資料】左翼運動のスターリン主義的歪曲を克服せよ/荒岱介

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付録1】掲載当事の解題

(本の後書き・解説の該当箇所を適当につぎはぎしてあります)

○1982年『武装せる蒼生』(戦旗社刊)より

武装せる蒼生

 これまでのスターリン主義批判の諸系列が整理されるとともに、その核心は一国社会主義論などへのイデオロギー的な批判やのりこえに求めることはできず、その政策・思想・政治の反人民的、官僚専制的内実、すなわち近代ブルジョアイデオロギーヘの屈服の克服として、自己絶対化やブルジョア的尊大さを排し人民の解放に貢献しうる主体、そうした政治の展開にこそ求められるべきであることを明らかにしたものです。
 いくら「反スタ」を叫んでも内ゲバ主義を構造化させ、あるいは人民に君臨せんとする革共同(中核派・カクマル派)的な従来のスターリン主義批判の陥穽をつきだしつつ、革命的左翼の進むべき道を喝破した論文です。

○2003年『反体制的考察』(実践社刊)より

反体制的考察

 1989年~91年、ソ連・東欧では社会主義が相ついで崩壊した。社会主義は資本主義社会へのオルタナティブたりえないことが、民衆自身に見限られることで歴史的に刻印されたのである。本稿はその10年前、ソ連軍によるアフガニスタン侵攻(79年12月)を機に書かれた。民衆を抑圧するソ連型社会主義が民衆を離反させ、歴史的に破産を余儀なくされると突き出している。
 本稿の時点で、著者らはソ連型社会主義(=スターリン主義)に代わる理想の共産主義をめざしている。その点で計画経済に基づく社会は不可能という、著者らの今日の視点とは違うことが書かれている。
 だがスターリン主義批判とは理論ではなく、人民に対する日々の行い(実践)のなかにこそあるという視点などは結局かわっていない。90年代以降のマルクス主義からのテイク・オフが自己絶対化による対立党派の抹殺行為などへの著者の否定からおきていることを考えると、それを準備した論稿ともいえるものである。

付録2】「旗旗」読者の皆様からの感想

以前にこの論文を紹介した時にいただいた、ブログ読者のみなさまからのご感想です。それぞれに私がレスをつけていることもあるので、ご興味があればそれぞれのリンク先をご覧下さい。

たけ(39) より:
2009年11月24日 12:15
論文を読んで、「草加さんが事あるごとに『外在的な問題ではなく内在的な問題である』旨の発言をしているのはこういう考えが根底にあるのだ。」と納得しているところです。

私は今でこそ『右派』を名乗っていますが、最初に持った思想は『共産主義思想』だったりします。
当時(10歳頃)の私はヒマがあれば百科事典を読み漁っていました。(単に知識が増えるのが楽しかっただけですが)
そのうち、何を血迷ったのか『思想・哲学』の巻を開いており、気が付けばマルクスの写真(例の髭モジャの)が掲載されているページを熱心に読んでいる自分がいました。
そのとき初めて『共産主義』にふれたのですが、そのときの印象が「これは素晴らしい世界なのではないか?」というものでした。
その後しばらく自分なりに調べていたのですが、出てくる情報は残念なものばかり。(過激派の活動や共産主義国の実態など、小学生には刺激が強すぎたのかもしれません。)
何故そんなことになるのか訳がわからなくて親類に聞いてみたりしたのですが、誰もが口を濁すばかりでまともに答えようとしてくれない。(親父に聞いたら殴られました(笑)。)
そうこうしているうちにすっかり興味を失くしてしまったのですが・・・もし、自分がもっと早くにこの手の論文に出会っていたら、自分の主義・主張はどうなっていたかわかりませんね。
そういった経緯を持つだけに、『在特会』やその支持者は『残念な人達』としか言いようがありません。(紅衛兵扱いするのもよくわかる気がします。)

ちなみに、私が『右派(保守)』であるのはゲーム(PC)の影響が相当に強いです。
歴史シミュレーションが好きで、取り扱っている時代背景なんかを調べているうちに・・・気がついたら『保守(的な)思想』に染まっていました。
まぁ、考えを整理し始めたのはつい最近(2年ほど前から)のことだったりしますけど・・・

ヒロ より:
2010年9月14日 06:32
「旗旗」サイトで様々な事を勉強させて頂いております。

88年頃から93年頃まで戦旗と関わっていました。
今は○派系の労働組合員です。
戦旗は「スタ克」、○派は「反スタ」をスローガンにしています。

どこまで戦旗の「スタ克」の思想を理解しているかは自信はありませんが、今の組合にいると嫌でも「スターリン主義の問題」を考えざるを得ません。

それはかつ克服すべきとされてきた問題を孕んだ組織運営がなされているからです。
戦旗では絶えず「実践と省察」という自己の検証作業をせまられましたが、この作業の重要性を今の組合での活動で初めて痛感しています。

