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 日帝の警備公安警察による闘う人民、革命的左翼への破防法弾圧は科学技術の発達にも見合ってより一層巧妙、悪質な形態でなされている。また、中核VSカクマル、解放派VSカクマルの十年間以上にわたる内ゲバの構造化により、革命的左翼内部においても敵対党派に対する情報活動が、かっては考えられもしなかったような技術水準で激しくくり返されている。

 そしてわれわれが党の武装の質をアップし、日本階級闘争の牽引者へと前進すればする程日帝権力は当然にも弾圧を強め、公然と非公然、さらには非合法をもとりまぜた攻撃をかけてくるだろうし、敵対党派もまたわれわれへの非公然の情報収集活動を強化してくるだろう。この攻撃と敵対に打ち勝ち、党と人民を守りぬくことが、今われわれの前には重要な課題として、戦略的諸闘争へ全人民の決起をなしていくために問われているのである。

 そこで本文では以上の観点から権力や敵対党派の非公然、非合法の情報収集のメイン的方法の一つである盗聴を中心にして、その実態を明らかにし、これとの闘い=防聴について提起してゆくこととする。

盗聴は市民社会でも日常的に行われている

 盗聴というと一般に思い起こすのはスパイ映画や小説の中でのCIAや旧陸軍中野学校等での訓練だとか、ジェイムス・ボンドばりの「活躍」か、せいぜいが警察権力による電話盗聴ぐらいだろう。
 しかし盗聴という行為は、何も権力機関の専門分野ではない。これは次の盗聴の性格の項でも明らかにするが、盗聴は現在の日本では、市民社会の中で半ば公然と行われているといってよい。

 例えば一般市民が、権力機関である警察や消防の無線通信を盗聴するという行為は、ワイドバンドの受信機によって簡単にできる(注:現在は警察無線のデジタル化によって難しくなった)。これらの機器は中小の電機メーカーが二~三万円台で数十種にわたって製造・販売しているし、丁重にも『ラジオライフ』なる本は警察無線の周波帯を全国の県警別にわたって紹介しているのである。

 また、不動産会社などでは、社長が事務所の電話器に盗聴器をしかけ、留守の間の社員の動静をチェックしたり、必要に応じ事務所の会話をチェックして社員の「指導」に役立てるといったこともなされている。そしてこうした機器は週刊誌の広告欄によって宣伝され通信販売されるか、秋葉原の電機店やポルノショップの隅で販売され、誰でも一万円~五万円も支払えば購入できるのである。

 これらの例からいっても、科学技術とくに電子工学技術が発達し一般化した現在の日本においては、盗聴技術等は特殊に訓練され、高度の技術を有した者だけができるといったものではなく、特別な技術をもたないわれわれでもその気になり、数万円を使えばいつでも可能なことであること、つまり盗聴の日常的可能性を、これとの闘い=防聴においてわれわれはおさえておかなくてはならない。

盗聴の性格とその種類

 現在の日本はスパイ天国といわれる程非合法的な情報収集が、各種の盗聴器を使用してなされていることは、前項で見た通りだが、盗聴は主要に三つの性格を有したものとして分類される。

(1)警察、内閣調査室等の公的機関=権力による労組・右翼・左翼・在日外国人への主として公安関係の情報収集、(2)内ゲバ党派による敵対党派の動向をキャッチするためのもの、(3)興信所・探偵社・ポルノ産業等による個人のプライバシーや、特定産業の技術、製品の価格等々を盗むといった営利追求のためのものである。

 われわれに関連するのは(1)と(2)のものであるが、ではどのような盗聴器が実際に使われているのだろうか。

1)電話盗聴の方法と実態

 その第一は電話盗聴である。
 電話盗聴は図(1)の三つの方法以外にも、電話局の内部でセットされている方法があり、これを便宜的にDとし、まずDからその特徴を明らかにし、A・B・Cと順に説明してゆく。

 このDの場合は勿論権力機関によってなされている。Dの場合は、『人民新聞』三三八号(一九七八年十一月五日)の電通労働者からの投書によって暴露されたのだが、この種の盗聴は通話している本人同士には全く気付かれることなく行えるということである。

 具体的には、受語器を取り上げると同時に、電話局内にある盗聴器とテープ・レコーダーが作動しはじめ、会話を録音し、受語器を元に戻すと切れるというものである。この方法が一般的なのであるが、これ以外にも、たとえ受話器を元に戻したとしても、室内における音をひろい、電話局内のテープ・レコーダーに録音することが可能な特殊なものも、七〇年代の前半においてすでに開発されたといわれている。

