現在、逮捕のための逮捕、沖縄の運動リーダーであることを理由にした不当な拘束を受けている山城博治さん。高江や辺野古での住民を先頭にした抵抗に手を焼いた安倍政権が、多少なりとも見せていた沖縄世論への慰撫や遠慮をすべてかなぐり捨て、強権的な暴力ですべてを押し通す判断に舵を切ったことの表れでもあります。そのリーダーの一人でもある山城さんできる限り長期拘束し、高江はもちろん、辺野古埋め立ての目処がつくまで外にださないつもりです。
一国の政権がそこまで恐れる個人、山城さんの作ってたきた沖縄の運動とはどんなものか。不当弾圧への抗議はもちろん、その抗議の運動中でも、そして本土でも、先頭にたち続けた山城さんの敢闘精神とあわせ、安倍を恐れさせた山城さんの運動に対する姿勢についてもう一度振り返り、私たちなりに学び、山城さんを拘束してもそれがどんどん広まることを追求していきたい。
その願いと、現在も持病の治療も許されず、沖縄弾圧への抗議として獄中ハンスト行っている山城さんへの思いを込めて、本年4月9日のDA(直接行動)主催の専修大学講演会での山城さんの発言と、3月27日の新宿デモにおける発言を振り返ってみたいと思います。それそれ講演と集会での演説という性格の違いはありますが、山城さんを獄に奪われた今こそ改めて学び直してみたい内容です。
ただし専修大学のほうは、長時間の講演の中で、私が特に印象深かった運動に関する部分を抜き出したもので、全体はこれだけではありません。また、記憶と簡単なメモ書きを頼りに書いて再構成していますので、その文責はすべて草加にあります。
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■専修大学での山城博治講演会「抗う沖縄の声」より
「辺野古は不思議と『組織動員』がきかない。組合などにさんざん呼びかけてるのに来ないんでもうやめた。かわりに個人がいっぱい来る。だったら個人にあわせた形態にせねばと今のテントや座り込みの形になった。ゲート前でシュプレヒコールをやめて、かわりに歌を歌ってカチャーシーを踊った。最初はすごい苦情言われましたよ。何やってんだ、シュプレヒコールしろと」
「(個人中心にする過程で)形だけの運動はやめようと思った。日曜日に3万人で集まっても、相手は気にしないし何の打撃にもならなかった。それより(相手が仕事している)平日に千人で集まって、門前に座り込んで業務を止めてしまうことのほうが打撃になる。米軍司令部は大慌てで、海保の事務員はパニックになった。排除されたらスクラムを組んで、徹底的な非暴力でかつ具体的な打撃を与えよう、そこで逮捕者がでたら参加者全員で取り返そう」
「皆さんもこれから国会や東電前とかであるんでしょ。そういう時に逮捕が『自己責任』じゃ恐ろしくて個人が来れないんです。誰も座り込みなんてできない。とにかくどこの誰がどういう経緯で逮捕されようと、そこにいる全員で取り返しに行く。その団体や逮捕の経緯に問題があるとしても、それは取り返した後で話せばいい。そういう形で個人参加でも可能な抵抗をつくってきた」
「機動隊はね、わざと混乱を作って逮捕するんですよ。それで脅して運動を潰していく。だから機動隊と遊ぶなと。乱暴されたり弾圧されたら腹が立ちますよね。抗議して機動隊と遊びたくなる。でもそんなことしている暇に横からすり抜けて、なんとかしてまた座り込むことを考えたほうがいい」
「今の団塊の世代は史上かつてなかった『黄金のシルバー世代』だ。親の世代の戦争の生々しさと憲法の大切さを肌で知り、かつ反戦運動を体験している。こんな世代は他にない。ここが次々と年金をもらって自由になってる。辺野古にも来る。だからもう若い層が少ないなんて言わないですよ。団塊世代どんどん来てください。機動隊ともう一度遊びたいでしょ(笑)」
「安保をなくすことは大切です。ただその原理原則を唱えるだけでは何も変わらないまま潰されてしまう。辺野古を止められなかったら沖縄はもう終わりだ。辺野古を止めれたら日米安保は今とは違ったもの変質せざるを得ない。辺野古を止めれば安保は変わる。安保を変えると日本そのものが変わる。まずここからです。そういう考えで安保を容認しつつ基地に反対する翁長さんら保守とも共闘しています」
「そういう意味で辺野古は基地反対のシングルイシューじゃないんです。沖縄の立場から他の運動にそういうことは言えないし言わないけれど、沖縄は日本全体を変える運動なんです。辺野古は全国に開かれた窓です。どんな運動でも来てくれてかまわない。沖縄に来てもらって、沖縄から全国に広げていくんです」
「辺野古に心をよせる人から『いい加減な気持ちで行くのは罪悪感があって』とよく言われます。そんなことない。試しに見に来るだけでもいい、一時間だけ立ち寄るでもかまわない。軽い気持ちでも大歓迎です。だって多少なりとも気持ちのある人が来ないで、いったい他に誰が来るんですか?首里城に観光に来た観光客が、ついでにゲート前に来ますか」
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■辺野古の海を埋め立てるな!3・27新宿デモでの山城さんの演説
みなさんこんにちは。辺野古から参りました山城です。素晴らしい!新宿でこんなに大きな集会が開かれているのになかなか顔も出せませんで申し訳ございませんでした。本当に心強く思っております。ありがとう!