残念ながら地域的特殊性から左翼的な運動に関わり行動するには、今の組合に留まる以外ありませんが、なんとか「スタ克の精神」を組合内に認知させると同時に自身もその精神の正しい理解とその精神を大事にしていきたいと思います。

漠然とした曖昧なコメントで申し訳ありません。

今後とも「旗旗」を応援させて頂くと同時に、どこかの集会で草加さんと再会させて頂くのを楽しみにしています。

TAMO2 より:
2009年11月30日 23:39
こんばんは。小生は広く暴力の問題として、スターリン主義とファシズムを捉えています。暴力は剥き出しの物理的なものという姿なら脅威は少ない――なぜならあからさまだから――のですが、しかし権力という姿態を取ることにより、底知れぬ脅威を、圧倒的な脅威を与えます。

申し訳ないですが、小生はファシズムを左翼の思想の一つと見なしています。勿論、スターリニズムと同様に、「ありうべき様態」からすれば反対物へ転化したものです(弁証法)。

で、なぜ、反対物に転化するのか。そしてそれは、保守から派生した数々のイデオロギーに基づく思想よりも酷いものになり果てるのか。

ここに三つのキーワードがあると思います。上に書いた「暴力」、そして「権力欲」と「恐怖心」。スターリン主義の場合、きっかけは勿論ロシア革命でレーニンが状況に応じて取った戦時共産主義が発端だと多くの識者に示されています。種籾まで奪うエクス(レーニン)は農業集団化(スターリン)を思い起こさせますし、次々と反ボリシェヴィキに行き着き、内戦およびテロでもって反レーニン・ボリシェヴィキを闘った闘志に対する赤色テロは、スターリンの大粛清を思い出させます。しかし、レーニンが生きた時代の暴力と、スターリンの時代の暴力は違うんですよね。レーニンはファニー・カプランに危うく殺されそうになりましたが、あけっぴろげとも言える「警備」状況でのテロ、あからさまな状況でのテロ。カウンターでカプランは確か2日後に殺され、同時にSR左派もかなり殺されたと記憶します。やるか、やられるか。暴力が戦時共産主義を産み、拡大し、スターリンへの途を掃き清めました。

で、スターリンの時代。こちらの暴力はシステマイズされ、誰の上に降り注ぐか分からない不気味さがあります。いつ、スパイとか人民の敵として粛清されるのか。告発者・密告者は少しでも「敵」よりも優位に立ちたいという「権力欲」から、あるいはこちらのほうが圧倒的に多いのですが告発される前に密告してしまえという「恐怖心」。

マルクス主義は、理想主義的な文脈で語られることが多かった気がします。マルクス自身、あるいはもっと強烈にはレーニン自身が言うように、そのような理想主義的なものは「ナンセンス」なんですが。しかし、理想主義的にこれらが捉えられるならば、「善-悪」二元論に立たざるを得ないし、プロテスタンティズム的なキリスト教解釈が世界の多くを支配している現在、これは「敵は死ね」という、カールシュミットが論じた政治世界を現出します。そうなると、「敵に剥き出しの暴力を行使することは善」と簡単に言えますし、また「敵」規定さレルかもしれないという「恐怖心」も、「敵に対して頑張った」という認められたい心、より多くの敵をやっつけるために他の仲間を自分の絵に従わせたいという「権力欲」が亢進します。マルクス主義者が権力を握ると、殆どがスターリン主義――国家権力だけではなく!――になるのは、こういう心理なのではないでしょうか。それが極限まで進んだのが革マルかな、と。

どれもこれも無縁ではないので、スターリン主義を「外在的」に取り扱う人はスターリン主義を理解できないし、克服することなんか不可能ですね。個人的には、マルクス物象化以前の議論=疎外論を徹底的に踏まえることがマルクス主義者にとって非常に大事だと思っています。観念論者としてのマルクス万歳!!

