撃と憲法の趣旨の意は、別個の問題で、決して矛盾するものではない。」

● 以上の答弁以降、「敵地攻撃」論は水面下で伏在。近年、北朝鮮や中国の「ミサイル脅威論」と集団的自衛権行使容認と安保法制を契機に本格浮上。同時にアメリカによる日本の弾道攻撃ミサイルシステムの整備要求高まる(その一環としてイージス・アショア配備論が先行)

● 抑止力(懲罰的抑止力と防御的抑止力)論の活性化
➾懲罰的抑止力論の受容
➾私見に過ぎないが、それを「動的防衛力」や「攻勢的防衛力」などの新用語で説明する可能性

⑶自衛隊の「防衛戦略」の事実上の放棄と攻撃兵器の導入:

● 確証破壊戦略(mutual assured destruction; MAD)論への傾斜が今後俎上に。

● 導入を検討されている攻撃ミサイル兵器。自衛隊戦力の盾から槍への変貌の象徴として

■巡航ミサイルで最新型のトマホーク・ブロック4=(能登半島付近に設置すれば朝鮮半島全域と北京までが射程圏内に。近々では2018年4月に米水上艦や潜水艦からシリアに105発が発射)

「憲法やぶり、専守防衛くずし」を阻むために

連合政権樹立への一里塚としての野党と市民の共闘体制の前進を!!

集団的自衛権問題研究会の提言:「敵基地攻撃能力ではなく北東アジアの軍縮協議を」(『世界』2020.10)に示された提言は極めて重要

1.対中・対ロ・対朝鮮を対象とする軍縮協議を民際交流レベルをも含めて推進すること

● 北東アジアにおける核・ミサイルの脅威に対処するに軍縮・軍備管理の協議を発展させること
⇒極東アジア非武装非核平和共同体の展望⇔INFやABM条約の復活を

2.日本は専守防衛を堅持し、これを変更すると受け止められるような政策を止めること

世界的な核軍縮の進展を後押しすること
⇒国際社会における武器移転問題への注視

⇒気候変動や感染症が「人間の安全保障」に深刻な脅威をもたらしている現状を踏まえ、軍事的国家安全保障から民衆のための安全保障論へのパラダイムの転換

3.政策の包括的な見直しを進めること
 ⇒国家間防衛よりも国家間防疫体制の確立を目指すこと

追加:

⑴虚像としての脅威論を超える
:北朝鮮ミサイルの脅威、中国の海洋進出への警戒、ロシアの北方領土の専有などを脅威感情として煽動し、攻撃兵器システム導入への同調を求めて行く方法への対抗⇔ミサイル避難訓練(2018年6月に唐突に中止)⇒話し合い外交(トランプ・金正恩会談等により)

⑵中国の覇権主義をどのように捉えるのか

⑶ロシアの存在をどう捉えるのか ⇒安保が北方四島返還の障害となっている事実(長門会談で鮮明に 2016年12月)

⑷「敵地攻撃論」を支持する世論やメディアの問題

『軍事研究』2020年11月号「特集:専守防衛は敵基地攻撃を許さないのか?」

添付】イージス・アショアの後に来るもの:「専守防衛論」から「敵基地攻撃論」への変転のなかで

 (『思想運動』No.1056,2020-9-1 掲載)

 山口県萩市むつみ地区と秋田市新屋地区の陸上自衛隊演習場にイージス・アショアと呼ばれる迎撃ミサイル基地を設営する計画が、2018年6月に内閣決定された。ところが、政府は今年6月15日に配備計画を停止、次いで同月24日開催の国家安全保障会議で中止を決定。一体この間に何があったのか。

 昨年11月19日、私もオブザーバーで参加したが、両地区で反対運動を率いるメンバーが防衛省に中止要請行動を展開。防衛省の若い官僚たちを前に鋭い質問が飛んだ。官僚たちは、ひたすら「国防」を口にするだけ。「国防」の用語で、この危険極まりない計画が実行できると本気で思っているのか。その迷走する回答ぶりに、確信不在の様子が透けて見えた。

 中止に追い込んだと思ったのも束の間、6月18日、安倍首相はイージス配備撤回に換る「敵基地攻撃能力を含む安全保障戦略の見直し」を表明。これを受けて自民党検討チームが九月末までに、新たな国家安全保障戦略を打ち出すと言う。〝一歩後退二歩前進〟のような、国民を愚弄する姿勢である。

 そこで検討されようとしている「敵基地攻撃論」には、少なくとも三つの問題がある。一つは軍事戦略、二つは憲法、三つは日米同盟に関る問題群だ。

 第一の問題は、今回の配備計画中止の理由として固定式の地上発射ミサイルシステムの非有効性に、実はアメリカ軍は懐疑的であったと思われる。
 北朝鮮のミサイル攻撃への対処はあくまで口実に過ぎない。中国・ロシアの弾道ミサイルに対抗する弾道ミサイルの展開が本来の目的。イージス・アショアでは射程や迎撃率を含め限界が指摘されていたのである。
 今回の中止決定の以前から、THAAD(終末高高度地域防衛ミサイル)や巡航ミサイルの最新型トマホーク・ブロック4、さらには新型中距離弾道ミサイルなどの購入が並行して検討されてきた。つまり、替えるべき兵器が他に存在していた。トランプ大統領は、それを度外視するかのように日本政府に購入を迫ったのである。

