N君不当逮捕-拘留理由開示裁判の報告

大阪地方裁判所N君不当弾圧事件とは? ◇N君関係リンク集
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 今日は午後からN君不当逮捕事件の拘留理由開示裁判(西野牧子裁判官)がありました。
 大阪地裁には平日の昼間にもかかわらず、N君の友人・知人ら約50人ほどが急を聞いてかけつけました。法廷は傍聴席が20しかない小さな法廷で開廷され、傍聴は抽選となりました。傍聴人は途中で交代することができますので、特にN君と近しい方々を中心に、随時交代してできるだけ多くの友人たちがN君の元気な姿を確かめ、傍聴席から自分の顔を見せることで、少しでもN君を励まそうとしておられました。

 結局私はずっと廊下にいて、一度も法廷には入れなかったのですが、法廷のドアについている小さな覗き窓を通して、できるだけ中の様子を見ていました。

 以前にこのブログでも、鹿砦社松岡さんの拘留理由開示裁判をレポートしたことがありますが、だいたい今回の裁判も似たようなものだったようです。そのあたりは予想の範囲内のことではありましたが。

実務上、裁判官は「刑事訴訟法60条○号に該当する事由がある」とか、「一件記録によれば、関係者に働きかけるなどして罪証を隠滅するおそれがある」など、抽象的な内容を述べるにとどまることが多い。そのため、弁護人が裁判官に「求釈明」を行い、より詳しい勾留理由の説明を求めることが多い。もっとも、弁護人の求釈明に対しても、「捜査の密行性を確保する必要がある」などとして回答しない裁判官も多く、「これでは勾留の理由を開示したことにならない。手続は形骸化している」との指摘もある。
(「ウィキペディア」-「拘留」より)

 だいたい20年ほど前から、法的な拘留はすっかり法律(刑訴法60条)の趣旨を逸脱・無視した運用がなされています。条文に書いてある勾留理由がなくなった場合でも、被疑者が少しでも事件を争う限りは絶対に出さない。「私が悪うございました」と検察や警察に土下座するまで拘留し続けるのです。テレビで大きく報道されるような大物政治家や大物経済人が被疑者の場合は必ずしもそうではないようですが、一般の名もない被疑者の場合はほぼ例外なくそうです。こういう不正常な運用を学者たちは「人質司法」と呼んで批判しています。

 とりわけ今回の西野裁判官の場合、N君がちゃんと自分の氏名、職業(アルバイト先)、住んでいる公園のテントの住所(ちゃんと郵便も届く)をすべてちゃんと供述しているにもかかわらず、警察さえも言えなかった「住所不定、無職、逃亡のおそれ」を拘留理由に勝手につけ加えるなど、警察のいいなりどころか、それを超えて極めて司法の中立性が疑われかねない危険なことをしています。

 まあ、検察の決まり文句である「罪証隠滅のおそれ」だけでは、今さら何も「隠滅」のしようがないわけで、そのあたりを弁護士に突っ込まれることを予想したのかもしれません。しかしどちらにせよ、たかが「排ガス規制違反」で高飛びして行方をくらますなどと、裁判官自身が本気で信じているとは思えません。そんなのただの口実です。だいたいこんなケースで逮捕はおろか、拘留延長まで認めるほうがどうかしています。

 実際、西野裁判官は弁護士の求釈明に対してまともに返答せず(できず)、木で鼻をくくったような釈明に終始したようです。傍聴に来たみんなは口々に怒っておられました。が、おそらくこの50人以上の人々の中で一人だけでしょうが、私は西野裁判官に対して少し違う印象をもちました。

 それはドアの小窓からずっと覗いている間、N君と共に、西野裁判官の表情をずっと注意して見ていたのですけれど、なんだか目を見開いて驚いている、あるいはN君の陳述や、傍聴席からの怒りの声にさえ注意をむけてちゃんと聞いているように見えたのです。裁判官としてそれが当たり前と言えば当たり前なのですが、以前に傍聴した松岡さんの裁判官が、あまりに投げやりというか、さっさと終わらせたいというのがミエミエだったのと比較して、「おや?」と思ったのです。

 これはちょっとお人よしすぎる空想かもしれない(というかそうだろう)とは思いますが、おそらく西野裁判官は、野宿者とか、それを支援するボランティア運動に対して、ものすごい偏見と差別意識を、自分では無自覚なままにもっていたと思うのです。「あいつら住所不定の浮浪者だ」みたいな。その偏見がアルバイトで生計をたてていることさえ認められないほどに、激しくその目を曇らせていた。そして、検察や警察サイドから、「Nは危険で過激な活動家だ」みたいなデマも吹き込まれていたと思う。

 ところが、この日に初めて目にしたN君は、そういう偏見やデマからは、およそかけ離れた印象の人物でした。本人は31歳だけれども、実際の年齢よりすごく若く見える。西野裁判官の目の前に現れたのは、「物腰柔らかで誠実そうな好青年」を絵に描いたような人物でした。彼は自分の質問にも正直に、できるだけ誠実に答えようとしています。つめかけた傍聴人たちは、みんな一様にそんな彼のことを必死で心配し、彼の姿が見えただけで抱きつかんばかりにしている。そんな心情の反射として、自分に対する怒りのオーラが全体から出ている。

