保守系ミニ新党乱立に対する素朴な疑問

3人そろって居眠り中のたちがれ新党 例の「たちがれ新党」の記者会見において、世間の老齢批判に激怒した石原さんが、「ああ、俺たちゃジジイだよ!」と開き直ったあげく、「今の若い奴らに国を憂えている人間がいるか!俺たちジジイが立ち上がらざるを得ないんだよ!」と吼えておられました。それを見ながら思い出したのですが、なんでも平城京跡から出土した木簡を復元してみたら、「最近の若い奴はなっとらん」と書いてあったそうです。どうも有史以来人間は(つーかジジイは)、「最近の若いもんは」と言い続けてきたらしいのですが、まさか石原さんの口から同じことを聞くとは思ってもいませんでしたので、少なからず脱力いたしました。

 私はかつては石原さんを「強敵」と認識していたこともありますが、少なくとも任期後半からの石原さんは、ご本人も言っておられるように、ただのコンサバな「ジジイ」であったようです。ただただオリンピックをやりたいがためだけに三選出馬した石原さんを打倒できなかったのは、石原さんが強かったのではなくて、味方があまりにも未熟で弱すぎたからに他なりません。

 その前回の都知事選では、石原さんにイジメられたり、ないがしろにされてきた人々が、浅野陣営に結集し、総力で「反石原選挙」を闘った。政党ではなく市民主導による浅野さんの出馬は、共産党の理解だけは得られなかったとはいえ、今までカヤの外に追いやられていた人々にも希望を与え、門戸を開き、かつてなかった広範な層の人々が参加できたという成果を残しました。しかしながら選挙結果自体は共産党候補の得票と合計しても石原さんに及ばなかった、従来の固い反石原票を固めただけで、そこに積み増しを得られなかったという意味では完敗でした。

 選挙後に、当ブログにもよく投稿していただいている、右翼活動家の三浦さんより、浅野選挙に集まってきた人々には「反石原以外の主張が見えなかった。これでは勝てないでしょうね」という感想が、左派系の掲示板に投稿されました。運動の期間中にはそれを批判して荒らすような投稿は控えた上で、事後に感想として投稿される三浦さんのネチケットには深く感銘しつつも、この三浦さんの感想に真っ向から回答する左派はいなかったと思います。私自身も三浦さんの感想は確かに一面をついてはいるものの、なんとなく頓珍漢に感じられましたし、「本質を見ていない」と思いました。私(たち)は「石原的なるもの」およびそれを裏返しただけの共産党的な行き方に対して、「浅野的なるもの」を対置して闘ってきたと思っていました。つまり本質的な対抗軸はちゃんと示していたし、三浦さんが言っているのはドブ板的なこまごまとした主張に還元されてしまう、非本質的なものだと。

 でもね、現下のミニ保守政党の乱立を見れば、三浦さんの言っていたことがよくわかりますよ。まさに「人のふり見てわがふり直せ」とはよく言ったもんだと思います。自分の姿は見えないもんなんですね。結局、「たちがれ新党」にせよ「舛添新党」にしろ、「反民主党政権」以外に何があるのと。それ以外に、私たちをいったいどこに連れて行ってくれるのかと。結局、反民主党をとったら何も残らない。「たちがれ新党」や舛添さんの「自民党は敵ではない」という言い草がそれを端的に示しているわけですが、これは浅野選挙当時に私たちが「共産党候補は(真の)敵ではない」と言っていたのと同じですね。それをこうして他人事として眺めてみますと、はっきりいってわけがわからないですよ。

 だいたい、党を割っておきながら「敵じゃないから攻撃しないで」とはどんだけ都合がいいねんと思いますが、これではますます「反民主以外は何もない」という印象を強めるだけです。なるほど傍目からは私たちもこう見えていたわけですね。もし、進むべき方向と信念をもって自民党を割ったのなら、自民党とも闘うのが当然です。自民・民主ともに敵にまわして「保守党による第三極」を目指すのが筋というものでしょう。

