都知事選雑感‐書けなかった感想をまとめて 山本太郎のことなども

2020都知事選ポスター

 今日も仕事でした。帰宅してから投票にいきました。なんとか間に合いましたが、こんなに時間が押すなら、期日前に行っておけばよかったな。
 これを書いている時点でまもなく投票締切りですが、メディアは相変わらず情勢報道ばかりで、「小池圧勝」の予想を伝えています。開票30分もしないうちに小池に当確マークがつくかもしれません。

(以下、票が確定しましたので追記しています)

予想した中で最悪の結果になるか?

 さて、前回2016年の選挙では「野党統一」の声(圧力?)に折れて宇都宮さんが出馬を断念しましたが、ひさびさの統一候補だった鳥越さんは自民党系の小池、増田両候補につづく3位というありさまで、投票率は59・73%。私個人の印象では選挙戦自体がさっぱり盛り上がらず、こんなことなら宇都宮さんも出ればよかったのに、気の毒なことをしたなと思ったものでした。

 今回選挙がはじまる前に、私が想像しうる最悪の結果として危惧したのは、まず投票率が40%を切る低水準で、小池が2位の宇都宮さんにダブルスコア以上の票差で当選し、都民の7人に一人とか、10人に一人くらいの信任しか得ていない惨状にもかかわらずに、傲慢かつ無反省に小池が偽りの「圧勝」を気取るというシナリオでした。

(追記:今回の投票率は前回を4.73%下回る55・00%でした。もっと低くなるのではと心配しましたが、なんとか5割を超えました。)

山本太郎立候補は「いい判断」だと思った

山本太郎さん都知事選ポスター

 なので、山本太郎さんが公示直前に立候補を表明した時、私は「いい判断なんじゃないか?」と思いました。山本さんの出馬で無党派層を中心に投票率が数パーセントでも上昇して棄権票を掘り起こし、あわよくば「山本さんと宇都宮さんの票を合計すれば小池に勝っていた」という状況をつくることができれば、今後の展開や小池へのプレッシャーとして、単純な「小池圧勝」とは全然違う結果になる。

 と……いうような予想は、選挙期間中は申し訳なくて書けなかった。だって宇都宮陣営の皆さんも、山本陣営の皆さんも、それぞれ「必勝」「当選」を掲げ、可能性にかけて頑張っておられるように見えましたから。こんな醒めた見通しは冷水ぶっかけるみたいで書けませんよ。でもまあ、願望ではなく現実は見ないといけませんよね?そこからはじめるしかないでしょ。

無能な権力者の中から選ぶ(低投票率が示すもの)

女帝・小池百合子

 マスコミのアンケートで「コロナ対策で頑張っている政治家は誰だと思いますか」との質問で、一位が吉村大阪府知事、二位が小池都知事、三位が安倍首相だったそうです。この結果には左派のみならず、市民運動系からも、「なんで?テレビにたくさん映っているだけの無能三羽烏なのに」という声が多かったのですが、まさにその「コロナ対策でテレビに映っている」のが、この三人くらいしか思い出せないという状況。つまり多くの人にとっては、最初からこの三択だったのでしょう。

 というか、行政機関を動かせるのは権力者側だけですから、そういう次元では、野党や市井の人々が大きな対策をとるには無理があり、その努力も報道されないのです。むしろここで注目すべきは、総理大臣である安倍がこの「三択」の中で最下位に甘んじてしまったことです。先進諸国を中心に与党がコロナ対策で「国民的団結」を訴え、軒並み支持率を上昇させている中で、トランプと安倍は逆に支持率を落としているという非常事態に対する無能さと慢心がここで注目すべきポイントなのです。まして給付金のドタバタで無様をさらけた麻生など問題外です。

問題点は何か?

