菊池桃子と左翼思想

歌手の小原努さんのブログを読んでいたら、次のような言葉がありませした。

歌うことで“食っていこう”とは思わなくなった。
今は、“歌うことで生きていこう”と思う。

「こういうの『ライフワーク』って言うのかな?」とも小原さんは言う。
いかす言葉だ!カッコ良すぎるぜ、小原努!

で、この言葉を読んで、ふと思い出したことがあります。
今は子供もおられる歌手の菊池桃子さんがアイドルだった時代に、短期間だけど、バックに何人かの外人ミュージシャンをつけて、「ラ・ムー」とかいうバンド名を名乗ったことがあります。一応は「脱アイドル」を目指してたんでしょうね。その初登場の時に言った言葉が「私、今日からロックです!」だったという(笑)。

それからしばらくして、ある番組を見ていましたら、聖飢魔IIのデーモン小暮さんがロックについて熱く語った後、菊池さんの名前は出さずに「だからさあ、今日からロックって・・・んとに!」とか言ってスタジオの笑いをとっていました。
彼が言うには、ロックというのは、単なる音楽のジャンルではなくて、人生の選択であり、生き方を含めてロックというんだそうです。だから、「今日からロック」というのはありえないと。

それを聞いて、なるほどロックンローラーがよく「あいつはロックだぜ」とか「ロックしてる」とかの表現を好んで使い、コンサートの会場でいきなり腕をふりあげて「ロックンロ~~ル!」と叫んだりするわけだと理解できました。わかってる人には「何をいまさら言ってんの?」ってとこでしょうが、その方面の素養がないもんで(汗

で、その時に、これは左翼というものと、非常に良く似ている考えだなと思ったわけです。

ロッカーにとって「ロック」が音楽のジャンルの名前ではなく、生き方そのものであるように、私たちにとって「左翼」とは特定の理論や主義主張、またはそれを信奉している人達の名前ではなく、生き方そのもののことを指していたわけです。

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●「技術」と「ソウル(魂)」

この流れで言えば、ロッカーにとって一番大切なのは技術よりも「ロック魂」みたいなものという帰結になるでしょう。その魂を持ち続けて毎日ロックを追及していく中で、技術は才能と努力に応じて後からついてくると。技術ばかり追求して媚びへつらうような奴はロッカーじゃないと。

左翼も同じことです。そんな言葉は使わないけれど、やはり大切なのは「魂」であって、○○主義と名前のついた「理論」ではない。こういう理論的な問題に通じている人というのは、ロックで言えば、すなわち演奏技術に長けている人ということです。

もちろん、一流のロッカーになって、自分の表現したいものを思うがままに表現し、人の心をゆさぶるためには、演奏技術も必須でしょう。同じように、左翼にとっても理論学習は大変に重要なことです。しかしロッカーにしたところで、そもそも「表現したいもの」を持っていなければ、どんなに技術が向上しても演奏家にしかなれません。そういうのを私たちは「死んだ教条」と呼んでいました。そして、必ずしも技術が上の者のほうが、より人の心をゆさぶるとは限らないわけです。

では、ロックにおける「表現したいもの」とは、左翼にとって何にあたるのでしょうか?
それこそが私がこのブログやサイトを通じて、ずっと考え、また訴え続けていることそのものなのです。私がいつも「左翼思想は手段であって目的ではない」といい続けているのは、このことを別の表現で言っているにすぎません。

だからもし、あなたや他の誰かが、マルクスあたりの著作を何冊か読んで、いえ、それどころかその全著作を読破して、「私、今日から左翼です」と言っても、やっぱりなんか違うのです(笑

もちろん、入り方としてそういう入り方もあるでしょう。でも、ここで大切なのは二つです。一つはなぜ左翼的な思想に納得し、それを選択したのかということです。表面的な「面接の時の入社動機」みたいな回答ではなく、心の深いところ、人格的な動機です。なんというか、厳しすぎる言い方かもしれませんが、「世の中が間違っているから(俺が)良くしてやる」という気持ちがどこかにあっては駄目だと思うのです。それじゃ昔の「右翼の壮士」と変わりません。左翼に行き詰ると、いきなり右翼(しかも極右)になっちゃう人がいますが、それはこういう自己への拘泥が残り続けていた人ではないかと思います。こういう自己愛が強い人は、右であれ左であれテロリストの臭いさえします。