 勿論われわれも既にこの事態に対処して、会議中には電話器を布団に包み、傍らにラジオを置いて雑音を発生させたりして防衛をしているのだが、最近のICとコンピューター技術の発達は、この防衛方法も対処を誤れば無効のものとしている。音波の発生源は常に一定のサイクル帯に分類されるから、ラジオやTVから発生される一定のサイクルをコンピューターを通して数字に変え、これを除去すれば、会議中の肉声は容易にピックアップし再生できるというのである。

 しかしこの万能と思える盗聴方法にも欠点がないわけではない。それは第1に、収集する情報量が多くなりすぎ、いつでもどこにでもセットできるものではないということである。
 そして第2に、これが決定的な欠点であるが、半径四~五メートル以内の音声しか盗聴できないということである。
 したがって会議室の隣りの部屋に電話器を置き、ボリュームを大きくしたラジオと一緒に布団等でこれをくるんでおけば、まず盗聴は不可能ということになる。

 次に図(1)のA,B,Cの説明に入るが、これらに使用される器種は“コニーエレクトロサービス”なる会社で製造されており、製品名はテレフォンミッター“TX-3”というものである。この器種は電話線に直接つないで盗聴し、FM電波にして発信する機能を持つ。電源は電話線からとっているので、本体が破壌されない限り、永続的に使用できる。受話器をとりあげると電源が入り、ミッターが作動し、受話器を置くと電源も切れる。サイズは三・三センチ×一・ニセンチ×○・八センチと超小型で、重量は七グラム。発信エリアが約半径三〇〇メートル、周波数帯がFMで88メガヘルツから108メガヘルツまで。

 まずA図の電話器内部への取り付けであるが、この方法は電話器の裏側にあるネジニ本をプラスのドライバーではずし、ダイヤルカバーをあけると局線の入力端子L1とL2があるので、どちらかのチップを引き抜き、これに“TX-3”を接続し、ビニールテープ等で絶縁すると完成する。後はFM専用受信器を使って、受話器をあげれば電波を発信し、受話器を置けば電波が切れることをイヤホンで確認する。それが終わると“TX-3”の本体を受話器の空いたスペースに収容し、テープででも固定し、カバーをすれば、外部からは盗聴器が仕掛けられていることは絶対にわからない。

 B図のヒューズボックスヘの取り付けであるが、ヒューズ管二本のうち片方を引き抜いて“TX-3”をクリップし、ビニールテープを巻いて絶縁するだけでよいのである。ヒューズボックスは普通家の外壁についているので、この方法はよく使用されている。C図のように電話線の途中やマンションの端子箱に取り付ける方法もある。
 前者は図のようにL1かL2電話線のどちらか一方を切断して、その銅線の部分に“TX-3”をクリップすればよい。後者の、マンションの端子箱のように、ネジ止め端子に取り付ける場合は、付属品の圧着端子付コードを使うと電話線に簡単に接続できる。マンションの端子箱は部屋から離れた場所にまとめて設置されていることが多いので、容易に盗聴器をセットできるということである。

 この他にはヒューズ型盗聴器“TX-4”もある。“TX-3”のような盗聴器は電話器を開けて見たり、ヒューズボックスを見れば一目瞭然なのであるが、このヒューズ型の“TX-4”は外見は普通のヒューズと全く変わりない(冒頭の写真1参照)。したがって、このような盗聴器からの組織の防衛は、ヒューズを交換する以外ないといえる。

 では、このような電話盗聴は、権力や敵対党派が仕掛けることはあり得ることなのだろうか?
 然り。事実あったのである。
 八○年七月、日共の『赤旗』は戒谷幹部会副委員長と高原常任幹部会委員の自宅の保安器(地上からニメートル前後の高さの外壁に取り付けられていて、直径七・ニセンチ、高さ十ニセンチのグレイのプラスチックカバーがかかっている)の中に“TX-4”型式の盗聴器がセットされていたと公表した。

 このように権力による電話盗聴以外に特筆すべきものといえば、解放派(狭問派)によるカクマルに対するものがある。カクマルの「水木事件の真相をきわめる会」の世訴人であった久我某なる中年の女性は、警察―公安調査室のスバイでもあったという暴露がそれである。解放派は久我の自宅の電話線に盗聴器をセットし、久我と権力機関、カクマルの間の会話を盗聴し、この会話を機関紙『解放』に掲載したのである。