 それはさておき、そこで「まあ小池もそこそこ頑張ってんじゃないの?」「大変な時だし、あまり変えるのも」みたいな判断がはたらくのは最初から予想されていたこと。もちろんそうじゃないのはわかってますよ。特に宇都宮さんの小池知事に対する公開質問状には感心を超えて感動した。もしアメリカ大統領選挙みたいに、宇都宮さんと小池の二人で丁々発止の討論会を数度にわたり中継し、かつそれをみんなが見れば、簡単に情勢は逆転しただろうと確信しました。

 私だけじゃなくて、前記のような理由で「まあ今回は小池でいいか」という一般の人だって、「前回はオリンピック、今回は自分の選挙」が終わるまで、コロナの深刻さに蓋してるんだろうなくらいは雑談で普通にみんな言ってますよ。わりと正確に見ているんです。ただ小池だけしか見えてないんで、「まあ今回はいいか」と消極的な支持、もしくは低投票率という結果になるんです。それを突き破ってみんなに希望を与えるだけのパワーが、宇都宮陣営や山本陣営、野党全般にない。そのことのほうが問題なのです。すごくわかりやすい構図ですよね。

左翼陣営は宇都宮さんに一本化されていた

宇都宮けんじさんポスター

 ネトウヨ系の方々のSNS上のつぶやきを概観していて、「左翼は宇都宮と山本に分裂」的なことを言ってる人を複数見ましたが、左翼は分裂していませんよ。「極左」から共産党まで、さらに市民運動左派部分も、だいたい宇都宮さん応援に一本化しています。山本さん(れいわ新選組)を応援していた左派部分も、知る限りは山本さんの立候補表明で怒って離れてしまいましたからね。

 私の人脈というか、知り合いは左翼の方が多いので、少なくとも真面目に活動している方はみんな宇都宮さん支持です。そこは宇都宮さんのお人柄であり、普段から社会の中で苦労しつつも必死に生きている庶民によりそってこられた、宇都宮さんの生き方の所以です。

 左翼陣営で宇都宮さんを応援している方は、「統一候補」としてではなく、そんな宇都宮さん個人の生き方と政策主張に共感している方が多い。だから逆に宇都宮支持を強要してこない。山本さんを支持するとしても、それは人それぞれであり、選挙が終わったらまた一緒にやろうという態度で、それは気持ちがいい。共産党は知らないけれど、無党派左翼や「極左」系の方はみんなそうでした。選挙第一主義や野党共闘至上主義ではないというのもあるのでしょうね。

野党系同士の泥仕合はやめてほしかった

 逆に宇都宮陣営でも左翼ではない右派系の人はこの正反対でした。もちろんみんながみんなそうではないんでしょうが、とにかくネット上でやたら目立ったのが「山本太郎憎し」みたいな人で、「山本は○○と密約して…」みたいな怪情報(もうデマでいいよね)を流す人までいて、その矛先は山本さんを支持している人にまで向けられ、もう本当に見てて辟易した。こんな泥仕合して、かえって野党系候補に普通の人からの嫌悪感を煽るだけだって、なんでわからないのかな?

 敵は小池と自公ですから、私は(真面目な)左翼の方々の態度が正しいと思うのです。山本太郎潰しに奔走しても、「私たちは今後の主導権のために二位争いをしています(主敵は小池より山本)」「宇都宮さん個人というより『野党統一候補』が大切なのです」と公言しているようなものです。
 宇都宮さん本人はこういう態度とは無縁に、小池都政への公開質問状などで、堂々とした論陣を張ったのは本当に偉いと思いました。

 まあだいたいこういう人の漠然とした最大公約数としては、立憲民主党支持者で、野党共闘至上主義(前回都知事選では宇都宮さんを降ろして鳥越への統一を強力に主張)、選挙運動第一主義、小沢一郎への憎悪(民主党を壊した)、政策的には財政均衡主義(消費税廃止反対)、民主党政権時代への世間一般よりも高い評価と、まあ、そりゃ確かに山本太郎とは合わないよね~w

山本太郎さんは左翼ではないよ

山本太郎さんの「天皇直訴」

 ところで山本さんは、ありゃあ「左翼」ではないですからね。ありのままの皇室を単純熱烈にリスペクトする左翼というのは論理的にありえません
 山本さんが当時の明仁天皇(現上皇)に園遊会で手紙を渡そうとした(直訴)ことで、右翼は「不敬である」と怒って、山本さんを皇室の敵認定しているみたいですけど、それこそあまりにも右翼的というかイデオロギー的というか、一般の人の感覚からはかけ離れています。