 第二の問題は、憲法九条を全面否定する議論であること。自衛隊は表向き「専守防衛」戦略を保持することで、九条の縛りを受け入れてきた。だが、「敵基地攻撃論」は、それとは真逆のものだ。国民の反発は必至ということで、政府・与党は「自衛反撃能力」や「積極的自衛力」等の用語を検討しているとされる。
 購入候補として最有力だと思われるトマホーク・ブロック4は、何処から見ても攻撃兵器である。これを現在八隻態勢で臨んでいるイージス艦に搭載し、洋上から敵基地を攻撃するシナリオを描いているのであろう。だとする憲法違反どころの話ではない。憲法否定・憲法解体と言える。

 第三の問題は、強化される一方の日米同盟の実態が透けて見えることだ。一口で言えば、アメリカの対中国・ロシア封じ込め戦略上、日本が敵基地攻撃能力を飛躍的にアップさせることで、日本自衛隊がアメリカの代替軍事力としての役割を担うに充分となると見積もられているのだ。
 昨年トランプ米政権は、INF条約を破棄した。その目的は、対中国・ロシアを目標とする中距離弾道ミサイルを自由自在に開発配備すること。イージス・アショア配備計画の中止は、言うまでもなく日本政府単独の判断ではない。「敵基地攻撃論」の浮上は、両国の軍事連携のこれからを象徴する出来事である。いまこそ、これに対置する我々の人間的安全保障論の深まりが求められている。

補論】菅政権の危険な本質を問う~強まる新自由主義の流れのなかで

1.民主主義と平和主義の崩壊を阻むために:自由と平等から統制と差別の時代へ

(1)日本に根を張る〝静かなファシズム(Quiet Fascism)〟、〝冷たいファシズム(Cold Fascism)〟が確実に浸透していること

● 激しい煽動的なファシズムではなく、権力の恣意的な解釈と公権力による懐柔・教唆により同調を求めて行く=忖度・従属・追従により権力行使を自らの地位向上に繋げようとする志向性を引き出す(積極的従属から消極的従属まで従属変数の振幅が極めて高いことを特徴とする)

(2)多元的民主主義(Plural democracy, Multifaceted Democracy)から一元的民主主義(Centralized democracy)への本質的転換が顕在化していること

● 民主主義の本質は多様性・重層性への了解を前提とするが、一元的民主主義は、多様性・重層性への制約と条件付与を前提とする

⇒「自由」とは権力によって価値基準が設定され、公権力によって左右される。「自由」の上位概念としての「秩序」という原則が貫徹される社会。「民主」も同様の概念として把握される。「自由民主」の名称を持つ政党の本質がここにきて露呈されていること。その象徴事例として「日本学術会議会員任命拒否問題」がある。

(3)トランプイズム(Trunpism)的思想潮流の現在化の日本流入が明らかになったこと

● 今回の米大統領選挙は、トランプイズム(無視できない約7100万人のトランプ支持者の存在)対反トランプイズム(約7500万人)の闘いであった。分断を顕在化させてきた4年間と増幅の可能性を秘めたこれからのアメリカ。中産階級自体の分断化・貧困化。不満が権力エリートに向けられる。

● 以上のアメリカの現状は形と内容を変えて日本でも浮上(差別発言の横行、性犯罪の拡散、権力監視の役割期待に背くメディアの存在等)、正義と不正義の混在化(フェイクニュースとオルタナティブファクト:「もう一つの真実」)

⇒所謂、権力の濫用が横行するとき、権力によって結果的に差別・貧困・抑圧など所謂、「構造的暴力」(ガルトゥング)が一層深刻化する=安倍・菅政治は、そうした暴力の負の連鎖を助長する政治手法(菅首相の自助・共助・公助=新自由主義的差別主義)

(4)正義と不正義の混在化を招いた権力の私物化*安倍前首相によって始まったモリカケから桜を観る会など

● 社会の平等化と人権の尊重を担保する権力から社会の差別化と人権の侵害を助長する権力へ。その延長線上に今回の問題が存在する。また、そうした文脈からの読み解きが求められるのではないか

⇒憲法にも違反する不当な権力の人事権介入が結果として学問・言論の自由を侵すこと。その行為自体に権力が無自覚であることが、この間の国会審議でも露呈される。

補足

 1)〝静かなファシズム(Quiet Fascism)〟や〝冷たいファシズム(Cold Fascism)〟は纐纈の造語です。対置語としては、〝騒々しいファシズム(Noisy Fascism)や〝熱いファシズム〟(Hot Fascism)などが用意可能です。可視的なファシズムと不可視のファシズムと言い換えて良いかも知れません、熱狂的で狂信的なファシズムと異なり、私の言う〝静かなファシズム〝は陰湿で持続的であり、また浸透力の強い性質を持ちます。その意味でトランプイズムは前者のファシズムかも知れません。安倍的さらに菅的なファシズムは後者の性格を内在させているのではないか、と思います。

