蔓延するプーチン政権の汚職・賄賂政治を摘発し続けてきた在野活動家のナワリヌイ氏が逮捕されたロシアで、23日、その釈放をもとめる市民デモがロシア全土の主要都市で発生。モスクワだけでも4万人以上が参加した。プーチン政権はデモを禁止した上で機動隊を投入し、激しい弾圧を加えて少なくとも3000人以上(!)を逮捕・拘束した。
ナワリヌイ氏は公共工事の入札情報などを調査し、そこから政府高官の汚職を暴露する活動を展開してきた。情報はネットで公開し、「ロスピル」という行政監視運動も立ち上げた。そのためナワリヌイ氏はとりわけ利権を貪るプーチン大統領の側近たちから徹底的に嫌われ、ついには暗殺(毒殺)未遂事件まで発生した。同氏は毒殺未遂直後にドイツの病院に運ばれて治療を受け、使用された毒薬はソ連時代に政府が開発した軍用神経剤「ノビチョク」であると判明した。
ドイツで療養をつづけていたナワリヌイ氏は退院後の1月17日に「勇気ある帰国」を断行。国際的な注視のなかプーチン政権はモスクワの空港でナワリヌイ氏を拘束した。これを予測していた同氏は自身の拘束にあわせて、1400億円相当のプーチン大統領の宮殿(私邸)を「世界最大の賄賂」としてYouTubeで公開。23日に街頭デモを行うよう呼びかけていた。
KGB出身のプーチンは、ソ連スターリン主義時代末期のゴルバチョフ政権が情報公開と政府批判を容認し、やがて民衆の不満に応えきれずにソ連崩壊へといたる過程を見てきた。彼はそれを本来の意味とは全く逆の方向に「教訓化」しているように見える。ロシア一国の権益のためには平気で周辺への軍事介入もいとわず、反対勢力はまだ小さいうちから徹底的な血の弾圧を加えるその姿は、まさに21世紀のスターリンと言えるだろう。
ロシアの強大化をめざして強権をふるうプーチン政権は、国内での政権支持率は高いようだが、実はスターリンも存命中はそうだったことを忘れてはならない。まさに「ロシアファースト」な思考といえるが、いま各国で台頭する自分本位の「××ファースト」な姿勢こそが、実は時代を逆行して世界を混乱させ、最終的には民衆を不幸にするのだということを肝に銘じ、日本のわれわれも他山の石としなくてはならないだろう。歴史を「ヤクザの縄張り争い」の時代に戻してはならないのだから。