
プロローグ:それは一つのメッセージからはじまった
世界を驚かせた同盟国への選挙介入

2024年のドイツ総選挙。
まだ投票箱が開かれる前、アメリカから異様なメッセージが届いた。
「我々は、極右の勝利を願う。」
このメッセージ 1 を発したのは、ドナルド・トランプ前大統領の陣営でした。
トランプ陣営はドイツの総選挙で、幹部がナチス政権を擁護する極右政党「AfD(ドイツのための選択肢)」を全面的に応援しました。アメリカの現職大統領の陣営が、まるで敵国に対するように2、同盟国への露骨な選挙介入を開始したことは、国際社会を驚かせるものでした。
彼らの言葉は「失言」ではありませんでした。――国家を超えた「極右の国際連帯」の狼煙をあげたのです。それは米国がNATOなど国際同盟の尊重、同盟国の国内政治への中立を放棄したことを如実に示す出来事となりました。
いったい、世界で何がおこっているのでしょう?
本稿では、引き続き渋谷要さんの論考に触発されつつ、トランプ政権の歴史的な位置づけをみていきます。現状を「帝国主義時代への回帰」というわかりやすい構図でみていいのか?もしそうなら、私たちは “強大な生命力を持つ大国” が、世界を分割する中で、古い政治の「専守防衛」や「国際協調」を対置して「これまで通りの世界を守れ」と弱弱しく主張する存在なのか?
ご一読の上、ご指摘、ご感想などいただければ幸いです。
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1.トランプ政権の性格──“極右のグローバル・フレンド”
共和党タカ派(保守派)からの逸脱

トランプ政権は、まがりなりにもアメリカの伝統的二大保守政党の「共和党政権」でもあるわけですから、欧州極右やネオナチ政党のようなイメージは比較的薄かったと思います(特に一期目)。問題点はすべてトランプ個人の異様なキャラクターに還元されて、党内におけるマッチョなタカ派くらいのイメージでした。
しかし今のトランプ政権は、かつての「共和党タカ派」のイメージからも大きく逸脱しています。タカ派(保守)路線は、いわゆる「小さな政府」と共に、国家の強化や対外強硬姿勢に特徴づけられてきました。しかしトランプ政権は、排外主義・国粋主義・反自由主義が色濃くなり、保守派というより、むしろ欧州の極右勢力と同一の存在に変質したと言えます。
欧州極右との親和性

実際、トランプの大統領就任式には、各国の著名な極右指導者が招待され、一堂に会しています。欧州首脳からは、ネオファシズム運動のイタリアのメローニ首相が唯一招待されました。
欧州メディアは、招待者リストからトランプ氏が「誰の言うことに耳を傾ける可能性があるか」が分かると伝えた。(時事通信:2025/01/20)
フランスのルペン、ハンガリーのオルバン、ドイツのAfDといった欧州の極右もまた、濃淡はありつつも、トランプと同様、移民排斥、EUなど同盟からの離脱、国際支援の停止、宗教保守との連携、「自国第一主義」のスローガンなどを掲げており、従来の民主主義制度への信頼を低下させ、国家主義的な体制への転換を目指しています。
このグループは、イタリアのメローニ首相が例外的にウクライナ支援「継続」の立場ですが、欧州議会で極右派のリーダーであるハンガリーのオルバン首相などは、明確に親ロ・親中であり、ウクライナへの軍事援助も拒否しています。
まさにトランプ勢力はこういう排外主義・自国ファースト主義者の一員なのである。そしてそれは、オルバン氏に見られるようにクレムリンと近しい距離をとる勢力が数多く参集しているのだ。
(トランプによる米ロ・帝国主義協商への転換:渋谷要)
「強権的指導者」たちとの国際的連携