2)トランプイズムとは、人種差別・ムスリム差別・反移民・性差別を特徴とする思想潮流を特徴とします。これを私は一種のファシズムと指摘したいと思います。デモクラシーへの冒涜と否定をも特徴としています。

2.学問の自由を守るとは:侵害される自由・自治・自律の思想

(1)憲法規範の逸脱と学問の自由の棄損

● 日本国憲法第23条「学問の自由は、これを保障する。」⇔「思想・良心の自由」(第19条)や「表現の自由」(第21条)とは別個に規定されている意味
⇒歴史の教訓から(1933年の滝川事件や、1935年の天皇機関説事件等)【資料①参照】

⇒「国体」(=天皇制国家支配体制)に悖る思想や主張への徹底した弾圧の結果として両事件が生起、これに対して「学問の自由」の思想によって反対運動が起きる

(2)「国体」思想が日本の民主主義や自由主義を排除していった戦前日本の現実

⇒その嚆矢としての三・一五事件(1928年)や四・一六事件(1929年)の日本共産党弾圧事件

補足
両事件を指揮した警視庁特高課長纐纈彌三の軌跡を追ったのが拙著『戦争と弾圧 三・一五事件と特高課長纐纈彌三の軌跡』(新日本出版社刊、2020年刊)を参照されたい。

⇒歴史の教訓とは、日本共産党弾圧事件(1928,1929 年)の後に満州事変(1931 .9.18 )事件が起こり、滝川事件(1933年)と天皇機関説事件(1935年)の後に盧溝橋事件(1937年)が起き、日中全面戦争(~1945年=日中15年戦争➔1945年の日本敗北へ)が開始される。

⇒「学問の自由」を棄損する事件の後に戦争発動と国内の監視弾圧体制が強化されていった戦前日本の歴史の轍を踏まないために「学問の自由」が個別に憲法において条文化されてことの意味を再度問うべき

⇒明治憲法は第10条(公務員への天皇の任命権条項)を設け、人事権の独占を図り、批判精神の封殺を徹底、戦後憲法(日本国憲法)は人事権を実質的に国民に委ねる(第23条)

⇒日本学術会議の前身は学術研究会議(1920年創設)、会員の推薦が1943年に任命制に➔「全ての学者を戦闘配置」につけ、学術研究会議の役割のひとつとして「国民総武装兵器」の開発を命令される
➔この歴史を教訓として、日本学術会議は「科学者としての決意」として独立性の侵害への抵抗を基本原理とした(1950,1967,1973年 軍事研究反対の声明など)→今回も諸学会からの抗議声明【資料②参照】

3.法治国家から〝人治国家〟へ:横行する権力への忖度と隷属

(1)常態化する憲法の恣意的解釈

● 安倍首相時代の集団的自衛権行使の解釈変更、検察人事への介入など。その延長線上に菅首相による「学問の自由」への介入が実践される段階に

⇒憲法や法律という国家社会の基盤を根底から不安定化➾憲法が骨抜きにされていく一連の過程で起きたのが今回の事件

補足
纐纈厚『集団的自衛権容認の深層』(日本評論社、2014年刊)を参照されたい。
(2)〝人治国家〟化は民主主義の破壊を意味する

● 米大統領選でも明らかにされたトランプイズムは決してアメリカだけの問題ではない➔法規範から著しく逸脱し、憲法や法律を権力による囲い込み(恣意的解釈により憲法機能を事実上停止させる)

(3)国民より国家を優位に位置付ける国家主義が台頭する

● 菅首相の「自助・共助・公助」は何を意味するのか=新自由主義の菅的表現か?

● 菅首相の発言:「まず自分でやってみる。そして地域や家族がお互いに助け合う。その上で、政府がセーフティーネットでお守りをします。さらに縦割り行政、そして前例主義、さらには既得権益、こうしたものを打破して規制改革を進め、国民の皆さんに信頼される社会を作っていきます」 

⇒「社会というようなものは存在しない」(イギリスの元首相サッチャーの発言)を想起➔野党は「支え合いの社会」を目途とすべきだと反論

⇒コロナ倒産(帝国データバンク:2020年9月現在 517件)、65歳以上の高齢者3588万人(総人口の28.4%)の「老人大国」日本で「自助」の強調は国家の本来の役割を放棄するものではないか

⇒菅首相は「小さな政府」を目指すのか、その「小さな政府」は貧困化する中間・低所得者層・不正規労働者を切り捨て、国家権力を剥き出しにした国家への道を選択しようとしているのか(古典的な国家論として、「夜警国家」か「福祉・行政国家」か)

補足
 日本の国民監視社会への過程を分析した纐纈の著書として『監視社会の未来』(小学館、2007年)や『憲兵政治 監視と恫喝の時代』(新日本出版社、2008年)がある。

「夜警国家」:国家の機能を、外敵の防御、国内の治安維持など最小限の夜警的な役割に限定した国家。自由主義国家を私有財産の番人として批判したラッサール(Ferdinand Johann Gottlieb Lassalle,1825-1864)の用語。

