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アニメ「GATE -自衛隊、かの地にてかく戦えり-」感想

GATE
 前の記事の続きです。以下に私の感じたことを述べます。

・ストーリーのきっかけは異世界の門が銀座に現れてて、そこから数万人の異世界の軍が現れて虐殺の限りを尽くすのですが、それが警察や自衛隊に鎮圧されるまでが作中の日数で5日、アニメの話数では1話で終わってしまいます。異世界の軍(帝国軍)は何の作戦も哲学も持ち合わせておらず(それどころか総司令官の姿も見えず)、東京以外の場所に侵攻していくこともなく、あっけなく撃退されてしまいます。虐殺された被害者の遺族が描写されることもなく、作中でこの事件が影を落とすこともありません。自衛隊が異世界に行く口実としてしか描かれていないのです。

・異世界に自衛隊を派遣するための特地法もすぐ成立してしまい三か月後には自衛隊が送り込まれるのですが、そこまでのプロセスがほとんど描写されません。そもそも異世界をどのような場所と定義するか、帝国に国家主権を認めるか、認めないとすれば帰属をどうするかなどで世界を巻き込んだ大論争となるのが必至なのですが、銀座から徒歩で行けるから日本領と勝手に定義するのは飛躍しすぎです。作中の首相演説で「門が世界のどこに現れるかもわからない」と言っているにもかかわらず、日本だけでゲートを独占し、他国どころか日本の研究者やマスコミすら締め出せるのは都合がよすぎます。

・作中の異世界では自衛隊と敵対する勢力は悉く雑魚として描かれ、大した労苦もなく自衛隊の圧倒的武力で撃退できてしまいます。自衛隊を苦境に陥れる異世界ならではの戦法などは存在しません。コブラから「ワルキューレの騎行」を流しつつ野盗を薙ぎ払っていくイタリカの攻防戦は本作で私が最も寒気を覚えたシーンの1つです。「地獄の黙示録」のキルゴア中佐のパロディに違いないのですが、戦争の狂気を演出するそれとは大違いで、悪趣味です。おそらく原作者はこのような演出自体が狂気であることに無自覚なのでしょう。それ以前に帝国軍崩れの野盗をイタリカの領主からの要請で撃退するなど内政干渉であり、あとで面倒事に巻き込まれるという考えかたをしないのでしょうか。

・このように圧倒的武力で敵を虐殺とも呼べる戦闘で撃退しているにもかかわらず、異世界の住民は徹底的に何の恐れもなく自衛隊をもてはやします。「攻殻機動隊 G.I.G 2nd」で、久世秀雄が率いるPKF部隊が野盗と化した敵軍を圧倒的な武力で粉砕した後、隊員がPTSDにかかった上に情報統制のために住民から不信の目を向けられるのとは対照的です。異世界の住民たちは日本の工業製品や美術品をもてはやしますが、逆に異世界の文化を異世界の住民が日本人に教えることはありませんし、日本に異世界の文化を持ち込むということはありません。原作者のウェブサイトには「文化帝国主義に反対する」という旨が書かれているようですが、異世界を徹底的に日本より劣ったものと描写するこの作品を文化帝国主義といわずに何というのでしょうか。

・帝国の皇女ピニャや自衛隊が救助したエルフのテュカ、魔法使いのレレイ、亜神のロゥリィが日本に視察に来ますが、日本のファッションやBL系の同人誌、牛丼に関心を寄せても、日本の民主主義や男女平等に目を向けることはありません。また異世界から日本に招かれた来賓で、アメリカや諸外国のエージェントに狙われていることが分かっているにも関わらず、民間人であるはずの伊丹の元妻の家に泊まったり、人ごみの中買い物にいったり、果ては大学生の旅行のようなノリで箱根の温泉に行くなど、伊丹らに「狙われているんだろ?」と言いたくなるような描写が多数ありました。最後に元妻が情報を漏らし、日本人の拍手喝采の中銀座事件の慰霊碑に献花して異世界に帰るというのも不自然でした。異世界人に数万人虐殺されたにもかかわらず異世界の美少女3人がカメラの前に表れた瞬間歓迎一色になるなど銀座事件の被害者のことを誰も覚えていないのでしょうか?

・「左翼を論破している」という国会の参考人質疑のシーンは突っ込みどころ満載なのと、考えさせられることがありました。そもそも特地法の議論が描写されない上、自衛隊による「大本営発表」しか特地に関する情報がない中、炎龍の撃退やイタリカ攻防戦で出た民間人死者を問題にするなど、場面設定が伊丹たちに都合よく出来すぎです。なぜ突っ込まれやすい角度からしか質問できないのかと失笑を禁じえませんでした。それを野党の女性議員が行うのですが(原作では福岡みつのという名前、漫画版では蓮舫議員に似た見た目をしています)、頭が悪く、ずれた視点でしか発言せず、ヒステリックで思い込みの激しい(ロゥリィの見た目から自分より年下と思い込む程度に)人物に描いています。アニメ化で抑えられているとはいえあまりにも露骨な原作者の左翼像に「こんな左翼いない」と笑いつつ、これは原作者と喜ぶ者たちの鏡写しではないかと思えました。自らが頭が悪く、ずれた視点でしか発言せず、ヒステリックで思い込みの激しいからこそ敵もそのようにしか描けないのかもしれません。単なる「サヨク」と書かれた自作の藁人形を殴って悦に入っているようにしか見えません。

・温泉の場面でもアメリカや中国、ロシアの特殊部隊のメンバーが雑魚として描かれます。なぜ衛星による監視が行えるのが日本だけなのでしょうか。むしろアメリカしか使えないのではないでしょうか。なぜ三国の特殊部隊がかち合うという間抜けなことが起きるのでしょうか。作中のCIAは大して優秀ではないようです。そもそも平和な日本で一目でそれとわかる戦闘服を着て作戦に重視しているのでしょうか。通常隠密作戦なら状況に溶け込める装備で行うのではないのですか。

・作中で異世界の国家が承認されているのかされているのかわからなくなる描写が多数あります。最初に特地を国内と宣言しているにもかかわらず、ほとんど何の権限もないピニャとの交渉を外務省の官僚が行い、最後にエルベ藩王国による炎龍討伐の依頼を主権外での武力行使にあたるといって断っています。それ以前に何のために特地に自衛隊を3個師団も派遣しているのか作中の自衛隊の行動から理解できないのですが・・・

 この他にも伊丹がレンジャー持ちであることをなぜか栗林が解説をセリフで始めるのが露骨に伊丹を自慢したいだけに見える、画面を分割する演出が無意味に多くいらついたなど、言いたいことは山のようにあります。作中の登場人物がいくら敵を殺害しても何も感じないサイコパスでも、自衛隊が虐殺行為に近い戦闘を行っていても私はそれに意味があれば特に気にしません。私は割とキャラとして栗林陸曹を気に入っています(笑)。しかし、そもそもアニメ全体を通してすべてが日本政府と自衛隊、そして伊丹を活躍させることが目的の道具にすぎないことが丸見えであり、しかも原作者の思想があまりにも露骨に滲み出ているため、気持ちの悪さとうすら寒さしか残らない結果となりました。年が明ければ2期目が始まるので今から不安です。

jrl アニメ

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