また、欧州以外でも、トランプはプーチン(ロシア)、ボルソナロ(ブラジル)、ネタニヤフ(イスラエル)といった「強権的指導者」との個人的関係を重視してきました。
それは全体としてみれば、先発組の資本主義列強(主流派帝国主義)による現状固定化のルール(自由主義、国際協調主義)に対抗し、権益の分け前を要求する後発組(権威主義国家)との国際連帯を構成します。
これに欧州極右との関係もあわせ、今やトランプを中心とした「極右グローバル連携」とも呼ぶべき構造をなしています。
トランプが北朝鮮の金正恩に好意的であること、中国やインドといった後発の新興国がロシアへの経済制裁に加わらず、対ロ制裁の効果があがらなかったことは、一見すると無関係に見えても、底流としてはここにつながります。
プーチンとトランプの共通性(=自国ファースト)

(右はカナダのトルドー首相)
ところで、こうしたトランプ政権とその仲間たちには、なぜ親ロシア、親プーチンが多いのか?その一つの答えとして渋谷さんは、プーチンとトランプたちに政策的な共通性があることを指摘しておられます。その点は重要な指摘だと思います。以下、いくつか抜き出して引用します。
「米帝トランプは、ウクライナのクレムリンへの『領土割譲』を肯定するようなことをいっている(略)。それは例えば、トランプがデンマーク自治領グリーンランドを「安全保障」の必要から合衆国の所有にするとか、メキシコ湾を「アメリカ湾」と呼び変えるとか、パナマ運河のパナマからの返還(略)などを政策化しはじめたことと一体だ」
「そういった、『主権と領土』の『力(国家権力の行使)による変更』を、次々と表明・実践している。これは、クレムリンのウクライナなどに対する、『主権と領土』の国家暴力による変更と同じものだ」。
「そういうことが、『アメリカ・ファースト』であり、こう言ってよければクレムリンの『ロシア・ファースト』との同一性を示している」
「だからクレムリンがやっていることが、国際法の秩序に対する破壊行為だと分析する価値観が、トランプにはそもそも存在しないのである」
(トランプによる米ロ・帝国主義協商への転換:渋谷)
すなわち、トランプは「力による現状変更の禁止(=国際協調主義)」の原則を無視する行為を「容認している」のではなく、元々がそういった勢力の一員であるのです。そこにトランプの特異性があるわけです。
だからトランプは自分と同類のプーチンを、ディールの相手方であって、協商相手であるとは認識できても、彼が「平和と人権の敵」であるという普遍的な認識を持つことができないのです、それどころか、そういう認識(自由・人権・平等)こそが「馬鹿げており、国をダメにしてきた」とさえ言うわけです。

ロシア・ファーストでもアメリカ・ファーストでも(そして日本ファーストでも)いいのですが、だいたいその論理構成は共通しています。自国中心主義の「歴史的な事実」を一方的に述べたて、強者である自分をまるで被害者のように位置づけて、それを根拠に強大な国家権力の行使をもって、弱者に対して現状の変更を迫ってもよいのだという理屈です。
こうした発想には、現状の民主制度や国際秩序への不信が根底にあります。それが今の主流派帝国主義の足下で「見捨てられた」ように感じている人々に、外国人や左翼など、わかりやすく叩きやすい「敵」を与えることで、その心に響くものがあるのです。
そこで次章では、そもそも戦後の「同盟=協調」体制がいかにして生まれてきたのか、その戦後体制の行き詰まりと閉塞感の中で、これと対立し、変容をもたらしているトランプの国家戦略が、いかにして生まれてきたか、戦後史におけるトランプ政権の歴史的な位置づけをちゃんと見ていきましょう。
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2. 戦後体制の形成──グローバリズムの起源と限界
出発点:第二次大戦後の国際構造の激変

第二次世界大戦の終結後、まず敗戦国の日独伊らのファシズム国家は崩壊し、戦勝国も特に英仏は疲弊をきわめ、もはやそれまでのように植民地と市場をめぐる戦争や協商に明け暮れるような生命力を失っていました。
この帝国主義の弱体化の中で、まず第一に、それまでソ連一国だった「労働者国家」が ”群” として登場し、第二に、これまで植民地として支配していたアジア・アフリカ・ラテンアメリカで、民族独立運動が高揚(第三世界の登場)、そして第三に、戦争の苦しみを味わった民衆による、足元での労働運動や革命運動の台頭がありました。
こうして世界の秩序は大きく書き換えられていきます。そのような情勢の中でアメリカだけは、戦争中も本土を無傷のまま乗り切り、さらに復興のための食糧・資材の輸出基地として大きく勃興します。
こうして、かつてはソ連スターリン主義をもその一員として、互いに覇権を競いあってきた帝国主義諸国は、経済的にも軍事的にもアメリカ一強体制となっていきました。
“分割戦争” から “制度的帝国主義” への移行

