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救援連絡センター学習会
新たな捜査手法を許すな!
-共謀罪新設の動きと新たな捜査手法
懲りない4度目の国会上程阻止!
導入反対の闘いに起ち上がれ!
http://qc.sanpal.co.jp/act/1464/
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◆講師:足立昌勝さん(関東学院大学教授)
◆日時:2012年1月21日(土) 開場13時
◆場所:佃区民館
東京都中央区佃2-17-8(地図はこちら)
地下鉄有楽町線または大江戸線「月島駅」下車4番出口 徒歩1分
都バス「門33亀戸駅-豊海水産埠頭」月島駅下車 徒歩2分
◆資料代:500円
◆主催:救援連絡センター
http://qc.sanpal.co.jp
kyuen@livedoor.com
東京都港区新橋2-8-16 石田ビル5階
TEL: 03-3591-1301 / FAX: 03-3591-3583
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新たな捜査手法を許すな!
http://qc.sanpal.co.jp/info/1342/
■ 蠢動する「新たな捜査手法」の法制化
「新たな捜査手法」=室内(会話)盗聴、司法取引、刑事免責、おとり捜査・潜入捜査などを法制化させる動きが急展開している。本年6月に震災後のどさくさに乗じて成立したいわゆる「コンピューター監視法」も通信履歴の保全要請などの新たな捜査手法を認める先駆けである。
「新たな捜査手法」の導入は、有効な組織的犯罪対策、テロ対策としてかねてから政府、治安当局の狙うところであり、組織的犯罪対策強化の国際的圧力下でその一部は、通信傍受(盗聴)やマネーロンダリング規制を認める組対法3法の成立(99年8月)によって実現をみた。
しかし、政府が2000年に締結した国際組織犯罪防止条約には「共謀罪」のほか「特別の捜査手法」、「司法取引」、「司法妨害の犯罪化」等まだ国内法化されていない多くの内容が規定されており、2001年6月の司法制度改革審議会最終意見書にも刑事免責制度や参考人の協力確保策などが「新たな時代に対応しうる捜査・公判手続きの在り方」として検討対象とされている。
その後、裁判員制度、公判前整理手続、司法支援センターという刑事司法大改悪の3本柱を成立(2004年5月)させるために沈静化していた「新たな捜査手法」を巡る議論は、このかんのえん罪事件や大阪地検特捜部問題を契機とした「取調可視化」論議を最大限利用しながら一挙にその正当性を押し出しつつあるのだ。
■ 窮地に立った検察の反動的巻き返し
そのために、法務省は、本年6月に法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」を立ち上げた。また、これに先行して国家公安委員長の私的諮問機関である「捜査手法、取調べの高度化を図るため研究会」(2010年2月設置)がすでに中間報告を発表した(2011年4月)。この研究会は、その目的を「治安水準を落とすことなく取調べの可視化を実現する」として、「取調の可視化」を進める体裁をとっているが、それは捜査手法の高度化=新たな捜査手法を導出するための小道具にすぎない。
国家公安委員長の私的研究会であるにもかかわらず、これをバックアップする「警察庁内研究会」も同時に設置され、研究会での議論の内容と方向性が、後続する法制審を牽引する構造となっている。さらに、大阪地検特捜部証拠偽造事件の欺瞞的「検証」=幕引きである「検察の在り方検討会議」による「提言」(2011年3月)も、「取調や供述調書に過度に依存した捜査・公判の在り方から脱却する」と称して新たな捜査手法導入を法制審に方向付けており、まさに検察の最大の危機を逆手にとった反動的巻き返しが開始されているのだ。
■「可視化」という罠
「研究会中間報告」では、「我が国における取調べの真相解明の機能」が強調され、それを損なわない「可視化」の方法論に議論は誘導されている。他方で諸外国における捜査手法の紹介が詳細になされ、可視化を進めるなら「取調の機能に代替しうる捜査手法等及び今後導入すべき捜査手法」は何かというふうに方向付けがされている。
