オピニオン

米長邦雄(都教委)に対する天皇発言に思う

君の心臣知らず 先週の木曜日(28日)に赤坂御苑で開催された園遊会で、天皇が招待者との会話の中で、学校現場での日の丸掲揚と君が代斉唱について「強制になるということでないことが望ましいですね」と発言された。

 一言感想をのべさせてもらうと、「ごく普通の感覚を持った人の当たり前の発言にすぎない」ということです。宮内庁やら官房長官やらは「天皇が政治に関する発言を行ったのではない」とか、的はずれなことで右往左往しているが、「誰に迷惑をかけるわけでもない問題」について、「特定の行動をとる、あるいはとらないことを強制すべきではない」なんてこと「人を殴るのはいけませんね」と同じくらいのレベルの発言である。まったくの「常識」で、「政治的発言」とは言えない。

 天皇が政治問題に抵触したのではない、政府や都のやっていることがこの「常識」に抵触するがゆえに、結果として天皇の発言と抵触してしまい、こんな平凡で当たり障りのない発言にも大騒ぎしないといけないという情けない状況なのである。

 第一、天皇の言ったことは「国旗・国歌法」を制定した時の、政府の公式見解をそのまま繰り返したものにすぎない。つまり政権の「建て前」を忠実に代弁したものであり、この発言を持って、天皇、あるいは天皇制に変に「安心」するような意見も多いが、それは少々危険なのでは?と思います。
実態としては「強制を行っている人間のほうがあまりにも異常なので、ごく普通の人である天皇が、すごくまともな人に見える」というのが妥当な見方だと思います。

 それはともかく、この発言は東京都教育委員会委員の米長邦雄氏との会話の中で出たもので、米長氏が「日本中の学校に国旗を揚げ、国歌を斉唱させることが私の仕事でございます」と述べたことへの回答である。

tennou.jpg 世間では天皇の発言の方に注目が集まり、いろいろ言われているようであるが、私としてはむしろ天皇の回答があまりに当たり前で普通であるのに比し、米長氏の回答の異常さが突出しているため、むしろそちらのほうに関心が向く。今回の件の本質はこちらにあると思う。つまり「天皇発言」ではなく、「米長発言」の問題なのだ。

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 たかがと言っては悪いが、所詮は一地方自治体の教育委員が、「日本中の学校」に、日の丸を掲げて君が代を歌わせる(つまり強制することが)「私の仕事でございます!」と感極まったのか興奮していたのか知らないが、天皇に対して直接断言したのである。マスコミ各社やまともな感覚をもった政治家や政党なら、与野党、左右問わず、米長氏の教育委員辞任くらい求めなくてどうする!と言いたい。

 まあ、考えてもみてくださいな、あなたが天皇だったら、この男をどう思います?
 私だったら絶対に引くね。ここで天皇が「今後とも職務に励んでくださるよう希望します」とか励ましたら、それこそ、二人とも「目がいっちゃってる人同士の会話」としか思えないよね。
 もちろん、天皇の回答は政府の表向きの公式見解の通りだし(実際は強制もしくは強制の黙認なわけだが)その意味ではあたりさわりなくやりすごしたにすぎないとも言える。「強制しないことが望ましいですよ」とやんわり失礼にならない程度にたしなめたのだから、まあ、常識的な、どうということもない「大人の対応」にしかすぎないのである。(咄嗟に言えたことはさすが!と感心するけども)

 にもかかわらず、まあなんでしょうね、こいつらは

「国旗・国歌については、喜んで自発的に掲揚したり斉唱したりすることが望ましいということを述べられたのだと思う」(中山文部科学相)

「国旗・国歌(の掲揚・斉唱)は自ら進んで行うのが望ましい、というお気持ちをおっしゃったのだと思う」(南野法相)

 だとさ。つまり何かね。君らの解釈だと、天皇様は下々の国民に対してこうおっしゃったことにならないかい?