⇒今回の日本学術会議会員任命拒否による国家権力に抵抗する人々への思想弾圧と国民監視社会の構築を意図するもとして捉えることは出来ないか

⇒そうした文脈のなかで、今回の事件を歴史的かつ現代社会論分析の視点から把握する必要あるのではないか。非常に詰めた言い方をすれば、今回の学術会員任命拒否問題は、単に「学問の自由」の侵害という憲法違反の問題のレベルだけに留まらず、日本国家の権力構造が反民主主義・非平和主義の思想や観念で覆われてしまっている事ではないか、と考える。

 事は例えば、任命拒否が解除されれば解決される問題ではないのである。日本の権力構造の体質を炙り出し、そこに伏在する国家体質、究極的な言い方をすれば戦前の「国体」観念が伏在している点にこそ批判と議論を集中するべきであろう。

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■ 12月21日 外濠公園(JR市ヶ谷駅側)18時集合、18:30出発
持つな!敵地先制攻撃力 12・21防衛省デモ

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資料

【資料①】日本学術会議法

昭和23年法律第121号 
最終改正:平成16年4月14日法律第29号 

日本学術会議は、科学が文化国家の基礎であるという確信に立つて、科学者の総意の下に、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与することを使命とし、ここに設立される。

 第1条 この法律により日本学術会議を設立し、この法律を日本学術会議法と称する。 
 日本学術会議は、内閣総理大臣の所轄とする。 
 日本学術会議に関する経費は、国庫の負担とする。 

第2条 日本学術会議は、わが国の科学者の内外に対する代表機関として、科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させることを目的とする。 

第3条 日本学術会議は、独立して左の職務を行う。 
 科学に関する重要事項を審議し、その実現を図ること。 
 科学に関する研究の連絡を図り、その能率を向上させること。 

第4条 政府は、左の事項について、日本学術会議に諮問することができる。 
 科学に関する研究、試験等の助成、その他科学の振興を図るために政府の支出する交付金、補助金等の予算及びその配分 
 政府所管の研究所、試験所及び委託研究費等に関する予算編成の方針 
 特に専門科学者の検討を要する重要施策 
四 その他日本学術会議に諮問することを適当と認める事項 

第5条 日本学術会議は、左の事項について、政府に勧告することができる。 
 科学の振興及び技術の発達に関する方策 
 科学に関する研究成果の活用に関する方策 
 科学研究者の養成に関する方策 
四 科学を行政に反映させる方策 
五 科学を産業及び国民生活に浸透させる方策 
六 その他日本学術会議の目的の遂行に適当な事項 

第6条 政府は、日本学術会議の求に応じて、資料の提出、意見の開陳又は説明をすることができる。 

第6条の2 日本学術会議は、第3条第2号の職務を達成するため、学術に関する国際団体に加入することができる。 
2 前項の規定により学術に関する国際団体に加入する場合において、政府が新たに義務を負担することとなるときは、あらかじめ内閣総理大臣の承認を経るものとする。 

第7条 日本学術会議は、210人の日本学術会議会員(以下「会員」という。)をもつて、これを組織する。 
2 会員は、第17条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する。 
3 会員の任期は、6年とし、3年ごとに、その半数を任命する。 
4 補欠の会員の任期は、前任者の残任期間とする。 
5 会員は、再任されることができない。ただし、補欠の会員は、一回に限り再任されることができる。 
6 会員は、年齢70年に達した時に退職する。 
7 会員には、別に定める手当を支給する。 
8 会員は、国会議員を兼ねることを妨げない。 

第8条 日本学術会議に、会長1人及び副会長3人を置く。 
2 会長は、会員の互選によつて、これを定める。 
3 副会長は、会員のうちから、総会の同意を得て、会長が指名する。 
4 会長の任期は、3年とする。ただし、再選されることができる。 
5 副会長の任期は、3年とする。ただし、再任されることができる。 
6 補欠の会長又は副会長の任期は、前任者の残任期間とする。 

第9条 会長は、会務を総理し、日本学術会議を代表する。 
2 副会長は、会長を補佐し、会長に事故があるときは、会長の指名により、いずれかの1人が、その職務を代理する。 

第10条 日本学術会議に、次の三部を置く。 
第一部 
第二部 
第三部 

第11条 第一部は、人文科学を中心とする科学の分野において優れた研究又は業績がある会員をもつて組織し、前章の規定による日本学術会議の職務及び権限のうち当該分野に関する事項をつかさどる。 
2 第二部は、生命科学を中心とする科学の分野において優れた研究又は業績がある会員をもつて組織し、前章の規定による日本学術会議の職務及び権限のうち当該分野に関する事項をつかさどる。 
3 第三部は、理学及び工学を中心とする科学の分野において優れた研究又は業績がある会員をもつて組織し、前章の規定による日本学術会議の職務及び権限のうち当該分野に関する事項をつかさどる。 
4 会員は、前条に掲げる部のいずれかに属するものとする。 

第12条 各部に、部長1人、副部長1人及び幹事2人を置く。 
2 部長は、その部に属する会員の互選によつて定める。 
3 副部長及び幹事は、その部に属する会員のうちから、部会の同意を得て、部長が指名する。 
4 第8条第4項及び第6項の規定は部長について、同条第5項及び第6項の規定は副部長及び幹事について、それぞれ準用する。 