もほやどこか一国の問題でなく、帝国主義総体が危機に陥る中、アメリカは、もはや帝国主義間で争うのではなく、日本や西ドイツなどの敗戦国(敵国)にまで莫大な援助を行い、帝国主義諸国の復興を急ぎます。このアメリカの資金(マーシャル・プラン、ガリオア・エロア資金など)による「上からの資本主義」が、戦後資本主義国の共通した特徴となっていくのです。
戦後世界を決定した第一の契機は、アメリカを盟主として、IMF・世界銀行・GATT(のちのWTO)などの世界機関を通じた、「制度的帝国主義」への移行であり、さらには対ソ連の封じ込めとしてのNATO・日米安保・米韓同盟等の「軍事同盟」戦略を通じて、米軍を世界中に展開する体制を築いたことです。
第二の契機として、民族独立運動への譲歩を迫られた帝国主義は、植民地の政治的な独立を承認(建国ラッシュ)し、かわりに経済的・社会的な支配を軸とした新植民地主義に切り替えます。
第三の契機として、「自由貿易体制」を軸に、ケインズ政策によって、国内のみならず、世界的な規模での「経済過程への国家介入(国家独占資本主義政策)」によって、不況(とりわけ恐慌)を回避する体制をつくりあげます。G7などでも他国の経済政策にも口をだしあい、国際協調路線は経済分野にも強く及ぶようになりました。
そして第四の契機として、ケインズ政策による経済的な安定と高度成長を背景として、「完全雇用と福祉」政策を展開し、労働運動や左派運動の無力化と資本主義体制内への取り込み(革命から賃上げへ)をはかります。
これらは言い換えれば、内外の反帝国主義運動(冷戦構造・労働運動・脱植民地闘争)によって活動範囲を狭められた帝国主義が、もはやかつてのように「協商」によって世界を “分け合う” ことができなくなっていく中、「ルール」によって互いの秩序を保ち、「同盟」によって反帝国主義勢力に対抗していく仕組みへと移行したことを意味しています。
アメリカの没落と影響力の低下
制度的帝国主義へと移行する中、アメリカはその中心に君臨してきました。1944年に採択されたブレトン・ウッズ体制は、米ドルを基軸通貨とする金本位制のドル固定相場が国際経済の安定を支えており、アメリカはその圧倒的な経済力と金保有量を背景に、通貨・貿易・開発の枠組みを主導しました。
しかし、1960年代末からアメリカはベトナム戦争による巨額の財政赤字と貿易赤字に苦しみ、ドルと金の兌換を支えきれなくなります。

そして1971年、ニクソン大統領が金とドルの交換を停止すると発表した、いわゆるニクソン・ショックによってブレトン・ウッズ体制は完全崩壊。これがその後の世界の大きな転換点となります。
他国の経済が強くなった今、彼らが世界の自由を守るための負担を公平に分担すべき時期が来たのです。為替レートを是正して主要国は対等に競争する時です。もはやアメリカが片手を背中に縛られたまま競争する必要はないのです。
(ニクソン大統領の声明より:1971/08/15)
やがてソ連との冷戦に「勝利」したはずのアメリカでしたが、実はその同時期にスタグフレーション(不況とインフレの同時進行)の蔓延によって、冷戦勝利の最大の原動力だったケインズ政策が行き詰っていました。