 「国民よ、日の丸の掲揚やら君が代の斉唱は、強制されるまでもなく自発的に喜んでおこなえ」と。そのほうがよっぽど「政治的」で強い意味になっちゃうと思うぞ。せっかく天皇さんがあたりさわりなくまとめたのに、何やってんだろう、こいつら。

 どうしてこういうことになってしまうかと言うと、天皇が「自分の考えを人に強制するのはよくない」という、小学生レベルのフツーのことを言っただけなのに、当の自分たちが「自分の考えを人に強制していた」もんだからややこしくなったのだ。
 それで「天皇陛下の言ったことと、私達のしていることは矛盾しません」ということを言いたいがために「具体的に行政や施策の当否を述べたものではない」(宮内庁)つまり政治的な発言ではないという方向に論点をすりかえたのである。

 まあしかし、思うのだが、天皇は慎重に政治的な発言は控えているとしても、内心では日の丸・君が代が教育の場で強制されている現状に対し、「もうやめてくれや」と思っているような気もする。天皇個人のことを、推測でいろいろ言うのも気の毒かもしれないが、そう思っていたからこそ、「強制はやめてくれ」という思いが、とっさに大人の対応をスムーズに行わせたといえば、ちょっと考え過ぎか?(まあ、考えすぎだろうな)

 しかしもしそうだとしても、それは特に「偉い」ということではまったくない。いたってまともでごく普通な精神であるにすぎない。私が天皇ならやはり米長氏にこのように発言しただろうと思う。一部の人間が行政処分による強制力を使って、自分をたたえる歌を日本中の子供たちに斉唱させ、従わなかった先生たちが次々と処分されている。まともな神経であれば穴があったら入りたい心境である。また、現天皇は、就任(即位)にあたっての「護憲」発言とあわせて考えれば、自分のアイデンティティを日本国憲法の規定に求めているような節があると思われる。

 戦前の皇室では、一般には弾圧されていた「天皇機関説」が、まるで密教のように浸透していたという。それは自分たちのアイデンティティを確認させてくれるものだからだと思う。「あなたは神様です。何をしてもいいんです」とか「日本でただ一人の『主権者』でございます」とか言われたところで、所詮は人間である。「神様」としての責任までは負いきれない。人、あるいは元首としてもアイデンティティが保てない。そこで自分の立場を近代的・合理的な言葉で説明してくれた天皇機関説によりどころを求めたとしても、それはきわめて自然な成り行きだと思う。

 一方、天皇個人の「普通さ」「当たり障りのなさ」に比して、その天皇を崇め奉る人々の「異常さ」「凶暴さ」はどうしたことであろうか?天皇との関係性でいえば、「天皇機関説事件」当時の右翼のようであり、実は「忠臣」どころか「君側の奸」とはお前らのことだろと思う。

都教委がやっていることは強制ではない。国が決めたことを公務員として、義務として行うかどうかの問題だ」(石原都知事)
※彼は学校で君が代を歌わなかった(「妨害した」ではない!)先生を約230人も懲戒処分にしたが、これは「強制ではない」そうだ。

「思想や良心の自由が内心にとどまる限りでは保証されなければならないが、外的行為となって表れる場合は一定の合理的範囲内で制約を受ける」(中山文部科学相)
※黙って心の中で思っているだけなら許してやるということ(それじゃ『思想の自由』の意味ね~)。日の丸や君が代への忠誠の強制という「外的行為」をなしたのはあんたやろ!(怒)。

 実は私は天皇制の問題とは別にして、以前から、現天皇個人とその父君については一面で「可哀想な人」という印象をもっている。特にご父君(昭和天皇)は、おそらくは死ぬまで「私は悪くない」と思いながら死んでいったのではないかと思う。そして回りの人間も「あなた様は何も悪くはございません」と言い続けた。だれも「あなたもまた戦争の責任をとるべき一人です」とは誰も言ってあげなかった。こんな残酷なことはないと私は思う。

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(参考資料)日の丸・君が代に関する良心の自由宣言

日本国憲法は、思想・良心の自由を保障し(第19条)、市民的及び政治的権利に関する国際規約は、これを具体的に「この権利には、自ら選択する信念を受け入れ又は保持する自由(第18条第2項)、単独で又は共同して、公に又は私的に、その信念を表明する自由を含む」(第18条第1項) 「何人も自ら選択する信念を受け入れ又は保持する自由を侵害する恐れのある強制を受けない」(第18条第1項)」と定めている。

国家行政組織法は、「(各大臣が発する省令=命令)には、法律による委任がなければ、罰則を設け、義務を課し、国民の権利を制限する規定を設けることができない」(第12条)と定め、命令より下位の法形式である「告示」(第14条)によっては「義務を課し、権利を制限する」ことを認めていない。

去る1999年に制定された国旗・国歌法は、義務づけ規定を置かず、また、これを省令に委任する規定もない。しかるに文部省、各地方自治体の教育委員会は、「告示」に過ぎない学習指導要領を根拠として、教職員に対し、日の丸・君が代に関する業務を義務づけ、これに従わない教職員を地方公務員法違反として、減給等の不利益処分を課し、また、子ども・生徒・保護者が、日の丸・君が代に関して自ら選択する信念を受け入れ・保持・表明することも困難にしている。これは、憲法・国際人権規約などの諸法規に明白に違反する行為である。