第13条 部長は、部務を掌理する。 
2 副部長は、部長を補佐し、部長に事故があるときは、その職務を代理する。 
3 幹事は、部長の命を受け、部務に従事する。 

第14条 日本学術会議に、その運営に関する事項を審議させるため、幹事会を置く。 
2 幹事会は、会長、副会長、部長、副部長及び幹事をもつて組織する。 
3 日本学術会議は、第28条の規定による規則(以下この章及び次章において「規則」という。)で定めるところにより、前章の規定による日本学術会議の職務及び権限の一部を幹事会に委任することができる。 

第15条 日本学術会議に、会員と連携し、規則で定めるところにより第3条に規定する職務の一部を行わせるため、日本学術会議連携会員(以下「連携会員」という。)を置く。 
2 連携会員は、優れた研究又は業績がある科学者のうちから会長が任命する。 
3 連携会員は、非常勤とする。 
4 前三項に定めるもののほか、連携会員に関し必要な事項は、政令で定める。 

第15条の2 日本学術会議に、規則で定めるところにより、会員又は連携会員をもつて組織される常置又は臨時の委員会を置くことができる。 

第16条 日本学術会議に、事務局を置き、日本学術会議に関する事務を処理させる。 
2 事務局に、局長その他所要の職員を置く。 
3 前項の職員の任免は、会長の申出を考慮して内閣総理大臣が行う。 

第17条 日本学術会議は、規則で定めるところにより、優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に推薦するものとする。(以下略)

【資料②】日本学術会議第25期推薦会員任命拒否に関する人文・社会科学系学協会共同声明

 私たち人文・社会科学分野の104学協会(内、4学会連合を含む)および115の賛同学協会(内、1学会連合を含む)は、日本学術会議が発出した2020(令和2)年10月2日付「第25期新規会員任命に関する要望書」に賛同し、下記の2点が速やかに実現されることを強く求めます。

1.日本学術会議が推薦した会員候補者が任命されない理由を説明すること。
2.日本学術会議が推薦した会員候補者のうち、任命されていない方を任命すること。

2020(令和2)年 11 月 6 日

異文化間教育学会*/大阪歴史学会/科学技術社会論学会*/カルチュラル・スタディーズ学会*/環境社会学会*/関西社会学会*/関東社会学会*/基礎経済科学研究所/北ヨーロッパ学会*/教育史学会*/教育思想史学会/教育目標・評価学会*/教育哲学会**/経済理論学会*/言語系学会連合/工業経営研究学会*/考古学研究会*/古代文学会*/社会言語科学会*/社会事業史学会**/社会政策学会/社会政策関連学会協議会*/首都圏形成史学会/上代文学会*/上智大学史学会*/昭和文学会*/心理科学研究会*/説話文学会**/専修大学歴史学会/総合女性史学会/全国大学国語国文学会*/大学評価学会**/千葉歴史学会/地方史研究協議会/中央史学会/中古文学会*/中世哲学会*/中世文学会*/東京歴史科学研究会*/東南アジア学会*/東北社会学会/東北哲学会*/名古屋歴史科学研究会/奈良歴史研究会/日仏社会学会/日本英語学会/日本映像学会*/日本音韻論学会*/日本音楽教育学会**/日本科学史学会*/日本学校音楽教育実践学会/日本カリキュラム学会*/日本韓国語教育学会**/日本看護福祉学会*/日本教育学会/日本教育工学会**/日本教育実践学会**/日本教育社会学会*/日本教育心理学会*/日本教育法学会/日本教育メディア学会/日本教師学学会/日本教師教育学会*/日本キリスト教社会福祉学会*/日本近代文学会*/日本グループ・ダイナミックス学会/日本現象学会*/日本言語学会/日本高等教育学会**/日本語学会*/日本語教育学会**/日本国際理解教育学会//日本社会学会*/日本社会学理論学会*/日本社会教育学会**/日本社会福祉学会*/日本社会文学会*/日本宗教研究諸学会連合**/日本史研究会/日本18世紀学会*/日本心理学会/日本数学教育学会/日本青年心理学会*/日本生理心理学会*/日本ソーシャルワーク学会**/日本村落研究学会*/日本地域福祉学会**/日本中東学会*/日本哲学系諸学会連合/日本都市社会学会*/日本ナイル・エチオピア学会/日本比較経営学会**/日本比較文学会*/日本美術教育学会/日本福祉教育・ボランティア学習学会**/日本文学協会*/日本文化人類学会*/日本フェミニスト経済学会*/日本乳幼児教育学会/日本野外教育学会/日本ラテンアメリカ学会*/日本リメディアル教育学会/日本臨床心理学会*/日本歴史学協会/比較経済体制学会**/仏教文学会*/北海道教育学会**/萬葉学会*/民主主義科学者協会法律部会*/幼児教育史学会/ラテンアメリカ政経学会*/歴史科学協議会/歴史学研究会/労務理論学会* 
 (五十音順。2020年11月4日)

