インドの南方に浮かぶ島国スリランカで、民衆の反政府デモにより、政権が打倒された。同国ではラジャパクサ大統領の辞任を求め、数か月前から大規模な反政府デモが続いていた。
7月9日、抗議の激化にも辞任しない大統領を前に、ついにデモ隊の大群衆が警察の放水車と阻止線を突破して大統領公邸に突入・占拠する事態となった。
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大統領は事前に避難していた。また、怒りの矛先は首相にもおよび、ウィクラマシンハ首相の私邸が炎上したが、首相も避難して無事とのことだ。
これを受けて議会の各政党も大統領に辞任を勧告し、ラジャパクサ大統領はようやく辞任を表明。これに先立ちウィクラマシンハ首相も同日に辞任を表明した。大統領と首相の辞意を受け、首都コロンボでは花火が打ち上げられるなど、祝賀ムードに包まれた。
もともと同国ではコロナ危機のために主力の観光産業が打撃を受けていたところ、ロシア侵攻に伴うウクライナ危機で燃料費が高騰し経済不況に陥った。そこに輸入に頼っていた政府がそのまま国家財政の「破産宣言」をしたため、短期間で民衆の生活に深刻なしわ寄せがきた。政府は肥料の使用を禁止する政策をとって農業は壊滅的な状態となり、生活必需品やガソリンなどの燃料、医療品の深刻な不足状態も進行した。デモはこれら生活苦の責任を追及するものだ。
スリランカは2009年以来、マヒンダ・ラジャパクサ(大統領→首相)、ゴトバヤ・ラジャパクサ(防衛相→大統領)の兄弟が実権を握ってきた。弟のゴトバヤ氏に大統領を譲った兄のマヒンダ氏は実質的な最高権力者だったが、経済失政の責任をとって7月はじめに首相を辞任。後任のウィクラマシンハ氏は中国の経済支援に頼ろうとしたラジャパクサ氏らに対し、今度はIMFに頼る姿勢を打ち出し、大統領と共に辞任に追い込まれた。
デモの参加者たちはラジャパクサ一族への怒りをあらわにしている。反政府デモはこれまでおおむね平和的なものだった。公邸に突入した参加者は「もっと早く辞任していれば、こうした破壊はなかった。とてもとても残念に思っている」と話し、 また別の参加者は「この家のこのぜいたくさ(動画参照)を見れば、大統領らが国のために働く暇などないことは明らかだ」などとマスコミの取材に語った。
スリランカの著名な人権派弁護士であるバヴァニ・フォンセカ氏はBBCの取材に「たった2人の辞任では、構造改革の要求は満たせない。だが大統領と首相が辞任すれば、少なくとも変化の始まりにはなる」と語った。
だが、Bloombergの報道によれば、IMFの代表団は、IMFを引き込んだウィクラマシンハ首相の辞任後、なおもスリランカの財務省や中央銀行との協議を継続すると表明した。先は見通せない。
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