アムネスティ日本支部は、政府及び自治体の行為によって、日本全国各地で「思想・良心の自由」の侵害が生み出されていることを深く憂慮し、政府及び自治体が日本国憲法を尊重・擁護し、国際条約・法律を誠実に遵守・執行することを求めると共に、すべての人がこれらの自由を不断の努力によって保持することを希って、ここに日の丸・君が代に関する「良心の自由」を宣言する。

2000年4月16日
アムネスティ・インターナショナル日本支部2000年度総会

参考リンク

第1262回 3分間で最近のニュースを知る(ほぼ日刊イトイ新聞)
強制でないことが望ましい 陛下、園遊会で異例の発言(共同通信)
「君が代」斉唱の強制に強い懸念を表明します(アムネスティ・インターナショナル)
石原都知事、教育委員らの暴言・妄言を糾弾する(東京都教職員組合)
マンガ投稿~愛国教育・平成天皇曰く(レイバーネット)

天皇機関説
天皇機関説事件[概略]

国旗及び国歌に関する法律(国旗・国家法)
国旗国歌法のいきさつ

教育と国家/第五章 日の丸・君が代の強制/高橋哲哉(講談社現代新書)より
つれづれなるままに

ブログ関連(TB先など)

曲解・曲解・大曲解
【国旗】天皇陛下「強制でないのが望ましい」【国歌】
秋の園遊会
天皇陛下が「国旗・国歌は強制でないのが望ましい」と発言!
米長元名人、差し手を過つ
都教委に対し「君が代の強制はよくない」と陛下
【国歌・国旗に関する天皇発言】1.何故か朕はサヨクにモテモテ也
天皇発言問題 その後
国旗・国歌「強制でないのが望ましい」という帝のお言葉に慌てふためく平成の陪臣
天皇が国旗・国歌は強制でないのが望ましいと発言
「強制になるというものではないからね。」
日の丸君が代 天皇、異例の発言『強制望ましくない』
強制には、反対です!
国歌

コメント

  1.  そうそう、米長氏は天皇の前に立てたことで緊張し、感極まってああ言ってしまったんだろうなぁ。
     それにひきかえ、天皇は冷静至極。自分の立場を踏まえた模範解答で応えた(素直に頭がいいと思う)。
     その後の米長氏の反応が見てみたかったなぁ。狼狽しきったんだろうねぇ。

  2. >>46 nog様
    コメントありがとうございます。

    >その後の米長氏の反応が見てみたかったなぁ。狼狽しきったんだろうねぇ。

    いや、それならまだ「まとも」だと思うのですが、何を思ったのか「ははーっ!まったくその通りでございまする~!」みたいな反応だったみたいですよ。正確には「もちろんその通りで」「本当に素晴らしいお言葉をいただき、ありがとうございました」
    そう思うんなら、、「一人ひとりの価値観だから、自主性に任せ」(南野法務大臣)ろよな!

  3. 大体、日の丸と君が代なんて江戸時代の後期になるまで一般の日本人(だいたい日本国なんていう国家観がなかったんだから)苗字すらない農民やエタ,非人は天皇なんて言葉も知らなかったわけで、官軍が明治になって、、宮さん宮さんお馬の前でひらひらするのはなじゃいなっって歌いながら京都から江戸まで行進しながらお披露目したわけでしょ、そんなに歴史的にも古いもんじゃないわけで、、ともかく、あったりまえの事をあったりまえにとらえればいいわけでしょ、日の丸が国旗、君が代が国歌だと思う人はどうそご自由にってこと、そうじゃないって思うのも自由でしょ、天皇がそう言ってるんだから間違いないでしょ、ま、そういうことで、、

  4. >>50 乃木忠国様
    コメントありがとうございます。

    >ともかく、あったりまえの事をあったりまえにとらえればいいわけでしょ

    まったくその通りだと思います。なんでその「あったりまえの事」が当たり前に通らないのか、いったいどうしちゃったのか、本当に嫌になっちゃいますよね。
    君が代も日の丸も、賛成・反対それぞれの立場から、自由に論じ、あとは各人の判断にまかせればいいわけで、君が代斉唱を強制して行わせる現状、それに反対することに何かしらの「決意」を必要とする現状、これらに暗澹たるものを感じます。
    特に政府・自治体・教育委員など、国民からなんらかの権限や権力を付託されている人々は、もう少し言動に注意してほしい。米長氏をはじめ、あまりにもお気楽すぎる。

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