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三人の兄弟はこうして、それぞれ王様になって国を治めました。
長男の兵隊のシモンは大へんゆたかになりました。シモンは藁の兵隊を使ってほんとうの兵隊を集めました。かれは国中にふれを出して、家十軒ごとに兵隊一人ずつ出させました。ところがその兵隊はみんな背が高くて、かおかたちの立派なものでなくてはならないのでした。
シモンはそんな兵隊をたくさん集めて、うまくならしておきました。そしてもし自分にさからう者があると、すぐさまこの兵隊をさし向けて、思い通りにしまつをしたので、誰もがシモンを恐がり出すようになりました。
がしかし、シモンの暮しは大へんゆかいなものでした。眼について欲しいなと思ったものは何でもシモンの所有(もの)でした。シモンが兵隊をさし向けると、兵隊はシモンの欲しいものを立ちどころに持って来ました。
肥満(ふとっちょ)のタラスもまたゆかいに暮していました。タラスはイワンから貰った金を少しもむだに使いませんでした。使わないばかりか、ますますそれを殖やしました。
タラスは自分の国中におきてやさだめを作りました。金はみんな金庫へしまい、人民には税金をかけました。人頭税や、人や馬車には通行税、靴、靴下税、衣しょう税などをかけました。
それからなお、自分で欲しいと思ったものは、何でも手に入れました。金のためには人民は何でも持って来るし、またどんな辛い働きでもしました。――と言うのは、タラスの国の人民たちは誰もかれもが金が要ったからでした。
イワンの馬鹿もやはり悪い暮しはしませんでした。亡くなった王様のおとむらいをすますとすぐ、王様の服をぬいで妃に箪笥(たんす)へしまわせました。そしてまた元の粗末な麻のシャツや股引(ももひき)、百姓靴をつけて、百姓仕事にかえりました。
「あれじゃとてもやりきれない。退屈で、おまけにからだがぶくぶくに肥(ふと)って来るし、食物(たべもの)はまずく、寝りゃからだがいたい。」
とイワンは言いました。そして両親や妹をつれて来て元のように働きはじめました。
「あなたは王様であらせられます。」
と人民の者が言いました。
「そりゃそれにちがいない。だが王様だって食わなけりゃならん。」
とイワンは言いました。
そこへ大臣の一人がやって来て言いました。
「金がないので役人たちに払うことが出来ません。」
「いいとも、いいとも。なけりゃ払わんでいい。」
とイワンは言いました。
「でも払わないと、役についてくれません。」
「いいとも、いいとも。役につかないがいい。そうすりゃ、働く時間がたくさんになる。役人たちに肥料(こやし)を運ばせるがいい。それに埃(ごみ)はたくさんたまっている。」
そこへ人民たちが、裁判してもらいにやって来ました。そして中の一人が、言いました。
「こいつが私の金を盗みました。」
するとイワンは言いました。
「いいとも、いいとも。そりゃこの男に金が要ったからじゃ。」
そこでとうとう人民たちはイワンが馬鹿だと言うことに気がつきました。そこで妃はイワンにこう言いました。
「人民どもはみなあなたのことを馬鹿だと申しております。」
するとイワンは言いました。
「いいとも、いいとも。」
妃はそれでいろいろ考えてみました。しかし妃もやはり馬鹿でした。
「夫にさからってはいいものかしら、針の行くところへは糸も従って行くんだもの。」と思いました。
そこで妃は着ていた妃の服をぬいで箪笥にしまい、聾唖のマルタのところへ行って百姓仕事を教わりました。そしてぼつぼつ仕事をおぼえると、夫の手だすけをしはじめました。
それを見た賢い人はみんなイワンの国から出て行き、馬鹿ばかり残りました。
誰も金を持っていませんでした。みんなたっしゃで働きました。お互いに働いて食べ、また他の人をも養いました。
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