 この他にも中核がカクマルに対し岐阜県において盗聴器を仕掛けようとしたところを、電波通信法違反で逮捕されたり、逆にカクマルが中核の政治局員北小路の自宅のタンス裏にセットしたりしている(七二年二月)ことを見ても明らかなように、権力や敵対党派はスキがあればわれわれから非公然・非合法的に内部の情報をかぎだそうとしているのである。特にわれわれがゲリラ・パルチザン戦闘に着手し、また三里塚闘争をめぐり、中核派がわれわれを「脱落派」と何の根拠もなく決めつけ“せん滅”の対象としているこの時期にあっては、こうしたことからわれわれが無縁であるとは絶対にいえない。
 電話盗聴は、だいたい以上のものに現在的には尽きると思えるので、続いて盗聴の実態の第二の段階として、集音機を使用したポピユラーな盗聴を見ていくことにする。

2)集音機による盗聴

 会議室や部屋に仕掛ける盗聴器としては、ワイヤレスのFM送受信機がある。この盗聴器は一般的にいって、黒い小さな箱にアンテナ.マイク・送信機を収納していて、部屋の中で発生された音をFM電波に変え、三〇〇メートル先に送信する性能を有している。(盗聴器は値段によって、その性能を大きく異らせるが、このタイプの製品が一番多く販売されている)

 ユーニー社の製品カタログには以下のように書いてある。

 FM電波(無線)の応用により配線のわずらわしさがなく、コンクリートの壁なら二~三枚まで感度抜群です。車の中でもOK。無指向性の非常に鋭敏な特殊マイクロフォンの採用により、音源から五~一〇メートル離れた位置でも、人問の耳同様に集音が可能で最高エリア約七〇メートルを誇る

 この他にも“超プロ用”という「AR-101」は、二三×一八×八ミリで重量七グラムという極小のもので、視覚にたより発見するのは非常にむずかしい。メーカーはこの盗聴器をピンセットでつまんでいる写真をのせ、「これぞエレクトロニクスの芸術品」などと、カタログで堂々と宣伝しているのである。

 もっともこの盗聴器は一体六~七万円もし、何個も買うわけにはいかないが、藤田電子工業が造り「アルク」が販売している“東京14スパイダーズ”という盗聴器は八千円ぐらいで売られている。つまりわれわれでも「その気」になりさえすれば、三個や四個はすぐにでも購入することができるし「使用」することもできるというわけだ。

 こうした箱型の盗聴器以外のものとしては、ボールペン型盗聴器(図2)、電卓やウォークマンに内蔵された盗聴器など、ありとあらゆる種類がある。

 ボールペン型盗聴器で最も「先進的」といわれるフジタ電子工業の“FBP-2(ペンタイプトランスミッター)”は実際に書くことができ、外見上は普通のボールペンとまったく見分けができない。しかし、ペンの頭部をねじりながらはずすと、内部からリチウム電池や超小型送信機が出てくる。集音マイクはペンの尻に収納し、ペン尻にあいた小さな穴から外部の音をひろう。そしてキャップ全体をアンテナにし、ここからFM電波を発信する。(集音能力は半径五メートル以内)

 これらの超小型盗聴器は先にも書いたように視覚によっては発見しにくいのであるが、実は泣きどころもある。それは、盗聴器を小型化すればする程、電源である電池も小型化され電池の寿命も短くなることである。
 米帝のCIAが開発した特別な電池は一ヵ月以上も使用できるそうだが、一般的には二十四時間から長くても七十二時問ぐらいの寿命しかないといわれている。
 この欠点を補うものとして登場したのが、電卓や壁掛時計に内蔵された盗聴器である。電卓や壁掛時計は電池がなくなれば、使用者が新たな電池を補充してくれるのであるから盗聴は永続的なものになる。

 今まで明らかにしてきた盗聴器はほとんど定点型のもの(箱型ならば天井やテーブル、イス、電灯等に固定されている)だが、移動型の盗聴器もある。
 われわれが喫茶店や公園で重要な打ち合わせ、連絡事項をしていたとしよう。勿論、喫茶店では隅にいて、公園では人のいないベンチに座っており、最も近い人間でも四~五メートルは離れている。
 このような時でも盗聴の可能性はあるのだ。腕時計やライターをわれわれが話しをしている方向に不必要に向けたり、耳にイヤーホーンをしている者がいるとすれば指向性のある集音機を内蔵した盗聴器を有した権力の手先であるかもしれないと、一度は疑ってみることだ。

 これまで各種の盗聴器による盗聴の実体を暴露してきたのだが、これ等の盗聴器の他には、三メートルのコンクリートの壁をこえて隣の部屋で盗聴することのできるもの(松下電機で開発)やコンクリート、木の柱に穴をあけ、この穴に極小の盗聴器を埋めこみ修復するもの(これも外見的には全く気づかれることはない)等の方法もあることはある。