二つめはやはり「その後」ということです。本をいくら読んでも左翼にはなれません。自分を左翼に作り変えていくということです。しかもそれは何かしら、左翼的な基準で自分を「縛る」ということでは本物ではありません。本物は、今現在、自分を縛っている資本主義的な基準から「自由になる」ということでなくてならないと思います。それは禅僧のように座禅をくんで悟れるもんではありません。社会にふれ、それを変革しようとする経験(実践)の中でしか、絶対に身につかないものだと思います。つまり、対象変革と自己変革という問題です。

ですから、本当のことを言うと、私自身は自分のことを左翼だとは思っていないのです。資本主義的な価値観が身に染み付いていますから。そんな立派なもんではなくて、「あ~、どっかから大金が転がり込んでこんかなあ」とか思いながら暮らしている、ごく普通の俗物でございます(笑

ただ、あんまり「俺は左翼じゃないよ」と言っても、真意が伝わらないし、最近ですが、さんざん右派的な主張をしておきながら、最後に「俺は右翼ではない」とつけたして逃げをうってくる人を多く見まして、ああ、みっともないな~、言い訳だよな~、としか思えないし(黙ってますが内心では)「あー、かっこわる!」とか思いましたので、自分はそういうのと一緒にされたくない!という強い気持ちがあって、左翼とか言われても否定しないことに決めているわけす。

●「左翼してるか~い!」(笑

ちょっと私自身が未整理で思いつくまま書いてきましたので、散漫になってきました。内容的なことは、今回はこのへんにしておきましょう。

で、結論的に言って、私自身が考える左翼像ですが、わかりやすく言えば、「ホリエモンの正反対」ということになろうかと思います。
すなわち、世の中の最も虐げられ、資本主義的価値観では「一番下」と思われている人と共に生きたいと考える人。金銭で換算できるものに重きをおかない人。他人を傷つけることを最も嫌い、誰かが不当に苦しんでいたら、それを見て本気で怒れる人。怒るだけでなく、いつでも駆け寄って行動できる人。無名の一人として行動できる人。なんだかアニメに出てくる「正義の味方」みたいですね(笑

以前、「左翼はそれだけで自分が正義を独占しているみたいに思ってきた」という文章を読んだのですが、あたっているし、違うとも言える。あえて「正義」という言葉を使うならば、まずそれを求める心がある。それをどう社会的に表現したらいいのか?私は何をすればいいのか?左翼思想というのは、そのことを悩みぬいて、考え続けた人達の思考の跡なのです。だから手段だと言うのです。ですから私たちも同じ気持ちを持つ者として、せっかく先人の遺してくれたものを、とりあえず後からたどってみているだけなのです。

そして、なるほど解決は難しいと思っていた問題も、国だの資本だのいう枠をとっぱらって自由に考えればいいのだと思う。それからそういう「手段」をもって、世の中に出て実践してみる。すると必ず壁にぶちあたる。自分の限界も見えてくる。で、また理論にかえってみる。他人のせいにせず、まず自分を変えていく。そうして実践と理論、他者(=社会)変革と自己変革が互いにフィードバックしていく。そういうのが本来の左翼ってもんでしょうが。ね、現役リアル左翼の皆様よ!

よく左翼業界でも、確かに理論には長けているが自分では何もしていないくせに、人のやっていることの批判ばかりしている人がいます。そういうのはね、ロックでいえば、確かに演奏はうまいが、それを鼻にかけ、自分はろくな曲も作れないくせに、他人の曲や演奏にケチばかりつけている輩と同じです。そんな人、私は断じて左翼とは認めません。でも、世の中ではそういう人こそが左翼だと思われているんですよねー。

最後に、一番大切なことを書いておきます。
「正義」を実現するのが目的で、思想や主義は手段であるとしても、その「正義とはいったい何か?」「何をすることが正義なのか?」それこそが一番大きな問題であるということです。それから、目的、手段ともに、人間のやることは、いつも間違いである可能性があります。左翼だろうが右翼だろうが、政治的なことを考える人は、いつも自分が間違っているかもしれないという可能性を頭において行動して欲しいと強く思います

余談かもしれませんが、そういえば、私が中高生くらいの子供の頃は、ロックと言えば大人から見て「不良」の象徴であり、若者にとっては「反逆」と「自由」のシンボルでした。もっと昔にはフォークがそうだった時代があり、ロックの次にはパンクがそうでした。
でも、しばらくたつと、どれもみんな体制内化=資本主義化して、『商品』になってしまう。商業的に売れるかどうかが唯一の基準になって選別されてしまい、まるで夏場のコカコーラみたいに『消費』される音楽とへ変貌していく。

若者に社会的な力があった時には、「音楽で世の中かえてやる」みたいなこと言う人もいたけど、結局は誰も”泣く子と資本主義には勝てない”わけで、すでに商品化されてしまった段階で、デーモン小暮さんも、アイドル歌手と変わらないのであります。

●今の左翼は「クラシック」?