 むしろあの事で、山本さんに期待していた左翼のかなりの部分が離れた。そしてワイドショー的に天皇に親しみを感じるような普通の人はあれで「山本さんって天皇大好きなんだ」「左翼じゃないんだ」「むしろ右翼?」くらいに思ってるんですよ。つまり前天皇のつくりあげた皇室の「平和イメージ」の側に立つことに山本さんは成功し、むしろそれを「不敬である!」とか言いながら、明仁天皇の「平和イメージ」や山本さんの「直訴」のことになると、突然「護憲主義者」になる右翼のご都合主義的なイデオロギーのほうがよほど分が悪いのです。

山本太郎さんと中核派

 山本さんは基本的に「来るもの拒まず、去る者追わず」「支持者や団体のしがらみに斟酌せず自分の思ったとおりふるまう」というスタンスでやってこられたように思います。それこそ右翼も過激派も関係なく。
 そういうところ、ちょっと忌野清志郎さんに似ているなあと思うのは私だけ?清志郎さんは、そうやって自分の好きなようにふるまえばふるまうほど、嫌われるどころか逆にどんどん好かれて味方が増えていったんだよね。もちろん歌や芸術の世界と、利害もからむ政治の世界は違うだろうけど。

 まだ山本さんがひとりの頃は、中核派が擦り寄ったこともありました。中核派が三里塚で「山本太郎の当選のために闘うぞぉ!」とか山本さんに無断でシュプレヒコールしてる(そこがいかにも中核派らしい)のを聞いて腰が砕けそうになりました(笑)。自分たちで国会議員を出せないので、押しかけ的に選挙や運動を応援してイッチョカミし、「中核派の集会に来てくれる国会議員」として囲い込む戦略だったのでしょう。運動界隈に「山本太郎の背後には○○派の○○がいる」みたいな噂や言説がたくさん流れたのもこの頃です。

 心配した支持者には、中核派を追い出せという声もあったようですが、山本さんは「応援したい人はすればいい(関知しない)」と基本はノータッチ。おそらく右翼の、たとえば一水会あたりが応援したと仮定しても、同じ態度をとったと思います。もしここで「あそこはOK、ここはNG」と選別してたら、そこで山本さんにはある種の「色」がついたわけで、それを相手に関係なく一切しなかったのは、今から思えば正解でした。

 その後は天皇直訴(これで中核派は応援できなくなった)、小沢自由党への入党(入るとしても、てっきり社民党だと思ってたので驚いた)、党名に「れいわ新選組」を採用(天皇制元号+幕末の反革命テロ集団)と続き、そのたびに形式論理的な一番左な部分から順番に、左翼は山本さんから離れていきました。あくまでも、どっかの誰かさんみたいに追放したとか追い出したのではなく、自分で離れていったのがミソです。

「連帯を求めて孤立を恐れず」

重度障害者2人を「特定枠」に

 山本さんの旧来の支持者に斟酌しない行動は、今のところ一般大衆に対しては「当たり」の結果を引き続けています。今回の立候補も「当たり」でしょうか?それはまだわかりませんが、今後の野党内では「野党共闘」よりも独自路線をとることになると思われます。まさに「連帯を求めて孤立を恐れず」を地で行くような判断を重ねておられます。

 左翼のまんまでそれについていくのは厳しいかもしれない。ただ、とりわけ前回の参院選での候補者のそろえ方、つまり有名人とか文化人ではなくて、今まで左翼勢力も含め、活動家や国会議員が訪問して「皆さんの声を届けます」的な存在でしかなかった、現代日本の矛盾をしわ寄せされてきた問題の当事者、たとえば障碍者や、大資本の犠牲者、沖縄でも沈黙を強いられてきた無名の人を、「皆さんの声」という、誰かに託するだけの存在ではなく、直接の主人公として登場させたことには驚きと感動がありました。

