総務省が「日雇い労働者の住民登録抹消は大阪市が勝手にやっている」と発言

投稿者:草加 耕助
総務省

(釜ヶ崎で住民と労組が配布したビラより転載 )

国の総務省の役人は「住所を確定するのは市の権限。住民登録抹消は大阪市が勝手にやっていること」と発言しました。

 2月15日、釜ヶ崎合同労働組合が中心となって東京へ行き、住民基本台帳法の担当である総務省の役人と、白手帳や生活保護の担当の役人と交渉してきました。

 西成区での相談会などで、西成区の住民登録の係は、「住民登録抹消は、国からの指導でやっている」と発言しているので、本当かどうか。それとそもそも3300人の多くが、釜ヶ崎解放会館に登録したのは、愛りん職安が白手帳を作るときに住民票を出せといってきたからなので、担当の国の機関の厚生労働省の責任は、どうなのかということで交渉しました。

 交渉の中で総務省の役人は、「住民票を削除するかどうかは、市町村が決めること。大阪市の住民登録抹消のことは、報道を通じて初めて知った。大阪市からは、何の相談も受けてない」また「大阪市が勝手にやっていることでも、住民票を失えば、国の発行している免許などの更新もできなくなる。どうしてくれるのか」という質問に、「労働者に不利益がないように担当の省庁に言う」との回答でした。要するに西成区の担当の係が言ったことは、うそで、今回の住民登録抹消は、大阪市が釜ヶ崎の労働者を完全になめきって暴走したということです。

 その後厚生労働省の役人は、「住民登録抹消について大阪労働局(国の機関)と大阪市が何回か会合を持った」といいました。ということは、この住民登録抹消は、白手帳をこれ以上増やさせないため、労働者が新規登録するのに住民票を置く場所として頼りにしていた解放会館やふるさとの家での登録を労働者から取り上げたるためにやっていると予想されます。

 労働者の皆さん!やっぱりケタオチは大阪市でした。住民票を受けるのも抹消するのも大阪市の裁量でできるんです。だからこそ、今まで住んでいないとわかっている解放会館への住民登録を認めてきた。それなのに財政難になると手のひらを返して労働者から白手帳を奪おうと住民登録抹消という手荒い手段に出たんです。

 「住民基本台帳法に基づいて」という言葉は、西成区役所の役人から何度でも聞きましたが本家の総務省は、釜ヶ崎解放会館やふるさとの家に住民票を置くことについて何も文句は言っていません。労働者の生きる権利・働く権利・選挙権を奪おうとしているのは大阪市です。東京まで抗議に行かなくてもいいんです。大阪市に的をしぼって、住民登録抹消反対の闘いを続けていきましょう!敵が大阪市役所や西成区役所のほうが近いしいいで!!

(転載ここまで)

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この問題についての、現状把握と理論的な問題についての検討・討論のための下記の集まりがあります。

<転載歓迎>

行政史に残る愚挙を大阪市ならびに全国でやらせないための講演と討論
釜ケ崎まるごと集会。

~再び、釜ケ崎住民票はく奪問題で「緊急ひろば」を開催~

 ともかく、釜ケ崎がまるごとこんなに怒ったことはありません。おかげで地域は「怒り」の一点で今、一つになろうとしています。

 せっかく野宿者対策で、厚労省や世間にいろいろ言われながらも、生活保護の適用をすすめることで街は落ち着いてきていたのに。「架空登録」などといわれて選挙権を頂点とする基本的人権をはく奪される3,000人余の人々への同情と共感が街中に広がっています。

 こんなに一つになることがむつかしい地域なのに。皮肉ですね。おかげで、再生フォーラムにもう一度おハチが回ってきました。

 1月9日の「緊急まちづくりひろば」のように、立場を超えて集まれる「ひろば」をもう一度開いてくれ。その後の状況をふまえて、さらにこの問題をよく知り、対処するために。こんな要請がありました。
よし、開くぞ!みんな来てよ。

 ただし、この「まちづくりひろば」の役割は守ります。
 つまり、この集まりは何かを決めるというよりも、笹沼教授のさらに掘り下げた講演を聴き、住民登録抹消を軸とする諸問題について法の世界の理論的・本質的なことをまず勉強する。次に現実世界の、各団体の異なる意見や取り組みも聞く。学ぶものは学ぶ。そして、自分たちの現場での活動や事業や業務のための理論武装をする場にしていただきたい。そのシンプルな役割に徹します。

 街のおっちゃんたち、支援団体スタッフなど地域内外からの広いご参加をお待ちしています。特に、行政関係内部からももっと来てほしいなぁ。

なお、前回1月9日(火)の「ひろば」のようすは以下で紹介されています。

・日本インターネット新聞
http://www.janjan.jp/living/0701/0701107862/1.php

・釜ケ崎のまち再生フォーラムのホームページ
http://www.kamagasaki-forum.com/

             

▼2007年2月28日(水)(18:00時開場)18:30~20:45

▼西成市民館 3階講堂(定員60名程度)
 西成警察署裏にある通称四角公園の西隣り

▼進行(予定)

18:30 講演

「住民票と人間の尊厳—全面的な権利剥奪は許されるのか」
(笹沼弘志・静岡大学教授/憲法学)

