ちょっとすごいぞ!読売新聞
: 朝日新聞とその批判を巡る考察

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 最近の掲示板などを巡回していると、この頃また朝日新聞への批判が増えていることに気がつく。大半はプチ右翼による「誹謗・中傷」の類いが多いが、中にはちゃんと自分でサイトを開設し、メールアドレスも明らかにして、意見や反論も受け付けながら朝日批判に情熱を傾ける人もいる。皮肉ぬきに大したもんだと思う。たかがと言っては失礼だが、単なる一新聞社ごときに私はそこまでの労力はさけそうもない。

 読者は「どうせこんな左がかったサイトのやつらは朝日を読んでるんだろ」と思うかもしれないが、実は私は朝日新聞を購読していない。それどころかもう何年も手にとったことすらない。地方では何といっても地元新聞が強い。うちでもフツウに地元新聞を購読している。私は政治評論家ではないので、新聞なんて一紙あれば充分だ。

 さらに私はこう見えても(?)一日12~18時間はあたりまえに働いている。新聞も食事をしながら急いでざっと読む。目に止まった記事だけ後で切り抜いたりしてじっくり読み、3日に1回くらいはネットで各紙の記事と照らし合わせてみたりする。一般人としてはこれだけでも充分だろう。(最近はそれも難しくなってきたが)

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 しかしである。これだけプチ右翼が朝日を目の敵にするからには、きっとすごい記事が載っているに相違ない。ネットでは他紙と大同小異の当たり障りのない記事ばかり流しておいて、本紙には「許せるか!米軍のこの残虐」とか「日本人民はただちに帝国主義打倒に勇躍決起せよ」とか「偉大なる主体思想を高く掲げて進もう」などの活字が踊っているのであろう。それならばプチ右翼達のこの過剰な反応も合点が行くというものだ。
 これはもう朝日読むべしである。私は10日ぶりにやっととれた休みをつぶして、さっそく地域の図書館に出かけた。そしてわくわくしながら1週間分の朝日新聞に目を通した。

 ところがである。別に何もない。なーんもない。ネットで流れていたのと同じような記事ばっかり。どこにも「偉大な将軍様の発電所視察」のニュースなど書かれていない。プチ右翼が目くじらたてそうな記事を捜してみるが、日本人の100人中99人が言うような「戦争は嫌ですよねえ」とか、同じく日本人の2人に1人以上が言うような「自衛隊派遣には問題がある」みたいな読み物が精々である。

 騙された!これは完全に騙された!朝日なんてただの新聞ではないか。私の休みを返せえええっ!と叫んでも仕方がないので、朝日・毎日・読売・地元紙(共同通信系)を読み比べてみることにした。そして書いたのがこの文章というわけだ(前置きながっ!)

 朝日・毎日・地元紙・読売と読んでみるが、どれも根本的な違いは大してない。社説や解説記事の論調の違いをたとえるとすれば、朝日と読売はせいぜいが欧州各国における「保守政党と社民政党」くらいの違いしかない。「共和党と民主党」よりは違いが大きいが、「保守党と共産党」ほど大きくない。つまり今の体制を前提としており、それを変えようする意志など、どちらもカケラもない。「共通の土台」というものがあって、その意味では朝日も読売もあまり変わらない。

 まあ、小さい差なのだが、戦争や派兵の是非など「YESかNOか」の問題になると180度違う結論を出すことがあるのでその差が大きく見えるだけのことである。プチ右翼が描き出すように「極右政党と革命政党」くらいの巨大な差があるわけではない。

 さて、そのような各紙の「小さな差」の中で、際立っているのが読売新聞のポジションである。まず、右派で政府系というのは疑いのない所であるし、別にそれはそれでちっともかまわない。政府の政策に好意的か批判的かなんてことで新聞や雑誌を頭から否定したり、逆に肯定するほどこちらの頭は固くない。しかし何と言うか読売の表現の仕方は露骨である。しかもあざとい。

 たとえば「天安門事件から15周年」の記事の場合、他紙が「事件から15年後の中国」という切り口なのに対して読売は「香港の天安門追悼集会に過去最高の参加者」という記事で1面の6分の1を埋めた。記事は2面にまで続き、しかも写真はカラー印刷というすごい力の入れようである。あきらかに嫌中派の「主観」がすけて見えるけれども、それを「集会の報道」というあたかも「客観的」な形式にすりかえる所があざとい。

 地方紙の共同通信配信記事の場合、国際面に4段程度で、しかも「天安門も平静で激しい学生運動も今は昔。若者は自分の生活のことを優先」てな具合で「中国ではもう学生運動なんてはやらない」という内容の記事であった。香港の追悼集会も4段程度のベタ記事で「参加者が増えたのは天安門事件とは関係なく、直接選挙廃止方針への反発が原因」という内容である。

 ただ、天安門事件については犠牲者の全容すらまだ明らかにされておらず、15周年直前には「天安門の母の会」メンバーが予防拘禁されている(アムネスティニュース参照)。こういったことは日本ではほとんど報道されていない。動機はともかく、読売の「天安門を風化させない」という強い姿勢は評価したい。

