2009衆院選結果の分析(もどき)

09年衆院選における与野党の絶対得票率 さて、昨日のエントリの予告通り、「都議選結果の分析(もどき)」に続いて、衆院選の分析(もどき)を記録の意味で残しておこうと思います。ただしあいかわらず数字のお遊びレベルですから、あんまり信用しないように。

 今回はまっぺんさんがまとめて『四トロ掲示板』に投稿していただいた、比例区での各党得票数(巻末に転載)を主要な元データにした分析です。その他、マスコミや選管など、できるだけ信用できそうな数字も加味しておりますが、なにぶん「ネットの情報」は一般的に信用できませんし、なによりも集計したのが数字に弱い私ですから(苦笑)、大まかな結果を見る以外、(まさかそんな人はいないと思いますが)ネット外の何かの発表に使ったりしないようにね。

 ブログのネタ程度のことならまだしも、ネットの情報は検証なしにそのまんま信じないのが鉄則ですよ。検証するまでもないようなレベルのネタで「どう思うか」とか問い詰められたら、「本当かどうかはわからないですね~」くらいで堂々と通せばそれで充分です。

◆当日の有権者の行動(絶対得票率)

 絶対得票率とは、全有権者の中で現実にどれだけの支持を集めたのかを示すものです。上の表で見ればわかるとおり、前回の郵政選挙の時と同じく、1)棄権した人、2)与党(前回は自公、今回は民社国に新日本と大地を加えた5党)に投票した人、3)野党に投票した人がそれぞれ綺麗に3分の1づつになることは変わりません。

 つまり「歴史的な大勝利」である民主党(とその他の与党)を支持した人は、有権者全体の3割台だったのですね。その30%台の支持で与党が議席の7割近くを占めていることも郵政選挙と全く同じです。棄権を除いた単純な得票率でも与党の得票率がほぼ50%前後であることも同様。要するに自民と民主の立場が完全に入れ替わっているのですね。郵政選挙の時、この「小選挙区マジック(ペテン)」で自公やその支持者、小泉信者らが「勝った!」とか、ましてや「俺たちは国民から支持された」なんて尊大な勘違いをしたことが彼らの自滅のはじまりでした。さて、民主党はどうでしょうね。

◆やはり小選挙区制は見直したほうがいいと思う

 一方の小選挙区では(民主党への支持ではなく)自公政治に対する嫌気から、多くの人が民主党に投票したと思う。他に自公を落とすための選択肢がなかったから。つまり「よりマシ」なほうに投票が集中した。これがクセ者で、つまり小選挙区で勝つためには、相手よりも少しはマシそうだと思わせるか、もしくはワンフレーズ政治、要するに「劇場」を演出するしかないという方向に日本では向かっている。有権者がかえってドン引きしたネガティブキャンペーンの誘惑に自民党やネトウヨさんらがかられたのも、この流れの中にあると思います。

 今回の「民主勝ちすぎ」の現象を受けて、自公の壊滅的な敗北を喜んでもいいはずの左派や民主党支持者のブロガーさん達からさえ、あらためて小選挙区制を問い直す声が多くおこっているのも当然かと思います。そりゃあ、どんな選挙制度にも一長一短はあると思いますが、どうも小選挙区制は日本の風土にあわないというか、かえって議会政治の質を下げて劣化させる方向に向かわせているのではないかと思います。

 最初は少数意見の切捨てや世論を偽装した議会構成などに怒っていたのですが、そういう左派や少数派の立場とは無関係に、たとえ自分が多数派であったとしても、そもそも日本には不向きな制度ではないのかと。もともと「政策論争」や政治理念の争いが中心なところに導入するならともかく、日本のように人間関係がウエットで、論点や理念も多岐にわたる社会では、かえってその悪い面から抜け出せなくしてしまう面もあるんではと思い始めています。これについてはまたエントリを改めて議論したいと思います。

 ただ、付け加えるならば、投票率もあがりましたね。普段は投票に行かない人が数パーセント動くだけで大きな変化をおこすことが可能であること、前回の都議選の時も指摘しましたが、「棄権する人」を非難する暇があったら、政治家が競いあう姿を見せることで、自然に投票率も政治参加の意識も高まっていくもんだという二つのことが示されていると思います。

◆得票率(民意)と現実の議席占有率の比較

09年衆院選における各党別の得票と議席占有率

 さて、与野党という分け方で、実際の得票率(比例区)と議席占有率を比べてみたのが上の図です。新与党は民社国と新日、大地です。野党は自公と、その他の野党で分けてみました。平沼グループなどの無所属はとりあえず無視しています。

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09年都議選における与野党の絶対得票率 これでみると、第一グループの民主のみが得票よりも多い議席を得て、第二グループの自公ですら、得票よりも大幅に少ない議席しか得ていません。