すごいですね。うしろのビルの下にはマスクをした東京警視庁の人がいっぱい。警視庁! 辺野古で世話になっております。東京でもこんな格好かい。ひとつお手柔らかに頼みますよ。
昨日、代々木でも大集会がありました。皆さんも参加されたと思いますが、本当にこの国の末期的症状といいますか、断末魔のような、もだえうつ、のたれうつ苦しみがこの世界を覆っているのに、ここのリーダー、総理はほとんど意に介さない。不思議な存在です。なんとも理解ができません。
人々が苦しんでいるのに、放射能がぶっ飛んで建屋から毎日のように放射能が飛び交い、人々が逃げ惑い、そして未来に向かって恐怖におののいているのに、「放射能は止まった、コンクリートでブロックされた」と言って、「20ミリシーベルトの世界に帰れ帰れ」と言って、帰らない人には支援を打ち切る。本当に信じられないような状況にいま置かれています。怒りが炸裂するのも当然です。3万といわず、5万、10万の集会で安倍をぶっ倒せ! そう思いますね、みなさん。ああいう男になんでいつまでも政治を任せるんでしょう。
東京オリンピックに福島の人たちを招くと言ってますね。フザケたことを言うな! 東京オリンピックに招いたら福島の悲劇が消えるのか! 放射能が消えるのか! そんなオリンピックなんかいらないわ! オリンピックを言う前に、あの建屋をまず廃炉にしろ! あの建屋をコンクリートで囲ったらどうなんだ。なぜ放射能を毎日毎日通さなきゃならないんだ。福島のみなさんにあまりの許しがたい悲劇の押し付け! こどもたちがすでに身体に異常を来しているというのに、医師団を巻き込んで「放射能と病気の因果関係は無い」とうそぶいて、こどもたちの支援をしない。そして原発を再稼働し、あげくの果ては、世界有数の悲劇を体験した日本の原発を「買ってくれ」などと言ってあちらこちらに売り込みをやっている。貴様、いったい何者なんだ! おまえはそれでも人間なのか! 人間の顔を被った放射能の化け物か! と言いたくなりますね。ぜひそういう奴らにめげないで、怒りをもってがんばり抜き、抗議の声をあげるべきだろうと思います。
東京の皆さん、全国の皆さん、7月参議院選挙が参ります。いよいよ奴らを徹底してやっつける絶好のチャンスじゃないですか! 選挙に勝てる枠組み、選挙に勝てる方策をぜひとって欲しい。政治家のみなさん、政治に携わるみなさん、そうでしょう。今やるべきは自らの党派の党利党略を、「我が派、我が会派、我が党」の話をする前に、安倍が襲い来る、憲法を変え、我々や若者たちを戦場に引っ張り出す、放射能を引っ張り出す、沖縄を軍事基地で固める、そういう手合いの連中に「もはや君たちと付き合うわけにはいかない!お前らの政治を降ろせ!」そういう事をするための選挙だし、そういう事が何より求められているはずです。国民・有権者はその事を望んでいます。どうぞ皆さん、我々も声をそろえて言いましょう。政党は党利党略をやめ、国民・有権者を最優先に選挙に勝てる枠組み、人々の暮らしを最優先にできる政治の実現を今こそやるべきじゃないのか。
同じような状況が辺野古でも続いています。信じられません。県知事選で勝ち、衆議院選挙で勝ち、市長選挙で勝ち、あらゆる民意が示されているのに方針を変えない。「辺野古が唯一だ」という。ふざけるな! 何が唯一だ! 東京のど真ん中に持って来て「ここしかないんだ」と言って見ろ! 彼らの開き直りを許さない県民・国民の怒りがわき上がっています。その怒りが東京警視庁の機動隊200名、沖縄の機動隊200名を動員して、どんなにありったけの逮捕者を出しても、25名の逮捕者を出しても、44名の救急搬送を出しても、沖縄の運動は止まないでしょう。むしろこれから更に大きく大きくなるでしょう! 70年闘ってきたんだ。そんな脅しに負けますか。こんなチンピラのような連中に負けるか! 人々をなめるんじゃない! 人々の悲しみと歴史と誇りをなめるんじゃない!
