<原発元作業員>警報の中、線量計外し汚泥除去 実名で証言

<原発元作業員>警報の中、線量計外し汚泥除去

<原発元作業員>警報の中、線量計外し汚泥除去 実名で証言(毎日)

<原発元作業員>警報の中、線量計外し汚泥除去

 みなさんは福一事故の直後、マスコミがその一挙手一投足を報道していた時期に、中に入った下請け業者3人が、全員の個人線量計の警報が鳴ったにもかかわらず、そのまま作業を続けて被曝してしまったという報道を覚えておられるだろうか?
 3人はマスコミの取材に「線量計の故障だと思った」と発言し、ネットでは「3ついっぺんに同じ故障をするわけねえだろw」「そんなこともわからないって、こいつらバカじゃねえか」「かえって迷惑」みたいな反応が並んだものだった。

 けど、原発の危険性について関心をもっていた人間にとっては、事故前から原発では(福一や東電に限らず)下請け作業員が線量計を無視して働かされていること、とりわけ山谷や釜ヶ崎などを中心とする日雇い労働者たち(原発ジプシー)は、線量計が限度いっぱいになったら外して作業させられていることなど、とうに常識に属することだった。

被曝労働者
被曝労働者

 20年ほど前に釜ヶ崎で、関電で一週間の作業で原発に行ったら一日目で線量計が限度になり、二日目から七日目まで外して作業させられたという体験談を聞いたことがある。東電はまだマシなほうでさえあるのだ。

 実は上の報道は、下請け業者が「いつもやっている通りのこと」をマスコミの前でもやったに過ぎず、今まで下請け作業員の個人的証言しかなかったものが、はじめてマスコミによってその事実が確認された瞬間だったのだ。

 今までもこういう証言は何度も何度も繰り返しなされている。そのほとんどをマスコミはまともに取り上げない。福一事故がなかったらこういう記事もでなかったろう。「公然の秘密」というやつである。

  

 だから東電も「そのようなことがあったという事実は確認できていない」などということは絶対にないのだ。ただ、こうやって下請け・日雇いを使わないと原発を動かすことができないから、このような不都合な事実は「ないもの」として扱われ続けているだけのこと。
 原発を動かしたい人は、それは今後とも彼らを犠牲にし続けるのだという事実も込みで判断してほしいと思う。

参考:被ばく労働を考えるネットワーク

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<原発元作業員>警報の中、線量計外し汚泥除去 実名で証言
(毎日2013年05月05日)
http://mainichi.jp/select/news/20130505k0000e040120000c.html

◇福島県双葉町出身の47歳

 東京電力福島第1原発などで18年間、原発作業員として働いた青森県弘前市の無職、石澤治彦さん(47)が毎日新聞の取材に応じ、放射線量の高い場所では線量計を持たずに働くなど、危険な被ばく労働の実態を証言した。元原発作業員による実名での証言は異例。石澤さんは健康の悪化から失職して妻子とも別れたといい、「自分と同じ後悔は誰にもさせたくない」と口を開いた。

◇「工期優先、被ばく隠し」離職・闘病の実態も

 石澤さんは福島県双葉町出身。20歳から9年前まで、福島第1原発を中心に各地の原発で働いた。個人事業主の立場で元請け企業と請負契約をし、主に現場の線量をチェックする放射線管理員を務めた。

 石澤さんによると、同原発1号機のプラント改良工事に従事した93年ごろ、圧力抑制室にたまった汚泥の除去作業で線量を測定しかけたところ、累積線量を測る個人線量計の警報が鳴り出した。しかし、元請けの現場監督から工期が遅れるとして続行を指示され、被ばく隠しのため線量計は外した。毎時30シーベルトまで測れる放射線測定器の針が振り切れ、防護服を着ても作業できないレベルだったが、同僚約50人とバケツリレーで汚泥を除去した。

 今も所持する放射線管理手帳に記された累積被ばく線量は95・15ミリシーベルト。法令上の被ばく線量限度内だが、しばしば線量計を外して作業していたため「実際はその5倍か10倍か分からない」。

 また同年ごろ、1号機で炉内の冷却水を循環させるジェットポンプの清掃に携わった時には、同僚と誤って高濃度汚染水のプールに転落。同僚は右腕骨折の重傷だったが、元請けの現場監督は「けががばれないように放射線管理区域から出るように」と指示。事故は公表されなかった。

 35歳ごろからは難聴や倦怠(けんたい)感に苦しんだ。妻と2男1女を抱え、失職を恐れて病院の健康診断書をパソコンで偽造し、元請け企業に出すようになった。だが38歳の時に元請け指定の病院で健診を受けさせられ、白血球の異常増加が判明。「もう働かせられない」と言われ、診断書偽造の弱みもあって争わずに職場を去った。体調悪化で別の現場で働くこともできず、自ら切り出して妻と離婚した。

 今は月6万3000円の生活保護費をもらい、弘前市内のアパートで暮らす。狭心症の発作や重度の糖尿病で寝込む日も多い。こうした疾患と被ばくの関連性を指摘する専門家もいるが、相談した医師からは「因果関係は分からない」と言われた。

 そんな日々を送りながらも、ふるさとの仲間と今年3月、原発事故による避難生活が続く福島県双葉町民の苦悩や県内の除染の状況などをフェイスブックに書き込むグループ「双葉町ネット」を結成した。4月22日には東京都内で活動報告会も開いた。

 「苦労をかけた家族も福島で避難生活を送っている。罪滅ぼしも兼ね、ふるさとの苦境を全国に発信し少しでもよくしていきたい」

◇東電広報部「確認できない」

 石澤さんが証言する労働実態について、東京電力広報部は「調べたが、現時点ではそのようなことがあったという事実は確認できていない」としている。