大阪の日雇い労働者の街、釜ヶ崎(行政は「あいりん地区」と呼んでいます)で、日雇い労働者や野宿労働者への支援ボランティアを続けている「釜ヶ崎キリスト教協友会」が宗教者の立場から、今回の長居公園からの野宿者強制排除に抗議する声明を発表されました。
キリスト教協友会は、1970年11月、カトリック教会の修道会やプロテスタント教会など5団体で発足したボランティア団体で、現在は、11の施設やグループによって構成され、また釜ヶ崎に関心を持っている個人参加の方もおられるそうです(同会サイトより)。
以下、全文を引用します。
大阪市長 関 淳一 様
ホームレス対策関係局長プロジェクト 様
大阪市健康福祉局長 様
大阪市ゆとりとみどり振興局長 様
大阪市ホームレス自立支援課長 様
大阪市保護課長 様
大阪市建設局長 様
釜ヶ崎キリスト教協友会
共同代表 秋山 仁
吉岡 基
大阪市による行政代執行に対する抗議声明
私たち釜ヶ崎キリスト教協友会は、長居公園の野宿生活者に対して行われた大阪市の行政代執行という暴挙に強く抗議します!!
去る2月5日、長居公園で野宿生活を余儀なくされている6人に対して、大阪市は行政代執行という強制排除を行いました。私たちはこの行政代執行に対して中止するよう申し入れ、話し合いを求めて来ましたが、私たちも含め多くの反対や抗議の声があったにもかかわらず、大阪市はこれを強行しました。
昨年1月の靱公園及び大阪城公園での行政代執行に続き、何の反省や検証も無いまま、再び同じ手段で野宿生活者を排除したことに対して、失望感と強い怒り、そして悲しみを憶えています。
昨年は世界バラ会議と都市緑化フェア、そして今年は世界陸上大会といった国際的なイベントの開催が計画されるたびに、繰り返される行政代執行という強制排除は、野宿を解消するよりも新たに別な場所での野宿生活を強いるだけの結果しか導き出していません。
大阪市はこの間「自立支援」策を進めてきたと主張していますが、現実にはまだ数千人を超す野宿生活者が市内の公園や路上、河川敷などでの野宿生活を余儀なくされています。
今回、大阪市が行政代執行を強行したことで、野宿生活者のみならず市民にとっても大阪市に対する不信感をさらにいっそう募らせる結果になっっています。今後、どのような施策を用意しても、不信感がぬぐい去られない以上、実効性は望めないでしょう。
もう一つ私たちが懸念するのは、こうした大阪市への不信感から施策に乗らない当事者が続出したときに、表面的な現象だけが流布して、市民一人一人が野宿生活者問題について正しい認識を持つ前に、かえって野宿生活者への「施策があるのにわがままを言って、好き勝手をしている」という偏見が助長されてしまうことです。それは、そのまま野宿生活者への襲撃などの形をとって、顕著になってきます。
私たちは、大阪市のここ数年の取り組みが、「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」にすら則っていないと考えています。そして、今回の行政代執行にあたっては、さらに以下のような問題が浮き彫りになってきます。
1.大阪市の施策そのものに進展がないということです。昨年の行政代執行以来1年間、大阪市は自立支援センターと巡回相談員による相談事業の他、野宿から脱出するための「自立支援策」を用意してきませんでした。大阪城公園から追い出されて、さらに今回長居公園からも強制的に排除された当事者がいますが、このことは1年の間大阪市が、その当事者と向き合うことなしにすませてきた証拠ではないでしょうか?
