昨日のエントリーで、「日本ブロガ~労働組合」への参加表明をしておきました。今のところ「労組」というよりも、ネット上の「ブログ同盟」という感じで、どうなっていくかは今後次第ということですかね。
●ジャパンユニオンの取り組み
実は「インターネット上の労働組合」としては、すでに「ジャパンユニオン」が存在しています。こちらは組合としての登記もすませ、法律上も完全に正式な労組としての資格をもっています。日本国内のみならず、在外邦人も含めて、誰でもどこからでも一人で、インターネットを通じて組合員になることができます。つまり顔もあわせたことがない組合員が、インターネットを使ったネットワークで労働運動をしているわけです。これはかなり画期的なことかもしれません。
実はジャパンユニオンのほうは、もともと個人加盟の地域労組として活動していた「東京東部労働組合」が設立母体となっています。同労組が従来からの労働相談をメールでも受け付けはじめたところ、全体の45%がメールでの相談になったそうです。メール相談の場合、都内だけに限定している意味もなく、そこからネット労組の構想がはじまったそうです。ですが、サイトを立ち上げて運営を開始してからも、長らくメーリングリストというものの存在さえ知らなかったという状態だそうで、要するに、労働問題についてはプロだが、ネットについては素人という人達だったわけですね。その手探りの心意気は買いたい。運動のネット利用については、労働運動は非常に遅れており、むしろ市民運動が先行しています。そこでジャパンユニオンでは、こういう先進的な市民運動とも交流しながら、そのノウハウを学ぼうとしています。
●ネット運動についての考え方
実はもともと左翼には、コンピューターとかインターネット、あるいはそれを使った運動というものに対して懐疑的な人や批判的な人が多く、そのことが左派のネット利用を遅らせてきました。ネットが急速に拡大していく初期段階では、このことはかなり致命的だったと言えます。社会全体では極少数に過ぎない極右派が、ネットを利用して急速に勢力を拡大していく過程でせめぎ合うことができず、みすみす座して黙認してしまったのですから。ここ数年でかなり状況は改善されてきましたが、それでもまだまだ暗いものがあります。
こういう言い方自体がかなり古い議論だと思うのですが、運動のネット利用については二つの立場があって、一つはネット礼賛派というか、ネット上の活動こそがめっちゃ重要であり、むしろここに力をさくべきだという人。2ちゃんねる掲示板などもテレビでコマーシャルを流すよりも遥かに影響力があるとして、ここが「極右に占拠されている」ことに重大な危機感を表明されます。もう一つは現場重視派です。ネットでいくら人を集めて盛り上がっていても、そんな輩はしょせん砂上楼閣にすぎないと言います。ネット上の動きは現実を反映したものにすぎず、実際の社会、地域、職場などの実践で足場を築いていくほうが大切だと。ネットはせいぜいWebでの広報や宣伝、意見表明と、メール連絡くらいに使えればよろしいという考えです。
今日では言うまでもないことだと思いますが、両方が間違っています(あるいは両方が正しい)。ネットはすなわち「道具」であり、しかも強力な道具です。この言い方もすでに使い古されているんで恥ずかしいくらいですが、やっぱり左派の多くはまだわかっていない。道具ですから、使う人の立場と質が問われてくることはもちろんです。ネットを使って上手に呼びかければ現実の運動も何とかなるというもんではありません。ですが、これは強力な道具ですから、相手がこれを持っているのに、自分が使わない、あるいは使いこなせないとすれば、非常に不利というかハンデを負うことになると思います。
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●できることは何でもやってみよう
ネットの特性をよく研究して、何ができて何ができないのかをよく見極め、うまく運動に導入していくべきだと思うし、そのノウハウを蓄積していくべきだと思います。かつてはこの目的のためにサイバーアクションというサイトがあったのですが、更新がストップしており、今では紹介されている事例もすっかり古臭いものになってしまいました。まあ、進歩のめちゃめちゃ早い分野ですし、たとえば今なら個人でも動画を使った情報発信が当たり前になりつつありますが、こういうのは悠長に「使い方のノウハウ」を研究していたんでは追いつきません。ネットそのもののトレンドに敏感に反応して、できることはとりあえずどんどん取り入れてみる、ネットやパソコン関連の本や雑誌もちゃんと購読する、右派サイトであろうが商業サイトであろうが「あ、これいい!」と思った方法はとりあえずやってみる。そういう走りながら考える方法より他にしようがないでしょうね。ただし初心者用のノウハウサイトはやはり必要だと思います。