それからさあ、今の左翼は「ロックしてる」かい?

まず一方の極に、資本主義の体制内化して、アイドル歌手のことをどうこう言う資格のなくったロックと同じような人らがいる。必死に旧来の左翼色を消したがっているが、そういう表面的な「受け狙い」はかえってみっともなく思える。

もう一方の極の人らは、こりゃロックどころか、クラシックや能の世界に逆もどりしているような気がする。
クラシックや能の世界というのはね、もちろん各々の持ち味というものがあるんだけど、基本的には「崩しちゃいけない」世界なんだよね。心というのも大切かもしれないけど、技術というのが圧倒的に物を言う世界。そして、各自が少しずつ違う「持ち味」なんてのも、結局はその世界に通じたような「通の人」にしか見分けがつかない。

最後の最後に余計なこと言っちゃったかな?(笑
まあ、自分を省みずに人様のこと書くのはこれくらいにしときます。
けど、もうそろそろ左翼系で、出てよ!「おお、なるほど」みたいな運動がさ。期待していることの裏返しだと思っていただければ幸いでございますよ(マジで)。

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草加 耕助

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当サイト『旗旗』の管理人。建設現場などで働いています。10代からの数年間左翼活動してましたが、現在は特に何ということもない普通のおっさん。今は休みの日に集会などにぶらり参加。そこで知り合った人たちと個人参加者の互助会的にジグザグ会、三里塚勝手連などを名乗りゆるく楽しく連帯中。よろしければご一緒にいかが?。個人としての目線を大切にしていきます。

コメント

    • wattan.
    • 2006年 10月 25日

    なるほど。
    そうなると、私なども最近になって、ようやく良かれ悪しかれ
    左翼という生き方の片鱗を垣間見はじめたと言えるのでしょうかw

  1. wattanさんでそうなら、私なんて・・・(笑
    つまり左翼であることが正義なんではなくて、正義を求める理想主義的な「生き方」を左翼と呼ぶということなんだと思います。
    要するに、理想主義=左翼、現実主義=右翼ということ。だったら左翼の負けじゃん!(笑)ということになりますが。そこに「勝つための現実主義」を持ち込んだのがレーニンというおっさんの組織・運動論だったんだろうと思っています。これはものすごく強力で、思わず右翼が真似したくなるくらいであり、実際ヒトラーなんかわりと参考にしてたとか言われてますよね。
    で、あんまりうまくいったもんだから、後を継いだスターリンというおっさんは、それを単なる現実主義的な方法論から「これに逆らうものは左翼ではない」「左翼ならみんな真似しろ」的に自己目的化して、自分の権力を固めていったと。大きな流れとしては、そんなふうに思っています。

    だから私らの代でやるべきことは、レーニン主義なんかの理論問題を研究していじくりまわすということも大切かしれないけれど、もっと単純素朴に、左翼の原点である「愚直なまでの理想主義的生き方」を取り戻していくことだと思うんですね。
    戦争がおこりそうだと聞けば、機動隊にボカボカ殴られ、逮捕されて自分の将来に影響が出たとして、それでもその壁を突破して戦車の輸送を止めようとする。かつて左翼運動に大きな支持があり、若者がこぞって参加してきた魅力は、そういう個人的な利害を超えた、理想主義的な愚直さにあったはず。そこにあってはじめて、レーニン的な現実主義的方法論は生きてくるはずです。

    それがいつのまにか、方法が目的化して、自分の組織を維持して拡大させるためなら何しても許されるみたいなことになってしまった。かつて「政治とはしょせん、『やつは敵だ!敵は殺せ!』という以上の内容はない」という言葉がありましたが、まさにそれを地でいくようなありさま。もう左翼なんて、自分たちのためなら、そういう悪いこととでも平気でするやつら。目的が正当なら手段は何でもいいと考えるような酷いやつらと思われてますよ。で、それに反論できない状態じゃないですか!

    もっと書こうと思ったけど、コメント欄だし、このくらいにしておきます。
    でも、私らが「やるべきこと」は、そんなにうんうん唸って悩まねばわからないほど、難しいことなんかなあと思います。デモをパレードと言い換えたり、いろいろとスタイルの問題を天下の一大事みたいに論ずるのも結構ですが、問題は何をするかではなく、やるかやらないかだと思いますけどね。

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