米国の対中国戦略と辺野古新基地建設(テキスト版)

1ページ目にもどるジグザグ会アーカイブ

3.アメリカと中国の戦争は起きるの?

中国の軍事パレード(2015)

 中国経済が発展したのは、欧米や日本など先進諸国の企業や投資家たちが莫大な資金を中国に投資して、中国国内で様々な産業を育成し、中国の安い労働力を利用して巨額の利益を生み出したからです。それによって中国経済は大きく発展しましたが、投資した欧米や日本の投資家たちも巨額の利益を得ました。

 今でもその関係は続いています。中国には、世界シェア1位の米国デル• コンピューターなど外国企業の工場群がたくさん立ち並んでいます。また先進国の投資家への利益の供給は続いています。だからもしもアメリカが 中国と戦争をすれば、アメリ力の投資家や企業が莫大な損害をこうむることになるでしよう。もちろんヨーロッパや日本の企業も。

主要国の軍事費比較(2014)

 また中国の軍事力は軍事費ではロシアの2倍を超え、アメリカの約3分の 1で世界第二位になっています。大型大陸間弾道ミサイルち核弾頭も多数保有し、アメリカと戦争になれば、それがワシントンやニューヨークに飛んでゆくでしよう。当然アメリカも北京や上海を攻撃するでしよう。そうなれば米中両国ともあまりにち被害甚大です。だから、アメリカも中国も互いに本格的な戦争を起こすことはできなくなっているのです。

4.それなら戦争は絶対に起きないの?

 米中の直接の全面戦争は、双方ともあまりにち被害が大きくなるのでできません。そこで「アメリカ流非対象戦争」戦略では、アメリカ本土が攻撃されない ようにアメリカ側も中国本土を攻撃せず、「特定の場所」で核兵器を使わない 「限定戦争」を行なうという戦略構想になっています。

 なんと!その「特定の場所」として米軍が想定しているのは日本です。米軍が作成した地図には沖縄は「壊滅地帯(Disruption Zone)」、日本本土は「戦場(Battle Zone)」と書かれています。つまり米中戦争の時には、アメリカと中国はお互いに安全なままで、日本を戦場にして「勝ち負け」を決めようというのです。

ヤマサクラ演習は日本を戦場に米中が戦うシナリオだ

日本を主戦場に米本土を守る米軍の対中戦略。戦争になればその帰趨にかかわらず沖縄は真っ先に草一本残らず壊滅する。この沖縄の危機感が本土に伝わらない。

 米中戦争が始まれば、中国は日本の米軍基地にミサイルを何百発も撃ち込んでくるでしよう。敵の軍事拠点をたたくのは戦争の常識です。たたかないはずがない。また敵の弱点を狙うのも戦争の常識です。ダムや発電所などは破壊目標となります。全国に50力所もある原子力発電所がミサイルで破壊されれば、もはや日本は、人が住める国ではなくなるでしょう。

 なぜそうなるのでしょうか。それは日本と沖縄に米軍基地が集中している からです。なぜ日本に米軍基地集中しているかといえば、日本はアメリカと日米安保条約(安保)を結んでいるからです。つまり「日本には安保があるから米軍基地があり、米軍基地があるから攻撃される」わけです。

原発を想定してない演習ヤマサクラ

↑仮想敵国が山陰地方に上陸し近畿,中部や東京へ進撃してくる事を想定した日米合同の図上軍事演習。作戦名は「ヤマサクラ」(CS幹校戦略研究より)。しかしこの作戦には重大な欠陥がある。 敵が原子力発電所を占拠や攻撃することをまったく想定していない。

5.戦争が起きるとすればどんな理由で?

 これについてアメリカが想定しているのは「中国が台湾に進撃してくる場合」です。 中国は「台湾は中国の領土」と言い続けています。台湾が中国の領有となるのか独立するのかは、台湾の人々が決めるべき問題です。その場合も戦争による決着ではなく外交手段によって解決するべきですが、アメリカは対中戦による武力解決を想定しています。

 その場合、台湾の中国側に向いた西海岸は非常に強固な防衛対策がほどこされていますから、中国は黄海から出て南西諸島を越え、台湾の東へ回り込んで東海岸側から攻撃しなければなりません。その中国軍の進路の途中に宮古島 や石垣島などの先島諸島があります。

自衛隊の南西諸島配備は米軍の下請けとしての台湾防衛

 いま宮古島、石垣島、与那国島に自衛隊がミサイル基地を建設しているのは、もしも米中戦争になったら中国軍を迎撃するのが目的です。つまりこれらのミサイル基地は「日本防衛」 ではなく、米軍支援の「台湾防衛」のために建設されているのです。

 もしも自衛隊が米軍を支援して中国軍をミサイル攻撃すれば、当然に中国側だってだまっていません。ミサイルを撃ち返してくるでしよう。その時、はたしてわずか1500人の自衛隊は、宮古・石垣合計10万人以上の住民を、そして146万人の沖縄県民を、本当に米中軍への対応よりも最優先で「守る」のでしょうか?

自衛隊の島嶼間ミサイル
防衛省が開発中の島嶼防衛用の滑空ミサイル模式図

防衛省が開発中の超高速滑空弾による攻撃の模式図↑
このような高速のミサイルが開発されれば迎撃はもはや不可能となる。中国も同種の高速滑空弾を開発すれば撃ち合いとなり、互いに甚大な被害が想定される。その被害は南西諸島住民が受けることになる。

次ページ:開戦時の米軍シナリオと自衛隊の役割

3件のコメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

ABOUT US
ジグザグ会
私たちは、原発を社会問題として考える出入り自由の個人共闘(ゆるいネットワーク)です。ヨタヨタはしても、とんがっていたいということで、ジグザグ会としました。  普段は主にネットを中心に活動しており、月一回程度、自由参加で行動、交流、学習などを積み重ねていきます。「左から」としておりますが、私たちの趣旨や内容にご賛同いただける方なら、どなたでも歓迎いたします。私たちの行動にご参加ください。