つまりしっかりとした現実の積み重ね、運動実践や人的な蓄積があることを前提に、ネット上にもその特性をよく理解した上で持ち込んでいくような、重層的な展開が、今ではめっちゃ重要になっている。むしろ左派にとっては喫緊の課題であると思います。「現場かネットか」であるとか、「まず現場の運動を固めてから」という発想は捨ててください。また、それとは全く逆の立場で、現実から切り離された「ネット空間」なるものがあって、そこで成功することがネット利用の目的のように概念してもいけない。ネットは道具であり、しかも強力な道具なのです。今すぐにネットを従来の運動方式にプラスして、あるいはそのほうが効率的な分野では全面的にうつしかえ、並行して取り組むべきです。
●ネットの特性を活かしたジャパンユニオン
そういう意味では、東部労働組合がジャパンユニオンを設立したのは非常に良い取り組みだと思います。何事もこれからですが、その発想は近年にないクリーンヒットです。なぜならネットの特性には、散在する特定の性質を有した個人をネットワーク化するのに、非常に適しているということがあります。そう、未組織の非正規雇用個人の全国ネットワークを作っていくのに、非常に適した方法だと言えます。しかもなんとiモードページまであって、携帯電話から組合に正式加入できるんですよ。不当な首切りやセクハラにあったら、その場で携帯を取り出して、「私、今日から組合員」というわけです。ちょっと前なら考えられません。
もちろんこうしてネット上で「人集め」をしても、その後というものが問われてきます。ここが重要なところなんですね。組合費だけ集めて何もしないでは詐欺です。そこで東部労組としての長年の地域労組としての活動や、労働相談の経験が活きてくる。いわばそれをネット上にうまい具合に移し変えたわけで、そういう意味でも非常に良い取り組みだと思うわけです。
また、このエントリーのトップに貼ってあるポスター画像は、ジャパンユニオンと協力関係にある「NPO法人労働相談センター」のものです。同センターでも、労働相談をメールと電話にて無料で受け付けてくれます。たとえば多くの組合の労働相談ページは、相談項目と連絡先が書いてあるだけなので、敷居が高いですよね。権利意識が低くて、当たり前の人権を守ることさえ色眼鏡で見られるのが日本社会です。会社で「ちょっと暴言を吐かれたりサービス残業させられたくらいで、労働相談にかけこむなんて」という意識の人が、信じられないでしょうが結構いるもんなんです。弱い立場の労働者が、とりあえずネットで「最初の一歩」が踏み出せるとすれば、それこそ強力な道具としてネットが機能するのではないでしょうか。
●組合が国家と一緒に沈没してどうする
国家の状態もどんどん悪くなる一方です。政府はその責任を他人に転嫁し、人々はその政府と心理的に一体化してもっと弱い者を叩くことで安心感を得ようとしている。雇用状態も悪化の一途。渾身の力で長時間働いても食べていけないワーキングプアの問題がクローズアップされ、労働者は非正規雇用で使い捨てられている。それを是正するはずの政府は、逆にその現状を追認する方向で法律を改正しようとしている。労働組合の役割や重要性はますます増大しているのです。
にもかかわらず、労働者の組織率は年々減少の一途だといいます。はなはだしきは、組合員(正社員)の既得権を守るために、会社と一体になって非正規雇用のワーキングプアを差別する組合も多いとか。こんな身内しか守らない、弱いものの立場に立たない団体が、社会的に大きくなって影響を拡大できるはずがありません。ヨーロッパでは(はっきりとは言わないまでも)外国人労働者排斥の立場に立つ組合もあります。今後、外国籍労働者がどんどん増えていくのは確実ですから、その時には組合のあり方も問われるでしょう。
組合も国家と一緒に沈没してどうするのですか?いえ、組合だけではありません。各種の左派系の政治運動だってそうです。勘違いした一部の人は、何やら表面的なスタイルで「若者にすりよる」みたいな路線をとっていますが、問題はそんな所にはないと思います。硬派なら硬派のままでも全然いいんです。方法論としてジャパンユニオンの行きかたがすべて良いのかどうか、まだ評価を下すのは早すぎるとは思いますが、一つの参考にはなるんじゃないでしょうか?
●なぜ「ブ労連」に参加表明したか?