 西野裁判官は、自分が偏見の中で抱いていた「野宿者(運動)」に対する印象と、現実のそれとのギャップに驚いていた。そんなふうには考えられないだろうか?というか、私がそんなふうに考えたい、人間というものを信じたい、もしそうだったらどんなに救われるだろうというだけなのかもしれませんけど。

 初めて拘留理由開示裁判を傍聴した人は、例外なくそのいい加減さに驚きます。裁判官の答えは答えになっていません。そんな蒟蒻問答みたいな返答が延々と続き、辛抱たまらずに「答えろよ!」などと叫んでしまう傍聴人も出ました。けれどもそれは、明らかに「左翼が権力者にとばすヤジ」ではありませんでした。誰が見ても、友人が愚弄され、酷い目にあわされていることに対する、自然で悲痛な叫び声だった。私はこんな反動的な裁判官だから、どんどん退廷させるのかと思ったらそういうことはありませんでした。むしろそんな傍聴席の雰囲気を、驚くようにじっと凝視しているように私には思えた(思いたかった)のです。

 最後に、N君の意見陳述がありました。だいたいこの手の運動関係の裁判では、ここで被疑者が裁判官に向かい、用意した原稿を片手に「演説」をはじめるのが普通です。ところがN君はいきなり裁判官に背をむけ、傍聴席のほうに進み出ると、傍聴人に向けて何やら語りだしたではありませんか。途切れ途切れに聞こえてくるN君の声や、その後の友人たちの話を総合しますと、N君は自分に与えられた短い時間を、まず友人たちへの感謝のために使ったのです。

 こんなに多くの人々が自分を見捨てずに支えてくれたこと、挫けそうになった時に、それがどんなに自分の支えになったか、どんなに嬉しかったか、どんなに感謝しているか、そのことをまず述べられました。手には原稿らしきものは何ももっておられません。すべて自分の言葉で語っておられました。外から見ていても、傍聴席が大きな感動に包まれていくのがわかり、私は泣きそうになりました。

 続いて西野裁判官のほうに向かって陳述を続けます。でもそれは明らかに「演説」ではない。裁判官の顔を穏やかな笑顔で見つめながら、まるで自分の肉親に語りかけるように、一生懸命に話しかけているです。残念ながら言っていることはやはり途切れ途切れにしかわかりません。しかし自分のことよりも、野宿者やその境遇の悲惨さを訴えておられるように思いました。ときおりまるで裁判官に友達を紹介するように、傍聴席をふりかえっては手をさしのべます。そんなN君に、裁判官も引き込まれているように見えました。

 閉廷が宣言されると、私はすぐに法廷のドアを開けました。見ると傍聴席の友人たちは、柵をはさんで「わっ」とばかりにN君のそばに押し寄せ、人だかりになっていました。廊下で待っていた人も一目N君に会おうと中に入ります。みんな口々に「元気やったか!」「大丈夫か!」「頑張りや!」と声をかけ、N君も笑顔で丁寧に返答しておられました。私は少し遠慮して入り口のドアのところにいましたが、そのうちにN君と目があいました。私が手をふると、N君も私が来ていることに気がついてくれて、「ああっ」と言いながら、満面の笑顔で大きく手を振り返してくれました。

 最後にN君が再び手錠をされて退廷していく時、期せずして拍手がわきおこりました。50人以上の人々で満杯の法廷が万雷の拍手につつまれる中、元気にN君が退廷していきます。気がつけば私も必死に拍手していました。来て良かったと思いました。

 最後になりましたが、当サイトに設置した激励・カンパフォームの御利用ありがとうございます。現在N君には接見禁止処分が課されておりますが、弁護士との接見の機会には皆さんからの激励文もN君に紹介され、大きな励みになっています。ただ、ここ数日はあまりにもよせられる激励文が多すぎて、その整理やプリントアウトだけでも大変な作業になっているそうです。接見の時間も限られているため、なかなか全部を紹介するのに時間がかかっているそうです。嬉しい悲鳴というやつです。

 また、当サイトのカンパフォームを通じてお預かりした皆様からのカンパは、本日、釜パトの会の方に直接に届けましたことを御報告いたします。同会はどうも宣伝がへたで、皆さんの中には「デモしたり集会したり逮捕されたり」の団体と思っている方もいるかもしれません(笑)。しかし実際には野宿者が自分たちで空き缶を持ち寄り、そのお金で「野宿者自身が開く食事会」をコーディネイトしてみたり、夜間における野宿者の安全と健康を守るためのパトロールや、健康・生活相談などの、地道な活動を主として行っているところです。行政への要請・抗議行動などは派手なので目立ちますが、実は活動の一部にすぎません。

 現在、N君への天皇弾圧のため、このような日常の医療・福祉・生活支援の活動に、重大な支障が生じています。人員的、時間的にもそうですし、金銭面でももちろんそうです。もう、この弾圧には、怒りを通り越して呆れているというか、「いいかげんにしてほしい」、「いつまでこんな馬鹿なことをするのか」というのが、釜パトの素顔を知る人々の共通の思いになりつつあります。

 こんなくだらない「公安の自己アピール弾圧」のために、善意のボランティア活動が滞ることは許されません。引き続き、皆様のご協力をお願い申し上げる所以です。

ここまで読んでいただいてありがとうございます!

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1件のコメント

どうも、宣伝がヘタな団体で申し訳ありませんね(苦笑)。

それよりも、御支援いただいた皆様、本当にありがとうございました。
先ほど、弁護士より連絡があり、処分保留でN君の身柄を奪還しました。
取り急ぎ報告まで。

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