空いっぱいの飛行機 二題(三里塚・沖縄)

三里塚「着陸不可」七ツ森書館
この写真は合成ではありません。
三里塚「着陸不可」七ツ森書館

 みなさんは「空いっぱいの航空機」って、見たことありますか?あるいはそれを想像できますか?
 私は2回見たことがあります。一度は三里塚での旅客機、もう一度は米軍ヘリです。

 右の写真を見てください。この本の表紙写真は合成ではありません⇒こちらを参照)。

 駅から直行で飛行機に乗る乗客の目からはわからないかもしれませんが、ちょっと周辺を自分の足で歩いてみれば、この空港が周辺の風景から浮き上がった異物であることがすぐにわかります。この写真が成田空港の現実なのです。

 のどかな田園地帯の上を超低空で数分おきにひっきりなしに飛び交う巨大な飛行機と騒音地獄。あなたはこの家で暮らす勇気がありますか?

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 この状態の凄さは、おそらくこの写真でもまったく伝わらないだろうと思います。

 私は左翼時代に一度、反対同盟の救対部長でもある秋葉さんの家に援農に入ったことがあります。知らない方のために申し添えますと、「救対」は救援対策の略で、闘争で逮捕された人たちの諸々の世話をすること。「援農」は文字通りの意味で、闘争で手をとられる農家の農作業の手伝いをすることです。また、単なる「お手伝い」ではなくて、支援部隊である我々が、農家と交流して闘争の意義を学ぶという意味合いもありました。

 さて、秋葉さんの家は岩山部落にあります。ここは一期工事で「完成」した、たった1本の滑走路の鼻先で、開港阻止決戦当事は、ここに飛行阻止のための岩山大鉄塔が建っていました(現在は撤去)。それだけに開港後は騒音直下となる場所であるため、大量の脱落者を出しました。

 私ともう一人の女性が車でちょうど秋葉さんの畑に到着した直後でした。畑は小高い丘に向かって緩やかな傾斜地にあります。その畑の中、ご夫婦で農作業をされておられる秋葉さんに近づこうとしたちょうどその時、丘と林の向こうから、大音響と共にいきなり(そう、本当にいきなり!)巨大な旅客機が顔を出したのです。

 空いっぱいが飛行機でした。もちろん360度の天蓋が全部埋まったわけではありません。しかし翼の端から端までが視界におさまらないのです。ゆえに人間の目から見たら、空が全部飛行機で埋め尽くされているように見えるわけです。まだ完全に外部に出ている車輪の溝まで見えました。「手を伸ばせば届きそう」とはこのことです。つーか、物干し竿でもあれば本当に届くんじゃないかと思えるほどでした。

iwayama.jpg
岩山部落から見たイメージ
(これは合成写真です)

 私の耳には「グオオオオオーン!!!」という大音響に混じって、三里塚に来るのは今日が初めてという隣の女性の「えええええええー!」という悲鳴(?)と「うそぉぉぉぉ!」という声が聞こえました。あんまりその女性が腰を抜かさんばかりに驚いているんで、秋葉さん夫妻は笑っておられました。というかまあ、秋葉さんは絵に描いたような丸顔のおじさんで、いつも人懐こそうにニコニコ笑っておられる方でしたけれども。

 最初に見た時は、思わず立ち止まって凍りついてしまった私たちでしたが、一日そこで農作業をしているうちに、飛行機が飛び交う下でも手を止めずに農作業ができるようになりました。やがてすぐそこに見える飛行機も、対象が巨大すぎてそう見えるだけで、実際は上空1Km以上の高さはありそうなこと、すごくゆっくり通り過ぎていくように見えるけど、かなりのスピードでありそうなことなどが理解できてきました。何しろ下から見れば針の先ほどしかない、車輪にへばりついた小さな氷でさえ人間一人分くらいあって、それが落下して農家の屋根をへし折るという事件があったはずです。