そういう私たちの運動がついに彼らを止めました。「和解」という名の工事中止に追い込んだのです、みなさん! やりました。みんな喜んでいます。「すべて最高裁の判断に従え」という「和解」条項の第9項への懸念もあります。しかしみなさん、そんなもん通るわけがありません。一事が万事で、「最高裁判決が下だったら、以後沖縄は黙れ! 最高裁の判決に従え」そういう条項が入ったとしてもあり得ない! そんなもんに従えるか! 裁判は最後までやれ! 裁判所の勝手は許さない! 翁長さんはその決意でしょう。県民もその決意です。ひとつひとつ問います。ひとつひとつ、国家の犯罪、防衛省の犯罪、ひとつひとつ辺野古に関わる彼らの手法を問います。そしてひとつひとつが違法で許しがたい蛮行だということを天下にあまねく示して参ろうじゃ有りませんか、みなさん! その力で、必ず辺野古を止めることができます。
私たちのゲートでの闘いに、もうたくさんの人たちが来たでしょう。日々日々人が増えます。どんなに弾圧されても、どんなに機動隊にゴボウ抜きされても、日々人が増えます。なぜか? そこに正義があるからです。そこに未来があるからです。そこに希望があるからでしょう。だから人々は集まる。どんなに叩かれても、雨の日も風の日も、寒い日も暑い日も、みんな集まる。なぜ?「そこに希望があり、それが正義だし、それを信じて闘い抜けば、必ずこの闇夜が開かれる。希望が生まれる」そう思うからです。
そして全国のみなさんも、辺野古の闘いにつながることで、この閉塞感いっぱいで闇のような安倍政治の中でも、この一点を突破すれば、必ず未来が開ける。希望が拡がる。辺野古は今まさに、民主主義の窓口、我々の希望の窓口になっている感じがします。どうぞみなさん、この辺野古の闘い、負けるわけにはいかない! 勝つ以外にないでしょう。
そして今、勝てるような体制に来ています。勝てます。アメリカの世論もどんどん変わりました。やがて上院で「辺野古は不可能だ」という決議が出るでしょう。そして「辺野古はもうあきらめる」という決議がされるでしょう。そういう運動が全国で、世界中で拡がろうとしています。私たちもそのことを感じます。現場にいてメゲる気持はありません。そうでしょう、みなさん。辺野古の闘いはみなさんの中に燦々と輝いているでしょう?
希望をもってがんばりましょう。辺野古で歌がうたわれます。踊りがあります。語らいがあります。笑顔があります。それは、私たちが堂々といま闘い、歴史のただ中で、襲い来る政府・国家権力の暴力を止めて、自分たちの未来は自分たちで創る! 奴らの思うままには絶対にさせない! 奴らの思うままにさせたらまた地獄が待っているだけだ! もはや沖縄は戦前のような地獄は二度と繰り返させない。未来を創るのは自分たちだ! その誇りと感動の中で生きています。
辺野古は勝ちます。負けません。そして同時にみなさん、申し上げましたように、全国津々浦々、多くの課題が拡がり、安倍の政治が横行してみんな泣いているでしょう。どうぞ、勇気を持って立ち向かいましょう。いつまでもやつらをのさばらしておくわけにはいかない。必ず、政治の潮目はあります。変わる折はあります。がんばってがんばってがんばり抜けば、必ず変わる折はあります。どうぞ勇気を持って、原発も、安保法制も、憲法も、労働問題も、搾取も、朝鮮やその他の人たちに対する差別や排外を止めて、人々が仲良く平和に暮らせる時代は来るはずです。その事をめざしてがんばりましょう!
辺野古で歌われる歌、まよなかしんやさんが残している歌を一曲披露して、皆さんと勇気を分かち合いたちと思います。
(歌:まよなかしんやさんの「命の海に杭は打たせない」)
命の海をつぶしてはならない 世界に繋がる 辺野古の海
命の海に基地は要らない 命の海に 杭は打たせない
オジー オバーの海 命はぐくむ 大浦湾
海がめジュゴンの海 サンゴの海 ニライカナイへ つづく命の海
戦争ならん 戦やならん 戦のための基地は要らない
命の海を 壊してはならない 未来を開く 命の海
命の海よ いつまでも輝け 命の海よ いつまでも輝け
安倍政権が暴力的な手段を顧みないほど恐れる山城博治さん(不当逮捕後、持病の治療も許されず、沖縄弾圧への抗議として獄中ハンスト中)の講演「抗う沖縄の声」、演説「辺野古の海を埋め立てるな!3・27」https://t.co/Uj1CEws6iy #高江 #辺野古