東京都世田谷区は2016年から区史編さんを開始しましたが、2022年、突然に執筆者(歴史学者ら)に対し「著作人格権の不行使」を求め、応じなければ嘱託を解除すると一方的に通告しました。著作人格権とは、自らの著作物の内容を無断で書き換えられない権利です。驚くべきことに区はいっさいの対話を拒否し、2023年4月にそれを強行しました。
このような枠組み(世田谷モデル)を認めてしまえば、行政サイドが著作者に無断で、いつでも勝手に歴史記述を恣意的に書き換えることが可能になり、それが全国の自治体に波及しかねません。極めて深刻な事態であると言えます。
かかる事態を受け、緊急シンポジウムを開催します。著作権、著作者人格権とは何か。著作者人格権不行使がもたらす事態とは何か。世田谷区史編さん問題から、研究者およびメディア関係者など、歴史にかかわる人たちのあるべき姿を考えていきます。
■ 日時:2023年7月15日(土)14時~17時
■ 形式:会場&オンライン
■ 会場:青山学院大学青山キャンパス
14号館(総研ビル)8階第10会議室
〒150-8366 東京都渋谷区渋谷4丁目4−25
(アクセス)
https://www.aoyama.ac.jp/outline/campus/access.html
(キャンパスマップ)
https://www.aoyama.ac.jp/outline/campus/aoyama.html
■ プログラム
第1部(基調報告 14時~15時、含休憩)
・シンポ開催の趣旨説明(谷口雄太 青山学院大学准教授)
・著作権法の立場から問題提起(長塚真琴 一橋大学教授)
・歴史研究の立場から問題提起(石原俊 明治学院大学教授)
第2部(リレートーク。歴史学者、自治体史編纂委員、イラストレーターほかを予定。15時~16時、含休憩)
第3部(自由発言・質疑応答 16時~17時)
■ 資料代:500円
■ 参加申し込み:
会場参加者は現地に直接お越しいただいた上、資料代は現金でお支払いください。
オンライン参加の方は以下のURLからチケットを申し込んでください。
配信用Zoomでの登録も必要です。
https://peatix.com/event/3593009
■ 主催:「歴史学と著作権」研究会(代表 谷口雄太)
■ 協力 出版ネッツ
参考
〇世田谷区史編さん問題 〜歴史家から著作権を奪わないで!(出版ネッツ)
〇世田谷区史編さんにおける「著作者人格権の不行使」問題についての声明(日本史研究会ブログ)
〇世田谷区史の著作権は誰のモノ? 区と執筆者が対立している理由とは
東京新聞2023年3月8日より引用
公的な資料や論文の根拠となるだけではなく、歴史ファンには貴重な読み物でもある自治体史。東京都世田谷区では、その制作が物議を醸している。
(中略)世田谷区は区制90周年の2022年に向け、新区史編さんを17年に開始。(中略)そんな中、突如浮上したのが執筆者への著作権譲渡の要求だ。区は今年2月10日、各執筆者に、原稿の提出とともに権利が区に移転するとの契約書を配布。そこには、区が文章の書き換えなどの改訂を可能とする執筆者側の「著作者人格権の不行使」も盛り込まれていた。契約しない場合は執筆させない、とした。
これに猛反発したのが、世田谷の歴史の中でも重要な時期である「中世」の執筆を担う谷口雄太・青山学院大准教授。(中略)自治体側が都合のいいように解釈し、史実を書き換えたり削除したりすることもできてしまう」と主張。既に調査が済んでいる段階での要求に「後から強要するように、踏み絵を求めるやり方はおかしい」
(中略)著作権に関する著書が多い一級知的財産管理技能士の友利昴さんは「自治体の要望に沿って制作するPR誌と違い、史誌は執筆者個人の研究成果、人格が強く反映される。著作権を自治体側が持つのは納得を得にくい」と指摘。「譲渡の交渉自体は問題ないが、編さんが始まる前にするのが筋。区側の著作権に関する意識が低かったと言わざるを得ない」と話した。
(中略)友利さんによると、2000年代以降、著作権を保護する法規制が強化され、公正取引委員会も啓発している。そのため、二次使用などに関する製作者側の権利意識が高まっている。
〇世田谷区史の著作権譲渡に反対した学者に執筆させないと決定
東京新聞2023年4月3日 17時33分
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