私も含めて驚かれた方が多いと思いますが、沢田研二さんが『わが窮状』という「護憲メッセージ」を歌っておられます。「9条」と「窮状」をかけて、憲法が危機に瀕している「この窮状を救おう」と歌っています。
作詞はなんと沢田研二さん本人で、アルバム『ROCK’N ROLL MARCH』の“9曲目”に収録されているという凝りようです。テレビ放映された年末の東京ドームコンサートでも80曲中(!)の51曲目に歌って、つめかけた3万2000人のファンから万雷の拍手をおくられていました。
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ジュリーは今までメッセージ性のある曲は避けてこられ、政治がらみで思い出すことと言えば、ナチスの軍服姿でテレビに出て猛批判されたことくらいという、政治的にはまったく無色(を通り越して無自覚)な人だろうなあと私なんかは思っていたので本当に驚きました。
ですが、決して「政治に口を出しはじめた」のではなく、あくまでも一人のエンターテイナーとして、ステージで歌った後でも何のコメントもされないのが、かえって彼のスタンスを表現しているようでカッコイイと感じました。過剰反応して褒めようが貶されようが「あとは勝手に何とでも言え」という感じです。
政治的にはまったくの一般人である沢田さんが作ったこの曲は、いきなり素朴な愛国心の吐露にはじまり、「英霊」なんて言葉を無批判に使っていたりするもんですから、実は左翼の間では手放しでこの曲を賞賛している人は少ないんですよね。
1.麗しの国 日本に生まれ 誇りも感じているが
忌まわしい時代に 遡るのは 賢明じゃない
英霊の涙に変えて 授かった宝だ
この窮状 救うために 声なき声よ集え
我が窮状 守りきれたら 残す未来輝くよ
2.麗しの国 日本の核が 歯車を狂わせたんだ
老いたるは無力を気骨に変えて 礎石となろうぜ
諦めは取り返せない 過ちを招くだけ
この窮状 救いたいよ 声に集め歌おう
我が窮状 守れないなら 真の平和ありえない
この窮状 救えるのは静かに通る言葉
我が窮状 守りきりたい 許し合い 信じよう
1.麗しの国 日本に生まれ 誇りも感じているが
忌まわしい時代に 遡るのは 賢明じゃない
英霊の涙に変えて 授かった宝だ
この窮状 救うために 声なき声よ集え
我が窮状 守りきれたら 残す未来輝くよ
2.麗しの国 日本の核が 歯車を狂わせたんだ
老いたるは無力を気骨に変えて 礎石となろうぜ
諦めは取り返せない 過ちを招くだけ
この窮状 救いたいよ 声に集め歌おう
我が窮状 守れないなら 真の平和ありえない
この窮状 救えるのは静かに通る言葉
我が窮状 守りきりたい 許し合い 信じよう
もちろん心情的には「ジュリーすげえ!」と思っている人のほうが多いとは思うんですが、「左翼」に徹すると誉め方に困るというか(笑)。この曲を絶賛するかどうかで、普段はあまり見分けのつかない(?)左翼と非左翼(護憲派)をはっきり分類できるくらいです。
でもこれが、憲法9条と自衛隊の存在という矛盾する両者をともに支持してきた日本人の平均的な意識なんだろうと思います。圧倒的多数かどうかまではわかりませんが、少なくとも過半数の国民意識って、冷静につきつめればこの歌の内容に代表されるようなものだと思うのです。
プロパガンダや大きな事件なんかで熱に浮かされている時もあるでしょうが、その時々で左右にぶれながらもバランスをとってきた日本人の素朴なレベルでの国家観や戦争観であり、左翼も右翼も今もってそれを変えられないということでしょう。
一方、そういうことを無視して、左右ともに「突っ込みどころ満載ですな」な~んて、したり顔で言う人がいるんですよね。でも私はむしろそんなふうにしたり顔な人のほうに、安易に迎合・利用しようとする人以上に反発を感じるな。