 たとえばイギリスなど他の小選挙区制では、文字通り2大政党にのみ有利であって、第三党以下には不当に厳しく、よほどの大変動があるか、100年くらいかからないと3番目以下は出てこれない制度です。しかし日本の場合はなぜか第一党以外には厳しく、「二大政党」というより「一党制」を育てる結果になっている。それこそが自民党が狙ったことなんでしょうが、今はそのしっぺ返しを受けているわけで自業自得と言えます。

 左に示したのはこれを与野党ではなく、各党別にしめしたものです。これで見ると、一番の被害を受けているのが共産党であることがわかります。民意としては30議席分くらいの支持を受けたにもかかわらず、実際には一桁の9議席しか与えられていません。その次の被害者は幸福実現党(笑)。得票数で言うと3議席分の支持は集めているし、それどころか比例区がブロックごとに寸断されていなければ、現行の小選挙区並立制でも1議席はとれていた。

 こんなことばかり続き、「二大政党」のみなさんが、世論調査ばかり気にして「よりマシ」を競い合い、あげくに奇策の「劇場」やら、「民主党は革命政党だ(←爆笑)」みたいに突飛な「ネガキャン」ばかり繰り広げていると、最後は民衆が政治そのものに嫌気をさしていくんではないですかね。いきつく先はファシズムの台頭でしょうか、それとも革命情勢?なんてね。

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<参考>

選挙結果についての参考資料
投稿者:まっぺん 投稿日:2009年 8月31日(月)15時35分41秒

今回の衆院選は予想を上回る民主党の圧勝でした。55年体制が作られてから一貫して続いていた自民党支配は終局を告げ、全く新しい時代が始まったと言っていいと思います。今後の予想、分析などはそれぞれお委せするとして、まず今回の投票結果について、ちょっと資料を作ってみました。それは全国の比例選挙における各党の得票数・得票率と180議席の配分を分析し、もしも480議席の全部が比例代表制であったらどういう配分になったかを比較してみたものです。(以下)なお、ネット上で見付けた数字をもとにしているので、まちがってたらご指摘ください。

09年衆院選における各党別の得票と議席占有率一覧表

※Aは全国を単一の比例区としてパーセンテージから比例区180の議席配分を割り出してみました。
※Bは議席総数480の全てを比例代表制で配分したらどうなるかを計算したものです。

投票者のうちの42%が投票した民主党は、衆議院の64%の議席を占める事になり、逆に7%の得票があった共産党は議席の2%しか獲得していません。第一党の民主党だけが1・5倍もの水増しとなり、他の全政党へ投票した有権者の声は削減され、あるいは無視されていることが分かります。(ただし、自民党も比例代表制180議席の中では得票率以上に議席を獲得しています。)幸福実現党でさえ、3議席分の有権者の声を獲得していたことになります。現在でさえ11地区にもズタズタに分断され、「比例代表」の利点を半減させられているにもかかわらず比例代表区を廃止し小選挙区だけにする動きもあり、選挙制度の反動化が進められている事に注目しなければなりません。

3件のコメント

今回の選挙の結果を見るとまさに『小選挙区マジック』という言葉があてはまりますね。
エントリーでは比例区の得票率を挙げていましたが、小選挙区の得票率も興味深いものとなっています。
私が参照したのは『ウィキペディア』なのですが、今回の選挙で民主党は小選挙区で221議席獲得しましたが、得票率を見ると47%ちょいに過ぎず、
対して自民党は64議席にとどまりましたが、得票率は39%近く獲得しており、議席数ほど大きな差はありません。
いかに有権者が迷っていたかが見て取れるようです。(カレー味のう○こか、うん○味のカレーか・・・)
マスコミが日本全体に薄く広く『5%程度の風』を吹かせた結果こうなったのでしょう。
ここから察するに、小選挙区制というものは、いかにマスコミの影響力が広範囲に広がっているかを測る『ものさし』に過ぎないような気がします。
(『一人一票』ではなく、有権者が複数の候補を選べるシステムなら、また違った結果だったかもしれませんね。)

さて、そのマスコミですが、前回の郵政選挙では小泉人気を作り出し、自民党の圧勝劇を演出しました。
その自民党はマスコミの創った『民意』を背景に国民生活を破壊しようとしましたが、彼等マスコミにはその責が問われないというのも不公平な話です。
(政治家ですら『落選』という形で責を負うというのに・・・メディアが売れればそれでいいのか?)
『民意』を得た民主党が少数意見を封殺するようなことになれば、マスコミの『民主主義に対する罪』がまた一つ増えるわけですが、どうなることやら。
(「ファシズムの定義」のエントリーのときに書き忘れていたのですが(というか思い至ってなかった・・不覚)、『ファシズム』とは一部の政治家が多数の『民意』を背景に少数者の意見なり人権なりを蹂躙することであると考えています。民主主義とは紙一重のような気もしますが・・・「多数に従う」というだけなら議会なんて必要ないわけですし。)

