沖縄、首相へ渦巻く「怒」 謝罪行脚、先々で抗議
(日経新聞 2010年5月24日)
米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)の移設問題で、鳩山由紀夫首相が沖縄県を再訪した23日、県外移設の約束を破り名護市辺野古移設を口にした首相に沖縄県民らは怒りを噴出させた。首相は神妙な表情で謝罪行脚したが、行く先々で抗議する県民に囲まれた。「沖縄にこれ以上、基地を押しつけるのはやめて」。県民らはやりきれない思いで訴えを続けた。
●県庁前 「首相は選挙公約を守れ」「我々は絶対に許さない」――。首相到着前の午前9時、那覇市の県庁前に県内移設反対を訴える市民団体ら約1000人(主催者発表)が集結。鳩山政権へのイエローカードを示す黄色いハチマキなどを身に着けた参加者が大声で訴えた。
米軍キャンプ・シュワブ(名護市辺野古)近くで座り込み行動を続ける市民団体「ヘリ基地反対協議会」の安次富浩代表委員(63)は「これほど沖縄を侮蔑(ぶべつ)した首相はかつていない。私たちは負けない」と呼び掛けた。
午前10時20分、首相を乗せた車が県庁に到着すると、県民らは「怒」と書かれた紙を一斉に掲げた。幼いころ父から沖縄での戦争体験を何度も聞いたという那覇市の主婦(64)は「基地は悲劇しか生み出さない。米国と先に交渉し、沖縄に説明がないまま県内移設で合意するなんて、沖縄県民を愚弄(ぐろう)している」と憤った。
●名護市 稲嶺進名護市長ら県北部の首長との会談が行われた万国津梁館付近は、数十人の警察官が沿道を警備する物々しさ。約300人の反対派住民が「沖縄に基地を押し付けるな」などとシュプレヒコールを繰り返した。「沖縄差別 許さん」というプラカードを掲げた同市の男性(70)は「次世代に負の遺産を残したくない。辺野古には絶対に基地をつくらせない」と話した。
辺野古の住民も失望の表情を浮かべた。40代の男性会社員は「米軍のヘリコプターの離着陸の騒音被害は想像以上だろう。結局、辺野古とは残念極まりない」と肩を落とした。一方、元市職員の男性(72)は「辺野古は昔から”陸の孤島”といわれる貧困な地域。街の振興のために基地に期待している」と容認する意見もあった。
●宜野湾市 宜野湾市では移設が滞り、普天間基地が固定化することへの懸念の声が聞かれた。毎日、米軍機の爆音に苦しんでいるという男性会社員(41)は「名護市が反対する中で辺野古への移設は難しい。普天間基地がこのまま残る可能性が出てきた」と話す。
2004年には、同基地に隣接する沖縄国際大校舎に米軍のヘリコプターが墜落した。同大1年の女子学生(18)は「再び米軍機が落ちるのではと恐怖感がある。時間をかけてもいいので、政府は基地撤去に向けて努力してほしい」と訴えた。
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