もちろん、あやしげな自称左翼、馬鹿左翼の私でも、この歌に突っ込めと言われれば突っ込めますよ。つーか、こういう内容で護憲を語ることはむしろ危険な面もあると思います。こういう素朴なレベルでの平和意識や護憲の主張は、いつでも素朴なレベルの国家主義に巻き取られてしまう。それはまさしくここ数年の私たちが経験してきたこと。情勢なんていい時も悪い時も、一日で変わっちゃうもんですしね。
ですが要するに私が言いたいのは、こういう個人の単純素朴な良心に対して「突っ込みどころ満載」とか「国民を馬鹿にしている」とか評する人のほうこそ「国民を馬鹿にしている」と思うんです。一言で言って「あんた何様?全国民を代弁するほど偉いの?」ってことですよ。
これに対して、自分の感性で歌をつくり、収録し、みんなの前で歌って表現し、あとそれ以上の「理屈」は語らない。そんな沢田さんのほうがよほどカッコいい。私もへんな意味付与はせず、「ジュリーの歌」として素直に受け止めたいです。
さて、ここからは余談になりますが、左翼側の例を見てもですね、60年、70年安保闘争や全共闘運動、ベトナム反戦、それに三里塚闘争にいたるまで、運動の大高揚というのは、こういう「突っ込みどころ満載」とか言ってる類の人間や組織の思惑を、一般大衆の素朴な正義感が易々と乗り越えていった時にこそ実現しているわけじゃないですか。組織勢力比で言えば少数派だった新左翼系が時代を引っ張っていけたのは、こういう現場の素朴な正義感の先頭に立って、それを純粋に命がけで体現したからです。
それを「扇動された」とか「情弱が騙されたんだ」とか、それこそ「国民を馬鹿にした」意見を吐く輩はですね、結局は自分の意見をだけを絶対化して、それに従わない奴は全部が悪人とそれに騙されている愚か者だという観念に凝り固まったアホです。勘違いしないでほしいのは批判することは別にいいのです。ですが「国民は左翼に騙された」とかそんなレベルで人を見下した気分に浸っている自己絶対化野郎は、街頭で「オレは正しい!オレは神だ!」とでも叫んでいればいいんです。
もちろんとりわけ最近のネット上のプロパガンダには、明確な嘘がまじる例もあります。デマってやつです。たとえば最近ではネトウヨが繰り広げた「国籍法改正反対」のネット運動では、「麻生総理は法案に反対だ」というデマが広まっていました。実は同法案の提案者は他ならぬその麻生内閣自身なのですが、こういった見え透いたデマに、麻生信者の国粋趣味者がぱっと飛びついてすぐに広まるあたり、この「運動」がどういう人を主体に繰り広げられたものか垣間見えて興味深いです。
他にも私のみたものでは「土井たか子は朝鮮人だ」「小泉首相は朝鮮人だ」「解放同盟は北朝鮮全面支持の組織だ」というものから「重信メイはハーフではない」(大爆笑)というものまでありました。そもそもこれらのデマが本当だったと仮定しても、ケニア人二世である黒人大統領が誕生するこの時代に、「帰化した他民族」が国政に参与することのいったい何が問題なんでしょう?オバマの就任式を横目で見ながら、デマを流している奴らには「恥を知れ!」と言いたいです。
そういうちっぽけで短期的なことではなく「このサイトについて」でも書きましたが、もっと根本的なレベルで、10年、50年、100年のレベルで、「人の素朴な良心」を軽視したり、それに反するような運動は駄目だということです。左右を問わず、思想や理論は手段であって目的ではないのだから、自己の深い(素朴な)ところにある良心に問いかけて間違っているものはどうしたって間違っているのです。
それを忘れたから共産主義運動は衰退したんだと思っています。それと同じ理由で、今のネット上の右翼バブルも必ず衰退すると思っています。そういう意味で、私は超長期的には「正義は必ず勝つ」と信じている人間です。