2.当事者との話し合いが十分にできていません。長居公園の野宿生活者が話し合いを求めても、何ら話し合いの努力をしていません。たとえば、長居公園の該当するテントに戒告書を配布する際、話し合うことを求めた当事者を無視して手渡しすらしなかったにもかかわらず、テレビのインタビューでは担当課長が「(行政代執行という事態を)回避するため話し合いを続けていきます」と答えていたのが、報道されていました。言っていることとやっていることがあまりにも違いすぎます。公園などの「適正化」に先だって、大阪市が充分な形で当事者と話し合いをし「自立のための施策」を提示したとはいえません。
3.支援法実施要項にある、市民に対する野宿生活者の人権擁護に関する啓発活動への取り組みが、まったくなされていません。たとえば野宿生活者が野宿に至る原因や、問題の解決に向けた野宿者自身の努力を、広報活動を通じて市民に啓発していません。今回の行政代執行の強行は、市民からも批判の声が挙がっていると聞いています。野宿生活者への自立支援策の実態と現状について、情報を開示して市民の理解を求めるよう市民に周知すべきです。「市政だより」でゆとりとみどり振興局だけが、公園の適正化について記事を掲載していますが、偏った広報の仕方は、かえって排除を正当化するという偏見を生む危険性があります。
4.野宿生活者問題への大阪市全体・u桙フ連携しw)た取り組みが、見えてきません。本来、野宿生活者に対する施策は、大阪市全体で取り組むべき課題であるはずです。しかし、ホームレス自立支援課、保護課といった福祉行政に関わる部署も、道路などの「適正化」に関係する建設局も、この課題に対する当事者であるのに、今回の事態についての見解が全く見えてきません。知らなかったという言い訳はできないはずですし、施策の連携が一年前同様まったくできていないと判断せざるを得ません。
5.とりわけ福祉行政に関わる部署である健康福祉局が、前回の行政代執行以来一年間、野宿生活者と向き合うべきなのに何の手だても打ってこなかったことは問題です。ゆとりとみどり振興局の公園からの追い出しのやり方は、それ自体大いに問題のあることですが、それ以上に健康福祉局が、自立支援センターの実態に基づいて、施策の中身を点検することや野宿から脱出するための選択肢を増やすといった工夫を怠ってきたと、私たちは考えています。その結果が、行政代執行という強制排除でした。
繰り返しになりますが、私たち釜ヶ崎キリスト教協友会は、今回の大阪市による行政代執行が野宿生活者への人権侵害であること、また一年間という期間がありながら何ら為すべきことを行わなかった不作為の責任が大阪市にはあると、考えています。
私たちは、以上のことを大阪市に強く抗議します。
2007年2月16日
支援者の皆さま
釜ヶ崎キリスト教協友会
共同代表 秋山 仁
吉岡 基
大阪市の行政代執行に対する抗議のお願い
去る2月5日、長居公園で野宿生活を余儀なくされていた6人に対して、大阪市は、暴挙ともいうべき行政代執行による強制排除を行いました。私たち釜ヶ崎キリスト教協友会は、1月10日に抗議申入書を提出、この行政代執行を中止するよう申し入れ、話し合いを求めて来ましたが、大阪市は、私たちも含め多くの反対や抗議の声があったにもかかわらず、これを強行しました。
今回、私たちは、行政代執行を行った大阪市に対して、別紙にあるような抗議声明を送りました。
大阪市が、昨年1月の靱公園及び大阪城公園での行政代執行に続き、何の反省や検証も無いまま、再び同じ手段で野宿生活者を排除したことに対して、私たちは失望感と強い憤り、そして悲しみを憶えています。
つきましては、再度、皆さまから下記の大阪市関係部局に対し、今回の2月5日の行政代執行への抗議文をFAXあるいはメール等でお送りいただきたくお願いいたします。
是非ご賛同くださいますよう、お願い申し上げます。
抗議先住所と連絡先
大阪市長 関 淳一 宛
ホームレス対策関係局長プロジェクト 宛
〒530-8201 大阪市北区中之島1-3-20 大阪市役所
大阪市健康福祉局長 宛
福祉部ホームレス自立支援課長 宛
〒530-8201 大阪市北区中之島1-3-20 大阪市役所
Tel:06-6208-7924,7926 Fax:06-6202-0990
大阪市ゆとりとみどり振興局長 宛
〒559-0034 大阪市住之江区南港北1-14-16
大阪ワールドトレードセンタービルエィング(28階・17階)
Tel:06-6615-0614,6645,0652 Fax:06-6615-0659,6645,0989
南部公園事務所
〒546-0034 大阪市東住吉区長居公園1-1 長居公園内
Tel:06-6691-7200 Fax:06-6691-6976
以上
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