 ともあれ、飛行機が通るたびに、天井が落ちてきたような、大音響の騒音にぐぐっと頭を押さえつけられる圧迫感があります。思わず首をすくめてしまいます。大量の脱落者が出たというのもわかります。ここで暮らし、そして笑顔で闘っておられる秋葉さんは本当に凄い人だと思いました。

 ちなみに方角は違いますが、木の根部落の小川源さんの家のすぐそばには、着陸した飛行機が待機するターミナルが建設されました。ここでは毎晩遅くまでジェット機がエンジンを噴かすわけです。源さんは「飛行機を枕に寝ているみたいだ」とおっしゃっておられました。

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 さて、もう一回は米軍ヘリです。場所はなぜか京都。ちょうどその日、すでに活動家ではなかった私は、観光ガイド片手に京都御所の壁の外を散策しておったわけです。運悪く、その時に今のアメリカ大統領の父親、つまりパパ・ブッシュ大統領が京都御所に来ており、中に入れてもらえんかったのです。

 レーガン大統領来日の時は、機動隊と旗竿戦を演じた私ですが、この日はお気楽にも「ブッシュ大統領が帰るまで、どこに行こうかなー」などと考えながら歩いていた私にいきなり「喝!」が入りました。

とにかくでかい米軍ヘリ 「バリバリバリバリバリバリ!」

と、ものすごい音がしたかと思うと、私の真横の御所の塀の向こう(そう、本当にすぐ塀をはさんだ隣)から、ベトナム戦争の映画でしか見たことのない、あの米軍ヘリが猛スピードで上昇してきたんです!しかも真上に上昇するんではなくて、斜めに機体を私の方向に傾けて上昇してきましたから、まるで私に向かってくるようでした。

 でかいすよ!あれは(笑)。映画やテレビで見たんでは絶対にわからない!とにかくでかい!そりゃまあ、ジャンボジェットには負けるだろうが、こんどは正真正銘に至近距離で、しかもまさかこんなところから米軍ヘリが出てくるなんて、まったく予想だにしていなかった展開ですからね。

 この時もヘリは視界におさまりきらなかったし、咄嗟だったんで、やはり空一面が米軍ヘリに見えました。こんなにでかいとは思わなかった!視界をすべてさえぎる、空いっぱいの米軍ヘリを見たその瞬間に、私の脳裏に何が浮かんだかと言いますと、「う、撃たれる!」って思ってしまったんですね(爆)。

 ほんの一瞬だったんですけどね。いや、笑いごっちゃないすよ、本当に。
 ベトナム戦争では高空からナパームを落とす爆撃機とは違い、地上すれすれで歩兵を攻撃してくるヘリは、米軍歩兵にとっては希望の象徴であり、逆にべトコンからは憎しみの対象であったと言いますが、実物を見るとそれがよくわかる。私が「撃たれる!」と思ってしまったのは、民衆の側からの視点を失っていなかったからだということにしておこう。決して臆病者と言わないで!(笑)

米軍ヘリコプター墜落事件 沖縄の普天間での米軍ヘリ墜落事故の報道を見た時も、やはりこの時のことを思い出しました。たとえば京都御所が普天間のような米軍基地であって、京都市内上空をあの米軍ヘリが日常的に低空で飛び交っていると想像してみました。するとそれがいかにべらぼうで異常なことかを容易に想像することができます。実は日本中のほとんどの人は(反戦運動をしている人も含めて)、沖縄のおかれたこの異常さを肌で実感していないと断言できます。

 何と言えばこのべらぼうさを伝えられるかもどかしいです。沖縄に安易に同情するくらいなら、自分のそばに基地を持っていってみろ!とか思っていたし、場合によっちゃ、自分とこの町に移転してきてもいいとさえ考えていました(移転して沖縄の基地がなくなってから、自分の町で反基地闘争してもいいかなと)。でもやっぱり駄目だあ!海のそばの飛行場くらいならまだしも、市街地ど真ん中のヘリ基地だけは絶対駄目っす。