 図書館のカウンターで古いのも出してもらい、もう少し遡ってイラク人質事件くらいまでの読売を見てみる。おお、確かに「自己責任論」一色である。これは他誌にくらべて際立っている。
 ここまですごいのは読売だけだ。まるで2ch公式のプチ右翼の全国機関紙のようである。よく2chでプチ右翼が「自分達の意見は世論と同じ」「日本の世論を信じよう」みたいなことを書いていて、非常に不思議に思っていたのだが、これでわかった。こう書く人は読売しか読んでいないのである。で、そんな頭でたまに朝日を読むので「偏って」見えるのであろう。

 ひょっとしてというか、確実に読売関係のライター達は2chを見ている。見ているだけでなく書き込みもしているに違いないと思う。2ch内「世論」に迎合、先導しているかのようだ。面白いのは他誌では「人質バッシング」の記事で2chが批判的に紹介されたりもするのだが、逆に読売には出てこない。2chなど存在していないかのようである。2chでのバッシングの書き込みがあまりに酷い内容なので出せないこともあるだろうが、これは面白い現象だと思う。

 さてさて一番面白かったと言っては不謹慎だが、興味深かったのは北朝鮮の拉致被害者家族会へのバッシングについての報道だ。

 読売は当初「首相はまたしても金正日にしてやられた」と家族会と同じスタンスに立った。もっと強硬な姿勢で北朝鮮に臨めというわけで、この時点では今まで読売的なスタンスで物を言っていた部分の「世論」を先導していく意図があったと思う。しかし少なくとも2チャンネラー達は逆に動いた。政府擁護に回り「家族会バッシング」に走ったのである。

 読売系のライター達は結構とまどったと思う。最初のポジションからはこういった「家族会バッシング」を断固批判すべきである。なのに、なーんか曖昧で気のぬけたサイダーみたいな、読売らしからぬ「客観報道」ばかりが目につく。
 まあ、よく考えてみれば、これはあきらかに読売が後押しして作り出してきた「人質バッシング」とまったく同じ構図なのであるから、ここで2チャンネラーを敵に回して批判すれば自分の過ちを認めたに等しく、自らの墓穴を掘るようなものである。

 私なんてそれまで「人質バッシング」にはかなり怒っていたのだが、この「家族会バッシング」を見て、こんなくだらない奴らに怒っていたのかと思うと気がぬけて怒りなんてどこかに行ってしまった。ともかく「人質パッシング」と同じくらい許せないことなので、私も家族会宛に「家族の心情を踏みにじるような、卑劣なパッシングなど全然気にする必要はない。言いたいことを言って下さい」という「励まし」のメールを出した。(右派系以外の人間も支援できるような運動にして欲しいという要望も書いた)

 さて、読売の自縄自縛に対して他紙はそんななところがない。共同通信系の地元紙では2ch掲示板の書込みなども紹介しながら「人質パッシングと同じ構造」「適当な標的を見つけては叩くゲーム感覚」と「ネット上の祭」を分析していた。
 さらに小泉首相が北朝鮮からの帰国時に、家族会が非常に批判的であることを告げられて即座に「すべてオープンにせよ」と命じ、自分に声を荒げて抗議する家族達の様子を全国に報道させた点をあげ、「世論をたくみに味方につける首相のしたたかさ」を分析している。

 ほぼ同じ日付けの読売の報道はこうだ。地元紙が指摘した上のような事実にはまったくふれず、「家族会バッシング」については非常に小さい扱いで「客観報道」をした後に「国民の理解を得る難しさを痛感した」という家族会事務局長、蓮池透さんのコメントで締めている。

 「なんじゃ、そりゃ!」 凸(-~~- )

 まあ、いろいろ書いたが、一番読みごたえというか「読むところ」があるのは朝日と読売の2紙であることは間違いない。特に読売についてはキッシンジャー氏など外部の論客を積極的に登用した解説記事が読ませる。

 短時間でざっと読んだ「感想」なので、いろいろ事実誤認や浅い理解もあるかもしれない。このへんについてはまた今後の課題とさせていただく。

(参考)特定の新聞を批判するため「だけ」に立ち上げられたサイト
笑って読もう朝日新聞(http://www.alpha-net.ne.jp/users2/kbty/)
困った地元紙・北海道新聞(http://www.joy.hi-ho.ne.jp/nippon/)

 この人達は批判するためだけに新聞を購読しているのだろうか?本当にスゴイ!
 「困った地元紙」にある「五人でも載せてあげるよ護憲なら」「千人でも誰が載せるかつくる会」の表記は「気持ちはわかる!」なんだよね。私も左翼活動家時代には、「新左翼系」が3千人集めても、5千人集めても、1万人集まっても、新聞ってまともに記事にしてくれない。市民団体とかが参加してる時に本当に小さく載ることもあるくらい。共産党とかが2万人集めても全然載らない。
 それに対して「政党や政治団体に関係ない市民が自発的に」何かすると10人くらいでもかなり大きく載せたりする。わからないでもないけれど、新聞はとにかく「市民」がお好き!

 でもこういうサイトならネタには困らないという利点があるなあ。うちでも「ちょっとすごいぞ!読売新聞コーナー」でも作ろうか?(あ、でも読売購読しなきゃならんな)

(「右のお友達?」に続く)

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