各国はスタグフレーション下での税収対策として消費税(大型間接税)を導入し、現在の主流派経済学の元となる新自由主義経済に政策の舵を切って国民に犠牲を求めはじめます(レーガノミクス、サッチャリズム、中曽根行革など)。ライバルとしての「社会主義圏」が消失後は、その傾向がますます酷くなっていきます。
アメリカも軍事力や金融による「世界の警察官」としての影響力は維持されたものの、それは制度というより相対的なものとなり、国内産業の空洞化、財政赤字の慢性化、グローバル化に伴う雇用不安など、内部からの弱体化は止められませんでした。
結果として、アメリカが単独で世界経済を支配する力はすでに失われていたのです。
それでも、アメリカに代わって世界秩序や経済を主導する国家も現れませんでした。各国とも国民に更なる犠牲を求める以外に、抜本的な対策は打てず、この爛熟した資本主義の腐葉土と民衆の不満が、やがて極右やレイシズムの苗床となっていきます。
“単独覇権” から “分担要求” への後退
こうして先に見た、戦後世界の第一の契機としての「アメリカ中心の同盟」による、管理された「制度的帝国主義」体制が脆弱化し、第三と第四の契機としての、ケインズ政策と「福祉主義」の放棄(規制緩和と自己責任)という流れは現在も止まりません。
近年のアメリカは、中国やインドをはじめとする新興国家の台頭、財政負担、国内の分断の拡大、さらにイラク戦争の失敗やアフガン撤退といった対外介入の失敗を経て、かつてのように世界中に軍事力と影響力を一方的に行使することは不可能になってきました。
それでも帝国主義中心の国際秩序の維持は、アメリカが同盟の中心としてその役割を果たすしかなく、そこでの新しい方向性として、アメリカは徐々に覇権国というより「世界の調整役」として、同盟国に「分担」を迫るようになります。
日本においてもその影響は顕著です。日米安保体制の双務化が進められ、自衛隊と米軍との一体化が政策として推進されてきました。アメリカの戦略的な期待に応える形で、日本は「アジアの憲兵」として米軍の役割を部分的に担う形で自衛隊の再編が行われます。
極東における軍事同盟(自衛隊)の再編は、アメリカの支配構造が「単独覇権」から「分担型支配」へと後退していることを象徴していました。
トランプ政権の同盟からの撤退
トランプ以前の米政権は、民主党であれ共和党であれ、共通して戦後の「同盟路線」をアメリカの世界戦略として重視し、日米安保の枠組みを再編強化しようとしてきました。
ブッシュもオバマもバイデンも、自衛隊と米軍の軍事的一体化を進め、韓国を含めた「日米韓の三国軍事同盟化」によって、極東における米軍のプレゼンス(存在感)の低下に対応しようとしてきました。
一方、トランプ政権の方針は「守ってほしければ金を払え」です。彼は日本や韓国に対して、米軍駐留に対する直接的な “請求” を行い、事実上、同盟をビジネスとして扱いはじめました。
そこには理念や価値観はなく、「いくら出せるか」「どこまで譲るか」という、帝国主義的な利益配分の論理が露骨に表れています。
日米韓同盟もディールとして扱うトランプ
トランプにとって同盟関係とは、「安全保障のための相互信頼や制度的協調」ではなく、「取引」にすぎません。彼は日本や韓国に対して、米軍駐留のコストをめぐる直接的な “請求” を行います。
これは勝手な推測ではなく、3月の記者団との会見で、自身が日米同盟をビジネス(ディール)にすぎないという認識を持っていることを露骨に表明しました。
「日本との間には興味深いディールが存在する。われわれは日本を守らなければならないが、日本はわれわれを守る必要がない。(略)いったい誰がこんなディールを結んだのか」。
「トランプ氏日米安全保障条約に不満」2025年3月7日 NHK記事より
この違いは、アメリカの覇権の衰退をどう「整理していくのか」という選択肢の分岐でもあります。バイデンが「制度と協調」を通じて秩序を維持しようとするのに対し、トランプはそれを「ディール(協商)」にしようとするのです。
そこには理念や価値観はなく、「いくら出せるか」「どこまで譲るか」という、「素のまんまの古臭い帝国主義」的な利益配分の論理が露骨に表れているのです。
トランプ政権の軍事・外交方針