 あの巨大な鉄の塊が墜落してくる恐怖はすごいだろうな。毎日頭の上を飛んで、実際に落ちてくる。あんなんが落ちたら、半径数10メートルは絶対助からんと思ってしまう。米軍基地の存在を擁護するような本土の人は、まずもって普天間に数ヶ月住んでみて、その上で沖縄の基地の移転先に自分達で立候補してみたらいいと思います。

16件のコメント

初めまして、悲惨な状況ですね。
なぜこの人は立ち退きのときに引越しをしなかったのですかね。きっと声の大きな人がいて立ち退きの機会を失ったのかもしれませんね。
日本政府は、中国共産党のように暴力的に立ち退きをさせませんからね。
中国では、政府が農民を襲わせて死人が出ているそうですね。

はやぶささん
日本政府が暴力的な立ち退きを迫った事例(強制代執行)については、DVD『抵抗の大地』をごらんください。

六本木ヒルズの近くにも米軍基地があります。
数こそ少ないですが、夜でもヘリが南青山付近を通過してます。

中国愛国デモ騒動の頃、日の丸を掲げた小団体がずいぶん中国大使館に来て、
コーフンした代表と警官が対峙している現場も目撃しました。
しかしながら首都にある外国軍基地が近隣住民に迷惑をかけている国辱状態には、
スルーなんですね。1km未満の十分歩いて行ける距離にあるんですよ。

毎年デモがあるので、愛国団体の方にも是非参加していただきたい。

2005年08月24日
空いっぱいの飛行機 二題

>”左の写真を見てください。この本の表紙写真は合成ではありません。”
  <「着陸不可」の表紙画像>

 旗旗さん、これ、さすがにヤバクありませんか?
 どう見ても、切り貼り画像に見えますが・・
 
 屋根の上に突き出た樹木の左寄りの枝葉の一部が飛行機の後ろ側に隠れてる
ように見えますが、そうだとすると、家・樹木 と 飛行機のサイズの比較というか、
「縮尺」が、理屈に合わないような気がします。

右翼攻勢の大きなファクターとなっている「南京大虐殺」論争の例に学び、
この写真の加工の有無については、しっかり確認された方がいいかと思います。
ウザイ粘着ウヨの攻撃から身を守るためにも。。。

すみません、あくまでシロートの見立てですが・・

>なぜこの人は立ち退きのときに引越しをしなかったのですかね。

ご自分で調べようと思えばいくらでも調べられるのに、なぜこの人はそうしないのでしょうか・・・

すみません、たいへん失礼致しました。
http://www.jca.apc.org/~misatoya/narita/photos.html
連続写真を拝見すると、合成じゃないことがよくわかります。

ということは・・
 ◆「いかに非常識な近さを飛んでいるか」◆ という証拠ですねこれは。

やはり シロートが確認作業もなしに物言うべきではありませんでした。
おわびいたします。

      旗旗さん、皆さん、どうもすみません。

   (図らずも、またボケを演じてしまった(苦笑))

ぼくとさん
>>名瀬この人は立ち退きのときに引越しをしなかったのですかね。
>ご自分で調べようと思えばいくらでも調べられるのに、なぜこの人はそうしないのでしょうか・・・

せめてトップページに表示されている記事10件だけでも、ざっと斜め読みくらいしてから書き込んでほしいものですよね。こういうのを「落書き」というのです。通りすがりに落書きしていくような人だから、せっかくぼくとさんが注意してあげても、もうこれを読む確率も低いかもですね。

鍋山さん
お手数をおかけしました。連続写真URLありがとうございます。いつもすみません。

A・伊助さん
>旗旗さん、皆さん、どうもすみません

いえいえ、むしろあれが合成写真でないはずがない、あり得ないというのが正常な感覚だとおもいますよ。「 ◆「いかに非常識な近さを飛んでいるか」◆ という証拠ですねこれは」ということだと思います。

ウヨホイホイさん
>数こそ少ないですが、夜でもヘリが南青山付近を通過してます
>外国軍基地が近隣住民に迷惑をかけている国辱状態には、スルーなんですね。
>毎年デモがあるので、愛国団体の方にも是非参加していただきたい