 こういうわけのわからない状況で、かつ本人たち(だけ)は勇ましいことを言っている現状では、従来の強固な反民主党保守層を、各保守新党同士でわけあうだけであり、その配分については、党の顔、すなわち党首の人気投票にしかならないんです。世論調査の結果をみますと、党首である平沼さんの人気のなさを補うべく、石原さんまで看板として担ぎ出した「たちがれ新党」の支持率は、全国平均で2%、舛添新党の支持率は7%のあわせて9%だそうです。まあ、だいたい妥当な線だと思えますよね。

 こうして「わけがわからない」と言えば言うほど、反民主党保守層の人は反発するんでしょうね。ちょうど私が三浦さんの感想を読んだ時に反発を感じたみたいにね。「民主党政権が続けば日本が滅びる」とか「対抗する保守主義路線をちゃんと示している」とかね。けどそれはね、たとえるなら、旧社会党の協会派に顕著だったわけだけど、「あれもこれも社会主義になったら全部よくなる」という言い方と五十歩百歩ですよ。私たち元新左翼の活動家は、現役当時、「社会主義になったらよくなる」ではなくて、「どうすればソ連のような『社会主義』にならないか、それを超えるものは何か」を主要な問題意識としてきたわけです。せめてそれくらいの意識はもってほしいですよね。

 なんかね、極右系のネトウヨさんたちなんかは、「民主党政権になったら」「外国人参政権が実現したら」中国に軍事占領されて日本人は奴隷にされるとか言ってるんですが、そんなことをネタではなくて本気で考えているんでしょうかねえ。法案への賛否は別として、人口のたった0.4%にすぎない定住外国人に、地方自治体選挙の投票権を与えただけで滅んでしまうような脆弱な国なら、もはやどっちにしろ滅びると思うんですが。まあ、彼らはこれから20年、30年たって、自分が40歳や50歳になった時、人々が今となんにも変わらず生活しているさまを見て、「あのときは若かった」と頭を掻いて反省する日がくるんでしょうけど。

 どっちにしてもね、自民党は小泉さん以来、右にいけばいくほど支持を減らしてきたという現実をみすえるべきではないでしょうか。要するにね、確かに民主党は人々の支持を失い、失望をもたらしているけれども、それは日本を「変えた」からではありません。変えてほしいと願って支持したのに、「変わらなかった」小沢さんのスキャンダルに見られるように「自民党時代と同じ」だから失望され、支持を失っているんだということを忘れてはいませんか?

 まあ、一言でいって、短期的な「政局」とやらにはまったく無関心ですましてきた私にとって、みんなの党をのぞく今の保守ミニ政党の乱立は「わけがわからん」と言うにつきますね。このままいけばどうなるかという点についても関心を失いつつありますが、それを占うひとつの結果が、今春の地方選の結果です。それによれば地方議員の数は民主党がかつての勢いを失いつつも、横ばいから微増。自民党は激減、社共は1割から2割ほど減、公明は横ばい、みんなの党だけが健闘という結果です。自民党は「もともと地方の保守派は無所属が多いので全く影響はない」と強がっているようですが、その「地方の保守系」が、利権をなくした自民党から急速に距離を置いているということの結果です。次の参院選もだいたいこんなところでしょうか。みんなの党は台風の目になる可能性がありますが、それ以外の保守ミニ政党は、今のままならたいしてふるわないと思います。

 皮肉なことにと言うべきか、左右両派ともに参院選では「民主党の単独過半数阻止」という思惑は一致しています。左派は社共の、右翼は自民党と「たちがれ新党」の伸張によってそれを実現したいと思っているのでしょうけれど、お互いにとって憂鬱な結果になりそうですね。たった一つだけ確実に言えるのは、投票率はふるわないだろうということだけですかねえ。

3 件のコメント

  • 三島由紀夫氏が、自決の約1週間前、古林氏という文芸評論家というか、編集者のインタビュー受けているんです。この古林氏というのは左翼というより、まあ、戦後民主主義の価値観を大変大事にしようとしている進歩派リベラルといっていいでしょう。録音が残されていてCD化されています。
    http://www.shinchosha.co.jp/book/830091/

    ここで三島が大変印象的な一言を言っています。この時点ではもう自決を覚悟していたと思います。古林氏が、「楯の会」や、三島の右翼的発言に対し、三島さん個人の思想同あれ、あれは自民党タカ派の、再軍備や徴兵制復活などの政策に利用されちゃうんじゃないでしょうか、という趣旨の発言をしたときの回答です。(要旨をまとめました)