これが端的に表れているのが、バンス副大統領が米海軍士官学校の卒業式で語った内容(ロイター2025/05/26記事)です。
記事よればバンス副大統領は「米国が議論の余地なく優位に立つという時代は終わった」と強調。今後は終わりのない紛争への関与を避けるとし、「米国の…国益にほとんど役に立たなくても…国防と同盟関係の維持する外交政策」として過去のイラク戦争やアフガン侵攻を批判、「未確定の任務も、開放的な紛争も、もうたくさんだ」との考えを示したという。
一方で、米軍の軍事的な優位を維持し、おそらくイラクを念頭に「殴る時には強烈な決定打を放つ」と述べいていることからわかるように、トランプ政権は軍縮に興味関心があるわけでもなく、国際平和に目覚めたわけでもないことは明白です。単に国際協調から損得勘定が優先する非情な利己主義になっただけではあります。
こうして歴史的な経緯を含めて見てくると、トランプ政権の軍事・外交戦略である「同盟からの撤退」や「権威主義国家との敵対から協商への切り替え」は、帝国主義全盛期のような、大国による世界支配と戦争の時代の回帰ではなく、むしろアメリカが国際秩序を一国で支え切れなくなった没落の表れです。
トランプの「協商外交」をどう位置づけるか
それでも今までは、アメリカを中心とした同盟による協調で、伝統的な反帝国主義勢力と対抗してきたわけですが、「米国が議論の余地なく優位に立つという時代は終わった」という表明は、もはやそこからさえ「一抜け」して、すべての国力を自身に向けるしかないという表明以外のなにものでありません。
これは一つには、「そこまで米国をはじめとするグローバル資本主義陣営(主流派帝国主義)が弱くなった歴史的な新段階」という見方と、かつてのカーター政権の「人権外交」のごとく、「単に現状に対応するための新政策」であって、結局は同盟路線に回帰するしかないだろうという見方もできるでしょう。
いずれにせよ、自国ファーストやディール外交は、かつての絶対的覇権を再興する手段ではなく、影響力の衰退を補うための苦肉の策として位置づけられます。
トランプ時代の反戦運動・市民運動の課題
でもちょっと待ってください!
戦後のほとんどの期間といっても過言ではないと思うのですが、反戦市民の運動は、米軍と自衛隊の一体化や、極東地域でおよそ非現実的なアメリカ様の盾として、地域の平和ではなく、その緊張を高めることばかりに腐心する自民党政府への抵抗として展開されてきたと思うのです。あるいは第三世界での米軍やCIAによる民族解放闘争への圧殺に反対する国際連帯でした。
それをトランプはやめたいと言ってますよねえ。別に平和を希求しているわけではないとは言え、安保条約なんてとんでもないと言い、イラク戦争を否定し、明日にも金正恩と握手しかねないありさまですよ。一期目は周囲に苦言を呈して、いろいろと止める人材がいたわけですが、二期目の今は周囲をイエスマンで固めた独裁体制です。何をしでかして言い出すかわかりません。
もちろん、排外主義・国粋主義・極右的な国内政策は容認できないし、対岸の火事ではありません。それも含めて、日本の私たちの課題に進んでいきたいと思います。ただ、ちょっと長くなってしまいましたので、ここでいったん区切り、続きは次回にしたいと思います。
※この記事は中編です。次回は、今後考えられる予測をもとに、私たちがとるべき態度についての提起を考えてみたいと思います。
⇒『平和の顔をしたトランプの植民地主義(下)』につづく
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補論)日本と韓国──トランプ一期目への対応まとめ

トランプ一期目の「金払え」、「安保ただ乗り論」は、日米・米韓同盟の再編圧力となって日韓両国に重くのしかかりました。それに対する日本と韓国の対応は明確に異なる方向性を見せました。参考に補論として整理しておきます。
日本:積極的な従属と同化

