連載】総選挙得票で見る現実の社会的力関係
: 第三回】沖縄選挙区はどうだったか

 来年の焦点の一つである沖縄県民連帯。連載3回目は沖縄選挙区における有権者の行動をみていきたいと思います。

比例投票先に見る沖縄の世論

沖縄選挙区 比例グラフ2

 最初に図1で、前回の全国レベルのでの分析と同じく、3つの社会勢力で絶対得票をみますと、自公(全国24%→沖縄21%)、立社共(同16%→21%)、希維(同12%→11%)と順位自体に変化はないですが、やはり与党への票が減って、そのぶん野党の得票が増えている……ということなんですが、沖縄の特殊性として、この3潮流のわけ方よりも、辺野古新基地への賛否の方が重要になってくるわけです。

沖縄選挙区 比例グラフ

 そこで次に各党ごとに細分した相対得票率のグラフ(図2)を見てください。ここで注意しなくてはいけないのは、公明党の沖縄県連は辺野古新基地に反対の態度を表明していることです(→参照)。

 つまり公明党は安倍政権発足当初の自民党県連と同じ(その後石破の恫喝に膝を屈した本部派と翁長知事ら県民派に分裂)立場ですが、一方で公明は基地反対派のまま自民党本部派と共にオール沖縄から離脱し、国政や首長選挙では自民党本部派の候補を応援しています。そして地方選挙では「私は基地反対候補です!」と県民の支持を集めて当選するというヌエのような存在です。それでも主張は基地反対派に分類されます。

 次に維新ですが、前回の沖縄知事選に立候補した下地幹郎氏は、基地問題についての賛否を明らかにせず、「県民投票をおこなってその結果にしたがう」という公約でした。だったら知事選の結果が示す通り、基地反対派が勝つことは自明だったのだから、もう反対でいいじゃんと思うのですが、そこは大人の事情があったのか、もしくは基地容認を明言すると票が減ることを懸念したのかわかりませんが、とりあえず沖縄維新(下地氏)は態度不明確の「その他」に分類されます。希望の党の沖縄県連は態度がわかりませんが、とりあえず「その他」ではなく賛成派に分類しておきます。

新基地建設への賛否による得票分類

沖縄選挙区 比例グラフ3

 そこで全国分析でおこなった分類とは別に、政党ごとの基地の賛否によって分類した得票率が図3になります。

 「沖縄の人は基地に反対してない」とかいうネット言説を流しているネトウヨさんなら「こんな分類おかしい(キィキィ)」とか言いそうですが、だいたいこれで基地問題に関する世論調査の結果に近づくんですね

 反対派のビラでは「7割近くが反対」と書かれることが多いですが、正確には60%台後半です。それでも鳩山内閣が「県外移設」の公約を撤回した際の世論調査では、民主党政権への怒りから、基地反対は実に84%に達し、内閣支持率は8%にまで下落しました(→詳細)。それが安倍政権下で60%台後半(7割弱)にまで減ったのですから、ネトウヨさんはむしろ「このままもっと頑張ろう!」と喜ぶべきではないですかね。

 まあ、そういう真面目な態度でこられたほうが、むしろ反対派としては脅威なので、ネトウヨさんは今のまま沖縄の負担なんて知ったことか!という態度でいてくれたほうが、運動的観点からは非常に助かるっちゃ助かるんですが、やはり昨今の沖縄ヘイトを見ると心が痛むので、そこは沖縄の人たちの心情を考え、遊び半分なデマに頼るのはそろそろ卒業して、もっと真面目にものを言ってほしいと思う。

突出する社民票の多さが特徴

 それ以外に一目見ただけで強烈に特徴的なのが、沖縄では社民党の得票率が抜群に高いことです(全国では1.7% しかないのに、なんと沖縄ではその7倍近い11.3%!)。

 小選挙区で社民党所属の候補が、オール沖縄の支援で立候補していたことも大きいでしょうが、その小選挙区候補の当選も含め、これは社民党が鳩山内閣で、政権を追い出されてまで辺野古新基地建設に反対を貫いてくれたことへの恩義ということがあるのでしょう。それと自民党の得票が全国平均より10%も低い(全国33%→沖縄22%)のが目を引きます。

 あと公明(同12.5%→17.3%)と共産(同7.9%→11.3%)の得票がかなり多いのに対し、立民(同19.9%→15.1%)と希望(同17.4%→13.5%)という「新参」の票が低いですね。沖縄の自公ブロックと立社共ブロックは、それぞれ公明と社民の支持の多さでもっているということでしょうか。

小選挙区票の分析-公明票あなどりがたし!

 次に小選挙区における票の出方をみてみます(図4)。比較のために先ほどの比例区のグラフ(図3)を再度並べてみました(小選挙区における「その他」は維新と幸福)。

沖縄選挙区 小選挙区グラフ
沖縄選挙区 比例グラフ3

 左が小選挙区で、右が比例区での票の出方なわけですが、小選挙区でも基地反対派(オール沖縄)が過半数の得票を得ていることは変わらないものの、公明党から自民候補に、基地反対派の票が7%ほど流れていることがわかります。

 この公明票はかなりのくせものですね。創価学会とのブロックで固い基礎票がある上に、地方議会選挙では「辺野古基地反対」を標榜してオール沖縄の票を食うし、そのくせ国政選挙や首長選挙では自民と相乗りして基地反対票を横流しする。いくら基地反対派が圧倒的多数といっても、この公明党の動き方のせいで、オール沖縄は常に油断ができず、隙をみせるといつでも自公ブロックに足をすくわれるわけです。正直ウザい。

自民党の争点隠しに手を貸す公明党

 沖縄公明のこのヌエのような態度が許されているのは、まず、自民党本部派にとって、上のような理由でそのほうがありがたいということがあります。さらに基地賛成派は選挙においてだいたい争点隠しを行います。選挙戦において、重要な争点であるはずの新基地について主張を明言しないのですね。

 もしネトウヨさんが言うように、基地反対が多数でないというのなら、堂々と基地には賛成ということを掲げればいいはずなのですが、新基地への賛否が争点になると、基地反対派が圧倒的多数であるから必ず負けてしまう。そこで「基地はどうすんだ!」と問われても、「いやぁ、そんなことより私らに投票したら本土から金を引っ張ってこれますよ」とやるわけです。あとは創価学会員の心の安定とか(笑)。

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