19:30 情報や意見の交換

釜ケ崎支援機構・医療連・全国懇などの労働者野宿者支援団体、町会・簡易宿泊所組合等の地域団体など幅広い立場から(ときには個人の資格で)それぞれの戸惑いや怒り、市や国との交渉の報告、個々人の救済のための現場での対応事例紹介、疑問・質問・苦言・「この際、大阪市への不満を全部言わせてくれ」式のぼやき、諸提案などをいただきます。時間が足りるかなぁ。

20:50 閉会

▼主催:釜ケ崎のまち再生フォーラム

▼参加費:資料代として300円~500円程度をお願い(寄付歓迎)
 日雇い労働者・野宿生活者・生活保護受給者などは不要

▼お問い合わせ:事務局(ありむら潜)まで
 携帯電話090-8448-0315
 Fax:06-6641-0297(ありむら宛てと明記)
 e-mail: kama-yan@sun-inet.or.jp
URL : http://www.kamagasaki-forum.com

<笹沼教授の新・講演予定メモより>

 「住民票の職権消除は、単に住所だけをなくすものではなく、憲法上の権利はじめこの社会で生きていくために必須の諸権利を包括的に剥奪することになるものだ。全面的な権利剥奪はこの社会からの完全な排除を意味する。行政の便宜のために過ぎない住民基本台帳制度により、このような全面的権利剥奪が許されるのか、他に方法はないのか徹底的に検討したい」

<笹沼教授のプロフィール>

 日頃から静岡でホームレス問題に当事者たちとともに取り組んでおられると同時に(「野宿者のための静岡パトロール」事務局)、全国の支援活動でもご専門の分野を通して大きな貢献をされていることは、多くのみなさんがご承知のとおりです。

参考文献:

 笹沼弘志「ホームレス、または世界の喪失」『現代思想』34巻9号(2006年8月)
 笹沼弘志「住所裁判とホームレスの人々の市民権」賃金と社会保障1416号
 笹沼弘志「排除原論――憲法学的考察」Shelter-less二〇〇六年夏・秋号

■緊急開催の趣旨、あるいは事務局長ありむら潜のぼやき

かまやん
かまやん

(忙しい人、読まなくてけっこうです)

 4月の統一地方選挙、8月の参院選を前にして選挙権をはじめとする人権はく奪プロセスが大阪市によってあれよあれよと強行されています。

 医療連などへの国(総務省)からの回答(2/16)では、大阪市が独自の判断でやっていることのようです。こんな場で個人的な心象を書きたくないですが、書かずにおれません。

 釜ケ崎で働いて31年強。こんなに腹立たしく許せないという感情をいだいたことはありません。みなさんも同じでしょう。いろんな意味で許せない。何なんだ、この流れは。そして、こんな市政が恥ずかしい(内部の職員さんたちもそう思っている)。恥ずかしさでいえば、火をつけたマスコミ人も恥ずかしいはず。自分たちの選挙の思惑で今一番の人権はく奪圧力のエンジンになっている(と聞く)市議会の面々も。普通なら恥ずかしいはず。

 そして、結局は、ソーシャルインクルージョンの努力をこわし、地域の安全・安心を後戻りさせ、あいりん地域のまちづくりなど意に介さない人たち。

 市(区)は期限付きの「相談窓口」で、「簡宿に一泊したらそこを住所登録先として認める」などと他人事のように助言しているらしいですが、一人ひとりがどれほどとまどっているかをフォローしているのでしょうか。

・5~6軒の簡宿に正直に頼んでまわっても「協力したいが、(市から相談があったわけでもない段階では)こちらも困るから」と断られ続けた人

・「無断で登録するしかない」と決意する人

・それでも郵便物の受け取り問題に悩む人

・一泊する日銭すら無くて、とぼとぼと立ち去る人
 私はこの人たちのさびしそうな後ろ姿が忘れられません。後ろ姿だけではありません。

・「相談窓口」の廃止後に、久しぶりに飯場から生活の本拠たる釜ケ崎に帰ってきて初めて、あいりん総合センターに張られてある市の広報チラシでコトの重大さを知り、あわてるバリバリの現役日雇い労働者

 「せめて、せめて、なぜ代替措置(だいたいそち)を先にとらないのか」。
 これは多くの人々が共通に抱く巨大な疑問です。

 インターネットカフェに寝泊りする若者など本来の意味のホームレス状態の人々全体に襲いかかる問題であることも今や誰でもが見抜いていることです。

 彼らのすべての「居住実態無き住民登録」を抹消するつもりですか?
 もしそうするのであれば全国的な大問題となるだろうし、もし釜ケ崎にだけそうするのであれば、運動体が指摘するように「釜ケ崎差別」になります。

 もっぱら東京に居住実態があり、住民票のある選挙区にたまにしか帰らない(=飯場で働いた日雇い労働者が本拠たる釜ケ崎に帰るのと同じ程度かそれ以下程度しか帰らない)国会議員のほうが「架空登録」に近いのではないですか。

 さすがにここまでくると、区役所内部でも「そもそも(そういう人々を想定していない)住民基本台帳制度に不備がある」と語られていると聞きます。それでも他府県では定まった住居無き人々に配慮し、便宜をはかる運用をしています。

大阪市はそれでも強行するのでしょうか。

市政に関わる方々へ。
釜ケ崎にこんなに火をつけていいんですか?それはあなた方が最も恐れることではないのですか?

今は19世紀ではなく、21世紀です。ただちに市民権はく奪の愚挙・暴挙をやめて、賢明な制度をつくり、ソーシャルインクルージョン(社会的包摂)のまちづくりにたちもどるべきです。

以上

   

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