私生活権は表現の自由を制約するのか?
市民運動・労働運動から考える
今年1月コロナ感染拡大が全国で広がり、毎日5,000人~6,000人の感染者が出る最中の1月22日、最高裁は極めて重要な判決を出しました。
それは2018年11月に、三鷹市議会議員の野村羊子さんの政治団体が、市内に8万枚のポスティングを実施した時に、「住居侵入による【犯罪者の氏名開示要求】の内容証明」が住民から届き、拒否したところ、19年1月に武蔵野簡易裁判所に10万円の損害賠償請求訴訟が、住民によって政治団体相手に起こされました。裁判は、同年7月原告請求棄却の判決が出されましたが、地裁、高裁と争われ、今年1月22日に最高裁第二小法廷(菅野博之裁判長)が、上告を棄却したものです。
地裁判決での、【管理組合の意向及び控訴人の意思に反する行為であっても、玄関部分に立ち入ることは直ちに違法とは言えず、紙1枚の活動報告の投函は、社会通念上受忍限度を越えるものではない】と、原告の控訴を棄却した内容が最高裁で確定したのです。
市民運動に先行して、1990年代から労働組合活動への民事手法による活動禁止の仮処分、間接強制(例えば、組合の行動について禁止範囲を設定し、その範囲を超えて行動を行えば、1回につき20万円を使用者に払えという強制執行の一手法)、損害賠償請求裁判が使用者側から起こされ、最近では反原発の市民運動団体(経産省前テントひろばや山口の上関原発反対運動)や沖縄の高江ヘリパッド建設反対闘争に対して、国が仮処分・間接強制をかけて、高額の請求を住民らに課して運動つぶしが行われています。また、三鷹の損賠裁判に先駆けて、2004年の立川市内自衛隊官舎へのポスティングを「建造物侵入」とした刑事弾圧事件も、私たちには身近で忘れられない刑事弾圧です。
こうした裁判を起こしてくる経営者や住民が「平穏な私生活を送る権利」を主張し、裁判所もその主張を安易に認める傾向が続いています。解雇された労働者が解雇撤回を求める会社前での行動を、「営業妨害」やビラの内容を「名誉棄損」などと、経営者の主張を裁判所が安易に認める傾向が続いています。市民運動や労働組合・争議団の行動を規制しようとする動きの根拠とする「私生活権」は、「表現の自由」を侵害しかねません。ヘイトスピーチの人権侵害なども考えながら、今、私たちを取り巻く社会の中で、「表現の自由と私生活権」について一緒に考えてみませんか?
■ 日時:2021年9月6日(月)18:30~21:00
■ 会場:柴中会公会堂
〒190-0023 東京都立川市柴崎町3丁目9
JR立川駅南口、多摩モノレール立川南駅
■ 講師:武内更一弁護士
■ 資料代:500円
■ 連絡先:
・三多摩労法センター
国分寺市南町2-3-6丸山会館2-5 電話042-325-1371
・三多摩労争連
立川市曙町3-19-13-104 三多摩合同労働組合気付 電話042-526-0061
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