    「古林さん、今にわかります。僕はあいつらの手には絶対に乗りませんよ。彼らには絶対に利用されないと覚悟を決めてますよ。今のところ利用されているといわれればそのとおりです。僕も今の段階では、彼らが利用していること百も承知ですよ。彼らは、馬鹿が自分の原稿料はたいて、俺たちの太鼓をたたいてくれてると思っているでしょう。僕も今のところそう思わせとくことは有利ですからね。でも、それは政治の低い時限のことです。僕は敵には絶対に利用されません。敵というのは、自民党であり、共産党であり、戦後体制すべてです。僕にとって自民党と共産党って同じものですからね。全く同じものです。偽善の象徴です。」(三島)

    この「僕にとって自民党と共産党って同じものですからね。全く同じものです。偽善の象徴です。」という言葉、この水準に立たないと本当はダメなんですよね。それは戦後民主主義を乗り越えようとする右翼の本当の原則のはずなんです。

  • >三浦さん

    なるほど。
    そうして考えて見ますと、総体的には世間の「右翼バブル」によって、右翼(または保守主義)ってのは思想的にはかえって危機の時代なのかもしれませんね。確か三浦さんもそういうことを言っておられたように思いますが、小泉郵政選挙による自民党の圧勝でそれが顕著になったと。右翼としてはあの圧勝はちっとも喜べないどころか、かえって憂鬱であるみたいな論調を、当事散見した記憶がありますが。逆の立場で考えれば、社会党が選挙で圧勝した場合の左翼のアイデンティティの危機みたいなもんかな。

    それは戦後民主主義を左から乗り越えることを目指してきた左翼にとっても、今の保守派の「わけのわからなさ」は人ごとではないですね。今の世の中で立ち位置がしっかりしているのは、戦後民主主義の理想を愚直に信じている社民主義者(たとえば「護憲派のおばちゃん」とか)くらいに思えてきました。

  • >>平城京跡から出土した木簡を復元してみたら
    ピラミッドの壁の落書きにもあったそうですね。
    こういうところは人類が続く限りは起り得ますね。

    >>「反民主党政権」
    反〇〇というだけでは、民主党と同じ失敗を繰り返すことになる。

    >>「わけがわからない」
    いや、ネトウヨも叩いてますよ、この現状。
    立ち枯れ日本、てね。

    >>「民主党政権になったら」「外国人参政権が実現したら」中国に軍事占領されて日本人は奴隷にされるとか言ってるんですが
    半分本気、半分扇動。
    移民増加政策と組み合わせればもしかして・・・・とは考えてるんじゃないかな?。実際、強力な組織票って、三百万もあれば政界を牛耳れるし(公明党とか)。と、ちょっと現実的な数字が出てきてしまう。
    ま、確かにそのくらいで滅びたら情けないけどね。

    >>右にいけばいくほど支持を減らしてきた
    う~ん、漢字が読めないのも右なのか?はさておき、経済(などの)危機下での政変は珍しくともなんとも無いため、右であるから支持を失ったとは考えにくい。むしろ、自民党は内紛ばかりで経済危機に本気で取り組めず、頼りないと思われたのではないかと考える。僕はね。
    そこの危険は民主党も内包しているため、結局は自民党とは変わらない。
    (しかし、近代で効率良く経済危機に望めた政権って、ナチスドイツくらいじゃないかな・・・?)

    >>みんなの党は台風の目になる可能性がありますが
    政党三国志か・・・・・
    三国志の後も戦乱が続いてたことを考えれば、またもや政治は混乱する。

    >>左右両派ともに参院選では「民主党の単独過半数阻止」という思惑は一致
    それは政権交代前の反自民の空気と一緒じゃないか・・・・・

    誰にとっても憂鬱な政治が続きそうですね。
    ま、結局のところ、左右両派とも魅力有るものを提示できてないし、経済を立て直せそうな人もいないし・・・・・
    そろそろ、日本、というシステム全体を考えなおさなきゃいけない時期なのに、やっていることは壁の塗り替えだもんな・・・・・

    まずは左右両派をスクラップにして、新しく左右両派を立て直すことが必要なのか?時代に合った理論と論点、とかね。

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