そういえば、前回のエントリーで草加さんが『左派の消滅』を心配しておられましたが、私は杞憂ではないかと思っています。
なぜなら『左翼の思想』というのは庶民(弱者)から見た不正に対する『正義感』というものが支えになっていると考えているからです。
資本主義が豊かな暮らしをもたらしたため、社会主義や共産主義に市民は魅力を感じなくなったのが左翼の退潮の原因のひとつではありますが、その資本主義下の社会における追求するべき不正は、一般市民の目から見えにくくなっただけで、実際にはいくらでもあるんではないでしょうか?
金持ち優遇の税制(累進課税・消費税)然り、国債(殆どは国内の金融機関などが引き受けてはいるが、その原資は国民の金融資産)然り・・・
(自民党が推進した『グローバル化』とかいう格差拡大政策により『つっこみどころ』がさらに増えていますが。)
無論、草加さんのおっしゃるとおり『魅力的な別の「価値観」を提示』するのも非常に重要なことではありますね。

ただし、現在のような『劇場』型の選挙が続き、小選挙区制が民意を反映しないとか言って『一人一票』のまま大選挙区制に移行するようなことになれば、本気でヤバい(表舞台から消滅する)とは思います。

連投申し訳ありません。
先日の書き込みで、ものすごい勘違いをしてました。
最後の一文で『大選挙区制に移行するような・・・』って書き込みましたが、大選挙区制の場合は定数が増えるから場合によりけりですね。
比例区の廃止とか頭の中でごっちゃになってました。 orz

最初にお断りしておきますが、私は現在の所まだ選挙制度については小選挙区制を支持しています。そして、現行制度は修正が必要とは思いますが、これを中選挙区に戻すことには基本的に反対の立場です。こういう人間は結構いるはずと思うのですが、私の見る限り積極的な発言が少ない様なので、とりあえずこういう立場の意見を一つ。

まず、小選挙区制は確かに少数意見を抹殺するものであり、あえて言えば、右派政党(自民党じゃなく、あえて言えば維新政党新風あたりを想像してみてください)にせよ左派にせよエコロジー政党にせよ、国民の一般的マジョリテイに訴えにくい政策政党には不利で、よかれあしかれ自民党、民主党みたいな、まあ何でもあり的な大政党に有利ですよね。死票も増えるし、得票率と議席数の乖離も起きる。もしかしたら中選挙区制に戻したら、私のような右派が極右政党を作っても一議席くらいどっかで取れるかもわからん。

ただ、そういう欠点は認めた上で、では中選挙区制時代を今思い起こしますと、やっぱり組織票,あえて言い切れば、公明党のように堅固な宗教団体に支えられた党、自民党のように各地域の利益団体の組織票をまとめた党に、相対的に有利になってしまうんじゃないでしょうか。もうそういう組織の時代は終わった、という声も多いし、現実に地方組織は解体しているでしょう。創価学会も全員が公明党には入れてないのかもわからん。しかし、中選挙区制に戻った段階で、おそらくそういう組織団体は息を吹き返します。そして、その事が全て悪いとはいいませんけど(組織団体がそれなりに構成員の生活を守り、地域を守る事はありうるから)、私にとってそれはあんまり好ましいことではない。

今日本が様々な多様な問題を抱えており、今逆に大政党よりも、個別の問題に取り組む小政党が必要で、そのためには中選挙区制の方がいいという声も聴きます。ただ逆に言えば、価値が多様化し、政治の諸問題が複雑になったからこそ、逆に、選択肢を少なくして決断しないといつになっても対策が取れないということもあると思うんですよ。

そして、私たち右派に限って話しますと、右派イデオロギーや歴史観や対北外交のような得意分野でしか語れない私のような姿勢ではだめで、国民のもっと現実的な要求や悩みに対し総合的・具体的な対策、少なくとも取り組む態度をもっと出していかなければ、永遠にマジョリテイに受け入れられることはないです。中選挙区制で一つか二つの議席を得るために右派が中選挙区制を要求したら、それは自分たちの思想が国民大衆には受け入れられないことを認めたようなものだと思います。そして、政治に関わるのは何も政党活動だけではなく、市民運動、国民運動、様々なやり方があるんですから。

まあ最後に個人的な感想ですが、今回、公明党が凋落したこと、これはやっぱり私は小選挙区制のいい面が出たと思いますよ。(支持者の方すいません)

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