そして、今後の検討課題として・DNA型データベースの拡充その他の犯罪追跡可能性を高めるための方策・通信傍受制度の見直し、会話傍受制度の導入その他の取調べ以外の場面における被疑者等の言動を捕捉するための方策・司法取引、刑事免責その他の取調の機能を補強するための方策・必要に応じて検討対象とするもの(潜入捜査、無令状逮捕・捜索・差押、黙秘に対する不利益推定、証人保護制度、CCTV(監視防犯システム)、性犯罪者へのGSP監視、全国民の指紋登録制度、参考人出頭・証言強制)等々おぞましい検討プログラムが作成されているのだ。
研究会の中では「弁護人の接見状況の録音・録画の実施について検討してはどうか。捜査機関での供述状況と照らし合わせることにより、供述の信用性の吟味が可能となるのではないか」「英国では、黙秘権を制限する仕組みが導入されている。黙秘権の持つ意味や、そのプラスやマイナスの影響について議論すべき。また、諸外国に比し、我が国の通信傍受の件数は極めて少ない。」「DNAデータベースの拡充、通信傍受、防犯カメラ等により、証拠を固めて検挙していただきたい。DNAは、刑務所の全収容者から採取してかまわないのではないか」「DNAのデータベース化は早く進めて欲しい。司法取引等の新たな捜査手法の導入も検討すべき。『真実の解明』に有用であるならば、どのような捜査手法も支持するのにやぶさかではない」等という意見まで飛び出している。
■「検察の在り方検討会議」での驚きの議論内容
法制審(第1回2011年6月)でも、「取調及び供述調書に過度に依存した捜査・公判の在り方の見直し」「供述人に真実の供述をする誘因を与える仕組みや虚偽供述に対する制裁を設けてより的確に供述証拠を収集できるようにすること、客観的な証拠をより広範に収集する仕組みを設けること」が検討課題とされている。
「検察の在り方検討会議」では、被疑者に対する虚偽陳述罪の制定、黙秘の不利益推定化、参考人の出頭・証言強制、会話傍受の導入、DNA取得のための無令状逮捕などが必要だとの意見が強力に主張されている。大阪地検特捜部問題を反動的に総括し、「供述調書に過度に依存しない」ためにその他の証拠収集方法が必要であるという議論が基調をなしているのだ。
本号では、詳しく論ずる余裕はないが、司法取引や刑事免責(捜査協力と引き換えに刑事責任を免除する)は、すでに実務上相当程度行われており(自供や転向と引き換えの起訴猶予や執行猶予、減刑)、おとり捜査・潜入捜査は、古くは武装共産党時代の菅生事件(1952年大分県竹田市で起こった駐在所爆破事件)における現職公安警察官の関与が有名である。こんな捜査手法を合法化するならばいくらでもでっち上げが可能となる。
■ 刑事司法改悪攻撃と徹底的に対決しよう
このように「取調の可視化」を隠れ蓑にした「新たな捜査手法導入」は、極めて巧妙な大攻撃である。第1に、このかんの司法改革で完全に勝利した政府、治安当局による「改革積み残し課題」の一挙的実現である。こうして3・11以降の体制危機下での治安強化、予防弾圧体制の飛躍的強化、拡大がもたらされようとしている。
第2に、大阪地検特捜部事件に対する全人民的怒りの爆発を御用「検証」機関である「検察の在り方検討会議」に収斂させ、むしろ検察最大のピンチを逆手にとって、新たな捜査手法導入の突破口としようとしている。
検察の人民弾圧機構としての権力的本質を覆い隠し、あたかも取調の偏重に問題の原因があったかのように矮小化し、その「反省」を装って取調以外の「客観的証拠」収集のための強力な武器を捜査当局に与えようとしているのだ。そのための撒き餌として使われているのが「取調の可視化」論である。そもそも最高検は、検察の在り方検討会議で「取調の真相解明機能を害されたり」する場合は可視化対象としないと居直っている。
事態は、もはや再び刑訴法等の大規模改悪に向けて動き出している。救援連絡センターを先頭に、反弾圧戦線を強化し、裁判員制度、公判前整理手続、司法支援センター粉砕の闘いとともにこの第2次刑事司法改悪ともいうべき攻撃と徹底的に対決することが必要である。
2011年8月29日(弁護士 遠藤憲一)
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