例によって論旨は飛びまくり支離滅裂になりましたが、つまりそんな私は「我が窮状」を聴いて、一番はじめに「これでは駄目だ」みたいな所から話をはじめる「お利口さん左翼」や、自分は何もしていないくせに「年越し派遣村」の努力に対し、必死で重箱の隅をつつくように虫眼鏡で「批判点」をさがしまくっているような糞野郎に対して、猛烈な反発をおぼえるということなわけです。
◇沢田研二の『我が窮状』を広めて九条を守ろうよ(カナダde日本語)
◇この曲の登場で「我が窮状」は救える!(大津留公彦のブログ2)
◇我が窮状(薔薇、または陽だまりの猫)
◇沢田研二作詞の☆我が窮状☆(童話&絵本)
◇ジュリーと憲法九条(土佐高知の雑記帳)
◇沢田研二/我が窮状(日刊しらほぶろぐ)
◇我が窮状(ペンギン・ビート急行)
◇ジュリーの「わが窮状」(ももママの心のblog)
◇沢田研二『我が窮状』のこと(壺中山紫庵)
◇沢田研二「我が窮状」の意義と、沢田研二の歌う「脱走兵」(村野瀬玲奈の秘書課広報室)
◇「我が窮状」を支持するが故に敢えて異論を呈す(アフガン・イラク・北朝鮮と日本)
◇オマエ等、ジュリーの「どうぞご自由に撃って下さい♪」に鳥肌を立てるんだ!!!(迎春閣之風波)
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いいこと書いているなーと思って出てきてしまった、
通りすがりの沢田研二さんのファンです。
ジュリーはGS世代。
ソロデビュー前のPYG時代から現在も一環して、
ラブ&ピースはずっと歌い続けています。
派手なジュリーを演じてきた、根は地味な沢田研二さんなので、
自分の作詞した歌はつい内面が出てしまうようです。
新アルバムは名盤ですが、個人的にはラストの曲、
天国へ行っても一緒だよ~という「護られているI LOVE YOU」、
おじいさんがおばあさんにむけたラブソングの方が好きです。
窮状とか脱走兵とかのみ取り上げられて、
よくやったと騒がれるのはファンとして痛いです。
脱走兵は10年続けた音楽劇の、そのわずか1曲なのです。
硬派の還暦ロッカーなので、政治がらみの遡上にのせず、
ぬるい目で見てやってくださいね。
それから先に書いたのは、名前を入れたのに何故か文字化けしてしまいました。
すいません。
沢田研二論をする場ではないと思うが(笑)ある時期の沢田研二は大好きなので一応一言。
政治的な事を直接歌う事はなかったかもしれないが、彼の世代は60年代末のラブ&ピースの世界観をモロ影響受けてます。「PYG」というバンドをショーケンと組んでいた次期が短期間ではあるがありますが、その時のライブ盤を聴けば、ウッドストック・フェス当時の音楽への心酔振りがよく判りますし、もともとタイガース時代から、ストーンズのB面の曲ばっかりライブでやるとか、結構マニアックだったと思う。まあ、これは個人的な好みですが、PYGはあんまり音楽的には成功していないけれど、日本ロック史に残る名曲「自由に歩いて愛して」を残しただけでも価値があるバンド。「我が窮状」に感動した人はこの曲も是非聴いてほしい。ヒッピームーブメントやラブ&ピースの影響モロ受けてます
あの時期のロックって、ベトナム戦争とかと直結して、おそらくもっとも反体制思想と音楽が密接に結びついて、しかも多くの人々に聞かれた時代だから、政治的な意識を特に持たなくてもなんかその影響は残っているはず。そして沢田研二なりに、素直にこういう歌詞を書きたくなったんだろうし、まあ若い日の原点回帰の面もあるんではないかな。
しかし、私にとって沢田研二はなんと言っても「TOKIO」と「ストリッパー」あの2枚のアルバムに止めを刺す。今の日本のロックより遥かに素晴らしいので是非聴いてほしい
護憲は別としても、沢田さんの我が窮状は素敵な曲だと思います。
しっとりとしてて印象にのこる。この曲が入ったアルバムがさいごだといわれていますが、まだまだ、新しい曲を沢田さんにはつくってほしいです。