警察庁が「盗聴報告書」を発表「盗聴した通話の85%以上は犯罪と無関係」ってどういうこと!?

投稿者:司宮二
盗聴

投稿者: 司 宮二

盗聴された通話の85%以上が犯罪と無関係
–「盗聴報告書」を読む

ブログ「no more capitalism」様より

 警察庁は16日づけで「通信傍受法第29条に基づく平成18年における通信傍受に関する国会への年次報告について」を発表した。
http://www.npa.go.jp/sousa/keiki2/20070216.pdf

 新聞報道では、「通信傍受、9件適用し27人逮捕」といった数字しか報じられていない。(朝日、時事、共同など)しかし、マスコミが報じる「9件」は盗聴令状の件数ではなく、たんなる警察庁の分類番号の数字が9であるということでしかない。だが、9件という数字はあたかも9回しか盗聴されていないかのように大きな誤解を与える。メディアはなぜこうしたいい加減な数字しか報じられないのだろうか?メディアが警察の広報でないとしたら、数字の裏付けくらいは取材すべきだろう。

 わたしは新聞報道のいう「件数」だけでなく、裁判所の発付している令状に件数、盗聴された通話の回数や警察がどのような通話を盗聴しているのかということ、そしてこれらと逮捕、起訴といった一連の警察権力の行使との関連を検証する必要があると思う。

 報告書からわかるのは、令状ごとの通話回数と逮捕者の数などだ。報告書の別表の参考として一例のみ以下に紹介する。(オリジナルの報告書では表組になっている)

番号1
傍受令状 請求件数 1件
発付 1件
罪名(罰条) 覚せい剤取締法違反(同法第四十一条の二第二項、同第一項、刑法第六十条)【営利目的の覚せい剤譲渡】
通信手段の種類 携帯電話

実施期間 19日間
通話回数 204回
第22条第2項 第一号 9回
第三号 なし
逮捕人員数 4人

 マスコミで報道されているのは、このうち報告書の傍受番号を盗聴捜査の件数として9件とカウントしているもの。警察庁の報道資料を鵜呑みにした報道なのだろう。しかし、裁判所の令状の発付件数は、同一の事件で複数回令状が請求されているので、21件あり、しかも令状請求は全て認められている。

 この盗聴捜査で盗聴された通話回数は7161回にものぼり、このうち犯罪関連の通信とみなされたのは、998回だけ。したがって、盗聴された通話の 13.9%しか犯罪関連の通信はなかったということになる。これはかなり低い数字だが、盗聴法が法案として議論されていた当時から、米国の盗聴捜査報告書 (Wiretap Report)の実績などから、このくらいの低い数字になるのではということが危惧されていた。この危惧があたってしまった。盗聴捜査の手続きが超厳密に守られていれば、無関係な通話は聞かれないことになっているが、これを証明するものはない。むしろかなりの程度聞かれているとみたほうがよい。

 もうひとつ重要なことは、逮捕とのかかわりだ。報告書から知ることのできる範囲でまず問題になるのは、逮捕者がゼロのケースが整理番号数で二件、令状数でいえば5件あることだ。とくに、令状が4回も繰り返し発付され、58日間、860回も盗聴されながら逮捕者ゼロという番号6のケースは極めて問題が大きい。もうひとつの逮捕者ゼロのケースは盗聴期間 8日間で44回盗聴されている。こちらは
 規模が小さい一方で、いわゆる犯罪関連通信(22条2項の第一号)に該当する通信もゼロというこれまでになかった異例のケースである。いいかえれば盗聴されたすべての通信が犯罪とは無関係であったというわけだ。

 こうした逮捕者ゼロ、犯罪関連通信ゼロのケースについては、裁判所の令状発付にも大きな問題がある。もし裁判所が令状の請求を精査していれば、これだけ被害は拡大しなかった可能性がある。裁判所の令状主義が警察の捜査権力の歯止めになっていないばかりか、むしろ裁判所と警察の癒着とみられても仕方のない明らかな証拠といえるもので、裁判所の信頼を大きくゆるがすものだ。この点で裁判所の責任は極めて重大であって、盗聴法はあっても令状によるチェックがあれば大丈夫だという令状過信の考え方はとりえない。

 その他重要な特徴として、麻薬特例法が9件中8件と多用されていることだ。報告書では「業として行う覚せい剤等の譲渡」と記載されているのだが、特例法は主として「業として行う不法輸入」を取り締まる。麻薬関連は北朝鮮とのかかわりがあるので、これらの捜査が、麻薬取締りを名目として、ある種の公安警察的な別の意図をもったもの(あるいは両方の意図)である可能性も否定できないように見える。

 報告書からわからないこともまた多くある。気づいた点だけ列挙しておこう。
・携帯電話は普通の電話機能に対する盗聴だと推察するが、この点については何もかかれていない。ショートメールも含むメール盗聴があったかどうか不明だ。
・都道府県別データ、令状を発付した裁判所名もわからない。
・逮捕容疑と盗聴内容の因果関係もわからない。
・逮捕者がその後起訴、有罪となったかどうかもわからない。

 今回の報告書からわかる範囲でみても、盗聴捜査で盗聴される85%以上の通話が犯罪とは無関係な通話であるという現状のなかで、盗聴法の存在理由がはたして正当化されるだろうか、ということである。むしろ盗聴捜査のもたらす人権侵害や裁判所の機能不全を考慮すれば法の廃止を今一度真剣に検討すべきだろう。共謀罪とのからみで盗聴捜査の拡大が水面下でとりざたされているようだが、もってのほかだ。

http://www.alt-movements.org/no_more_capitalism/modules/wordpress/index.php?p=62

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