賛同学協会(115学協会、1学会連合を含む)
秋田近代史研究会/アジア経営学会*/岩手史学会/印度学宗教学会**/英語語法文法学会/オーストラリア学会*/関東教育学会**/京都民科歴史部会/キリスト教史学会*/経営関連学会協議会*/経済学史学会**/現代史研究会*/交通史学会/国際芥川龍之介学会**/国際幼児教育学会/駒沢宗教学研究会*/ジェンダー法学会*/実存思想協会*/社会経済史学会*/社会思想史学会*/宗教哲学会*/「宗教と社会」学会* /宗教倫理学会*/女性労働問題研究会*/新プラトン主義協会*/人文地理学会**/数理社会学会*/スピノザ協会*/政治思想学会*/西洋史研究会/戦国史研究会/体育史学会*/大学教育学会/大学史研究会*/地域女性史研究会*/中部教育学会**/朝鮮語教育学会**/朝鮮史研究会*/筑波大学哲学・思想学会/哲学会*/ドイツ現代史研究会*/東欧史研究会* */東海社会学会*/東京学芸大学史学会/同時代史学会*/東北史学会/内陸アジア史学会/西田哲学会*/西日本社会学会*/日仏歴史学会/日英教育学会/日仏教育学会*/日仏哲学会*/日本アメリカ文学会**/日本アフリカ学会*/日本イギリス哲学会*/日本印度学仏教学会*/日本英文学会*/日本NPO学会*/日本オセアニア学会**/日本音声学会*/日本解放社会学会*/日本学校教育学会**/日本家族社会学会/日本カナダ学会**/日本環境会議*/日本旧約学会*/日本教育行政学会**/日本教育方法学会**/日本基督教学会*/日本キリスト教教育学会*/日本近代仏教史研究会*/日本経営学会**/日本行動分析学会*/日本山岳修験学会*/日本シェリング協会*/日本史攷究会*/日本質的心理学会*/日本社会科教育学会*/日本社会病理学会*/日本社会分析学会*/日本宗教学会*/日本儒教学会*/日本職業リハビリテーション学会/日本新約学会*/日本生活学会*/日本生活指導学会*/日本中国学会*/日本地理学会*/日本哲学会*/日本道教学会**/日本動物心理学会*/日本特別活動学会/日本風俗史学会/日本福祉文化学会/日本仏教綜合研究学会*/日本ヘーゲル学会*/日本保育学会*/日本保育ソーシャルワーク学会/日本流通学会/日本労働社会学会*/ハイデガー・フォーラム/パーリ学仏教文化学会*/美学会/比較家族史学会*/比較思想学会*/貧困研究会*/福祉社会学会*/北東アジア学会*/北海道社会学会*/美夫君志会*/歴史人類学会/ロシア・東欧学会**/早稲田大学史学会*/早稲田大学東洋史懇話会*
(五十音順。2020年11月4日)

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沖縄から菅政権にどう立ち向かうか/大仲尊

(沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック)

● 菅政権は沖縄にとって悪夢か
 安倍政権(7年8力月)⇒沖縄政策を仕切った菅官房長官

1.辺野古新基地建設の経緯

96年 SACO合童

99年 稲嶺恵一知事、岸本建男名護市長、「軍民共用、15年使用期限」の条件で合意、閣議決定

06年 V字型滑走路を建設する計画を閣議、「軍民共用、15年使用期限」の閣議決定は廃止。白紙に。

13年 12月仲并真弘多知事が辺野古埋め立て承認。

14年 8月海底ボーリング調査着手

15年 8月〜9月国と沖縄県が集中協議、溝は埋まらず 10月翁長知事が埋め立て承認取消し、国と法廷闘争へ

16年 12月最高裁判決 県敗訴

17年 辺野古沿岸部護岸工事開始。

18年 8月 沖縄県が埋め立て承認撤回
   10月 玉城デニー氏知事就任
   12月 辺野古への土砂投入

19年 2月 県民投票7割超が反対

20年 9月菅政権発足
   11月「抗告訴訟」地裁「却下」判決

2.20年9月2日自民党総裁選への出馬表明会見

菅は「日米で合意し、沖縄の地元の市長、知事と合意した中で辺野古建設が決まった」としょっぱなからフェイク発言。

実際の経緯
99年に当時の稲嶺恵一知事、岸本建男名護市長が受け入れを表明し、「軍民共用空港」「15年使用期限」などの条件付きで政府と合意して閣議決定。しかし、日本政府は、2006年辺野古沿岸 にV字型滑走路を造る計画を米政府と合意し、新たな方針を閣議決定。99年の合意による閣議決定は廃止され、「軍民共用空港」「15年使用期限」などの条件は白紙となった。稲嶺氏は「V宇型滑走路には合意していない」と反発している。

3.振興と基地のリンク論

1)安倍政権は2016年、沖縄振興と基地玫策のリンクを公然と認める方針に転じた。このことは、 沖縄振興の趣旨をねじ曲げ、「カネと引き換えに基地を容認せよ」と迫る「アメとムチ」の手法と同根。

2)また、リンク論は地域住民を分断し、自治体をも破壊する。沖縄に対する差別政策そのもの。

3)稲嶺進名護市政では久辺3区(豊原・久志・辺野古)に対し、名護市の頭越しに補助金を直接交付。容認派の渡具知市長に変わると、それを廃止し基地再編交付金に一本化。稲嶺進市長は、米軍再編交付金を拒否。