 だが、今の日本で権力や敵対党派がわれわれに使用すると思えるものは、ほぼこれまでに暴露した器種や方法のものといえるだろう。ボールペンや壁掛時計の日用品にまで盗聴器がセットされ、われわれの言動をうかがう権力や航対党派に対し、では一体いかなる対策をとればよいのか。このこと、つまり防聴がわれわれの課題なのである。

誰にでも、簡単にできる防聴

 最新のエレクトロニクスを使った盗聴器に対する防聴――これは結論からいえば、少し性能の良いFMラジオ(広帯域ラジオがよい。値段は一万円以内)とドライバー、紙、ボールペンの四つがあれば、それで充分だ。

 防聴の第一は、まず盗聴器がセットされているかどうかを調べてみることだ。盗聴器の大多数は集音マイクで目的の部屋内の音をひろい、それをFM電波にのせ外部の受信器に送るのであるから、われわれもFM受信器があれぱそれで事足りる。

 当該の室内でラジカセでも使い音楽をかけておこう。次に部屋の外でラジオをFMにセツトしてゆっくりダイヤルを回していく。もし室内と同じ音楽がFMラジオから聞こえてきたら、盗聴器が部屋のどこかに仕掛けられているということだから、今度はダイヤルをそのままにしてラジオをその部屋に移動させる。そしてボリュームを最大にし、部屋のあちこちに持っていってみる。ラジオからピーという、よく集会場で聞くようなハウリング音が聞こえてきたら、その付近に盗聴器があるから徹底的に探してみることだ。

 無線式による電話回線の防聴は公衆電話からでも室内に電話をかけ通話状態にし、きまった内容(アイウエオをくり返すとか)で通話し、前記と同じようにしてFMラジオで探知する。ただしこの場合は室外の電話線、ヒューズボックス、端子箱にセットされていることもあるので、これらの付近でも調べてみることだ。電話器はこんなことをしなくても、ドライバー一本で分解し探すことができるので、是非やってみてもらいたい。

 だが、中にはFMラジオで絶対に受信できない盗聴電波を流す機器もある。マイクロ電子工業の“専用受信機付クリスタルトランスミッター”(一台約九万円)で、送信器と受信器が分かれているものがそれである。この盗聴器は水晶発振による特殊電波を使用し、付属の専用受信器以外では傍受できないし、発信器の集音能力は十メートルから二〇メートルと広く、郊外では最高七〇〇メートルまで電波が飛ぶ。こうした特別な盗聴器に対する防聴は、徹底的な家捜、人名・地名・機関の符牒化か筆談の他しかない。

 カモイやタンスの裏側、天井裏等々普段目にふれぬところを調べたり、重要な事項については筆談すれぱよい。盗聴器はそもそも、発生された音波を秘密に盗むためにつくられたのだから、防聴の最高形態は音波を発生させなければよいということだ。そうすれば、どんな精綴な盗聴器を権力や敵対党派が使用し、われわれの内部情報を得ようとしても、何の成果もあげられないのである。

おわりに

 防聴はこれまで明らかにした諸点を実践すれば百パーセントといえる程、技術的には完成されるのであるが、権力との闘いにおいて最も核心的なことは技術的な緻密化のみにあるのではないことを最後に確認しよう。

 これまでの革命運動の歴史の中で、権力の弾圧やスパイ活動・盗聴によって革命党が壊滅させられたことは一度もないということがそれだ。
 ポリシェヴィキの中にはマリノフスキーという党の中央メンバーで、ボリシェヴィキの国会議員団の議長でもあったスパイがいたが、それによってロシア共産党が粉砕されたということはなかった。
 戦前の日共の内部にもスバイMがいて、この謀略により日共は壊滅したとブルジョアマスコミが時に触れキャンペーンをしたりするが、事実は全くちがう。路線や綱領をめぐって日共内部に対立が起こり、それが分派闘争にまで発展し、党の気運や戦闘力を内から崩壊させてしまったことに、戦前の日共の解体は起因しているのである。

 そうであるが故に、自らが選択した「この党に生き、ともに闘う」精神を培い、不屈に闘いぬくならば、権力による弾圧などは張り子の虎にすぎない。ましてや中核やアダチにしろ、カクマルにしろ、これらの党派の敵対は日帝権カより強カとはいえないのだから、何ら恐れる必要はない。

全国の同志諸君!われわれは本八四年も、勝って勝って勝ちぬこう。そのためにも本文を参考とし、鉄壁の防衛態勢を整えることを最後に要請する。

(一九八四年三月)

⇒防聴については「日常活動の手引き(2)」も参照のこと

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