日本政府、とりわけ安倍・菅政権は、トランプの圧力に対して表立った抵抗をほとんど行いませんでした。むしろ、安倍政権はアメリカとの「信頼関係」を強調しながら、自衛隊と米軍の一体化を前のめりに進めます。
- 日米共同訓練の常態化
- 専守防衛の空洞化(集団的自衛権・敵基地攻撃能力の保有検討)
- 武器の爆買い(F35、イージス・アショア等)
- 米軍再編への協力(沖縄・辺野古基地建設など)
これらの政策は、バイデン政権になっても継続・加速され、日米韓の「三国連携」の軍事的一体化へとつながっています。
つまり日本は、アメリカ軍の負担軽減を“先回りして引き受ける”形で、トランプの要求に応えていったと言えます。または安部氏はトランプの「外圧」を利用して軍備の拡大を進めたともいえるでしょう。
ちなみにこのことで先進国首脳の中でも、安部氏はとびぬけてトランプ氏の「お気に入り」として侍ることができたわけです。
この経緯は左翼のみならず、右翼の中でも安部氏を「売国」と言う人さえいますし、このような「蜜月」は決して私たち国民にとってありがたいものとは言えません。
韓国:慎重な対応と自立性重視

韓国もトランプ政権の当初こそ日本と同様に防衛費の増額圧力にさらされましたが、文在寅政権(2017〜2022)は安部氏とは異なる姿勢をとりました。
- 米韓防衛費交渉では、トランプの要求に強く反発、何度も交渉が決裂
- 南北首脳会談など独自外交を展開、逆にトランプをそこに巻き込む
- 米国主導のインド太平洋戦略に一定の距離感を保ち、中国の関係維持との両立を模索
つまり韓国は、「積極的な従属」よりも外交バランスと自律性を維持しようとしたのです。
ただし、2022年に保守派の尹錫悦政権が誕生して以降、韓国も再び対米接近へと方針転換を図ります。そのためバイデン政権下では、日米韓三国軍事同盟化が進行しました。その後、2024年に尹大統領が弾劾されて尹錫悦政権は崩壊、その余波をうけて2025年に再び進歩派の李在明政権が誕生しました。
今後の推移は予断を許さないものですが、いずれにせよ、韓国は中国との経済関係や北朝鮮問題をにらんだ独自の立場を模索していくものと思われます。
日本の“忠誠”、韓国の“距離感”
この違いは、外交戦術というより、対米関係における「対等性の幻想」を保つかどうかの差とも言えます。
- 日本は国民への説明として「日米同盟は価値感を共有する対等な関係である」という建前(幻想)を維持する必要もあり、それに応じた方針をとりがち。
- 分断国家であり、日本よりも軍事が身近な韓国は「同盟とは利益の合致、常に調整と対話が必要」と見るリアリズムが強く、常に駆け引きの余地を残す。
結果として、アメリカの「覇権の再編」に対して、日本は米軍との “同化”、韓国は “調整” という発想と対応の違いを生みます。
タダほど高いものはない

自衛隊の米軍との「一体化」と言えば聞こえがいいですが、実際は米軍の下請け、よく言って先兵となってアメリカを守ることを意味します。
過去、日本政府は常に「ソ連の脅威」、「北朝鮮の脅威」、「中国の脅威」など、米軍との同化のために、徹頭徹尾にその時々のアメリカの世界戦略の都合にあわせた国内宣伝を強化してきました。
近年では「台湾防衛を自衛隊に肩代わりさせる」という、アメリカの方針にあわせた宣伝がかまびすしく、日本の独自外交の余地は全く許されません。
常に米軍を守るための盾として日本人が時間稼ぎに使われることが前提で、それに疑問をもったり反対することは「国賊」とされるわけです。
私に言わせれば、日本は米軍基地を、地政学的な危険をおかしてまで、使用料も払わずタダで置かせてあげている上に、その経費や建設費まで私らの血税でまかなってあげて、そのおかげで米国は長年にわたってアジア・極東・中東地域での覇権を維持してきたんでしょ?と思います。金を払えはこちらが言いたい。
- 当時の最側近であるイーロン・マスク氏は AfD への投票を呼び掛け、同党の集会で「ナチスの過去など忘れろ」と演説。バンス副大統領は AfD の党首と会談し、ナチの苦渋の歴史を持つドイツ政界の、極右やネオナチとは連携しないという不文律を批判。さらにトランプ大統領自身も選挙後にAfDが票を伸ばすと「ドイツにとっても米国にとっても偉大な日になった」と極右ネオナチを礼賛した ↩︎
前回の振り返り