通りすがり より:
2009年11月19日 14:21
最後の文章を読むと、「しらじらしい」と感じます。
しかし、大枠からいって、本論文が誤っているとは思えません。

そうあいつも昔は、輝いていたネということかな。

それから黒目さんの言うことは、それはそれでいいのではないかと。

しかし、そう思っていただけでは、何も語ったことにはなりません。
問題は、そう思う=結論=上向行的総合にいたる対自化の内容の過程にあると、僕は考えます。

だから草加さんは、別に落ち込む必要はないのではないかと。

東行 哲 より:
2010年2月13日 15:33
この論文が懐かしくて、やっと実家に行って見つけてきました。荒岱介氏の『武装せる蒼生』に収録されていました。当時は、反帝「反スタ」でなく、「スターリン主義は克服の対象」だとの主張が心を揺さぶりました。85~6年です。社学同と、「スタ克」「日革展(宮顕)」で論争(?)しましたwww。若かったですぅ。

付録3】『スタ克論文』学習会(担当:草加)レジュメ

1)『スタ克論文』の位置

1956年  2月 スターリン批判
     6月 ポズナニ暴勤
     10月 ハンガリー革命

1968年  プラハの春
     8月 ソ連軍のチェコ侵攻

1978年  3・26管制塔占拠闘争

1979年  12月 アフガン侵攻

1980年  1月 『武徳論文』発表
     4月 『スタ克論文』発表

2)アフガン侵攻

1965年  人民党(ハルク)創立

1967年  人民党分裂
      ・ハルク派
      ・パルチャム派(親ソ派)

1973年  ダウドによる王政打倒、共和制成立
      →パキスタンへの対抗からソ連に接近

1978年  4月 ハルク派による初の共産政権成立
     12月 ソ連との友好善隣協力条約締結
      →土地改革で逆に難民を出してしまい、イスラムゲリラの抵抗が始まる

1979年  9月 タラキ首相追放、アミン政権ヘ
      →パキスタンとの和解・共存政策
      →ソ連からの相対的自立へ

     12月 ソ連侵攻、アミン死亡、カルマル政権を樹立

人民の宗教的・世俗的意識、習慣を無視した革命の輸出、土地改革が人民と遊離し、イスラムに追いやり、それを銃と戦車で補完するやりかた→スターリン主義政治の典型・毛沢東の人民政治との差

3)スターリン主義批判の源流

1955年  日共六全協で「平和革命路線」に転換

1956年  フルシチョフのスターリン批判

1957年  トロツキスト連盟(のち、革共同)結成—
                        |-¦
1958年  共産主義者同盟(第一次ブント)結成—– ¦
                          ↓
                   反スタ・トロツキズム的傾向

・革共同 黒田寛一 →「反帝反スタ」
・第四インター   →「トロツキズム」
・共産同(ブント)→
 1.マルクス主義の修正に対する批判
   一国社会主義建設論、プロ独と社会主義の混同等

 2.ソ連一国防衛主義が国際共産主義運動の挫折・混迷をもたらしたことへの批判
   世界革命の放棄
   1930年代、スペイン革命
    フランコVS人民戦線‐
     POUM=トロツキスト・アナキスト
     スペイン共産党=ソ連派→決定的段階での裏切り・POUM攻撃
   中国革命や、社会ファシズム論など

 3.議会主義への埋没・ブルジョア体制内化への批判→共産同結成の原点

 4.官僚主義・一党独裁への批判
   ソビエトの空洞化、党による人民への君臨等
   →右からの批判とは無縁であった

 5.人民抑圧、イデオロギーの押し付けが芸術・文化・科学の停滞をもたした現実への批判

4)ロシア『血の粛清』とふまえるべき点

・トロツキー           ・スターリン(初期)
  西欧近代主義       |   ロシアの現状
   重化学工業の急進的推進 |    生産材-軽工業からの暫時的発展
   原資を農民から収奪   |    農民の保護=労農同盟
  プレオブラジェンスキー  |   ブハーリン
  ★理念的、理想主義的   |   ★土着的、現実主義的

  世界革命の論争にしても、スターリンが説得力を持つ

1928年  1月 トロツキー追放
     10月 第一次五カ年計画
        →スターリンの左転回(トロツキー派の主張の横取り)
         重化学工業化、クラーク追放、農民弾圧、右派を攻撃

1934年  1月 第17回党大会(以降、本格的な党内粛清はじまる)
     12月 キーロフ暗殺(反対派へのテロの開始)

1936年  ジノヴィエフ、カーメネフを処刑

1938年  ブハーリン、ルイコフを処刑     →スターリンに忠告・対抗する人間は誰もいなくなる

 ★スターリン主義の、何が実践的に人民の阻害物なのか?
   トロツキーとの論争ではスターリンの主張の方が現実的で説得力がある→大衆的な支持の必然性
   むしろ1928年の「左転回」以降のテロ、暗殺、粛清をこそ見るべき
   理論的な(一国社会主義などの)批判より、我々自身の政治的発現がいかにスターリン主義から
   自由でありえるか

5)スターリン主義の本質規定

 帝の包囲下           —-  官僚主義的歪曲
                   | 官僚主義的合理主義
 ブルジョアイデオロギーの未克服 —-

 ・ソビエト・エリートの規定
   資本家階級の復活?(中共)→社会科学的規定としては無理
   1.私的に蓄積した富は少なく、所得は低い
   2.一位階、階層にとどまつている
   3.政治システムに依存、経済的独立性なし
   4.党、国家に従属、一代限り