4)沖縄振興待別事業推進費を創設し、県を通さず市町村に直接交付する。

5)知事選、国政選挙、県民投票で示された民意を顧みず、辺野古の工事を強行。

6)一方で、翁長県知事以降、沖縄振興予算を減らしている。

4.設計変更の不承認決定と今後

・11月27日「抗告拆松」門前払いの却下判決
・21年2月3日「サンゴ訴訟」(関与訴訟)の判決

設計変更申請に対する県知事の判断が、年度末までの間に予想されている。裁判も並行して進むと予想される。

この間の裁判は、県の主張に向き合わず、拙速で形式論に終始している。
知事の不承認決定を支持する観点から現政権追認(辺野古新基地建設容認)を糾弾する

5.2022年問題

・沖縄振興策の更新時期
・選挙:名護市長選、県知事選
・「復帰」50年

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■12月14日18:30〜
辺野古土砂投入から2年 絶対許さない!!官邸前抗議行動

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労働者の目で見る2021年東アジア情勢と闘争/キムウニョン

(韓国サンケン労組副支会長)
 コロナによる渡航制限で韓国よりオンライン参加

1.2020年11月3日、米国大統領選挙を通して見えてくる米国と国際情勢

1)選挙前後の米国を見つめる世界の目
 ―共和党であれ、民主党であれ誰がなっても全く同じか?
 ―トランプが当選すれば軍備縮小と海外米軍撤収及び縮小、朝米交渉などで平和的解決?
 ―バイデンが当選すれば排他的白人優越主義・覇権的障壁が崩れ、人権と平和の時代に行く?
2)米国覇権主義没落と復活の夢
3)バイデンの政策方向
  =>トランプ対オバマ式政策/トランプ+オバマ式政策
  =>孤立主義?/国際主義?

2.米国大統領選挙以後の東アジア情勢

1)米国と中国の対決構造/米国とロシア、中国との対決構造
2)韓米日安保三角同盟
3)朝米関係の展望=>他者間会談/朝米会談

3.米国覇権主義の没落と帝国主義の復活の身もだえと中国とロシアの浮上

1)軍産複合体経済と軍備、海外米駐屯軍、各国との紛争と戦争
2)コロナ事態で見せた極端な二極化された米国社会と政治勢力の極端な紛争と分裂事態
3)米帝国主義没落と浮上する中国との対立と葛藤
=>過去の米中心の世界秩序の中に同盟結束の要求

4.韓日労働者、進歩勢力の闘争

1)米軍撤収闘争
 ―沖縄、済州カンジョン、サード等
2)戦争反対東アジア平和死守闘争
 ―日本の平和憲法死守闘争、朝米平和協定締結、韓米日軍事同盟反対闘争
3)良心と人権、民主主義抹殺撤廃闘争
 ―韓国と日本で国家保安法の撤廃と共謀罪の撤廃の闘争
4)変革的労働者組織拡大と変革的組織力、闘争力復権

金属労組韓国サンケン支会闘争経過報告(参考資料)

1、韓国サンケンは、1973年馬山輸出自由地域に日本の多国籍企業「サンケン電気株式会社」からの100%投資で作られた子会社です。

2、韓国サンケンは47年間各種税金の恩恵を受けながら、韓国の労働者たちの血と汗で搾り取った利潤を韓国に再投資せずに、すっかり本国に持っていきました。為替差と税金の恩恵を利用して多くの差益を作り本国に持っていきました。

3、韓国サンケンの労働者たちが1996年民主労総に転換するやいなや、翌年日本の株主総会で韓国サンケンの工場の撤収とインドネシア移転を決定して、1年6か月になる非常に長い期間の間闘争をして工場の正常化をさせました。

4、日本サンケン電気の労組嫌悪は、2007年~20012年の間、3回の事業部撤収、7回のリストラで4~5百名の韓国労働者たちが路上に追い出されました。
その上2016年には34名の他に残っていな組合員全員を整理解雇するという蛮行まで犯し、日本本社まで訪ねていき1年近い遠征闘争をしてわずか17名だけ工場に復職することができました。

5、韓国サンケンは復職合意書を書くと共に、今後深刻な雇用問題が発生した場合事前合意をすることで労使合意書を書き約束しました。
我々は復職した3年間これ以上日本のサンケン電気が我々を整理解雇しないだろうと信じて熱心に働いてきました。

6、日本のサンケン電気は韓国労働者たちには密かに2018年12月LGチフンを私募ファンドを利用して100%資本を引き受け、2019年EKに商号変更し生産をしていました。
そしてこれから2023年まで敷地5千坪の土地を受け315億ウォンの追加投資をして工場を拡張することで天安市と忠清道との間でMOU締結までしました。

7、2019年末から2020年全世界がコロナによって国境が遮られ、特に日本で韓国人の出入りを遮るや、日本のサンケン電気は「韓国人が最低2年間日本の出入国をできない時、韓国サンケンを整理しなければならない」とし、コロナを機会にして韓国サンケンの労働者の誰とも協議もなく、誰にも通報もなく、2020年7月9日、韓国サンケンの廃業を一日だけで決定し一方的に本社ホームページにだけ公示しました。