「沖縄ほどでない」とは言えないですよね。「マシ」かもしれないけれど、住宅地上をあれが飛んでるなんて、考えただけでも凄いことです。軍用機に金かけて騒音対策や公害対策しているなんて聞いたことがありませんからね。
実は三里塚闘争にも個人的に参加している右翼の人もいたらしいです。私は見たことないけど。しかし現状は、自分なりの理想を追った結果に右翼になったという人は、現実社会でほとんど出会う機会はありませんね。三浦さんには悪いですけど。

沖縄について、トラックバックさせていただきました。
管理人様とは思想的には逆のようですが、沖縄をただ利用するだけのアメリカと日本国政府には怒りが覚えます。
戦略的には必要なのですが、その見返りとしては、経済とっくとして、無税のアジア貿易のハブとするべきなのです。

成田は、完全に選定からの間違いを考えてゆかねばなりません。
苦労して開拓して、平坦にしたとたんに空港では、政府や利権政治屋、ゼネコンが今まで好き勝手にやってきたことの集大成でしょう。

しかし、私の住んでいるところもアメリカ軍基地の飛行航路下で、飛行訓練などでは轟音でテレビも聞こえません。
成田の苦労はよくわかると思っております。
(さっさと、どこかの沿海部に移転するべきなのです、内陸への飛行場はいりません)

ご無沙汰いたしております。任務も終えてケニアから無事帰国いたしました。

さて、アメリカはアフリカや中東への拠点としてケニアにも基地を置きたくて仕方がないらしく、現地の新聞にも何度となく「アメリカから軍隊を置かせろとオファーがあった」と記事になっていました。基地を置けば、失業対策にもなるし、この貧しい国にもたくさんお金が落ちるよー、といってきたそうで。(どこかの国にも同じことを言ってたような気がしますが・・・)ケニア海軍と、お隣のウガンダ空軍はアフリカでも比較的レベルが高く、何かあったときには「協力を要請」とかでコマのように使われるだけなのではないか、その見返りが飢餓支援という名目で時々送られてくる(遺伝子組み換えかもしれない)トウモロコシ粉と大豆油じゃあんまりだよなー、というのが東アフリカの住民達の意見でした。

だだっ広いサバンナばかりで、土地は確かにたくさんあり、民家の頭上すれすれに飛行機が飛んでいくという状況はないとは思いますが、基地を置くことで、多くのものを失うかもしれない、ということを彼らは感じています。主要な外貨獲得手段である観光のための野生動物が今以上に激減するかもしれない、遊牧民(マサイ族、これも観光資源です)が遊牧する土地をなくして定住化せざるを得なくなる、などですが。キバキ大統領はアメリカに対して「ノー」を言い続けていますが、ケニアの旧宗主国イギリスで起きた爆破テロや、98年にケニア・タンザニア両国で起きたアメリカ大使館の爆破テロをネタに東アフリカの治安維持をしてやろうとオファーを続けています。

私が子供時代にすんでいた場所も川を挟んで飛行場と隣接しておりました。飛行機が飛び立つたびに「ビビビビビ・・・」と頑丈な作りの窓が震えたものです。飛行場は必要不可欠なものだとは思いますが、どうにかしてもう少し場所を工夫できなかったもんですかねえ。

う~ん、どちらもどうすればよかったのでしょう…

首都圏の大空港で、もっといい場所はなかったのでしょうか。
どうすれば米軍に、日本でも米本土同様に住民の人権を守れとできたのでしょうか…
または米軍基地駐留自体を否定する場合…非武装中立しかないと限定するのではなく、スゥエーデン式の重武装中立は選べなかったのか…

 三里塚に決定するまでの過程では茨城県の霞ヶ浦等の案も有った様ですね。当時羽田空港や横田基地がベトナム戦争のためにフル回転していて、航空管制の点で東京の北方にしか空いている空域が無かったために最終的に土地の買収が容易であろうと考えられた三里塚に決定されたと聞いています。ですから三里塚の農民が軍事空港反対を掲げているのは全く当然のことだと思います。現に自衛隊や米軍が成田を利用して海外に出撃していますから。

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