 ・スターリン主義=官僚主義的に歪曲され、変質した「労働者国家」の支配的イデオロギー
   ブルジョア階級打倒の闘いと同一地平ではない→「反帝反スタ」「反帝反社帝」のあいまいさと誤り

6)近代ブルジョアイデオロギーの未克服

 5)の結論から→理論内容そのものへの批判ではなく、政治思想的克服をめざす方向を定めること
 スタ思想=ブルジョア個人主義、合理主義の未克服。人間的な考え方や尊厳の喪失。
      左翼的な人間観の放棄と官僚支配がプロレタリアを「管理」の対象としてしまう。

 ・ブルジョアイデオロギーとは
  人間性の表出は自我の表出(近代合理主義)⇔機械体系への従属、人格の歯車化(資本主義)
  自由・平等・博愛(自我の独自性の承認)→人間を規制する資本家的商品経済の支配思想として確立
   ↓
  個人の利己の追求と繁栄それ自体を目的化し、貨幣の蓄積によってその実現をはかる社会
   ○私有財産・自由競争・自己以外すべて敵・社会は競争の場・人との関係=物との関孫
   ○貨幣への崇拝と蓄積こそが幸福への道
   ○人間意識の疎外⇒そこでの価値判断の体系こそがブルジョアイデオロギー

  1.物質的生産手段への人間の従属(人間が作った物に人間が支配される)
  2.生産手段所有者の手による無産者の支配
  3.交換価値のない労働(家事、育児等)への社会的差別
  4.差別観念の構造化(被差別部落・在日・下層労働者・女性差別など)

  →マルクス主義は、これらの苦悩からの人間解放思想

 ・再びスターリン主義
   =生産力(経済)発展第一主義、党による労働者の支配、そこにおけるゲバルトの行使
    つまり近代合理主義(ブルジョアイデオロギー)の上に国有化と一党独裁を持ち込んだにすぎない

7)ブルジョア思想の克服をかけたスターリン主義との闘い

 ・西欧知識人→スターリン、トロツキー等個人の性格で説明する傾向

 ・毛沢東 →すべての西欧近代思想への憧れを排し「遅れた農民から学ぶ」下放の精神
       中国農民に理解される内容と形態においての土着的な共産主義
       人民解放に献身する主体への自己改造の提起
       近代合理主義とは別の地平で近代的な主体が確立しうる可能性を示唆

 ・レーニン→農民軽視から腐朽性理論による内容的修正ヘ
       「何なす」的中央集権党=適用しだいでは「両刃の剣」
       「背教者カウツキー」「『左翼』小児病」で党的主体の問題、大衆の意識性を引き出す
       政治の実現を提起

 ・トロツキー→西欧近代主義そのままな主体性(インテリ知識人以外の支持を得られなかった)

 ・スターリン→ロシア的風土性を持ちつつも、工業社会としての「西欧への憧れ」を止揚できなかった。

 ・批判は批判としても、毛沢東の一種東洋的な共産主義の特異性には注目すべき点がある
   1.党員、非党員の差別分断の止揚
   2.人民の意志を党が代弁し、その逆の押し付けにならないこと
   3.セクト主義の止揚  などとして今日的に整理し、常に党と主体が自己点検すべき
     →日本においても、西欧近代主義のストレートな待ち込みだけでは、天皇制など
      日帝のつくりあげている人民集約の歴史性を打ち破っていくことはできない。

 ・党と主体が不断の自己切開、自己批判を忘れた時、党組織はスターリン主義に落ち込む。

8)『革命運動のスターリン主義的歪曲を克服せよ』というスローガンについて

 ・現在までの新左翼運動⇒「スターリン主義批判」を口にだせば、すでにそれをのりこえたという、
  はかない幻想にひたってきた。

 ・なぜ「スタ克」を提起するのか

   我々自身が思想的実践的に真に越えでたとは言えないスターリン主義的歪曲を、自らの課題として
   克服しようとするためのもの
   →理論的批判だけですまされるような現実に日本階級闘争はない
    現実の内ゲバ主義や、連赤の同志殺人を見よ!

 ・「スタ批判」
   =外在的なものではなく、自己に内在しうる、内なる革命をはたしえる内実をもつ批判として初めて、
    巨大な歴史的意義を持つ-「ソ連が悪い」と百万回繰り返しても意味はない。

 ☆『革命運勤のスターリン主義的歪曲を克服せよ!』このスローガンのもと、近代ブルジョア思想を越えでた地平で、人民に希望を与える独自の共産主義思想を確立せよ!!

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