 「障碍者が直接議員になればいいというのは、障碍者保護とは違う」という意見も聞きました。けど女性運動もそうだったでしょ。最初は「保護」されるべき弱い存在として「尊重」されるべきとされ、次に女性も社会に登場して活躍したいと言ったら「男と同じにできるのか?」と言われ、初期に活躍した女性は「名誉男性」であるべきとされた。まだうまく表現できないが、障碍者に「名誉健常者」であることを強いるのは違うと思う。

 繰り返すが、山本太郎は左翼ではない。そうではなく、一言で表すなら、左翼は山本太郎に乗り越えられてしまったのだと思う。
 だがその一方で、地道で良心と熱意と執念にさえ溢れた、それこそ宇津宮さんのたどってきた道があります。これは否定できないし、そこに積み重ねられてきたものを否定しては絶対にいけない。むしろ過去の選挙を応援していた時よりも、宇都宮さんへの尊敬がかつてなく高まるのを感じています。

小池当確の報を聞きながら

 選挙戦終盤、山本さんは慢性的につづく低投票率を念頭に、上から目線の「選挙に行こう」のかわりに、「選挙に行かない50%の人たちと語り合おう」と発言したそうです。なんか目からウロコでした (´⊙ω⊙`)!
 そこには小池や安倍はもちろん、私たちの声も光も希望も届いていない人が大勢いるのですから。

 このエントリを書いているうち早々に出された小池当確の報、宇都宮さんと山本さんの票をあわせてもダブルスコアに近い開票を見ながら、そんなことに思いを馳せる。
 「希望はある」月並みな言葉だけれど、いま、それを強く思う。それを届けたい。

与党議員に「恥を知れ!」と叫ぶ山本太郎

追記】最終得票数

2020都知事選開票速報
NHKサイト開票速報より)

有権者数:11,444,260人 投票率:55・00%

名前    得票数   単純得票率  絶対得票率

小池ゆり子 3,661,371票  59.70%  31.99%
宇都宮健児  844,151票  13.76%   7.37%
山本太郎   657,277票  10.72%   5.74%

小野泰輔   612,530票    9.99%   5.35%
桜井 誠   178,784票   2.92%   1.56%
立花孝志    43,912票   0.72%  0.38%

※有権者総数は今年6月現在で公表のもの
※絶対得票率とは棄権を含めた全有権者からの得票率

 小池氏の得票率6割というのは、東京に住んでいても高すぎると疑問に思うレベルだったけど、絶対得票率で有権者の32%と言われると、体感的にもだいたいそんなもんだろうと納得した。

 宇都宮さんは過去の最高得票でも90万票台だったはずなので、「コロナ選挙」という特殊性を加味すれば、だいたい予想の範囲内であり、支持が減ったとは思わない。山本さんが出なくてもそんなに変わらなかったろうし、むしろ二人あわせての150万票は、宇都宮さん一人では獲得できなかったろう(残念ながら)。

 維新の小野氏は「健闘」と言えるレベルで、山本さんと僅差なのが嫌な感じである。また、ザイトクの桜井に入れる有権者が1%以上もいるのかと呆れる。

立花孝志のアホなポスター

 N国の立花氏は3人も候補を立て、二人分を自分のポスターの両隣に候補者の名前もいれず、有名人の顔写真をつけて自分のポスターと並べるなど、もはや「奇策」を超えた「脱法行為」を行ったが、さすがにそういうのはお腹いっぱい(←このネットスラングの使い方がはじめてわかったw)である。そのうちポスターに候補者名ではなく「大売出し」とか自著の宣伝とかする人が出かねないと思った。いや冗談ぬきで。

   

 

ここまで読んでいただいてありがとうございます!

この記事への質問・一言コメントをどうぞ AIコースケと議論しよう!

AIの回答は、必ずしも正確とは限りません。回答は執筆者の見解と一致しない場合もあります。
回答には文字数制限があるため、制限を超えると途中で打ち切られることがあります。
[広告:これは旗旗の継続を助けています]

6件のコメント

「小池氏の得票率6割というのは、東京に住んでいても高すぎると疑問に思うレベルだったけど、絶対得票率で有権者の32%と言われると、体感的にもだいたいそんなもんだろうと納得した。」都知事選雑感‐書けなかった感想をまとめて 山本太郎のこ… https://t.co/QTPndvx00J

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です