米国の対中国戦略と辺野古新基地建設(テキスト版)

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6.アメリカは日本を守ってくれるの?

 日本に米軍基地があるのは日米安全保障条約(安保条約)が結ばれているからです。でも安保条約のどこにも「米軍は日本を守る」などとは書いてありません。しかし「極東の安全を守る」とは書いてあり、極東にいくつもの米軍基地があるので、結果としてそれが日本を守ることにつながるかもしれません。

日米「ヤマサクラ」演習図1

 しかし米軍は、日本をはじめ世界中の米軍基地、洋上の空母や潜水艦、宇宙衛星を組み合わせたネッ卜ワークなどで、地球全体を包括する世界戦略のもとで軍事行動を行なっています。たとえば湾岸戦争の時には、米兵が沖縄で軍事訓練を受けて中東へと出撃していきました。つまり安保条約はこの米軍の世界戦略の一部として日本を利用するのが目的なのです。

 もしも米中戦争になった場合、米軍基地がある日本や沖縄に何百発ものミサイルが一斉に飛んできます。いったん戦争がはじまってしまったら、もうこれらのミサイルを防ぎきることは絶対にできません

中国のミサイル戦力

 そこで米中戦争構想では、戦争が始まったら米軍はいったん基地を捨てて (つまり日本を見捨てて)テニアンやサイパンなどに退避することになっています。そして次の第二段階で制空権を奪い返し、中国の艦船や飛行機を攻撃する。そして第三段階が日本本土での戦争です。日米合同の「ヤマサクラ」作戦は、日本だけを戦場として行われる戦争を想定しています。

 つまり現在の日米安全保障条約は、「米軍による日本の安全保障」では なく、逆に「日本を犠牲にしてアメリカの安全を保障」することが主目的となっています。

7.先島諸島自衛隊配備の目的

沖縄 先島 島嶼 自衛隊

 日本政府は宮古島、石垣島、与那国島など(先島諸島)に自衛隊を配備しよ うとしています。配備されるのは、警備部隊のほか、地対空ミサイル部隊、地対艦ミサイル部隊、そしてレーダー部隊です。

沖縄 先島 島嶼 自衛隊

 政府は配備の理由を「中国の脅威から日本の国土を守るため」といっています。しかし現地の人は「そんな脅威は全然感じない」と言っています。
 実際は政府も「中国が尖闇諸島や宮古島に攻めてくる」とは思っていません。5.でもお話ししたように、このミサイル基地は中国の攻撃から台湾を守るために設置されるのです。しかも今までなら米軍が守るところを、 同盟国軍隊に米軍の役割を肩代わりさせる、アメリカの「オフショアコン卜ロール構想」によって自衛隊が派遣されたのです。

 つまり派遣された自衛隊は日本の防衛方針によってではなぐ「台湾防衛」 という米軍の構想にもとづいて米軍の「下請け」を引き受けているということです。そのために「集団的自衛権」容認や安保法制が必要になったわけです。

 この現実をどう見るのか?「米軍のコマ」として米軍の下で使われ、米兵の代わりに人を殺し、米兵の代わりに戦死する、そんなことがあっていいのでしようか?

沖縄 先島 島嶼 自衛隊

8.なぜ政府は辺野古にこだわるの?

安倍首相はウソつくな!「普天間5年以内運用停止」はどうなった!2・17新宿デモ

 米軍普天間基地は、2003年にラムズフェルド米国防長官が「世界一危険な米軍施設」と指摘したように、周辺市街地や学校への飛行機の墜落の危険や、騒音被害、駐屯する米兵の犯罪も含めてたいへん危険な基地ですが、米兵による少女暴行事件をきっかけに沖縄県民が抗議し、基地を撤去することが決まりました。

 しかしそのあと、日米政府のあいだで撤去ではなく「基地を別の場所に移転する」と話が変わり、その候補地として名護市辺野古沖合とされてしまいました。しかし辺野古に建設が予定されている基地の機能は、 それまでの普天間基地よりもはるかに拡充されます。1800メー卜ルの滑走路を2本備え、岸壁には大型艦船が停泊できるようになります。これは「移転」ではありません。

 実は辺野古への基地建設は50年も前のベトナム戦争の時から、米軍の出撃拠点として計画されていました。今回はその「本当の目的」のために「普天間基地撤去」を口実に使っただけの沖縄への新たな米軍基地の建設なのです。

50年前の辺野古基地建設計画を報道する東京新聞

 辺野古に新しい基地が完成すれば、西太平洋全域への最前線基地となる でしよう。それは、もしも戦争や紛争が起きれば真っ先に攻撃される、辺野古周辺一帯が一番危険なところになるということです。

 日本は米軍のこの目論みにしたがって沖縄をいけにえに捧げようとして います。断じてそれを許してはなりません。

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