さて、ではなにゆえに、そういう「現実の蓄積」が全くない「日本ブロガ~労働組合」なんてもんに参加表明したんかということです。これは言っていることと違うではないかと。確かに現実の蓄積はないと思う。一ブロガーの思いつきという要素が強い(というかそう)。それにネット上の労組としてはすでに、ジャパンユニオンがあるのだから、屋上屋を重ねるという気がしないでもない。
最初の点についてはまず、ネットは現に存在して実績のある運動が利用する以外に、そういうものを全くもたないが、とりあえず意欲と構想だけは持っている個人が「何か」をはじめようとして呼びかけるにも非常に適したツールだということを強調したいです。そういう人が無数に出てきて、いろんな取り組みをはじめて欲しいと願っているし、そう言うのなら、私自身も応援していかないと嘘だと思います。ネット運動は、何も現に運動している人だけしかやってはいけないもんではない。それに現在では、一つのサイトを開設することが、駅前で一日ビラをまくより影響力があったりすのです(もちろん両方が必要なんですが)。
次に二つ目の、屋上屋を重ねるという点についてですが、この取り組みが「ブロガー」を冠していることに注目しました。すでにある組合が、困っている労働者に手を差し伸べるという関係とはまた違う、水平的な関係の可能性と言えばいいのかな。この問題に関心をもっているブロガーが、お互いに意見を発表しあい、自分の経験を交流し、緩やかなネットワークを築いていくという「ブロガー同盟」としての性格が、ジャパンユニオンとは全く違うものに将来発展していく可能性だってあると思う。つまり「ブ労連」は今のところ(まだ形すらなしていないけれども)ネット上の運動なんですね。そのへんがジャパンユニオンと違うし、こういう人々がネット上でもつながっていける、そういう「入れ物」も必要だと思うのです。
本当に左派系のネット上の動きは鈍くて遅く、まだまだ黎明期にすぎません。しかし各所でいろんな試みが、文字通り試行錯誤されています。そういうものに、私もどこかでつながって応援し続けていたい。ご託宣を並べて高みに立っていたくない。地面に降り立って泥まみれでいたいのです。失敗や間違いを恐れたくない。恥だって何回かいてもいいです。間違っていたら謝ります。ただし責任はとれません(笑)。
そしていつか、こういう動きがネットワーク化されていくことが絶対に必要だと思います。あとはただ、時代に間に合うだろうかということです。
■この記事のミラー http://red.ap.teacup.com/hatahata/49.html
参考リンク
◇インターネット労働組合ジャパンユニオン
◇東京東部労働組合
◇インターネットの労組“ジャパンユニオン”が来年、サービス残業追放に向けてキャンペーン(ASCII24ニュース)
◇誰でも一人でも加入できる労働組合一覧(旗旗リンク)
◇連帯ユニオン
◇労働相談シート(連帯ユニオン)
◇NPO法人労働相談センター
◇労働相談マニュアル(ゼネラルユニオン)
◇相談案内(女性ユニオン東京)
◇民営化と労働破壊!(ラガーマン親父の涙は心の汗だ)
◇営利主義に走る郵便局(アッテンボローの雑記帳)
◇労働者は奴隷か!~住友大阪セメント残酷物語~(新宿区ダンボール絵画研究会)
◇過労死促進法案に反対する共同アピール運動
◇ホワイトカラーエグゼプション(あろぱるぱ- brog -)
◇「労働時間の盗み取り」に気をつけろ!(だらだらひげおやじ)
◇賃金定額制、労働者使い放題(ひきこもり九条の会)
◇ワーキングプアをもたらしたもの(キリスト者として今を生きる)
◇安倍内閣がプアなばかりに・・・(らんきーブログ)
◇SONYをダメにした成果主義(猫城blog)
◇終身雇用時代の慣習とは訣別すべきだ(脱下流日本! 氷河期世代からの反撃)
◇ホワイトカラーエグゼンプション制度最終案(みかんの国の社労士開業への道)
◇労組の組織率、過去最低?(労働保険・社会保険知識の泉)
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みなさん、ニャンケより心から新年の御挨拶を。 小泉純一郎から政権を委譲された安倍
ネットを過大評価も過小評価もせずに使おうというご意見に賛成です。
ところで、書庫作成のやり方がわかりません。どうすればいいのでしょうか?
「書庫」というのはYahoo!ブログ独特の言い方です。普通はカテゴリーと言っています。カテゴリーの作り方はブログによって違いますので、ワタリさんがどこのブログを使っておられるかによります。
まずはご使用のブログのサポート(解説とか使い方とかの)ページをさがしてみてください。
自公政権打倒のために
《案内》『自公政権打倒のための勉強会』
■ 日時 2007年1月28日(日)午後1: 30分~4: 00
■ 場所 愛知県豊橋市東部地区市民・飯村分館
■ テーマ ‘今年は選挙の年・争点を考える’
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