8、これは、韓国サンケンの団体協約では廃業する前に最低「6か月前にこれを組合に通報」しなければならず、「その具体的事項に対しては組合と合意後決定」しなければならないという規定に反することであり、2017年の復職時の労使合意事項にも反することです。2020年7月9日の日本サンケン電気取締役会がいかなる事前通報もなく、労働組合との協議も合意もなく韓国サンケンの廃業と清算を一方的に決定しました。

9、サンケン電気のこのような一方的な方式は、またOECD多国籍企業に関するガイドラインⅤ章(雇用及び労使関係)6条に明示さている「特に集団整理解雇な解雇を伴う事業場の廃業のような雇用に大きな影響を及ぼす企業運営の変化を考慮すれば、これを事業場労働者の代表者及び組織に適切な通知をしなければ」ならない義務に加えて、適当だと明示されている「経営陣が最終意思決定を下ろす前にこれを通報」することに違反しました。

10、我々は金属労協(JCM、全日本金属産業労働組合協議会)と韓国慶南地方雇用労働庁、産業資源部にも日本本社の抗議と交渉を要求しました。
労働部は抗議の公文を送りましたが、偽装廃業を探すことはほとんど不可能であるとして、調査する法律的なものがないとし、産業資源部と税関に韓国サンケン関連の全ての輸出入の内訳公開を要請したが法律的根拠がないとして、何も見せてくれませんでした。

11、天安にEKでは工場の看板も他の工場の看板(チャンソン[創成]シート)という看板を掲げて生産をしています。EK(株)はサンケン電気が買収した後売り上げが133%以上引き上げられました。その上生産した物量をサンケン電気の包装ボックスに包装して出荷  し、非常識で悪らつな方法で韓国労働者たちを殺しています。

12、日本サンケン電気は有害環境物質を流出させ日本の地域社会からも袋だたきにあっている企業です。
韓国で47年間各種の税金を受け、労組があるという理由で工場を不法で不当に廃業して、また税金の恩恵を受けながら天安に行って工場を拡張している悪い企業です。十分に韓国サンケンの労働者たちが働くことができるように機械設備と事業投資が可能です。

13、我々は日本の進歩団体と労働団体に支援要請をして、現在多くの方たちが連帯闘争を組織的にまとめてくれ、毎週一緒に闘争しています。
―、韓国サンケン支会は昌原でテント座り込みをして、労働部、産業資源部、労務法人、日本領事館、市民宣伝戦をしていて、地域対策委員会がまとめてくれて地域的支援で闘争をしています。
―、ソウル上京闘争も4名の組合員が交代で上京して、国会、日本大使館、サンケンコリア(営業販売会社)韓国サンケンの社長自宅などで一人デモをしています。

今後の韓国サンケン解散・清算決定撤回闘争の方向

1)韓国サンケンが税関を通して輸出入した不法な状況と特別税務監査を通して不当内部取引を明らかにすることができるように、共に民主党と産業資源部に要請して、実務的会談をしていて、労働部で告訴した内容を調査する過程で追加資料を要請しています。

2)韓国サンケンで生産して英国とドイツに輸出することに合意した物量を外注と他企業に密か移して生産して、韓国サンケンの包装ボックスに入れて納品しました。
これも不法であると告訴した状態であり調査が進行中です。

3)国会議員がサンケン電気の不当な廃業撤回及び抗議の公文を連名で日本本社に送るため準備中です。
また、韓国サンケン闘争を媒介に外資企業の食い逃げ禁止、外資企業規制及び処罰に関する討論を国会で行うために準備中です。ここにサンケン電気の社長及び役員たちの出席を要求するために(出席しないでしょう)討論を準備しています。

4)韓国キリスト教協議会と面談し準備と計画を進めています。

5)日本軍「慰安婦」問題の闘い、強制徴用に対する賠償を求める闘い、キョレハナ(我が同胞一つになる運動本部の略称)、労働者キョレハナ、民主労総、金属労組統一委員会など各種の組織と韓国労働者を弾圧する悪らつな日本資本サンケン電気糾弾記者会見、集会などを日本大使館前で行うため準備中です。

6)コロナで日本遠征闘争に行くことができない状況で、韓国でできることは全て闘争と事業を組織し、闘っています。

―どの時より日本の仲間の皆さんの国際的連帯が切実な時期です。

既に日本の多くの仲間の皆さんが毎週連帯闘争をしています。
埼玉、東京で始まった連帯闘争が大阪、名古屋まで拡大しています。
日本の仲間の皆さんの国際的連帯闘争はコロナの時期に入国が許可されない条件で最も強力な闘争になっています。
日本の皆さんの国際的連帯闘争と韓国での決死闘争は、不法で悪らつな日本サンケン資本からの廃業撤回と工場正常化闘争が輝かしい勝利で結ばれるだろうと信じます。
仲間の皆さんの美しく主体的な連帯闘争に感動と尊敬を送り恩を忘れず最後まで闘います。ありがとうございます。

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■ 12月20日 三軒家公園11時集合 12時デモ出発
サンケン電気は韓国サンケンの解散を撤回しろ!12・20本社デモ